異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

文字の大きさ
69 / 113
第4章 少年期後編

第63話 親子の手合わせ

しおりを挟む
 シンとジノが共に解放した術式は第一門の進化之技巧エヴォルヴ・アーツ
この力は幻魔の術式の礎とも言える力である。
特に“森羅万象しんらばんしょう慧眼けいがん”は相手のスキル解析において必須の能力と言える。
解析を行い、そのスキルの全容を理解していなけれは第二門の破壊之技巧デストルーク・アーツ、即ちスキルの破壊にまで至らない。
そんなこの二つの幻魔の術式を里を出るまでにジノから指導を受け、同じ能力を身に付けたのだ。
第二門までは——。




 幻魔の術式の力をその身に宿しつつ、同時に夜叉化による能力向上も並列で行なっていく。
それも、フェンリルとやり合った時のような“烈風迅雷の夜叉”では無く、その更に上位の夜叉化、“金剛夜叉”へと身体を進化させる。

 それにより、シンの短い黒髪は白髪に変わり、更に輝く白金へと変貌する。
顔は角の付いた仮面に覆われ、鼻から上だけだった仮面も口まで全て覆われていく。
その仮面の両穴から真紅の瞳がキラリと輝き、ジノを見つめる。
服装も普段着から白金色と瑠璃色をした狩衣へと変わり、手足には鋼の籠手と脚具が構築される。

 対するジノは外見はほとんど変化していない。
唯一、両手に腕と一体化したようなガントレット装着しているだけ。
それぞれの腕のガントレットは白銀と漆黒の色をしており、どちらも手の甲には虹色の魔法陣が描かれている。
その二つを構え、シンの出方を伺うジノ。

 直後、シンが地を蹴りつけ姿を消すと、残像のように白金色をした光の欠片が舞い散っていく。
瞬く間にジノの目の前に現れたシンは身体を回して胴薙のような回し蹴りがを鋭く放たれる。
それはもはや蹴りというより、巨大な斧が振り回されたかのよう。

 しかし、轟音と共に大気を切り裂いて迫るその脚撃をジノは涼しい顔をしたまま片腕一つで受け止める。
否、
実際にはギリギリでシンはその強烈な回し蹴りを止め、その衝撃波のみを打ち放ったのだ。
対するジノは受け止める為に右のガントレットの甲にある魔法陣を輝かせ、魔障壁を幾重も構築し、襲いかかる衝撃波を防ぎきる。

 どちらも相手に直接触れはしない。
攻撃が直撃すればスキルが破壊される事を互いに理解し、それを最も警戒しているからだ。
無論、互いに破壊したいスキルは唯一つ。

 挨拶がわりの一撃が受け止められたシンは即座にジノとの距離を取る。
しばし無言のまま睨み合う二人だったが、またもシンの姿が消えるとジノの姿もまた同様に掻き消える。
どちらも姿を捉えきれない程の速度で宙を舞い、拳を交わせる。
互いの一撃を正確に避け、あるいは同じ力の衝撃を持って打ち消し合い、幾度となく大気が震え、地響きが響き渡る。

「以前に比べ、動きが良くなったな」

 高速戦闘をしながら嬉しそうに話しかけるジノ。

「毎月馬鹿げた力の幻獣と遊んでるからなッ!」

 シンもまた笑顔で答え、再び距離をとる。

「準備運動はこんなもんでいいだろ」

 そう言ってシンは宙に浮いたまま片手を掲げる。
ジノもまた宙に浮いたまま動きを止め、シンの姿を見てフッと笑う。

「今のが全力かと心配していた所だ」

「言ってろッ。
幻想魔導術式、第三門解放ッ!!」

 声を張り上げ、片手を真っ直ぐに掲げ、続けて詠唱する。

五芒星の魔結晶ペンタグラム・オービットッ!」

 直後、シンの背後に巨大な五芒星が浮かび上がり、五つの鋭角の先端に異なる五色のクリスタルが構築されていく。
そのクリスタルは様々な形に切り替わりながら目にも留まらぬ速さで散開し、宙を舞い踊る。
直後、ジノの死角から超高温の熱線が狙い撃たれ、ジノはすぐ様魔障壁で防ぎきる。
続け様に左右から冷氷の光線と凝縮された烈刃の暴風がジノへと襲いかかる。
姿を搔き消すジノはまたもそれを躱すが、その動きを追従して隕石のような巨大な土塊とつんざくような落雷が幾度もジノに襲いかかる。
天変地異のような猛威により地面は崩壊し轟音が絶え間なく響き渡る。
その衝撃波は遠くから眺めるアネッサとルナマリアのもとにまで届く程だった。



 このペンタグラム・オービットは独立した意志を持ち、対象へと襲いかかる。
それでいながらその一撃一撃には超火力の威力を持ち、極大魔法も同時発動可能という優れもの。
そして、それはただの狙撃だけに留まらない。

 ジノがお返しとばかりに右手の五本の指から五色の閃光を走らせ、ギザギザの軌道を描きながらシンへと襲いかかってきた。
しかし、散開して宙を舞うペンタグラム・オービットが一瞬でシンの周りに集結し、瑠璃色の球体をした魔障壁を構築する。
その魔障壁はシンを狙う五色の閃光を着弾と共に打ち消してしまう。

「面白いスキルを考えたものだな。
汎用性も高い。
が、それでは決定打に欠ける」

 ジノが分析しながらそう告げると、ジノの背後にもまたシンが作り上げたような五芒星が浮かび上がり、五色のクリスタルが構築される。

「こんな形か?」

 それを見てシンは思わず苦笑いしてしまう。
これがジノの第三門の幻想魔導術式。
複製之技巧イミタティオ・アーツ
相手の扱うスキルを複製し、自分のものとする力である。
俺の第三門、“創生之技巧ジェネシス・アーツ”は新たなスキルを瞬時に目覚める事が出来るが、瞬時に極められるわけではない。
だが、ジノが複製するスキルは相手のスキルレベルをそのまま引き継ぐ。
それどころか、その力にジノの力が加わり増幅、進化までさせる場合がある。
つまり——。

 ジノの背後から放たれた五つのクリスタルは俺が作り出した五つのクリスタルを狙い撃ち、瞬く間に破壊してしまう。

 相手より、上位のスキルを身につけてしまうのだ。




「相変わらず、性格悪い攻め方するよな、ジノ」

 俺は破壊された五つのクリスタルを見やりながらそう声をかける。

「自分の力量不足を嘆くことだ。
もう終わりにするか?」

 ジノは構築した五つのクリスタルを自分の周りに集めて問いかける。

「いや……」

 シンは小さく呟き、片手を開いて顔を覆うように触れる。

「まだだッ!
第四門解放ッ!!」

 高らかに声を上げると、シンの真紅の瞳が翡翠色に変わる。
ジノはシンが行ったように、クリスタル・オービスを散開させ、遠距離から狙撃させる。
五方向からの一斉射撃。
障壁なしで当たれば即死級の代物。

 しかし、それらは一発もシンに当たらない。
その現象にはジノが目を見開き驚くほど。

 まさか、と思いつつもジノは片手を掲げ、シンを中心とした巨大な魔法陣をシンの遥か上空に構築する。
その直後、光の奔流が天から地面へと降り注ぎ、巨大な光の支柱が出来上がる。
眩い光は徐々に収まり、最後は一筋の細さになって消え失せる。

 シンは逃げ切れ無かったはず。
それは動きを追っていた気配から見ても探知している。

だが、宙に浮いたまま平然としているシン。
そしてその足元の地面だけ、何も降り注いでいないかのような地面になり、周りの地面は崩壊していた。
それが何の意味を示しているのか。
ジノは即座に理解する。

「……スキルの命中率、或いは精度、もしくはスキルがもたらす結果を捻じ曲げたか?」

 愉快そうに笑って問いかけるジノ。
俺は答えずに笑みだけで返す。
そしてその場から姿を搔き消し、ジノの背後に現れ、拳を振りかぶる。

 当たらない筈がない。
第四門は必中之技巧アヴソルト・アーツ
相手のスキルは必ず外れ、こちらのスキルは必ず当たる。
それはスキルの因果を確定させる究極魔法術式。

 その迫り来る拳をジノは素早く反応する。
本来、ジノが対応出来ない訳がないその一撃。
しかし、迫り来るその拳へと反応が遅れ、自動防御を持つクリスタル達ですら魔障壁の構築に遅延が生じる。
全ては絶対的な結果に基づいたモノ。
そしてシンの拳が深々とジノの脇腹に突き刺さる。

「っしゃァオラァッ!!」

 拳を振り抜くシン。
派手に吹っ飛ぶジノ。

 シンは確かな手応えを感じた。
それはただダメージを与えた、という事だけではなく、もっと重要な事。
即ち、デストルーク・アーツが発動した手応えを感じた。
無論、破壊したスキルは一つ。

 拳を振り抜いた直後、の身体が通常に戻り、ドッと疲労感が襲ってくる。
その現象に一瞬頭がついていかなかった。
何が起こったのか、即座に理解は出来なかったが働かなくなってる頭で考える。
何をされたかはわからない。
だが、結果だけはわかる。

 俺の幻想魔導術式が破壊され、強制的に元の状態に戻されたのだ。

「まさか、お前の攻撃を食らう日が訪れるとは、な」

 遠くまで吹っ飛ばされたジノが立ち上がり、ゆっくりと近づきながら声をかけてくる。

「お前……何やったんだよ……」

 俺は立っていられなくなり、地面に倒れ伏す。

「なんだ、わからないのか?
お前のスキルの効果。
即ち、スキルの破壊という結果をしたのだ」

 サラッと告げるジノ。

「私も第四門まで解放するのは遥か昔だ。
そこまで引き出させるは成長したな、シン」

 満足顔のジノ。
しかし、倒れてまともに動けない俺はその笑みすら腹が立つ。

 反射?
つまり、致命的な一撃をスキルをもって与えようとすれば、それの効力がそのまま自分に跳ね返ってくる、と……?

「……反則だろ、それ……」

 俺は思わず地面に顔を伏して、溜息をつく。

「落ち込む事はない。
正直想像よりお前は強くなっていた。
それに、まだ力を出し切ってはいないのだろう?」

「お前のその“反射”を使われたらそれも通用しねぇし……。
はぁ……少しはいい勝負出来ると思ったのに」

 俺は顔を伏せたままひどく落ち込む。

 二年半前より俺は格段に強くなっている筈なのだ。
あの幻獣と渡り合い、凌駕するほどに。
それなのに、ジノにはまだ遠く及ばない。
こっちはそこそこ全力だったのに、ジノは果たしてどれ程力を出してくれていたのだろう。
五割か、それとも、まさか三割以下?
それならかなりショックだ……。

 すると、ジノが俺の着ていた服の首根っこを引っ掴んで持ち上げる。

「落ち込む必要はない、と言っているだろう。
確かに改善点は多いが、それはお前に伸びしろがある証拠だ。
そして、現時点でもその実力は及第点と言える。
お前ならば、この里を任せられる」

 そう笑顔で告げるジノ。
そして首根っこを掴まれ、俺は持ち上げられた。

「あの一撃が入った時は勝ったと思ったのに……。
ぬか喜びさせるとか、性格悪いよな、ジノ」

「お前が勝手に勝ったと思い込んだだけだ。
私のせいではない。」

 責任転嫁するな、とジノが言う。

 そんな不毛な言い合いをする俺達のもとへ駆け寄ってくるアネッサ。
そしてその後ろから悠然と近付いてくるルナマリア。

「シン様ッ!
やはり日に二回の幻魔の術式は無理しすぎですッ。
大丈夫ですか!?」

 グッタリとしたまま頷く俺。

「良い線はいっていたが、まだ発展途上と見える。
今後に期待だな、小僧」

 続けて声をかけてくるのはルナマリア。
この人、やっぱり上から目線なのな。
それでも良い線、と評価してくれただけマシ、か。




 そんな訳で、久方ぶりにジノと再会し、手合わせした結果は俺の惨敗。
幻魔の術式を行使した後の倦怠感。
これを克服せねば、続けての戦闘は夢のまた夢。

 課題は多い。
しかし、それはジノの言うように伸びしろがまだ残されている証拠なのだ、とポジティブに考える事にした。
しおりを挟む
感想 111

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...