若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

アマミヤのやりたかった事

「私の様な人達を救いたいと思ったから……」
そう言って、アマミヤさんは遠い目をしながら窓の外を眺めると、静かに言葉を続けた。
「この世界に連れて来られ、言葉も何も分からないまま、聖女として召喚された私達をこの国は保護と言う名の監禁をした……」
「えっ！？私はそんな事…………」
「高木さんは……アルマ様に見初められたから……」
「みそめ……いや、あれはただアイツ……いや、アルマ様が強引に……」
そう、言葉も分からない私にアイツは……
いや、それよりも、この国の人達が聖女を監禁している……？ どういう事なの……？ 私は、混乱で頭が回らなくなってきていた。
「大丈夫……？」
「はい、続きを聞かせてくれますか？」
「えぇ、私達が監禁されたあと……魔力のある、無しに分けられ、無いと判断
された人達はその場で、元の世界へと返されました」
知らなかった、私が普通に過ごしている裏でそんな事が起きているだなんて……
この事は、ルカは知っているのだろうか？彼女はこの国一の聖女だ。
この話を知らない方がおかしい、ルカはこの事を知っていて隠していた……？？
もし、そうだとしたら……私はルカの事を信じて良いのだろうか……
「あの……魔力がある人達はどうなったのですか？」
「聖女としての魔力を付ける為に、この学園に入れられるわ。そして……魔力が無くなったら……この国から出ていけ、なんて言われるの」
悲しそうな顔で、アマミヤさんはそう言った。
私は何も言えずに、ただ俯いて話を聞くことしか出来なかった……
ルカは知っているの？知っていて黙っていたの？ 私の頭の中はそんな考えでいっぱいになっていた。
そんな、私の様子に気が付いたのか、アマミヤさんは小さく笑い、私に話しかけた。
「そんなに気になるのなら、ご本人に聞いてみたらどうですか？」
「えっ！？！！？な、何のこと？？」
「聖女様の事……気になるのでしょう？」
「そんな事は……ないけど……」
「ふふ、今度聖女様とルーク様と会う事になっているんです、高木さんも来ませんか？」
私は、アマミヤさんの言葉に、驚いたけれど。
それより、ルカに話を聞きたい……
そんな気持ちが大きくなり、気が付いたら……
私は、首を立てに振りながら頷いていた。
「じゃあ、決まりですね。さて、話を戻しますね？魔力が無くなった時、勿論私も帰れと言われました。けれど、私は拒否しました……この国でやりたい事があったから」
「やりたい事……ですか？」
「えぇ、さっき言った私の様な人を救いたいと言うのと、この国にやって来た人達の力になりたいって……だから、私はウィル先生に頼んで何とかこの国にいられるよう交渉したんです」
「ウィル先生が……」
あの先生本当に何者なんだろう、そんな考えが私の頭の中に浮かぶ。
ルカに、私達に、アマミヤさんまで……あの、先生本当に一体何者なの……？ そんな事を考えていると、アマミヤさんは話を続けた。
「本当に凄い人なんですよ？ウィル先生って」
「それは……私も思います、あの先生のお陰で私も沢山助けられました……」
「ふふ、そうね。私も、ウィル先生には沢山助けられた、感謝してもしきれないわ……」
そう言って、アマミヤさんは窓の外に目を向けた。
その顔はとても穏やかで……きっとウィル先生はアマミヤさんにも沢山助けられていたのだろうと私は思った。
そうして、暫く二人で話を続けて気が付いたら日が落ちかけていた。
私は慌てて時計を見ると、針は夕方の五時を指していた。
「もうこんな時間……！！」
「あら、ほんと。長々と話をしてしまってごめんなさい」
アマミヤさんはそう言って、申し訳なさそうに私に謝ってきたけれど、私は全然気にしていなかったので大丈夫です！と言って首を横に振りながら笑った。
そうすると、アマミヤさんも微笑み返してくれた。
私は立ち上がり、アマミヤさんの顔を見つめると言った。
「今日はありがとうございました！」
「いえ、こちらこそありがと。あ！聖女様とお話する日が決まったら教えるわ」
私は、アマミヤさんの言葉にお願いします。と返事をした後、さようなら。と挨拶をして、図書室を出た。