クラフト生活をしながら同級生にコスプレさせて異世界をスローライフします

春風

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第52話~時を超える愛~

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第52話~時を超える愛~




目を開けると見慣れぬ天井が広がっていた。柔らかな光が窓から差し込み、部屋全体が淡いオレンジ色に染まっている。

「ここは……」

起き上がろうとした瞬間、全身に痛みが走った。

「無理をするな」

穏やかな声が聞こえ、扉の方に目を向けるとアッシュが立っていた。普段よりも少し幼く見える。いや、彼は確かに若いのだから当然だ。ただ私の中で彼のイメージが変わっていることに気づいた。

「どれくらい寝ていたの?」


「三日間だ」

アッシュは静かに答える。窓の外を見ると日差しが強い。

「クロノライトは?」

一番気になる質問を投げかけるとアッシュの表情が複雑に揺れた。

「無事だ。全て揃った」


「本当に?」

嬉しさと不安が入り混じる。三つの素材が揃ったということは……時空測定機が完成してしまうということだ。

「父上の研究室へ行ってみるか?」

アッシュの提案に小さく頷く。彼に支えられながら歩くと、廊下には大きな窓から広がる庭園が見えた。春の花々が咲き誇り、遠くには馬車が止まっている。レンカだろうか。

「父上は今研究室にいる。私たちを待っているはずだ」

研究室の前に立つと緊張が走った。これが全ての終わりであり、始まりでもあるかもしれない。

「入ろう」

アッシュが扉を開くと、そこにはエドガー卿が立っていた。彼の背後には複雑な機械が据えられている。中央には三つの素材のクロノライト―が精密に組み込まれていた。

「目覚めたか」

エドガー卿の声は意外にも穏やかだった。

「はい……お世話になりました」

深々と頭を下げると彼は手を振った。

「礼を言うのはこちらの方だ。君のおかげでついに完成した」


「それで……」

言葉を選びながら尋ねる。

「この装置は何のために使うのですか?」

研究室に重い沈黙が流れる。エドガー卿は一度深呼吸をしてから口を開いた。

「アッシュから何も聞いていないのか?」

アッシュが黙って首を横に振る。私は二人の間にある緊張を感じ取りながら頷いた。

「正直に話そう」

エドガー卿はゆっくりと語り始めた。

「私は妻に謝りたいのだ」

その言葉に心臓が跳ね上がる。

「妻……?」


「そうだ。異世界から来た彼女は……病で亡くなった……彼女が亡くなる時……私は彼女の側に居ることができなかった……私は……ただ、謝りたい……そして、愛していると伝えたい」



エドガー卿の声が震えている。彼の大きな肩が小さく見える。

「そんな……」

言葉が見つからない。この壮大な冒険の裏に隠されたのは、ただ一つの純粋な願いだったのだ。

「でもそれは……」

歴史を変えてしまうのではないかという懸念が口をついて出そうになる。だがエドガー卿はそれを予期していたかのように遮った。

「わかっている。過去を変えることは許されない」

彼は静かに時空測定機に手を置く。

「だが……伝えたい言葉がある。それだけのために私はこれを作った」


「父上……」

アッシュの声が掠れている。彼も知らなかったのだろう。

「私は……」

アッシュが一歩前に出る。

「母が死んだ時……父上は仕事で忙しかった……私はそれが原因で父上を恨んでいた……」

彼の目に涙が光る。

「でも今はわかる……父上の気持ちが……」

親子の間に長い間横たわっていた溝が埋まっていくのを感じた。私はただ見守ることしかできない。

「では……」

エドガー卿が私の方を向く。

「君の力を貸してくれないか?」


「私の……?」


「クロノライトは異世界人の血を持つ者でなければ動かない。君こそが鍵なのだ」

全てが繋がった瞬間だった。最初から私が必要だったのだ。

「わかりました」

迷いなく答えるとエドガー卿の顔に安堵の色が浮かんだ。

「だが一つ問題がある」

アッシュが真剣な表情で割り込む。

「時間跳躍には莫大なエネルギーが必要だ。それは……」

彼は言葉を選びながら続ける。

「肉体的・精神的に大きな負担となる」


「それでもやります」

即答すると二人は驚いた表情を見せる。

「本当に……?」

アッシュの問いに力強く頷く。

「誰かのために何かができるなら……私だって……」

言いながら胸の奥に鈍い痛みを感じた。海斗の顔が脳裏をよぎる。彼も私のために……?

「ありがとう」

エドガー卿の目から涙が零れ落ちる。それを見たアッシュも思わず顔を背けた。

「明日の日の出とともに実験を行う」

エドガー卿が宣言する。

「準備をしておくように」

研究室を出ると廊下は静まり返っていた。アッシュと二人きりになり、言葉を探す。

「怖くないのか?」

彼の声は優しい。

「正直に言えば怖いわ」

素直に認めると彼は小さく笑った。

「そうだよな……俺も怖い」

彼の手が私の肩に触れる。

「でも今は違う。君がいるから」

その言葉に胸が温かくなる。長い旅路を共にしてきた中で、私たちは確かな絆を築いていた。

「明日……うまくいくといいね」


「必ず上手くいく」

彼の確信に満ちた声に勇気づけられる。

「そうだ……レンカは?」


「彼女は隣の部屋で休んでいる。精霊たちも疲れているようだ」


「そう……」

廊下の先に窓があり、そこから庭が見える。空が徐々に茜色に染まり始めていた。

「夕食まで少し時間がある。一緒に外に出ないか?」

アッシュの提案に頷く。私たちは庭へと足を向けた。

「綺麗ね……」

庭には色とりどりの花が咲き乱れている。風が優しく吹き抜け、花びらが舞い上がる。

「母が好きだった庭なんだ」

アッシュが花を摘みながら言う。

「毎日ここで過ごしていた……」


「素敵な思い出ね」

彼の横顔を見ながら思う。彼にとっても母との思い出は特別なものなのだろう。

「明日が終わったら……」

言いかけて言葉を飲み込む。彼は優しく微笑んだ。

「俺たちの冒険も終わる」


「そうね……」

寂しさを感じながらも決意を新たにする。これが最後の任務だと。

「約束してくれるか?」

突然彼が真剣な眼差しで問いかける。

「何を?」


「絶対に無事に戻ってくると」

その言葉に胸が熱くなる。私は彼の手を取り、

「約束する」

と強く誓った。

その夜、私は久しぶりに深く眠ることができた。夢の中で海斗の姿を見た気がする。彼は何かを言っていたが聞き取れなかった。ただ優しい笑顔だけが印象に残っている。

朝日が昇るころ、私は目を覚ました。窓の外には金色に輝く草原が広がっている。時間跳躍の時は来た。

研究室に入るとすでに準備が整っていた。エドガー卿は落ち着いた表情で私を迎える。

「覚悟はできているな?」


「はい」

短く答えると彼は時空測定機の前へ私を導いた。

「この水晶に手を置いてくれ」

言われるままに緑色に輝く水晶に触れる。途端に全身が痺れるような感覚に襲われた。

「さあ……目を閉じて……」

エドガー卿の声が遠くなっていく。次第に意識が薄れ……そして……
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