若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

カイトの目的

彼の放った魔法は、矢のような形になり、私に向かって飛んできた。
私は、飛んでくる魔法を自分の魔法で跳ね返し、魔力を込めカイトに向かって
弾き返した。
「っ！流石聖女様ですね、でもこれならどうですか？」
「…………何しても無駄ですよ」
そして私は、カイトに向かってもう一度魔力を込めた魔法を彼に放った。
すると彼は、私と同じように自分の魔法で弾き返そうとしたけれど
私の魔法が強かったのか、彼はそのまま後ろに飛ばされてしまった。
そして彼は、壁に強く身体をぶつけてその場に崩れ落ちた……
「うぐっ……！」
「カイト！？何しているの！？？早くあの聖女を倒しなさいよ！！」
「分かっています……っ」
「もう無駄だと思いますけれど……まだやるのですか？」
「当たり前です！！お前を倒してマリー様を聖女にするんだ……」
キッ、と私を睨みながら彼は、そう叫んだ。
彼はどうしてマリーを聖女にする事に固執するのだろうか……
地面に座り込んでいるカイトの前にしゃがんで、目線を彼に合わせて私は口を開いた。
「なぜ貴方も聖女に拘るのですか？」
すると、彼は私の言葉に目を見開いたと思ったら、急に笑いだした。
クスクスと笑いながら彼は私にこう言った……
「それはお前ら聖女が一番知っているんじゃないか？」
「…………私達が？それはどういう意味で……」
「っは！油断したな……！！」
「きゃっ！」
私が彼の言葉に気を取られていると、彼は私の隙を突いて私に魔法を放った。
私は何とかそれを跳ね返したものの、油断していたせいで少しだけ傷を負ってしまった……
「はっ！聖女様が惨めですねぇ……そんな聖女様に教えてあげます。何故私達が私が聖女に拘るのかを」
そう言って、彼……カイトは静かに語りだした。
「私達が聖女に拘る理由は、とてもシンプルです。それは復讐です」
「復讐……？」
「えぇ、マリー様為にだなんてただの建前。私達はこの国を壊したいだけです」
そう言って彼は、マリーを見ながらニコリと笑った……
その表情はとても不気味で、背筋がゾッとするような表情だった。
「えっ……カイト何を言っているの……？貴方は私の為にって言っていたじゃない……？それは嘘だったの？？」
マリーは、カイトの言葉に困惑し、カイトに縋るように声をかけた。
しかし、カイトはマリーのその言葉に返事をせず、そのまま私の方を見ながら また口を開いた……
「復讐……俺の住む国は昔、聖女たちに滅ぼされた……」
「滅ぼされた……？」
私は彼が何を言っているのか理解出来なかった。
聖女がこの国を滅ぼす？そんな馬鹿な話なんてあるわけないじゃない……とそんな事を考えたけれど、彼の苦しそうな顔を見て嘘だとは思えなかった。
「私達聖女はそんな事をする筈がありません……でも、貴方が言っている事も嘘だとは思いません」
「…………ふん、そう言っているがお前もあのクズ共と同じなんだろう」
彼の赤い瞳がギロリと私を睨みつけた。その瞳は憎悪に満ちていてとても恐ろしくて 私は一歩後ろに下がりそうになった……けれど、何とか踏みとどまった。
そして私は彼に向かって口を開いた。
「どんな理由があったとしても、復讐は何も生みません……」
「うるさい……！！」
私がそう言うと、彼は叫びながら私に向かって魔法を放った。