若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

お母様に告げる時

驚いた。
ルカ達が、成長しているとウィル先生から聞いていたが、その成長は
私の想像をはるかに超えていた。
「彼女達が一体何処まで成長出来るか……楽しみになってきましたね……」
そんな事を呟きながら、私は学園を後にし、そのまま家へと帰る事にした。
「……今日こそは伝えないと……」
そう、私はまだお母様にあの事を伝えていない。
伝えるタイミングは何回か訪れたのだけど、どうしてもその勇気が出なかった。
お父様やお兄様には伝えられたのに……
「お母様……」
そんな事を考えながら歩いていると、気がつけば家の前まで歩いてきていた。
私は、少し重い足どりで玄関の扉を開くのだった。
*******
「お嬢様、お帰りなさいませ」
「ただいま。あの……お母様はいる……？」
「奥様ですか？えぇ、今日は自室で過ごすと言ってましたので、自室に居るかと思います」
「そう、ありがとう」
「いいえ、お気になさらず、では私はこれで」
そう言って、執事はその場を後にした。
私は、そのままお母様の元へと向かう事にした。
そして、部屋の前に到着し……ノックをした。
少しすると中から声が聞こえ、失礼しますと声を掛け部屋の中へ入ると
ソファの上で、編み物をしているお母様の姿があった。
そして、私を見ると優しく微笑んだ。
「お帰り、ルカちゃん」
「ただいま帰りました、今大丈夫でしょうか？」
「えぇ、大丈夫よ。少しだけ待っててくれる？」
そう言って、お母様は再び編み物を始めた。
私はそれをじっと見ながら、ソファに座る、するとそのタイミングで
部屋の扉がノックされ、メイドがお茶を持って来てくれた。
それを受け取りお礼を言うと、メイドは私に一礼してそのまま部屋を出て行って
一口、お茶を口に含む。すると、優しい味が広がり……ほっと一息つけた気がした。
少し待っていると、編み物が一区切り
ついたのか、お母様が手を止め ふぅ……と一息吐いていた。
「お待たせ、それで私に用事があったのよね？なにかしら」
「えっと…………」
「……言いにくい事？」
困ったように笑いながら、お母様は私にそう問いかけてきた。
「聞いたらお母様は驚くと思います……ですが……聞いてくれますか……？」
「うん」
「……私、この国を出ていきます」
私がそう告げた瞬間、お母様の表情は一気に強張った。
そんなお母様の表情を見て、思わず視線を下に向けてしまった。
やっぱり受け入れて貰えないんだな、そんな事を考えていたら
お母様は、私の隣に移動し、そっと私の手を握りしめてそして優しく微笑んだ。
その表情はいつも私に向けてくれる優しい笑顔だった。
「それは……ルカちゃんが自分で決めた事？」
「はい…………」
「どうして出ていこうと思ったのか……聞かせてくれる？」
「それは……」
お兄様やお父様に告げた時と同じように、お母様にも同じ話をする。
私の話を聞いているお母様は、優しい笑顔を浮かべていて
私は、何だか泣きそうになってしまった。
「という訳で私は……この国を出ていきます、勝手に決めてごめんなさい
でも、どうしても行きたいんです」
「………………本当なら、行かないでって止めるべきなんでしょうね……
でも、ルカちゃんの決めた事なんだもの、私も応援するわ」
「お母様……」
「よしよし、ルカちゃんはいい子ね。ちゃんと頑張ってくるのよ」
そう言って、お母様は優しく私を抱きしめた。
私は思わず泣きそうになってしまったが、グッと堪えてそのままぎゅっと抱きしめ返した。