異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

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第4章 少年期後編

第58話 魔将達の会合

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 魔境ガジリスタの魔王城——。




 薄暗い長い廊下を歩くのは禍々しい漆黒の鎧を身に付けた少女。
白髪の髪をなびかせながら悠然と歩くのは魔将アリス。
行き着いた一つの部屋の扉を開くと、大きな円卓が真ん中に鎮座する大部屋がその目に映る。
その周りには八つの大小異なる椅子が用意されている。
それを見ただけで思わず溜息が出る。

 本当に面倒だ。
これから久々にアイツらと顔を合わせると思うと憂鬱でならない。

 アリスは陰鬱な顔で背もたれの長い椅子に座ると、入ってきた扉が再び開く。

「これはこれは!
アリス嬢が一番手とはっ!
魔将随一の実力者よりも遅れてしまうとは我ながら情けないっ!」

 大袈裟なリアクションをとるのはシルクハットを被り仮面をつけた男。
なんて事だ、と言わんばかりに顔を手で覆っている。

「くだらん演技は良い。
とっとと座れ。
それと次にアリス嬢と呼んだら殺す」

「ハッハッハ、手厳しいですな」

 両手を開いて笑いながら席に着く仮面の男。

「それよりも、少し前にあなたにしては珍しくガジリスタを出て人間どもの地にまで遠征したとか。
何をしにそのような事を?」

「貴様にそのような事を話す義理はない」

 目を閉じて切り捨てるように言い放つアリス。

「ふむ……。
しかし、聞きましたよ。
そこで面白い奴と出逢ったとか、何とか」

 仮面をつけていても、ニヤけているのがわかるかのようなその口ぶり。
アリスはその言葉を受けて舌打ちする。

 口は災いの元。
うっかりアイツの息子の事をギルディアに話してしまったのが間違いだった。
あの馬鹿はなんでもかんでも良く喋る。

 アリスが苛立っていると、再度扉が開く。
入ってきたのは坊主頭で色黒の大男。
丸太のように太い手足ははち切れんばかりの筋肉で盛り上がり、ズシズシと強く床を踏みしめて一番大きな席へと着く。

「ギガース。
挨拶くらいしたらどうなのです?」

 呆れたように問いかける仮面の男だが、大男は何も答えず目を瞑る。

「相変わらず物静かな男ですね。
面白味の欠片もない」

「お喋りな奴よりはマシだがな」

 アリスは鼻で笑って皮肉を飛ばす。
仮面の男は両手を上げ、これはこれは、と呟き首を振る。

 次に入ってきたのは棒のついた飴玉を口に含み、黒いドレスを着込んだツインテールの美女だった。
その髪は白髪というより白銀に近く、艶やかに煌めいている。
細く長い指で棒を摘むと口に含んだ飴玉を取り出してフリフリと揺らす。

「アリスさん、お久しぶりです」

 頭を下げて微笑むドレスの女。

「あぁ、そうだな」

「相変わらず素っ気ないですね。
ふふ……」

 そう笑ってドレスの女も優雅に着席する。

「私達には挨拶は無いので?」

 そう言って仮面の男は自分と大男を指差すと、ドレスの女はまた飴玉をフリフリ揺らしながら口を開く。

「敬うべき相手ぐらいは理解しています。
自分より下の者に、わざわざ自分から頭など下げないでしょう?」

 そう言ってニヤリと笑うドレスの女。

「ははぁー、そういう理屈ですか。
アリスじ……いえ、アリス殿はいざ知らず、あなたとなら良い勝負するかと思いますがね」

 口走りかけた失言に対して私が睨み付けると言葉を変え、続けた仮面の男が挑戦的にドレスの女に言い放つ。

「試してみる?」

 そう言って飴玉を仮面の男に向けるドレスの女。
その飴玉が赤黒く光りだす。

「止めろリリー。
ただでさえ飾り気のないこの場所を更地にするつもりか」

 アリスが溜息混じりにそう言うと飴玉を引っ込めて口に含むドレスの女。

「ふふ、冗談ですよ、アリスさん」

 悪びれもせず微笑むその笑顔を見てアリスは額に手をやる。

 どいつもこいつも本当に面倒臭い……。

 するとまたも扉が開き、同時に二人入ってくる。
一人は足と腕がそれぞれが全く異なる生物の形をした長身の男。
両足は鱗があり、鋭い爪を生やしている。
左腕は棘がいくつも飛び出しており、指は鋭い刃のよう。
右腕は毛深い獣のような赤黒い腕をしていた。
頭からは曲がりくねった二本の角が突き出ている。
その隣には真っ黒なローブを纏い、フードを深々と被った人影が並ぶ。
そのフードとローブからは黒いモヤが湧き出てていて足は無く宙に浮かんでいる。
角を生やした男は円卓を見回すと眉間にしわを寄せる。

「あと二人か。
新参者が遅いとはどういう了見だ?」

 角を生やした男が不機嫌そうにそう言って席に着く。

「約束の……時刻には……まだ、なっていない……。
遅れるようなら……その魂を、私が……」

 揺らめくように席へと移動するローブを着た人影。

「そう言っているギュスターヴとネルガルもギリギリじゃあないですか」

 煽るように言う仮面の男。

「ギリギリ……では、ない……」

「その通りだ。
お前らが早めに着いてるだけだろう。
それもまた珍しいがな」

 吐き捨てるように言う角の生やした男。

「そうかもしれませんね」

 おどけるように言う仮面の男。
アリスはコイツが一番場を荒らす迷惑な奴だと再認識する。

 そしてしばし間を開けてから再び扉が開く。
入ってきたのは美形のエルフの青年だった。
プラチナブロンドの髪を綺麗に整え、煌びやかな服を着込んでいる。
集まった者達の中でその姿は一際目立つ。

「あれ?
まだ集合の時刻にはなっていませんよね?
初の会合とあって慌てて来たのに皆さん早いんですねっ」

 爽やかに笑いながらそう言う青年をギロリと睨み付ける面々。

「おいおい、新参者がなかなかふざけた事を抜かしますねぇ」

 仮面の男がまず突っかかる。

「コイツに同調するのは不本意だが、その通りだ。
貴様が一番にこの場で待っているべきだろうが」

 角を生やした男、ギュスターヴが殺意を込めた眼差しでエルフの青年を睨み付ける。

「知りませんよ、そんな暗黙の了解的な話。
それに、立場上ここまで来るのにかなりの苦労をしてるんですよ?」

 わかります?と問いかけるが全員が無視する。
その反応に肩を落とすエルフの青年は一つの席へと近づく。

「えっと、ここ、僕の席?」

 アリスの隣の席を指差すその青年。
その言動に他の全員がより険しく青年を睨みつけ威圧する。


「クソガキ。
お前はあっちだ。
ここに座ってみろ。
ギルディアが来たら八つ裂きにされるぞ」

 殺意を込めてアリスが睨み付けるが、エルフの青年は悪びれもせずニコリと笑い、そうですか、と答えて残った席に着く。

「アリス殿。
この小僧、少しばかり調子に乗っていませんかねぇ?
あなたもナメられてますよ?」

「私を見下すほどまでにお粗末な頭しか無いようなら、これからの戦争で勝手にくたばる」

 アリスは目を閉じてそう答える。

「いやだなぁ、その戦争から我が種族を守る為にあちらを裏切ってまで魔将になったんですよ?
僕が死んだらエルフの未来が潰えますから。
ちゃあんと生き残ります」

 笑顔で答えながら、その肌を透き通る白から暗い褐色に変えていくエルフ……もとい、ダークエルフの青年は微笑みながらそう言った。

 それからしばらく静寂が訪れる。
扉はなかなか開かない。

「おい……。
ギルディアの奴、まさか遅れるつもりか?」

 ギュスターヴがギリッと歯ぎしりして苛立つように言い放つ。

「あと……三十秒……」

 ローブの人影がそう静かに告げるが、未だに扉は開かない。
残り十秒。

「魔王とアリス殿に殺されるな」

 薄笑う仮面の男。

「誰が殺されるんだ?」

 その鋭い一言にアリス以外の全員の視線が集中する。
アリスの隣の席に既に着席している白髪をオールバックした男。
着ている服は乱れ、所々破れて身体中から血を流している。
その片手は兎の耳を握りしめ、その耳を掴まれてるのは一人の少女。
着ている衣服はボロボロで、薄紫の髪から長いウサミミが生え、額からは角が一本生えている。
ギルディアは握りしめたその手をパッと手を離すと少女が崩れ落ちる。

「おい、兎。
あと一秒でこっから出ろ。
関係者以外立ち入り禁止だ」

 その言葉に少女は顔を上げて目を見開き、瞬時にその場から姿を消す。
そしてゆっくりと閉まる扉。

「ギリギリだな、ギルディア。
何を遊んでいたのだ」

 アリスが視線も合わせずそう言うと、欠伸をするギルディア。

「二日程兎と追いかけっこしてたんだよ。
狼を逃したから代わりが欲しくてな。
時間操作ってなぁ便利なもんだ」

 そう言って笑うギルディア。
今の何気ない言葉に魔将達は顔を引き締める。
その言葉の意味する事。
それは幻獣の担い手を一人増やしたという事だ。

「戦力増強という目的に一番力を入れていたのは貴方だったのかもしれませんねぇ」

 仮面の男がそう話しかける。

「俺ぁ幻獣共を屈服させんのが好きなんだよ。
従い始めりゃあ従順だし、何より馬鹿みたいに強ぇ。
下手すりゃお前らより強ぇぞ」

 得意げに笑うギルディア。

「お喋りはそこまでだ。
魔王は今日も不在。
言いたいことはあるだろうが、代理として私が貴様等の意見を取りまとめる」

 アリスが鋭い目つきをより険しくさせ全員を見回す。

「長年の準備期間で各々十二分に力を蓄えた事だろう。
もはやそれも終わり。
貴様らと協調など天地がひっくり返ってもあり得んが、やるべき事はやってもらう」

 誰一人としてアリスの話しを遮る事はせず、静かに耳を傾ける。

「奴等を今一度、蹴散らすぞ」

 その宣言に笑顔を見せる者、顔を引き締める者、無反応の者と様々な反応を見せるアリスを除いた七人の魔将達。




 その日、長きに渡り大規模な進軍をしなかった魔王軍が遂に動き出したのであった。
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