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愛を確かめたくて
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日曜日、ジムに行く準備をしていると、陸斗さんから電話があった。
これまでも何度か、食事のお誘いを受けたことがあった。今日も何かのお誘いかもしれない。
「仕事、休みだって言ってたよね? 予定ある?」
いつもの調子で、陸斗さんは予定を尋ねてきた。予定なんてあってもなくても、彼のお誘いなら行きたいけれど……。
「今日はジムに行くんです。最近ちょっと行けてなかったから」
「ジム? ヘルレスに行く?」
ヘルレスはRIKUZENの直営ジム。ジムと陸斗さん。てんびんにかけるわけじゃないけど、お誘いの内容によっては、両方得たい。
「はい。夕方には帰るつもりなんですけど」
「今からは来れない? ちょうど、来週ヘルレスに納品する最新機種のルームランナーがうちに届いたんだよ」
「えっ?」
最新機種のルームランナーですって?
「使ってみたくない? まだ、どこのジムにも置いてないんだ」
「めちゃくちゃ使ってみたいです……!」
張り切って声を上げる。電話の奥で、クックって笑う声がする。
「じゃあ、おいでよ。今から迎えに行く」
「走っていきたいぐらいですっ」
「まあ、落ち着いて。10分後には着くよ」
「わかりましたっ。待ってますっ!」
敬礼でもしてると思っただろうか、了解、と答える陸斗さんの声が震えている。
RIKUZENのこととなると我を忘れてしまう私がおかしくてたまらないんだろう。電話が切れるまで、くすくす笑う彼の声は、聞こえていた。
10分後、二階の窓から外の様子をうかがっていると、自宅前に、ブラックサファイアの高級車が停車した。
薄ピンクのボストンバッグをつかんで、急いで階段を降りる。
リビングで団らんを楽しんでいる両親と、ソファーでスマホをいじっている弟も、外の気配に気づいて窓の方を見ていた。
「おー、すげぇ車が来たなぁ。あれ、台数限定のやつじゃねーか?」
父がカーテンを薄く開いて、じろじろと陸斗さんの車を眺めてる。
「なに、沙月のお迎え?」
マグカップを手に、のんびりと母も外を見やる。
「うん。病院の患者さん」
「沙月の病院、お金持ちばっかりなのよねぇ? すごいわねー、あなた」
母は、ちょっとお金持ちのお坊ちゃんが迎えに来たと思ってるみたい。
陸斗さんが旧善田財閥の家系だなんて言ったら、卒倒しちゃうかもしれない。彼が気さくだからすぐに忘れちゃうけど、私だって、いまだにピンと来ないぐらい雲の上の人なのだ。
「ねーちゃん、いよいよ玉の輿だな」
20歳の弟がにやにやしてる。彼はまだ大学生で、スマホゲームで遊んでばっかりいる。
「別に、彼氏じゃないから」
彼氏じゃないならなんなんだ、なんて弟があきれ顔をしてる横で、父が言う。
「いつ、その気になってもいいぞ。かわいい沙月が嫁にいくのはさみしいが、父さんはもう、腹をくくってる」
「そうねぇ。たまには朝帰りでもかまわないわよ。ちゃんと帰ってくる方が心配よ」
ババっと顔が真っ赤になる。
「みんな、勝手なこと言わないでよねっ」
はいはい、と父や弟に軽く受け流されて、あんまり待たせたらダメよ、と母に言われて、あわてて玄関を飛び出す。
私の姿が見えると、陸斗さんは運転席から顔を出して、「乗って」と助手席を指差した。
日曜日、ジムに行く準備をしていると、陸斗さんから電話があった。
これまでも何度か、食事のお誘いを受けたことがあった。今日も何かのお誘いかもしれない。
「仕事、休みだって言ってたよね? 予定ある?」
いつもの調子で、陸斗さんは予定を尋ねてきた。予定なんてあってもなくても、彼のお誘いなら行きたいけれど……。
「今日はジムに行くんです。最近ちょっと行けてなかったから」
「ジム? ヘルレスに行く?」
ヘルレスはRIKUZENの直営ジム。ジムと陸斗さん。てんびんにかけるわけじゃないけど、お誘いの内容によっては、両方得たい。
「はい。夕方には帰るつもりなんですけど」
「今からは来れない? ちょうど、来週ヘルレスに納品する最新機種のルームランナーがうちに届いたんだよ」
「えっ?」
最新機種のルームランナーですって?
「使ってみたくない? まだ、どこのジムにも置いてないんだ」
「めちゃくちゃ使ってみたいです……!」
張り切って声を上げる。電話の奥で、クックって笑う声がする。
「じゃあ、おいでよ。今から迎えに行く」
「走っていきたいぐらいですっ」
「まあ、落ち着いて。10分後には着くよ」
「わかりましたっ。待ってますっ!」
敬礼でもしてると思っただろうか、了解、と答える陸斗さんの声が震えている。
RIKUZENのこととなると我を忘れてしまう私がおかしくてたまらないんだろう。電話が切れるまで、くすくす笑う彼の声は、聞こえていた。
10分後、二階の窓から外の様子をうかがっていると、自宅前に、ブラックサファイアの高級車が停車した。
薄ピンクのボストンバッグをつかんで、急いで階段を降りる。
リビングで団らんを楽しんでいる両親と、ソファーでスマホをいじっている弟も、外の気配に気づいて窓の方を見ていた。
「おー、すげぇ車が来たなぁ。あれ、台数限定のやつじゃねーか?」
父がカーテンを薄く開いて、じろじろと陸斗さんの車を眺めてる。
「なに、沙月のお迎え?」
マグカップを手に、のんびりと母も外を見やる。
「うん。病院の患者さん」
「沙月の病院、お金持ちばっかりなのよねぇ? すごいわねー、あなた」
母は、ちょっとお金持ちのお坊ちゃんが迎えに来たと思ってるみたい。
陸斗さんが旧善田財閥の家系だなんて言ったら、卒倒しちゃうかもしれない。彼が気さくだからすぐに忘れちゃうけど、私だって、いまだにピンと来ないぐらい雲の上の人なのだ。
「ねーちゃん、いよいよ玉の輿だな」
20歳の弟がにやにやしてる。彼はまだ大学生で、スマホゲームで遊んでばっかりいる。
「別に、彼氏じゃないから」
彼氏じゃないならなんなんだ、なんて弟があきれ顔をしてる横で、父が言う。
「いつ、その気になってもいいぞ。かわいい沙月が嫁にいくのはさみしいが、父さんはもう、腹をくくってる」
「そうねぇ。たまには朝帰りでもかまわないわよ。ちゃんと帰ってくる方が心配よ」
ババっと顔が真っ赤になる。
「みんな、勝手なこと言わないでよねっ」
はいはい、と父や弟に軽く受け流されて、あんまり待たせたらダメよ、と母に言われて、あわてて玄関を飛び出す。
私の姿が見えると、陸斗さんは運転席から顔を出して、「乗って」と助手席を指差した。
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