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第4章 少年期後編
第63話 親子の手合わせ
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シンとジノが共に解放した術式は第一門の進化之技巧。
この力は幻魔の術式の礎とも言える力である。
特に“森羅万象の慧眼”は相手のスキル解析において必須の能力と言える。
解析を行い、そのスキルの全容を理解していなけれは第二門の破壊之技巧、即ちスキルの破壊にまで至らない。
そんなこの二つの幻魔の術式を里を出るまでにジノから指導を受け、同じ能力を身に付けたのだ。
第二門までは——。
幻魔の術式の力をその身に宿しつつ、同時に夜叉化による能力向上も並列で行なっていく。
それも、フェンリルとやり合った時のような“烈風迅雷の夜叉”では無く、その更に上位の夜叉化、“金剛夜叉”へと身体を進化させる。
それにより、シンの短い黒髪は白髪に変わり、更に輝く白金へと変貌する。
顔は角の付いた仮面に覆われ、鼻から上だけだった仮面も口まで全て覆われていく。
その仮面の両穴から真紅の瞳がキラリと輝き、ジノを見つめる。
服装も普段着から白金色と瑠璃色をした狩衣へと変わり、手足には鋼の籠手と脚具が構築される。
対するジノは外見はほとんど変化していない。
唯一、両手に腕と一体化したようなガントレット装着しているだけ。
それぞれの腕のガントレットは白銀と漆黒の色をしており、どちらも手の甲には虹色の魔法陣が描かれている。
その二つを構え、シンの出方を伺うジノ。
直後、シンが地を蹴りつけ姿を消すと、残像のように白金色をした光の欠片が舞い散っていく。
瞬く間にジノの目の前に現れたシンは身体を回して胴薙のような回し蹴りがを鋭く放たれる。
それはもはや蹴りというより、巨大な斧が振り回されたかのよう。
しかし、轟音と共に大気を切り裂いて迫るその脚撃をジノは涼しい顔をしたまま片腕一つで受け止める。
否、受け止めたように見えた。
実際にはギリギリでシンはその強烈な回し蹴りを止め、その衝撃波のみを打ち放ったのだ。
対するジノは受け止める為に右のガントレットの甲にある魔法陣を輝かせ、魔障壁を幾重も構築し、襲いかかる衝撃波を防ぎきる。
どちらも相手に直接触れはしない。
攻撃が直撃すればスキルが破壊される事を互いに理解し、それを最も警戒しているからだ。
無論、互いに破壊したいスキルは唯一つ。
挨拶がわりの一撃が受け止められたシンは即座にジノとの距離を取る。
しばし無言のまま睨み合う二人だったが、またもシンの姿が消えるとジノの姿もまた同様に掻き消える。
どちらも姿を捉えきれない程の速度で宙を舞い、拳を交わせる。
互いの一撃を正確に避け、あるいは同じ力の衝撃を持って打ち消し合い、幾度となく大気が震え、地響きが響き渡る。
「以前に比べ、動きが良くなったな」
高速戦闘をしながら嬉しそうに話しかけるジノ。
「毎月馬鹿げた力の幻獣と遊んでるからなッ!」
シンもまた笑顔で答え、再び距離をとる。
「準備運動はこんなもんでいいだろ」
そう言ってシンは宙に浮いたまま片手を掲げる。
ジノもまた宙に浮いたまま動きを止め、シンの姿を見てフッと笑う。
「今のが全力かと心配していた所だ」
「言ってろッ。
幻想魔導術式、第三門解放ッ!!」
声を張り上げ、片手を真っ直ぐに掲げ、続けて詠唱する。
「五芒星の魔結晶ッ!」
直後、シンの背後に巨大な五芒星が浮かび上がり、五つの鋭角の先端に異なる五色のクリスタルが構築されていく。
そのクリスタルは様々な形に切り替わりながら目にも留まらぬ速さで散開し、宙を舞い踊る。
直後、ジノの死角から超高温の熱線が狙い撃たれ、ジノはすぐ様魔障壁で防ぎきる。
続け様に左右から冷氷の光線と凝縮された烈刃の暴風がジノへと襲いかかる。
姿を搔き消すジノはまたもそれを躱すが、その動きを追従して隕石のような巨大な土塊とつんざくような落雷が幾度もジノに襲いかかる。
天変地異のような猛威により地面は崩壊し轟音が絶え間なく響き渡る。
その衝撃波は遠くから眺めるアネッサとルナマリアのもとにまで届く程だった。
このペンタグラム・オービットは独立した意志を持ち、対象へと襲いかかる。
それでいながらその一撃一撃には超火力の威力を持ち、極大魔法も同時発動可能という優れもの。
そして、それはただの狙撃だけに留まらない。
ジノがお返しとばかりに右手の五本の指から五色の閃光を走らせ、ギザギザの軌道を描きながらシンへと襲いかかってきた。
しかし、散開して宙を舞うペンタグラム・オービットが一瞬でシンの周りに集結し、瑠璃色の球体をした魔障壁を構築する。
その魔障壁はシンを狙う五色の閃光を着弾と共に打ち消してしまう。
「面白いスキルを考えたものだな。
汎用性も高い。
が、それでは決定打に欠ける」
ジノが分析しながらそう告げると、ジノの背後にもまたシンが作り上げたような五芒星が浮かび上がり、五色のクリスタルが構築される。
「こんな形か?」
それを見てシンは思わず苦笑いしてしまう。
これがジノの第三門の幻想魔導術式。
複製之技巧。
相手の扱うスキルを複製し、自分のものとする力である。
俺の第三門、“創生之技巧”は新たなスキルを瞬時に目覚める事が出来るが、瞬時に極められるわけではない。
だが、ジノが複製するスキルは相手のスキルレベルをそのまま引き継ぐ。
それどころか、その力にジノの力が加わり増幅、進化までさせる場合がある。
つまり——。
ジノの背後から放たれた五つのクリスタルは俺が作り出した五つのクリスタルを狙い撃ち、瞬く間に破壊してしまう。
相手より、上位のスキルを身につけてしまうのだ。
「相変わらず、性格悪い攻め方するよな、ジノ」
俺は破壊された五つのクリスタルを見やりながらそう声をかける。
「自分の力量不足を嘆くことだ。
もう終わりにするか?」
ジノは構築した五つのクリスタルを自分の周りに集めて問いかける。
「いや……」
シンは小さく呟き、片手を開いて顔を覆うように触れる。
「まだだッ!
第四門解放ッ!!」
高らかに声を上げると、シンの真紅の瞳が翡翠色に変わる。
ジノはシンが行ったように、クリスタル・オービスを散開させ、遠距離から狙撃させる。
五方向からの一斉射撃。
障壁なしで当たれば即死級の代物。
しかし、それらは一発もシンに当たらない。
その現象にはジノが目を見開き驚くほど。
まさか、と思いつつもジノは片手を掲げ、シンを中心とした巨大な魔法陣をシンの遥か上空に構築する。
その直後、光の奔流が天から地面へと降り注ぎ、巨大な光の支柱が出来上がる。
眩い光は徐々に収まり、最後は一筋の細さになって消え失せる。
シンは逃げ切れ無かったはず。
それは動きを追っていた気配から見ても探知している。
だが、宙に浮いたまま平然としているシン。
そしてその足元の地面だけ、何も降り注いでいないかのような地面になり、周りの地面は崩壊していた。
それが何の意味を示しているのか。
ジノは即座に理解する。
「……スキルの命中率、或いは精度、もしくはスキルがもたらす結果を捻じ曲げたか?」
愉快そうに笑って問いかけるジノ。
俺は答えずに笑みだけで返す。
そしてその場から姿を搔き消し、ジノの背後に現れ、拳を振りかぶる。
当たらない筈がない。
第四門は必中之技巧。
相手のスキルは必ず外れ、こちらのスキルは必ず当たる。
それはスキルの因果を確定させる究極魔法術式。
その迫り来る拳をジノは素早く反応する。
本来、ジノが対応出来ない訳がないその一撃。
しかし、迫り来るその拳へと反応が遅れ、自動防御を持つクリスタル達ですら魔障壁の構築に遅延が生じる。
全ては絶対的な結果に基づいたモノ。
そしてシンの拳が深々とジノの脇腹に突き刺さる。
「っしゃァオラァッ!!」
拳を振り抜くシン。
派手に吹っ飛ぶジノ。
シンは確かな手応えを感じた。
それはただダメージを与えた、という事だけではなく、もっと重要な事。
即ち、デストルーク・アーツが発動した手応えを感じた。
無論、破壊したスキルは一つ。
拳を振り抜いた直後、シンの身体が通常に戻り、ドッと疲労感が襲ってくる。
その現象に一瞬頭がついていかなかった。
何が起こったのか、即座に理解は出来なかったが働かなくなってる頭で考える。
何をされたかはわからない。
だが、結果だけはわかる。
俺の幻想魔導術式が破壊され、強制的に元の状態に戻されたのだ。
「まさか、お前の攻撃を食らう日が訪れるとは、な」
遠くまで吹っ飛ばされたジノが立ち上がり、ゆっくりと近づきながら声をかけてくる。
「お前……何やったんだよ……」
俺は立っていられなくなり、地面に倒れ伏す。
「なんだ、わからないのか?
お前のスキルの効果。
即ち、スキルの破壊という結果を反射したのだ」
サラッと告げるジノ。
「私も第四門まで解放するのは遥か昔だ。
そこまで引き出させるは成長したな、シン」
満足顔のジノ。
しかし、倒れてまともに動けない俺はその笑みすら腹が立つ。
反射?
つまり、致命的な一撃をスキルをもって与えようとすれば、それの効力がそのまま自分に跳ね返ってくる、と……?
「……反則だろ、それ……」
俺は思わず地面に顔を伏して、溜息をつく。
「落ち込む事はない。
正直想像よりお前は強くなっていた。
それに、お前もまだ力を出し切ってはいないのだろう?」
「お前のその“反射”を使われたらそれも通用しねぇし……。
はぁ……少しはいい勝負出来ると思ったのに」
俺は顔を伏せたままひどく落ち込む。
二年半前より俺は格段に強くなっている筈なのだ。
あの幻獣と渡り合い、凌駕するほどに。
それなのに、ジノにはまだ遠く及ばない。
こっちはそこそこ全力だったのに、ジノは果たしてどれ程力を出してくれていたのだろう。
五割か、それとも、まさか三割以下?
それならかなりショックだ……。
すると、ジノが俺の着ていた服の首根っこを引っ掴んで持ち上げる。
「落ち込む必要はない、と言っているだろう。
確かに改善点は多いが、それはお前に伸びしろがある証拠だ。
そして、現時点でもその実力は及第点と言える。
お前ならば、この里を任せられる」
そう笑顔で告げるジノ。
そして首根っこを掴まれ、俺は持ち上げられた。
「あの一撃が入った時は勝ったと思ったのに……。
ぬか喜びさせるとか、性格悪いよな、ジノ」
「お前が勝手に勝ったと思い込んだだけだ。
私のせいではない。」
責任転嫁するな、とジノが言う。
そんな不毛な言い合いをする俺達のもとへ駆け寄ってくるアネッサ。
そしてその後ろから悠然と近付いてくるルナマリア。
「シン様ッ!
やはり日に二回の幻魔の術式は無理しすぎですッ。
大丈夫ですか!?」
グッタリとしたまま頷く俺。
「良い線はいっていたが、まだ発展途上と見える。
今後に期待だな、小僧」
続けて声をかけてくるのはルナマリア。
この人、やっぱり上から目線なのな。
それでも良い線、と評価してくれただけマシ、か。
そんな訳で、久方ぶりにジノと再会し、手合わせした結果は俺の惨敗。
幻魔の術式を行使した後の倦怠感。
これを克服せねば、続けての戦闘は夢のまた夢。
課題は多い。
しかし、それはジノの言うように伸びしろがまだ残されている証拠なのだ、とポジティブに考える事にした。
この力は幻魔の術式の礎とも言える力である。
特に“森羅万象の慧眼”は相手のスキル解析において必須の能力と言える。
解析を行い、そのスキルの全容を理解していなけれは第二門の破壊之技巧、即ちスキルの破壊にまで至らない。
そんなこの二つの幻魔の術式を里を出るまでにジノから指導を受け、同じ能力を身に付けたのだ。
第二門までは——。
幻魔の術式の力をその身に宿しつつ、同時に夜叉化による能力向上も並列で行なっていく。
それも、フェンリルとやり合った時のような“烈風迅雷の夜叉”では無く、その更に上位の夜叉化、“金剛夜叉”へと身体を進化させる。
それにより、シンの短い黒髪は白髪に変わり、更に輝く白金へと変貌する。
顔は角の付いた仮面に覆われ、鼻から上だけだった仮面も口まで全て覆われていく。
その仮面の両穴から真紅の瞳がキラリと輝き、ジノを見つめる。
服装も普段着から白金色と瑠璃色をした狩衣へと変わり、手足には鋼の籠手と脚具が構築される。
対するジノは外見はほとんど変化していない。
唯一、両手に腕と一体化したようなガントレット装着しているだけ。
それぞれの腕のガントレットは白銀と漆黒の色をしており、どちらも手の甲には虹色の魔法陣が描かれている。
その二つを構え、シンの出方を伺うジノ。
直後、シンが地を蹴りつけ姿を消すと、残像のように白金色をした光の欠片が舞い散っていく。
瞬く間にジノの目の前に現れたシンは身体を回して胴薙のような回し蹴りがを鋭く放たれる。
それはもはや蹴りというより、巨大な斧が振り回されたかのよう。
しかし、轟音と共に大気を切り裂いて迫るその脚撃をジノは涼しい顔をしたまま片腕一つで受け止める。
否、受け止めたように見えた。
実際にはギリギリでシンはその強烈な回し蹴りを止め、その衝撃波のみを打ち放ったのだ。
対するジノは受け止める為に右のガントレットの甲にある魔法陣を輝かせ、魔障壁を幾重も構築し、襲いかかる衝撃波を防ぎきる。
どちらも相手に直接触れはしない。
攻撃が直撃すればスキルが破壊される事を互いに理解し、それを最も警戒しているからだ。
無論、互いに破壊したいスキルは唯一つ。
挨拶がわりの一撃が受け止められたシンは即座にジノとの距離を取る。
しばし無言のまま睨み合う二人だったが、またもシンの姿が消えるとジノの姿もまた同様に掻き消える。
どちらも姿を捉えきれない程の速度で宙を舞い、拳を交わせる。
互いの一撃を正確に避け、あるいは同じ力の衝撃を持って打ち消し合い、幾度となく大気が震え、地響きが響き渡る。
「以前に比べ、動きが良くなったな」
高速戦闘をしながら嬉しそうに話しかけるジノ。
「毎月馬鹿げた力の幻獣と遊んでるからなッ!」
シンもまた笑顔で答え、再び距離をとる。
「準備運動はこんなもんでいいだろ」
そう言ってシンは宙に浮いたまま片手を掲げる。
ジノもまた宙に浮いたまま動きを止め、シンの姿を見てフッと笑う。
「今のが全力かと心配していた所だ」
「言ってろッ。
幻想魔導術式、第三門解放ッ!!」
声を張り上げ、片手を真っ直ぐに掲げ、続けて詠唱する。
「五芒星の魔結晶ッ!」
直後、シンの背後に巨大な五芒星が浮かび上がり、五つの鋭角の先端に異なる五色のクリスタルが構築されていく。
そのクリスタルは様々な形に切り替わりながら目にも留まらぬ速さで散開し、宙を舞い踊る。
直後、ジノの死角から超高温の熱線が狙い撃たれ、ジノはすぐ様魔障壁で防ぎきる。
続け様に左右から冷氷の光線と凝縮された烈刃の暴風がジノへと襲いかかる。
姿を搔き消すジノはまたもそれを躱すが、その動きを追従して隕石のような巨大な土塊とつんざくような落雷が幾度もジノに襲いかかる。
天変地異のような猛威により地面は崩壊し轟音が絶え間なく響き渡る。
その衝撃波は遠くから眺めるアネッサとルナマリアのもとにまで届く程だった。
このペンタグラム・オービットは独立した意志を持ち、対象へと襲いかかる。
それでいながらその一撃一撃には超火力の威力を持ち、極大魔法も同時発動可能という優れもの。
そして、それはただの狙撃だけに留まらない。
ジノがお返しとばかりに右手の五本の指から五色の閃光を走らせ、ギザギザの軌道を描きながらシンへと襲いかかってきた。
しかし、散開して宙を舞うペンタグラム・オービットが一瞬でシンの周りに集結し、瑠璃色の球体をした魔障壁を構築する。
その魔障壁はシンを狙う五色の閃光を着弾と共に打ち消してしまう。
「面白いスキルを考えたものだな。
汎用性も高い。
が、それでは決定打に欠ける」
ジノが分析しながらそう告げると、ジノの背後にもまたシンが作り上げたような五芒星が浮かび上がり、五色のクリスタルが構築される。
「こんな形か?」
それを見てシンは思わず苦笑いしてしまう。
これがジノの第三門の幻想魔導術式。
複製之技巧。
相手の扱うスキルを複製し、自分のものとする力である。
俺の第三門、“創生之技巧”は新たなスキルを瞬時に目覚める事が出来るが、瞬時に極められるわけではない。
だが、ジノが複製するスキルは相手のスキルレベルをそのまま引き継ぐ。
それどころか、その力にジノの力が加わり増幅、進化までさせる場合がある。
つまり——。
ジノの背後から放たれた五つのクリスタルは俺が作り出した五つのクリスタルを狙い撃ち、瞬く間に破壊してしまう。
相手より、上位のスキルを身につけてしまうのだ。
「相変わらず、性格悪い攻め方するよな、ジノ」
俺は破壊された五つのクリスタルを見やりながらそう声をかける。
「自分の力量不足を嘆くことだ。
もう終わりにするか?」
ジノは構築した五つのクリスタルを自分の周りに集めて問いかける。
「いや……」
シンは小さく呟き、片手を開いて顔を覆うように触れる。
「まだだッ!
第四門解放ッ!!」
高らかに声を上げると、シンの真紅の瞳が翡翠色に変わる。
ジノはシンが行ったように、クリスタル・オービスを散開させ、遠距離から狙撃させる。
五方向からの一斉射撃。
障壁なしで当たれば即死級の代物。
しかし、それらは一発もシンに当たらない。
その現象にはジノが目を見開き驚くほど。
まさか、と思いつつもジノは片手を掲げ、シンを中心とした巨大な魔法陣をシンの遥か上空に構築する。
その直後、光の奔流が天から地面へと降り注ぎ、巨大な光の支柱が出来上がる。
眩い光は徐々に収まり、最後は一筋の細さになって消え失せる。
シンは逃げ切れ無かったはず。
それは動きを追っていた気配から見ても探知している。
だが、宙に浮いたまま平然としているシン。
そしてその足元の地面だけ、何も降り注いでいないかのような地面になり、周りの地面は崩壊していた。
それが何の意味を示しているのか。
ジノは即座に理解する。
「……スキルの命中率、或いは精度、もしくはスキルがもたらす結果を捻じ曲げたか?」
愉快そうに笑って問いかけるジノ。
俺は答えずに笑みだけで返す。
そしてその場から姿を搔き消し、ジノの背後に現れ、拳を振りかぶる。
当たらない筈がない。
第四門は必中之技巧。
相手のスキルは必ず外れ、こちらのスキルは必ず当たる。
それはスキルの因果を確定させる究極魔法術式。
その迫り来る拳をジノは素早く反応する。
本来、ジノが対応出来ない訳がないその一撃。
しかし、迫り来るその拳へと反応が遅れ、自動防御を持つクリスタル達ですら魔障壁の構築に遅延が生じる。
全ては絶対的な結果に基づいたモノ。
そしてシンの拳が深々とジノの脇腹に突き刺さる。
「っしゃァオラァッ!!」
拳を振り抜くシン。
派手に吹っ飛ぶジノ。
シンは確かな手応えを感じた。
それはただダメージを与えた、という事だけではなく、もっと重要な事。
即ち、デストルーク・アーツが発動した手応えを感じた。
無論、破壊したスキルは一つ。
拳を振り抜いた直後、シンの身体が通常に戻り、ドッと疲労感が襲ってくる。
その現象に一瞬頭がついていかなかった。
何が起こったのか、即座に理解は出来なかったが働かなくなってる頭で考える。
何をされたかはわからない。
だが、結果だけはわかる。
俺の幻想魔導術式が破壊され、強制的に元の状態に戻されたのだ。
「まさか、お前の攻撃を食らう日が訪れるとは、な」
遠くまで吹っ飛ばされたジノが立ち上がり、ゆっくりと近づきながら声をかけてくる。
「お前……何やったんだよ……」
俺は立っていられなくなり、地面に倒れ伏す。
「なんだ、わからないのか?
お前のスキルの効果。
即ち、スキルの破壊という結果を反射したのだ」
サラッと告げるジノ。
「私も第四門まで解放するのは遥か昔だ。
そこまで引き出させるは成長したな、シン」
満足顔のジノ。
しかし、倒れてまともに動けない俺はその笑みすら腹が立つ。
反射?
つまり、致命的な一撃をスキルをもって与えようとすれば、それの効力がそのまま自分に跳ね返ってくる、と……?
「……反則だろ、それ……」
俺は思わず地面に顔を伏して、溜息をつく。
「落ち込む事はない。
正直想像よりお前は強くなっていた。
それに、お前もまだ力を出し切ってはいないのだろう?」
「お前のその“反射”を使われたらそれも通用しねぇし……。
はぁ……少しはいい勝負出来ると思ったのに」
俺は顔を伏せたままひどく落ち込む。
二年半前より俺は格段に強くなっている筈なのだ。
あの幻獣と渡り合い、凌駕するほどに。
それなのに、ジノにはまだ遠く及ばない。
こっちはそこそこ全力だったのに、ジノは果たしてどれ程力を出してくれていたのだろう。
五割か、それとも、まさか三割以下?
それならかなりショックだ……。
すると、ジノが俺の着ていた服の首根っこを引っ掴んで持ち上げる。
「落ち込む必要はない、と言っているだろう。
確かに改善点は多いが、それはお前に伸びしろがある証拠だ。
そして、現時点でもその実力は及第点と言える。
お前ならば、この里を任せられる」
そう笑顔で告げるジノ。
そして首根っこを掴まれ、俺は持ち上げられた。
「あの一撃が入った時は勝ったと思ったのに……。
ぬか喜びさせるとか、性格悪いよな、ジノ」
「お前が勝手に勝ったと思い込んだだけだ。
私のせいではない。」
責任転嫁するな、とジノが言う。
そんな不毛な言い合いをする俺達のもとへ駆け寄ってくるアネッサ。
そしてその後ろから悠然と近付いてくるルナマリア。
「シン様ッ!
やはり日に二回の幻魔の術式は無理しすぎですッ。
大丈夫ですか!?」
グッタリとしたまま頷く俺。
「良い線はいっていたが、まだ発展途上と見える。
今後に期待だな、小僧」
続けて声をかけてくるのはルナマリア。
この人、やっぱり上から目線なのな。
それでも良い線、と評価してくれただけマシ、か。
そんな訳で、久方ぶりにジノと再会し、手合わせした結果は俺の惨敗。
幻魔の術式を行使した後の倦怠感。
これを克服せねば、続けての戦闘は夢のまた夢。
課題は多い。
しかし、それはジノの言うように伸びしろがまだ残されている証拠なのだ、とポジティブに考える事にした。
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