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愛を確かめたくて
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***
善田惣一は、園村さんを連れてナースステーションへやってきた。
久しぶりに会う医師や看護師と楽しそうに話してるところを見ると、診察は口実で、あいさつ回りにきたみたい。
「お元気そうですね」
控えめに後ろに下がる園村さんに声をかけると、彼は柔らかにほほえむ。
ふたりは親子なのだ、と改めて思う。
惣一がいつも園村さんを連れ歩いてるのは、ただ単に一緒にいたいと思う親心だろうか。園村さんはその気持ちに応えてる。
園村さんと並んで、立つ。
愉快げな笑い声が絶えないナースステーションを、ふたりで眺めながら。
「木宮さん、あの……」
「はい?」
園村さんに視線を向ける。彼は何か言いにくそうな表情をしてる。
「何か?」
うながすと、ちょっと息をついて、彼は言う。
「陸斗さんとは、いつ正式に婚約されるのでしょう?」
「あっ、それは……」
「すみません。善田が、このところ毎日のように、婚約発表をいつしようかと話すものですから」
「毎日ですか……」
どうしよう。
陸斗さんは園村さんに話してないんだろうか。……話すわけないか。
バレたらバレた時に考えると言っていたのだから、園村さんに惣一の舵取りをお願いしたりしないだろう。
「私にもわからないんです」
「そうですよね。陸斗さんに聞くべきでした」
反省する彼の横顔には苦渋が浮かぶ。
「聞きにくい……ですか?」
考えてみれば、園村さんはいつもそうだった。陸斗さんがいると、存在感を消して控えている。彼が苦手だからなのか、彼に遠慮してのことか。
「陸斗さんは、園村さんを大切に思ってると思います」
「えっ」
意外なことを言われたとばかりに彼は驚き、ちょっと沈黙した後、「ああ」と息を吐いた。
「陸斗さんから聞きましたか、私のこと」
「少しだけ。双子のように仲良く育ってきたそうですね」
「双子だなんて恐れ多い話です。何にも知らないというのは、罪深いことです」
「園村さんのせいじゃないでしょう?」
彼はずっと自問自答してきただろう。私が言えることなんてほとんどない。それでも、言わなきゃって思った。
「陸斗さんの前では、兄として振る舞われてもいいと思います」
「兄……」
「陸斗さんが、昔は園村さんに弟みたいに可愛がってもらったって。兄のように、立派な存在でいてもらいたいんだと思います」
「陸斗さんの兄は、雅之さんただお一人です」
園村さんは頑なに、そう言う。
善田工業の副社長である雅之氏は、それはさぞかし立派な男性だろう。だけど、そうじゃない。陸斗さんが求めてるのは、そういう立派さだけじゃない。
賢くて、先見の明のある園村さんにだって、それはわかってるはず。
「陸斗さんは、そうは思われてないんじゃないでしょうか。私もいつまで陸斗さんの側にいられるかわからないから、彼の前では自分の気持ちに素直でいようと思います」
「木宮さん……それって……」
小さくうなずく。それだけで、園村さんは察してくれるだろう。
私たちの婚約には終わりがあるってこと。あがいて、あがいて、彼にすがっても、失うものもあるということ。
これは夢物語。
私は、シンデレラなんかになれない。
園村さんは幸福だ。
陸斗さんに愛されてる。なのに、なぜ逃げてるのだろう。
私が得られない深い愛を、園村さんはすでに得られてるというのに。
嫉妬するのは、私の方。
私だって、愛されたいのに。
本気で、愛されたいのに、ずっと得られないでいる。
善田惣一は、園村さんを連れてナースステーションへやってきた。
久しぶりに会う医師や看護師と楽しそうに話してるところを見ると、診察は口実で、あいさつ回りにきたみたい。
「お元気そうですね」
控えめに後ろに下がる園村さんに声をかけると、彼は柔らかにほほえむ。
ふたりは親子なのだ、と改めて思う。
惣一がいつも園村さんを連れ歩いてるのは、ただ単に一緒にいたいと思う親心だろうか。園村さんはその気持ちに応えてる。
園村さんと並んで、立つ。
愉快げな笑い声が絶えないナースステーションを、ふたりで眺めながら。
「木宮さん、あの……」
「はい?」
園村さんに視線を向ける。彼は何か言いにくそうな表情をしてる。
「何か?」
うながすと、ちょっと息をついて、彼は言う。
「陸斗さんとは、いつ正式に婚約されるのでしょう?」
「あっ、それは……」
「すみません。善田が、このところ毎日のように、婚約発表をいつしようかと話すものですから」
「毎日ですか……」
どうしよう。
陸斗さんは園村さんに話してないんだろうか。……話すわけないか。
バレたらバレた時に考えると言っていたのだから、園村さんに惣一の舵取りをお願いしたりしないだろう。
「私にもわからないんです」
「そうですよね。陸斗さんに聞くべきでした」
反省する彼の横顔には苦渋が浮かぶ。
「聞きにくい……ですか?」
考えてみれば、園村さんはいつもそうだった。陸斗さんがいると、存在感を消して控えている。彼が苦手だからなのか、彼に遠慮してのことか。
「陸斗さんは、園村さんを大切に思ってると思います」
「えっ」
意外なことを言われたとばかりに彼は驚き、ちょっと沈黙した後、「ああ」と息を吐いた。
「陸斗さんから聞きましたか、私のこと」
「少しだけ。双子のように仲良く育ってきたそうですね」
「双子だなんて恐れ多い話です。何にも知らないというのは、罪深いことです」
「園村さんのせいじゃないでしょう?」
彼はずっと自問自答してきただろう。私が言えることなんてほとんどない。それでも、言わなきゃって思った。
「陸斗さんの前では、兄として振る舞われてもいいと思います」
「兄……」
「陸斗さんが、昔は園村さんに弟みたいに可愛がってもらったって。兄のように、立派な存在でいてもらいたいんだと思います」
「陸斗さんの兄は、雅之さんただお一人です」
園村さんは頑なに、そう言う。
善田工業の副社長である雅之氏は、それはさぞかし立派な男性だろう。だけど、そうじゃない。陸斗さんが求めてるのは、そういう立派さだけじゃない。
賢くて、先見の明のある園村さんにだって、それはわかってるはず。
「陸斗さんは、そうは思われてないんじゃないでしょうか。私もいつまで陸斗さんの側にいられるかわからないから、彼の前では自分の気持ちに素直でいようと思います」
「木宮さん……それって……」
小さくうなずく。それだけで、園村さんは察してくれるだろう。
私たちの婚約には終わりがあるってこと。あがいて、あがいて、彼にすがっても、失うものもあるということ。
これは夢物語。
私は、シンデレラなんかになれない。
園村さんは幸福だ。
陸斗さんに愛されてる。なのに、なぜ逃げてるのだろう。
私が得られない深い愛を、園村さんはすでに得られてるというのに。
嫉妬するのは、私の方。
私だって、愛されたいのに。
本気で、愛されたいのに、ずっと得られないでいる。
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