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王都編
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「せ……セリオス様、どこへ行かれるのですか?」
赤いじゅうたんの階段をのぼり、長い廊下を足早に歩いていくセリオスにレオナは尋ねた。
「俺は誰よりも先におまえを見つけたのに、おまえはほかの男に愛想を振りまいていたな」
「な、なんのお話ですか?」
「まるで記憶がないとでもいう顔をしている」
不機嫌なセリオスはいきなり立ち止まると、近くにある扉を開き、中へレオナを押し込んだ。その部屋の豪華さに驚いているひまはなく、レオナはあっという間に抱き上げられて、ベッドに押し倒されていた。
「ここは……セリオス様のお部屋ですか?」
「ああそうだ。どんな邪魔も入らない、二人きりになれる唯一の場所だ。さあ、おまえを存分に抱かせてくれ」
いきなり深く唇は重なる。しかし、嫌ではなかった。むしろ、レオナはこのぬくもりを求めていた。口内に押し込まれた分厚い舌に、レオナは自ら舌を差し出す。どうにも触れ合いたくてたまらない。セリオスは舌を絡ませながら、時折、荒い息を鼻から吐き出し、ドレスをはぎとるように脱がせた。
クラリスが見たら発狂してしまうかもしれない。美しく整えた髪も化粧も、すべて台無しだった。それでもレオナは満足していた。胸の先端に舌を這わせ、飲み込むように吸いつく彼の夢中な様子が愛おしくすらあった。
足を押し開かれて、久しぶりの行為にやはり緊張したが、もったいぶらずに入ってくるセリオスの余裕のなさがますます愛おしい。
「セリオス様……、もう離れないでくださいね」
レオナは両腕を伸ばした。彼は動きを止め、レオナの手のひらに口づける。
「ああ。王宮にレオナの部屋を用意した。おまえは来賓としてここに残り、もうクレストルへ戻る必要はない。ルカの戴冠式が終わり次第、結婚を発表しよう」
「本当ですか?」
パチパチとまばたきをすると、なぜか、セリオスは鼻の上にしわを寄せた。
「正直に言えば、戴冠式などどうでもいい。俺の結婚が先では体裁が悪いと枢密院のやつらが渋ってるだけだ。あいつらは本当に対面ばかり気にする」
「大事なことではありませんか……?」
そうでなくとも、セリオスは罪人としての過去があるのに。少々あきれて言うと、セリオスは無愛想になる。
「一番大事なものはレオナだ。枢密院のやつらが何を言おうが、結婚式は強行する」
「やっぱり、反対されているのですね……?」
「父王を暗殺しようとした大罪人が公爵令嬢と結婚するなど許せるものではないと騒ぐものがいるのは事実だ。あいつらはただ、王家と良縁を結ぶロデリックを羨み、公爵の後ろ盾を得て権力を持つ俺に警戒しているだけだろう」
セリオスは苦々しく吐き出す。彼はきっと、王子として苦しい経験をしてきたのだろう。レオナには想像もつかない何かが、いまだに彼を苦しめているように感じられてならない。
「私はセリオス様が王子として立派な務めを果たされることを望んでいます」
そう言うと、セリオスは意外そうな顔をした。
「レオナは誰もが正しいと思う道を歩みたいのだな。俺とて、獄中結婚などではなく、正式に枢密院の裁可を待ち、すべてのものに祝福される結婚をしたい。……やはり、体裁は大事だな。レオナのために必要だ」
「みなさんが納得する結婚ができるまで待ちます。でも……、セリオス様のそばにずっといたいです」
「俺の思いも同じだ。今夜はこの部屋から出す気はない。できることなら、もう二度と……」
セリオスがふたたび、レオナをベッドに沈めようとしたとき、部屋の扉がノックされた。
邪魔は入らないのではなかったか。レオナは驚いて身体を起こそうとするが、セリオスがふわりとシーツをかぶせ、優しく押しとどめる。
「誰だっ」
いらだった声が部屋中に響く。
「団長、ルドアースです」
冷静な声が返ってきた途端、セリオスの怒りがわずかに落ち着いた。
「ルドアースか……。邪魔をするなと言い含めておいたはずだが」
セリオスは面倒そうに上着を羽織り、扉の前に立つ。扉をほんの少し開けた隙間から、硬い表情のルドアースが見えた。
「何の用だ?」
「申し訳ございません。アメリア様と宰相閣下がもめておりまして」
「アメリアとフロストが? どうしてだ」
レオナの心臓が跳ねる。アメリアは勝気な令嬢ではあったが、宰相と衝突するなんて、何があったのだろう。ルドアースはわずかに躊躇したあと、重々しく言う。
「……それが、ルカ様を国王にすることはできないとおっしゃっているのです」
赤いじゅうたんの階段をのぼり、長い廊下を足早に歩いていくセリオスにレオナは尋ねた。
「俺は誰よりも先におまえを見つけたのに、おまえはほかの男に愛想を振りまいていたな」
「な、なんのお話ですか?」
「まるで記憶がないとでもいう顔をしている」
不機嫌なセリオスはいきなり立ち止まると、近くにある扉を開き、中へレオナを押し込んだ。その部屋の豪華さに驚いているひまはなく、レオナはあっという間に抱き上げられて、ベッドに押し倒されていた。
「ここは……セリオス様のお部屋ですか?」
「ああそうだ。どんな邪魔も入らない、二人きりになれる唯一の場所だ。さあ、おまえを存分に抱かせてくれ」
いきなり深く唇は重なる。しかし、嫌ではなかった。むしろ、レオナはこのぬくもりを求めていた。口内に押し込まれた分厚い舌に、レオナは自ら舌を差し出す。どうにも触れ合いたくてたまらない。セリオスは舌を絡ませながら、時折、荒い息を鼻から吐き出し、ドレスをはぎとるように脱がせた。
クラリスが見たら発狂してしまうかもしれない。美しく整えた髪も化粧も、すべて台無しだった。それでもレオナは満足していた。胸の先端に舌を這わせ、飲み込むように吸いつく彼の夢中な様子が愛おしくすらあった。
足を押し開かれて、久しぶりの行為にやはり緊張したが、もったいぶらずに入ってくるセリオスの余裕のなさがますます愛おしい。
「セリオス様……、もう離れないでくださいね」
レオナは両腕を伸ばした。彼は動きを止め、レオナの手のひらに口づける。
「ああ。王宮にレオナの部屋を用意した。おまえは来賓としてここに残り、もうクレストルへ戻る必要はない。ルカの戴冠式が終わり次第、結婚を発表しよう」
「本当ですか?」
パチパチとまばたきをすると、なぜか、セリオスは鼻の上にしわを寄せた。
「正直に言えば、戴冠式などどうでもいい。俺の結婚が先では体裁が悪いと枢密院のやつらが渋ってるだけだ。あいつらは本当に対面ばかり気にする」
「大事なことではありませんか……?」
そうでなくとも、セリオスは罪人としての過去があるのに。少々あきれて言うと、セリオスは無愛想になる。
「一番大事なものはレオナだ。枢密院のやつらが何を言おうが、結婚式は強行する」
「やっぱり、反対されているのですね……?」
「父王を暗殺しようとした大罪人が公爵令嬢と結婚するなど許せるものではないと騒ぐものがいるのは事実だ。あいつらはただ、王家と良縁を結ぶロデリックを羨み、公爵の後ろ盾を得て権力を持つ俺に警戒しているだけだろう」
セリオスは苦々しく吐き出す。彼はきっと、王子として苦しい経験をしてきたのだろう。レオナには想像もつかない何かが、いまだに彼を苦しめているように感じられてならない。
「私はセリオス様が王子として立派な務めを果たされることを望んでいます」
そう言うと、セリオスは意外そうな顔をした。
「レオナは誰もが正しいと思う道を歩みたいのだな。俺とて、獄中結婚などではなく、正式に枢密院の裁可を待ち、すべてのものに祝福される結婚をしたい。……やはり、体裁は大事だな。レオナのために必要だ」
「みなさんが納得する結婚ができるまで待ちます。でも……、セリオス様のそばにずっといたいです」
「俺の思いも同じだ。今夜はこの部屋から出す気はない。できることなら、もう二度と……」
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邪魔は入らないのではなかったか。レオナは驚いて身体を起こそうとするが、セリオスがふわりとシーツをかぶせ、優しく押しとどめる。
「誰だっ」
いらだった声が部屋中に響く。
「団長、ルドアースです」
冷静な声が返ってきた途端、セリオスの怒りがわずかに落ち着いた。
「ルドアースか……。邪魔をするなと言い含めておいたはずだが」
セリオスは面倒そうに上着を羽織り、扉の前に立つ。扉をほんの少し開けた隙間から、硬い表情のルドアースが見えた。
「何の用だ?」
「申し訳ございません。アメリア様と宰相閣下がもめておりまして」
「アメリアとフロストが? どうしてだ」
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