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王都編
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リネアが止めるのも聞かず、レオナはしゃがみ込むセリオスに向かって走った。
「来るなっ!」
足音に気づいたセリオスが、背を向けたまま叫ぶ。しかし、レオナはそのまま歩み寄った。
大輪の百合に囲まれるように、白いドレスのアリティアが横たわっていた。上半身はセリオスの上着がかぶせられ、その表情はわからない。長い長い青の髪が土色の地面に扇状に広がり、ドレスから伸びる真っ白な細い足は奇妙な形にねじ曲がっていた。
「亡くなって……いるのですか……?」
レオナはぼう然としながら、誰に尋ねるわけでもなくつぶやいた。セリオスは何も答えず、ただただひざの上で握りしめたこぶしを震わせている。
レオナはセリオスの隣へひざを折り、上着の上からアリティアの背中に触れた。骨張った背中ではあったが、まだ柔らかく、亡くなっているとは到底思えない。
「はやく……治療を……」
すぐさま立ちあがろうとしたとき、レオナは腕をつかまれて、びくりと肩を震わせた。
「無駄だ。母上の息はない」
「本当……ですか?」
はっきり言われても、まだ信じられなかった。しかし、青い髪の下から赤い液体が流れ出るのを見た瞬間、それが現実のものと知り、レオナは地面に座り込んだ。
「なぜ……こんなことに……」
「母上はずっと不安定であった。毎夜、月を見ては嘆き、ふらりふらりとバルコニーを徘徊する。かと思えば、日中は繊細な笑みを浮かべ、軽やかに舞いを踊っていた」
舞い踊るアリティアは容易に思い浮かんだが、セリオスからすれば、その姿もまた、悲しみをまぎらわせるためだけの行為に見えたのだろう。
「アリティア王妃殿下はあの日の記憶を失くしているのだと聞きました。エイダ王妃殿下が亡くなられたあの日の……」
「それを、聞いたか」
セリオスは嘆息したが、いずれ耳に入ることだったとあきらめていたのか、なぜ知っているのかと深く追求したりはしなかった。それほど、アリティアの様子は宮殿内に知れ渡っているのかもしれない。
「記憶がないというより、あの日を境に、あの日よりもずっと前……エルアルムに嫁ぐ前の母上に戻ってしまったのだ。母上はまるで、あどけない少女のようになっていた」
それでは、ますます不安だっただろう。なぜひとり、異国のエルアルムにいるのかと。
「だから、ノクシスへ帰りたがっていたのですか?」
「家族に会いたかったのだろう。俺がセシェ島にいる間に、母上が一番信頼を置いていたと言われる姉の王女が亡くなっている。心配はしていたが、まさか、こんなことをするとは……。もっと気にかけているべきだった」
その家族に、セリオスは含まれていない。ようやくそれに気づいて、レオナは彼の腕をつかんでいた。
やっと見つけた。セリオスの苦しみの理由を。少女に還ってしまったアリティアは一人息子のことも忘れてしまっていたのだろう。彼は、たったひとりの愛する家族を失ってしまった孤独に苦しんでいたのだ。
「セリオス様、まだ間に合います」
レオナはきっぱりと言った。迷いはなかった。
「間に合うとはなんだ」
「アリティア王妃殿下に蘇生魔法をかけます。私は……魔法について詳しい知識はないのですが、蘇生魔法を正しく使える自信はあるのです」
「何を言うんだ。正しく使えるなどというものはないっ。使うことが禁忌……間違っているからだ」
セリオスは声を震わせ、レオナの手をぎゅっと握りしめた。
「使ってはいけないというなら、なぜこの力は存在しているのですか? 使っていけない理由は、ステラサンクタの……いいえ、フィリス教皇のご都合でしかありません」
「本気で言っているのか。教皇がなぜ使うなと言ったのか忘れたわけではあるまいっ。魔法を使えば、おまえの命が削れる。特に蘇生魔法は命の消耗が大きい。おまえは自らの命と引き換えに、母上を助けると言っているのだぞっ」
「そうです。セリオス様のために助けたいのです」
「そんなものは俺のためではないっ」
「私のためでもあるのです」
「なぜ、おまえのためになる? そんなごまかしで俺が納得すると思うか」
歯がゆそうに、セリオスは顔を歪める。
「セリオス様が幸せでいてくれなければ、私が幸せではないからです」
「俺は幸せだ……。おまえがいてくれるだけで、じゅうぶん、幸せなんだ」
レオナの腕をつかみ、説得しようとするセリオスの言葉は、もはや懇願だった。それでも、レオナはゆっくりと首を横に振った。
「アリティア王妃殿下に、私の命を分けてあげます」
「必要ないっ」
悲痛に叫ぶセリオスの手を、レオナはそっと引きはがす。しかし、彼は懲りずにつかんでくる。
「俺ならば、レオナに魔法を使わせない。教皇はそう信じて、おまえを託してくれたのではないか。母上を助けてほしくて、おまえをここに連れてきたわけじゃない」
「心配しないでください。私はステラサンクタなのですよ」
「だからなんだというのだ……」
「私の力を信じてくださいと話しています」
はっきりとした声を張り上げると、愕然としたセリオスを突き放し、レオナはアリティアを覆う上着をはぎとった。
瞳を閉じたアリティアは美しかった。白いほおにべったりと張り付く真っ赤な血がなければ、ただただ眠っているだけのように見えただろう。
レオナは胸もとから星魔石のペンダントを取り出すと、仰向けにしたアリティアの胸の上へそっと乗せた。キラキラと輝く星魔石が、この世の誰よりも似合う王妃に見えた。
生きて会いたい。そう思える数少ない家族だから、助けることに迷いはなかった。レオナは深く息を吸うと、両手をアリティアの身体の上にかざし、まぶたを落とした。
身体の内側から、指の先へ冷たい何かが流れ出ていくのを感じる。そのたびに、レオナの身体も冷たくなっていくようだった。命を少しずつ削っている。その感覚がわかるとしたら、いま感じているものが、まさしくそれなのではないだろうか。
手加減はわかっている。わからないなりに、訓練を重ねた過去がある。あのときの努力は無駄ではなかったと、今ならわかる。セリオスを悲しませない。その思いを胸に、レオナは彼の心を救うためにもアリティアを救いたいのだと思う。たとえそれが偽善であっても、レオナがそうしたいからそうするのだ。正しい答えなど誰も導き出せないのだから、正しいと思うことをするしかない。
「これは……」
セリオスがつぶやいた。レオナはそっとまぶたをあげる。今の季節には似つかわしくない、春のような温かい風がアリティアの周囲を包み込んでいる。その風がゆっくりと消えていったとき、青白かったアリティアのほおに赤みがさし、彼女の薄いまぶたがぴくりと動いた。
「来るなっ!」
足音に気づいたセリオスが、背を向けたまま叫ぶ。しかし、レオナはそのまま歩み寄った。
大輪の百合に囲まれるように、白いドレスのアリティアが横たわっていた。上半身はセリオスの上着がかぶせられ、その表情はわからない。長い長い青の髪が土色の地面に扇状に広がり、ドレスから伸びる真っ白な細い足は奇妙な形にねじ曲がっていた。
「亡くなって……いるのですか……?」
レオナはぼう然としながら、誰に尋ねるわけでもなくつぶやいた。セリオスは何も答えず、ただただひざの上で握りしめたこぶしを震わせている。
レオナはセリオスの隣へひざを折り、上着の上からアリティアの背中に触れた。骨張った背中ではあったが、まだ柔らかく、亡くなっているとは到底思えない。
「はやく……治療を……」
すぐさま立ちあがろうとしたとき、レオナは腕をつかまれて、びくりと肩を震わせた。
「無駄だ。母上の息はない」
「本当……ですか?」
はっきり言われても、まだ信じられなかった。しかし、青い髪の下から赤い液体が流れ出るのを見た瞬間、それが現実のものと知り、レオナは地面に座り込んだ。
「なぜ……こんなことに……」
「母上はずっと不安定であった。毎夜、月を見ては嘆き、ふらりふらりとバルコニーを徘徊する。かと思えば、日中は繊細な笑みを浮かべ、軽やかに舞いを踊っていた」
舞い踊るアリティアは容易に思い浮かんだが、セリオスからすれば、その姿もまた、悲しみをまぎらわせるためだけの行為に見えたのだろう。
「アリティア王妃殿下はあの日の記憶を失くしているのだと聞きました。エイダ王妃殿下が亡くなられたあの日の……」
「それを、聞いたか」
セリオスは嘆息したが、いずれ耳に入ることだったとあきらめていたのか、なぜ知っているのかと深く追求したりはしなかった。それほど、アリティアの様子は宮殿内に知れ渡っているのかもしれない。
「記憶がないというより、あの日を境に、あの日よりもずっと前……エルアルムに嫁ぐ前の母上に戻ってしまったのだ。母上はまるで、あどけない少女のようになっていた」
それでは、ますます不安だっただろう。なぜひとり、異国のエルアルムにいるのかと。
「だから、ノクシスへ帰りたがっていたのですか?」
「家族に会いたかったのだろう。俺がセシェ島にいる間に、母上が一番信頼を置いていたと言われる姉の王女が亡くなっている。心配はしていたが、まさか、こんなことをするとは……。もっと気にかけているべきだった」
その家族に、セリオスは含まれていない。ようやくそれに気づいて、レオナは彼の腕をつかんでいた。
やっと見つけた。セリオスの苦しみの理由を。少女に還ってしまったアリティアは一人息子のことも忘れてしまっていたのだろう。彼は、たったひとりの愛する家族を失ってしまった孤独に苦しんでいたのだ。
「セリオス様、まだ間に合います」
レオナはきっぱりと言った。迷いはなかった。
「間に合うとはなんだ」
「アリティア王妃殿下に蘇生魔法をかけます。私は……魔法について詳しい知識はないのですが、蘇生魔法を正しく使える自信はあるのです」
「何を言うんだ。正しく使えるなどというものはないっ。使うことが禁忌……間違っているからだ」
セリオスは声を震わせ、レオナの手をぎゅっと握りしめた。
「使ってはいけないというなら、なぜこの力は存在しているのですか? 使っていけない理由は、ステラサンクタの……いいえ、フィリス教皇のご都合でしかありません」
「本気で言っているのか。教皇がなぜ使うなと言ったのか忘れたわけではあるまいっ。魔法を使えば、おまえの命が削れる。特に蘇生魔法は命の消耗が大きい。おまえは自らの命と引き換えに、母上を助けると言っているのだぞっ」
「そうです。セリオス様のために助けたいのです」
「そんなものは俺のためではないっ」
「私のためでもあるのです」
「なぜ、おまえのためになる? そんなごまかしで俺が納得すると思うか」
歯がゆそうに、セリオスは顔を歪める。
「セリオス様が幸せでいてくれなければ、私が幸せではないからです」
「俺は幸せだ……。おまえがいてくれるだけで、じゅうぶん、幸せなんだ」
レオナの腕をつかみ、説得しようとするセリオスの言葉は、もはや懇願だった。それでも、レオナはゆっくりと首を横に振った。
「アリティア王妃殿下に、私の命を分けてあげます」
「必要ないっ」
悲痛に叫ぶセリオスの手を、レオナはそっと引きはがす。しかし、彼は懲りずにつかんでくる。
「俺ならば、レオナに魔法を使わせない。教皇はそう信じて、おまえを託してくれたのではないか。母上を助けてほしくて、おまえをここに連れてきたわけじゃない」
「心配しないでください。私はステラサンクタなのですよ」
「だからなんだというのだ……」
「私の力を信じてくださいと話しています」
はっきりとした声を張り上げると、愕然としたセリオスを突き放し、レオナはアリティアを覆う上着をはぎとった。
瞳を閉じたアリティアは美しかった。白いほおにべったりと張り付く真っ赤な血がなければ、ただただ眠っているだけのように見えただろう。
レオナは胸もとから星魔石のペンダントを取り出すと、仰向けにしたアリティアの胸の上へそっと乗せた。キラキラと輝く星魔石が、この世の誰よりも似合う王妃に見えた。
生きて会いたい。そう思える数少ない家族だから、助けることに迷いはなかった。レオナは深く息を吸うと、両手をアリティアの身体の上にかざし、まぶたを落とした。
身体の内側から、指の先へ冷たい何かが流れ出ていくのを感じる。そのたびに、レオナの身体も冷たくなっていくようだった。命を少しずつ削っている。その感覚がわかるとしたら、いま感じているものが、まさしくそれなのではないだろうか。
手加減はわかっている。わからないなりに、訓練を重ねた過去がある。あのときの努力は無駄ではなかったと、今ならわかる。セリオスを悲しませない。その思いを胸に、レオナは彼の心を救うためにもアリティアを救いたいのだと思う。たとえそれが偽善であっても、レオナがそうしたいからそうするのだ。正しい答えなど誰も導き出せないのだから、正しいと思うことをするしかない。
「これは……」
セリオスがつぶやいた。レオナはそっとまぶたをあげる。今の季節には似つかわしくない、春のような温かい風がアリティアの周囲を包み込んでいる。その風がゆっくりと消えていったとき、青白かったアリティアのほおに赤みがさし、彼女の薄いまぶたがぴくりと動いた。
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