異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

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第1章 誕生から幼少期

第2話 赤子との対話

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 目が覚めると、見知らぬ景色が映った。
木造の小さな家で、本や瓶が雑然と置かれ、植木鉢には見たこともない植物が生えている。
そして、声が出ない。
身体も動かない。
目線だけはかろうじて動くようだった。

 そして、椅子に座る男を見つける。
細身の身体のその男は黒に近い紺色のローブを纏い、椅子に座って本を読んでいた。
髪は長く、綺麗なブロンドの色をしている。
その男はふと本から視線をズラし、俺を見る。

「起きたか?しかし、赤子というのはもっと泣くものだと思ったが、お前は静かなものだな」

 男はそう俺に優しく声をかけてきた。
鋭い顔つきをしているが、暖かい眼差しで見つめてくる。
そして、耳がとても長いのが印象的だった。

 まるでファンタジーのエルフだな。

 そんな事をぼんやり思ったが、ふとそんな事より、と思い直す。

 なんだ!?今のこの状況!?
さっきまで俺はコンビニに行って、あの強盗に襲われて倒れていたはず。
なのに、今は全然違う場所にいる。
それに、なんだ?
身体の自由もきかないし、目線も凄く下がってる。

「ふ……ふえぇ……」

 口から声が出る。
あれ、喋れないし。
これはまるで赤ちゃんの声だぞ。

「む、どうした?腹でも空いたか?」

 長耳の男が俺に近付いてくる。
その姿がとても大きく見える。
違うな、俺が小さいのか。
これはひょっとすると、あれか。
赤ちゃんに転生って奴か?
しかも、この男の姿をみる限り、異世界転生ってヤツか?

「生憎、ミルクの類は無いのだ。
ふむ、赤子とは他に何を飲むのだろうな。
マナポーションでも飲むか?」

 おい、コイツ何言ってやがる!

 俺の泣き声が大きくなる。

「むぅ、直接飲ませるのはマズイだろうか?
人肌にくらいは温めるか」

 長耳の男は試験管のようなガラスの容器に青く光る液体を流し込み、その容器に手をかざしている。
なんだか手が光っている?
その容器の口に布を入れて、俺の小さな口に布の先端をあてがう。

ふざけんな、こっちは赤ちゃんだぞ。
哺乳瓶的なもんとかねぇのか!

 布から少しづつ液体が垂れ、口の中に流れ込む。
そして、何か不思議な感覚が身体を流れていくのを感じた。
まるでミントを食べた後のようなスーッとした感覚が身体中を駆け巡るようだった。

「これで、少しはマナが補充出来ただろう。
“マナ変換”」

 長耳の男は俺のお腹に手を置いて何かを唱えると、俺のお腹が少しづつ満たされていく。
今、この人何をした?

「泣き止んだな。やはりお腹が空いていたか」

 いや、ちげーよ。
ちょっとは腹減ってたけど、むしろ何が起きてるのかわかんなくて混乱して固まったんだよ。

 俺がジッとその顔を見つめていると、長耳の男も俺をジッと見てくる。
しばし見つめ合う俺達。

 なんだよ、何見てんだ?何か言ってくれよ。

 俺がそんなことを思ってると、長耳の男が「まさか……」と呟いて俺の額に手を当てる。

「“念波コミュニケイト”」

 短く長耳の男が唱える。

『お前、私の言葉がわかるのか?』

 お!?なんだなんだ、頭の中で声がしたぞ?

『なんだ?この声。あんたが話しかけたのか?』

 俺が返事をすると長耳の男が目を見開く。

『お前……意思疎通が出来るのか?
まだ赤子なのに?』

 どうやらこの人が話しかけてきてるようだ。
向こうも驚いてるけど、俺も驚きだ。
なんだこれ?テレパシー的な?

『身体は赤ん坊みたいだけどな。
中身は今年で29歳のアラサー男だよ』

 それを聞いて長耳の男は口に手をやって考え込む。

『アラサーの意味は不明だが、どういう事だ?
お前の中身は赤子ではないと?』

『俺、多分前にいた世界で死んだみたいなんだ。
そんで気付いたらこの身体って訳だ。
転生……ってやつ?』

『そんなことがあり得るのか?
しかも何故、お前はこの世界は違う世界だと言い切れる?』

『だって前の世界であんたみたいな長耳の人はいなかったからな。
もしかして、あんたエルフ?』

『その通りだ。
しかし、お前は言ってる事が矛盾してるぞ。
前の世界で私のような存在がいなかったのに、今どうして言い当てたのだ?』

『空想の物語ではエルフが登場するからな。
外見とかはまんま、あんたみたいな姿で』

 それを聞いてエルフの男はフッ、と小さく笑う。

『俄かに信じがたい事だ。
何もかもな。
しかし、こうして赤子と話せてるのだ。
現実として受け入れざるを得ないな』

『俺だって信じられないけどな。
正直まだ混乱中だよ』

 それを聞いてエルフの男は無理もない、と一言漏らす。

『……名前は?お前の名は何というのだ?』

 エルフはそう聞いてきた。

『速水・慎太郎』

『ハヤミ・シンタロウ?
なんとも珍妙な名前だな。
名前がハヤミなのか?』

『シンタロウが名前だな。
古臭いと言われる事もある』

 エルフの男はふむ、と考え込む。

『ならば、新しく名を付けよう。
お前、今日からシンと名乗るがいい』

『略してきたなぁ』

『む、気に入らんか?』

『や、別に。
ジョンとかマイケルとか名付けられたら断ってたけど』

『聞かん名前だな、それも。
では、お前は今日からシン・オルディールと名乗るといい』

 そう言ってエルフの男は微笑む。

『オルディール?あんたのファミリーネームって奴か?』

『そうだな。
私はジノ・オルディールだ。
よろしくな、シン』

 そう言って俺の小さな手のひらに人差し指を当てた。

『よろしく、ジノ』

 俺はそう伝えてなんとかその指を掴んだ。
ジノはフッ、と笑うとまた椅子に座った。

『正直、赤子を育てられる自信はなかったのだ。
里に連れて行こうとも思ったが、意思疎通が出来るのなら話は別だ。
なんとか私が面倒をみてやろう』

『そりゃ有り難い事で。
てか、なんか眠くなってきたわ……』

 急速に眠気がやってくる。
瞼が重い。

『赤子はよく眠るものらしいからな。
しっかり眠れ』

 ジノの声が頭に響き、俺の意識はまた闇に落ちる。
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