摩天楼で敏腕社長と頼まれ婚

水城ひさぎ

文字の大きさ
21 / 25
愛を確かめたくて

7

しおりを挟む
「あー、もう限界」

 ストレッチを終えて、スポーツドリンクでのどを潤す。そのまま、ヨガマットの上に仰向けになって、首にかけたタオルで汗をぬぐう。

「限界は困るね」

 クスクス笑って、陸斗さんがソファーから立ち上がる。

「陸斗さんはずっと寝てましたね」
「気づいたらね。沙月がいてくれるだけで、安心して眠れるらしい」
「なんですか? それ」

 ただ疲れがたまってるだけじゃないのか。なんて思うけど、そう言われるのは悪い気がしない。

 ヨガマットのそばにひざをついた彼は、私のほおをなでてくる。

「すっごく汗かいてますから、あんまり……」

 彼の手を取って拒もうとするけど、疲労感からか、みじろぐだけでせいいっぱい。

「動けない?」
「まだちょっと動きたくないかも。このヨガマットも、気持ちよくって」

 通常よりぶ厚いだろう。このまま眠ってしまいたくなるぐらい、心地いい。

「そう。なんでも褒めてくれるね、沙月は」
「だって、RIKUZENってほんとにすごいから。陸斗さんはランニングマシーン使ってみました? ついつい、走りすぎちゃうぐらい、楽しいですよ」
「俺はまだ」
「陸斗さんもやればいいのに」
「ああ、やりたいね」

 陸斗さんがいきなり私の上にまたがり、顔の横に腕をついてくる。

「あ……ちょ、ちょっとっ」

 腕を突きあげたら、たやすく彼につかまれてしまう。

「まだ体力はある?」
「な、ない、ないですっ」

 ブンブンっと首をふる。

「まあ、なくても大丈夫。俺に任せてればいいよ」

 そう言うと、彼はおもむろにシャツを脱ぐ。

 厚い胸板ときれいな上腕二頭筋、割れた腹筋が目に飛び込んできて、パッと両手で顔を覆う。

「プールで見ただろ」
「そ、それとこれは違いますっ」
「どう違う? 今から抱かれるから、違うって感じる?」
「だ……っ」
「沙月がいいっていうなら、抱きたい」

 私の手首を優しくつかんで、そっと顔からはがす。そのまま彼は首を下げて、優しいキスを落とす。

「汗だくだから、無理です」
「すぐに俺も汗だくになるから気にしない」
「陸斗さんがよくても私が嫌です」
「シャワー浴びる? 待つよ」
「……待たれても困ります」

 スッと目をそらすのに、優しくほおを支える手のひらに押し戻される。

「いいって言うまで、帰さないって言ったら? まあ、帰すつもりもないんだけどね。外泊したら、ご両親は心配する?」
「し、心配はしないと思いますけど……」

 たまには泊まってこい、なんていう母だ。メール一本入れておけば大丈夫だろう、って、……ああ、だめ。なに考えてるの、私。

「どうしたら、いいって言ってくれる? あんまり拒まれると、自信なくすよ」

 頼りなげに眉を下げるから、心が揺れる。自信がないなんてことあるの? 彼に惹かれない女性なんていないだろうに。

「す、好きって言ってくれないとダメです」
「好きだよ」
「軽すぎませんっ?」
「愛してるって言ったら、納得する?」
「愛してるんですか?」
「そうだね。好きだし、愛してるよ。自分でも不思議なぐらい、沙月を欲しがってる」

 シャツのすそをつかんで上げようとするから、ハッと手でおさえる。

「まだダメ?」
「どうして私なんですか? 陸斗さんなら、ほかに……」
「ほかの女性なんて興味ないよ。沙月がいい」
「どうして……」

 ちょっと笑って、私のこめかみにキスをする。

「沙月はミーハーなくせに、俺にはミーハーにならないからだ。RIKUZENのマシーンには飛びつくのに、全然俺には抱きついてくれないな」
「そ、そんなことないと思います」
「そんなことあるよ。沙月こそ、俺が好きなのか?」
「す、……好きです」
「軽く言うね」

 くすくす耳もとで笑う彼の息が、くすぐったい。

「陸斗さんほどじゃないです。好きなものは好きだから、好きって言ってるんです」
「じゃあ、いい?」

 そっと私の目をのぞく彼と、見つめ合う。

「こ、ここで?」
「まさか。ベッドに連れていくよ」
「じゃあ、なんで脱いだんですか」
「観念するかなと思ってね。沙月はすぐに恥ずかしがるから」
「は、恥ずかしいに決まってます」
「どうして?」

 そう問いながら、陸斗さんは私の背中に腕を回し、たやすく抱き上げる。

「好きな人のカラダ見て、ドキドキしないわけないです」

 彼の首にしがみつき、真っ赤になる顔を彼の肩にうずめる。

「ああ、沙月はいろんなカラダ見てるからね」
「語弊があります」
「そうだね。男として見るカラダは、俺だけにしておけ」

 優しく彼に抱かれたまま、ドアを抜ける。リビングに戻ってきた彼は、さらに進んで、違うドアを開けた。

 いきなり目に飛び込んできたのは、キングサイズのベッド。彼は私をそこへゆっくり沈めると、余裕そうにほほえんだ。

「優しくするから、安心して抱かれてろよ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

処理中です...