摩天楼で敏腕社長と頼まれ婚

水城ひさぎ

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愛を確かめたくて

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 午前の診療を終えると、珍しく、羽生先生は私と愛莉ちゃんがランチしてるところへ姿を見せた。

 颯爽と白衣をはためかせて歩く姿はモデルのようで、愛莉ちゃん自慢のフィアンセ。可愛らしい彼女ととてもお似合いだから、ふたりが並ぶ姿は目の保養。

「木宮さん、さっき陸斗が診察に来たんだけどさ、様子が変だったんだよな。なんかあった?」

 どうやら愛莉ちゃんに会いにきたわけじゃないらしい。うっとりと羽生先生を眺めていた愛莉ちゃんも、ちょっと心配そうに私を見やる。

「変っていうのは?」
「落ち込んでるっていうかさ。木宮さんに会って帰れば? ってからかったらさー、あいつ、バカにするみたいに笑ってスルーしやがったよ」
「お忙しいんですよ」

 くすっと笑ってしまう。
 陸斗さんと羽生先生は本当に仲がいいみたい。素の姿を見せ合える関係なんだろう。なんだか、ほほえましい。

「ああ、なんか、木宮さんって優しいよね。悩みとか、絶対相談しないタイプでしょ?」

 羽生先生の指摘に首をかしげると、愛莉ちゃんが「わかるっ」って声を上げる。

「沙月ちゃんはどっちかいうと、相談されるタイプだよね。損するタイプだなぁって思ってた」
「損?」
「だってみんな、甘えちゃうじゃない? 話さなくてもわかってくれてること多いしさ。沙月ちゃんの気持ちとかそっちのけで、一方的に意見も仕事も押し付けちゃってる」
「そうかな。あんまり無理してるつもりはないけど」

 ますます首をかしげると、羽生先生が、「さすが、愛莉はわかってる」なんて、彼女にさりげなくボディータッチする。

 愛莉ちゃんはストレートに愛されてて、ちょっと羨ましいぐらい。

「陸斗も似たタイプだしな。ひねらせ屋なんだ、あいつは」
「ひねらせ屋? なんですか、それ」

 おかしくて笑っちゃうけど、彼は意外とまじめに言う。

「さみしかったんだろうなぁ。陸斗さ、園村くんが大好きだったから、自分から離れていったのが、裏切られたみたいでショックだったんだろうな。あれから、自分の気持ちを隠すようになったよ」

 園村さんの名前が出てきたから驚いた。

 陸斗さんが落ち込むとしたら、園村さんが関わってると思うぐらい、彼らは切っても切れない縁で結びついてるみたい。

「だからさ、なんかあったかなぁってさ」

 羽生先生は探るように私の目を見つめる。

 彼になら、話してもいいかもしれない。というより、逃げられない気がする。

 羽生先生にはなんでも話せると患者さんは言うけど、話させる魅力を彼は持ってるんだろう。

「私と園村さんの間に何かあるって誤解してるみたいで……」

 言葉にしたら、ありえないだろうって思っちゃう。誤解してるかもしれないけど、それで落ち込むなんて、ないと思う。

「それって、陸斗さんが嫉妬してるってこと? わ、やだぁ、沙月ちゃん、めちゃくちゃ愛されてるーっ」

 途方にくれる私を、愛莉ちゃんが目をキラキラさせて見つめてる。

「落ち込んでるのと関係があるかは、わかんないよ……」
「いや、それだな」

 羽生先生はいきなり断定する。

「あいつさー、最初からおかしかったんだよな。園村くんの好きなタイプって、まじめで素朴な女の子でさ、もろ木宮さんなんだよ。園村くんへのあてつけで婚約するって言ったんじゃないかって思ってたんだよなぁ」

 胸がズキンと痛む。
 真実を目の当たりにしたからって傷つく必要ないのに。

 陸斗さんが私を好きで婚約を了承したなんて……そっちの方がおかしい。

 羽生先生の話の方が、よっぽど説得力がある。

「園村くんに、取られたくなかったんだろうな、木宮さんのこと」
「取られるも何も、園村さんは全然……」
「まあ、陸斗の婚約者だなんて言われたら、園村くんは身を引くよね。昔から彼は争いごとが嫌いだからね」
「みなさん、誤解してますよ」

 ますます途方にくれちゃう。
 ありもしない愛情で、こじれちゃうなんて。

「だから、ひねらせ屋だって言っただろ? 陸斗、園村くんが絡むと、どうもダメ男になるんだよな」

 羽生先生はおかしそうに笑う。
 陸斗さんをダメ男だなんて言うのは、彼ぐらいだろう。

「でも意外だったな」
「意外?」
「陸斗がさ、木宮さんに弱みを見せるなんて意外だったよ」
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