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俺のNTR対策/幼なじみ+バイト先輩×おつむよわよわ大学生/総受け
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しおりを挟むラブホを出て最寄りの駅から電車に乗ることざっくり30分ぐらい。
先輩と共に帰路についていた俺は、見慣れたアパートが見えてきた所で足を止めた。
「先輩。あれが俺の住んでるアパートです」
「ほーん。結構綺麗だね」
「ま、利便性が微妙ですけどね。…2階の角部屋が俺の部屋。んでその隣に悠…幼なじみが住んでます」
「ふむふむ」
俺が簡単に概要を説明すれば、スマホの地図を見て具体的な住所を確認する暁斗先輩。
「先輩?」
「ん?…あぁ、これで次のデートの時にお迎えに来れるな~って」
「で、デートって……そんなことより、今は悠との対決のことを考えましょう!」
おそらく…このまま大人しく家に帰ることは出来ないだろう。
俺を待ち構える悠の殺気のようなものをヒシヒシと感じ、その不安から先輩の手を強く握る。
「大丈夫。何があっても雅人は俺が守るから」
「せ、先輩…」
「作戦も…まぁ、ざっくりとは考えてるつもり。だからとりあえず、ラブラブなフリしてて」
先輩は小声で俺にそう囁くと繋いでいた手を離して代わりに俺の肩を強めに抱き寄せる。
俺はそんな先輩の行動に少し驚きながらも、『ラブラブ感』を演出するために先輩の体に身を任せた。
「だ…だーりん?とか呼んだ方がいいです?」
「うーん…その呼び方は嬉しいけど、ちょーっと露骨すぎるかなぁ」
複雑そうに苦笑する先輩に頭を撫でられ、俺たちはいよいよアパートの敷地内へ………
するとそこには、アパート2階へと上がる階段に腰掛ける人物。
不機嫌そうに携帯を見つめていたその人物はこちらに目を向け……
ーー目が、合った。
「……雅人?」
「た、ただいま…」
引きつった顔で軽く手を振ればその人物……俺の幼なじみ、佐々葉 悠は大きく目を見開く。
が、次の瞬間には俺の肩を抱き寄せる暁斗先輩を睨み付けていた。
「君が雅人の幼なじみくん?例の…寝取り性癖のヤリチンクソ野郎の?」
「……アンタ、誰?」
「俺?俺は…雅人の恋人。こうやって朝帰りしてきてるんだから、見りゃわかるでしょ」
……おおう。
暁斗先輩、中々の煽りスキルをお持ちで……
普段あまり聞かない低い声色の先輩と、何故か酷くキレた様子の悠に俺は何も言えずに先輩の腕の中でガチガチに固まる。
「恋人?雅人の?…ハッ、何をふざけたことを…」
「ふざけてなんか無いよ。昨日デートしてそのまま朝までホテルに居たわけだし…ね、雅人?」
「っ!そ、れは…その…ま、ちがっては…ないけど…」
あぁ!い、いきなり俺に話を振らないで!
返答に困りしどろもどろしていると…不意に悠の方から、隠す気など全くないような露骨な舌打ちの音が聞こえた。
「チッ…クソが…」
(えっ……)
く、クソ?KUSO?
舌打ちだけではなく普段聞かないような汚い言葉が悠の口から聞こえ、俺は思わず困惑してしまう。
しかし悠はすぐに視線を俺の方に向けると、何処か真剣な顔で問いただした。
「……雅人。本当に…その頭の悪そうなチャラ男と付き合ってるのか?騙されたり脅されたりしてるんじゃないのか?」
「むっ…」
こ、こいつ…先輩をバカにしやがって…!
確かに見た目は頭悪そうなチャラ男っぽいけどさ!
先輩は見かけによらず優しくて意外と頭もいいんだよ!
悠の言葉に俺はムキになってしまい、先輩の体に更に密着しながら声を張り上げる。
「れ、れっきとした恋人だよ!…ってか、俺が誰と付き合おうがお前に関係ないだろ!」
「っ、俺は…お前を心配して…!」
「心配って…幼なじみとはいえ過保護すぎない?…ま、俺の見た目が『頭の悪そうなチャラ男』ってことは否定しないけど…」
と、そこまで呟いた暁斗先輩は一旦言葉を止める。
突然黙り込んだ先輩に俺は思わずその顔を見上げたが……
ーーぐいっ
「雅人の事は俺が幸せにする。……雅人のことを悲しませる奴なんかには、絶対に渡さないから」
……か…かっこいい…
俺の肩を抱き寄せながらの決め台詞。
まるで少女マンガのようなカッコイイ姿に、俺の顔はみるみる赤くなった。
(っ…ふ、不覚にもときめいてしまった…俺が女の子だったら確実に堕ちてたよ…)
「ハッ、どうせ口だけだろう?すぐに飽きて捨てるに決まってる」
「雅人から奪った女の子をすぐにポイしちゃうような軽薄男には言われたくないね。…それに俺、本気だから」
(お、俺のために争わないでー!…なんてふざけられる空気じゃないな…)
想像の500倍は演技派だった暁斗先輩と対峙する真顔の悠。
俺は緊張のあまり言葉を発することも出来ず、ただただ先輩の腕にしがみつく事しか出来なかった。
……そしてしばらく睨み合っていた2人だが、不意に悠が視線を逸らしたことで緊迫の時間は終焉を迎えた。
「……俺の方が、アイツのことを……」
何か小声で呟きながら自分の部屋へと戻っていく悠を無言で見送り、『バンッ』とドアが閉まる激しめの音を聞いて俺は安堵の息をついた。
「……はぁ…こ、怖かったぁ……」
「雅人、大丈夫?」
先程までの真面目ムードはどこへやら。
先輩はいつものような人懐っこい表情で俺の顔を覗き込む。
「だ、大丈夫です、多分。…悠のあんな顔、初めて見たから…」
「うーん、あれは『強敵』だね…今回は引いてくれたけど、そう簡単には諦めてくれないかも」
「えぇ~…」
じゃあ俺はまだ彼女を寝取られる恐怖に怯えなきゃいけないのか?
思わず口がへの字に曲がったが、それを暁斗先輩の指が強引に押し上げた。
「んむっ」
「そんな顔しないの。…こうなったら俺もとことん付き合うよ。幼なじみ君が諦めるまで、ね」
パチン、とウインクをしながらそう宣言した先輩。
しかしそれでは…俺と嘘の御付き合いをしている間、先輩を拘束し続けることになってしまう。
「れも、しぇんぱい……」
「ん?…あぁ。俺の事はいいよ。今は『他の恋愛』なんかする気にならないし」
「??」
先輩の言うことはよく分からないけど…とにかく、これからも俺の『恋人(偽)』で居てくれるらしい。
(それは有難いけど…でも流石に、先輩に甘えすぎじゃ…)
「こーら。雅人は余計なこと考えない!」
「んむぅ」
と、申し訳なく思っていた所を先輩の指で更に口端を押し上げられる。
強制的に笑顔にさせられた…というか、目元まで細くなって不細工な顔にされてる感じだ。
「ふぇふ」
「ふふっ、そんな顔も可愛いよ。さすが『俺の恋人』」
「んむっ…ふ、ふざけないでくださいよ…」
ようやく口元を解放され咄嗟に顔を背けたが、先輩は楽しそうにクスクスと笑うだけ。
「じゃ、俺はぼちぼち帰ろうかな」
「あ、えと、その…今日…じゃなくて、昨日?は色々ありがとうございました」
改めて先輩に向き合い、深々と頭を下げる。
…偽恋人としてデートしてくれたこと。
…寝落ちした俺を置き去りにせずホテル(まさかのラブホだったけど)まで連れていってくれたこと。
…悠と対峙して嘘の恋人宣言をしてくれたこと。
とにかく先輩には本当に感謝してるのは本当だ。
「可愛い後輩のためだからね。……あ、あと念の為。出来るだけ幼なじみ君とは2人きりにならないようにしなよ?」
「え?」
「2人で話すなら必ず人目のある場所を選ぶように。わかった?」
……それは、どういう意味なんだろう?
先輩の言いたいことはよく分からなかったが、とりあえず言われるがまま頷いた。
「よろしい。いい子いい子。…別れのキスとかしといた方がいい?」
「それはいいです!!」
「ちぇー」
最後の最後までふざける先輩に全力の拒否を示しつつ、俺もアパートの2階へと上がる。
「それじゃあ先輩、明後日バイトで会いましょうね!」
「りょーかーい。寂しくなったらいつでも連絡頂戴ね~」
ひらひらと手を振り、先輩は駅の方角へと帰っていく。
俺はその背中を見つめながらも、隣の部屋に居る悠の事を僅かに気にかけていた。
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