若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

謎の世界

「ここは一体……？」
あの光に包まれ、目を開くとそこには何もない真っ暗な空間が広がっていた。
私は、周りを見渡しながらとりあえず歩いてみた……けれど、この空間の中
には何もなくて、ただ嫌な気配だけが漂っていた。
「早くここを出て皆さんの元に帰らないと……」
「それは困りますねぇ………聖女様」
私の背後から、突然そんな声が聞こえた。
その声の主は、クスクスと笑いながら私に近づいて来た。
私は咄嗟に魔法を放とうと、手を組んだのだけれど……
何故か魔法を発動することは出来なくて、私はそのまま手を捕まれてしまった。
「いたっ……！離してください！ここは何処なんですか！？」
「ん～随分と元気な聖女様ですねぇ……ここは私の精神世界、とでも
言いましょうか……まぁ、そんな事はどうでもいいので私に付いてきてもらってもいいですか？聖女様」
「嫌だ、と言ったら？」
「無理やりにでも連れていきますが……」
そう言って男は不気味な笑みを浮かべ、指をパチンっと鳴らした。
すると、目の前にぽうっと鏡の様な物が浮かび上がり、その鏡の中には
私の名前を必死に呼ぶルークや、ボーっとその場に立ち尽くすエミリアに
泣き崩れる沙羅の姿が映し出されていた。
「皆さん……！！」
「着いてこなかったら、この人達がどうなるか……聖女様なら分かりますよね？」
「…………分かりました」
「物分かりが良くて助かります、では行きましょうか……」
男はそう言ってまた指をパチンと鳴らした。
すると次の瞬間私は黒い霧に包まれ気がつくと見覚えのある場所にいた。
それは北の国で見た……魔女の屋敷だった。
「ここは……」
「貴女はここに来たことがありますよね？」
「えぇ……でも、何でここに……」
「それは、私と話してもらう為よ」
そう後ろから声がして、バッと振り返るとそこには
さっき、私達の前にいた魔女の姿があった。
ローブの男の方を見ると、またも気味の悪い笑みを浮かべ私の方を見ている。
私は、そんな二人を警戒しつつ口を開いた。
「魔女がこんな所まで……一体私に何の用でしょうか？」
「あら？私が貴方と二人でお話しちゃダメ？」
クスクスと笑う魔女は、そう言ってまた気味の悪い笑みを浮かべた。私はそんな魔女の態度に眉間にシワを寄せると、私の様子を愉快そうに見ていた魔女は更に楽しそうに笑いだし、そしてこう言った。
「貴女のお友達返してあげる」
「えっ？」
「だから、貴女のお友達を返してあげるって言ってるの」
ニコニコと笑いながら魔女はそう言った。
私は、そんな事を言う魔女の真意が分からず、警戒し続けていた。
そんな私を見て魔女はクスクスと笑いながら口を開いた。
「そんなに警戒しなくていいのよ？ねぇ？」
そう言って魔女は、いつの間にか隣に立っていたローブの男に話しかけていた。
最初、この魔女は幻かと思っていたけれど、どうやらそうではないらしい。
私が警戒しつつ、二人の様子を見ていると二人は楽しそうに話し始めた。
ローブの男はニコニコと気味の悪い笑みを浮かべ、魔女の方もクスクス笑いながら話をしている。
「………本当に返してくれるのですか？」
「えぇ、もちろんよ！でも……タダでは返せないけれど」
魔女はそう言って、また気味の悪い笑みを浮かべた。