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すれ違う祈り
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いつものように紅茶を淹れる。レモンティーの缶の底には一人分の粉が残る。
心理学研究部の部室に、もう来客はない。この残った紅茶を飲むはずの私ももう、ここへは来ないだろう。
そっと缶の蓋を閉じた手で、ティーカップの中をスプーンでかき混ぜた。
なんだか変だ。物足りない。
ずっと一人だったのに、一人でいることに違和感を覚えている。紅茶をもう一つ用意した毎日も、もう終わるのだ。
揺れる水面をしばらくじっと見つめていると、突然開いた部室のドアが、大きな音を立てて壁にぶつかった。
「飛流さんっ、……良かった、いてくれて」
「木梨くん、どうしたの?」
息を切らした凪が、驚く私の前まで走ってくる。前髪を乱したりして、ずっと走ってきたのだろう。
「あ、あのっ、何から話したらいいかな」
凪は私と目を合わせると、戸惑うように髪をくしゃりとつかむ。
「紅茶飲むかしら? 少し落ち着くわ」
レモンティーの缶に手を伸ばそうとすると、凪は「紅茶はいいんだ」と言う。
「テストはどうだったの? 木梨くん。慌てた様子を見ると、ヤマが当たったってところかしら?」
「飛流さんでもそんな冗談言うんだ? でも違うよ。そりゃ、飛流さんが予想したところはかなり出たから、今回は自信あるよ。……って、そうじゃなくてさ、真面目な話をしに来たんだよ」
そう言って凪が身を正すから、私はティーカップを持ち上げようとした手を止めた。
「明日の話ね」
すぐに凪が何も言い出さないから、私から口を開いた。
「何を聞いてここへ来たのか知らないけれど、木梨くんが心配するようなことは何もないの。話すようなことはないわ」
「心配とかじゃないよ……」
凪は両手に拳を握る。
「心配して来たんじゃない。明日の計画は中止してほしい。そのお願いに来たんだ」
「なぜ?」
「時間がないからだよ。条件さえ合うなら、何も明日じゃなくてもいいよな? 七月三十日まではまだ何日もあるよ。もっとよく考える時間があってもいいと思う」
「いまさら何? 木梨くんが協力してくれたから、明日試せるのよ? 先延ばしにはしたくないわ」
「芽依も樋野先輩も、この計画には乗り気じゃないみたいだった」
「そうね、そうかもしれないわ。でも私の気持ちを理解してくれたとは思ってるわ」
「樋野先輩のための計画だろう? だったら、乗り気じゃない先輩を巻き込むのは良くないよ。それとも……」
凪は一歩私に近づく。
窓辺に立つ私は一歩足を下げたが、背中が窓にぶつかって、それ以上は動けない。
「それとも、他に理由がある?」
顔をそむけようとする私の肩をつかんだ凪は、私の耳にはっきりと聞こえる声で言った。
「俺のためだって思ってるなら、飛流さんのしようとしてることは間違ってるよ」
ハッと凪を見上げたら、彼はやけに悲しげに眉を下げる。
「なぜそんなこと言うの? あなたは理解してくれてたじゃない」
「知らなかったんだ、飛流さんの気持ち。何にもわかってなかった。正直に言う。俺は今回の計画には反対だよ。飛流さんがいなくなるなんて……、話が違う」
「誰がいなくなるなんて言ったの? 私は芽依よ。芽依として生きていきたいと思ってることがどうして間違いだなんて言うの?」
「本当に芽依になれる? もしかしたら、芽依も飛流さんもいなくなるかもしれないのに。そうなったら、俺は後悔する。後悔してもしきれない」
「その時は……、運命だったと思いましょう」
「え……」
凪は呆然と私を見つめる。
私がそれを考えなかったとでも思っていたのだろうか。明日何が起きても、今よりは幸せになれると思うから、この道を選んだのに。
「来世で会えると言ってくれたじゃない。私は常に最善の方法を選んで生きていきたいわ」
「それが最善? 今の生活を全部なくすかもしれないリスクがあるとわかってて、どうしてそれが最善だなんて言える?」
「今の生活に……、何があるの?」
祖父母を失った私はずっと一人だった。両親から疎まれ、芽依とも分かり合えなくて、友人すら作ることも叶わなくて……。ようやく得た愛する人にさえ、恐怖しか与えられない人生に何があるというのだ。
「……何もないなんてことはないよ」
凪は私の手をつかむ。眉をひそめながら、冷たいその手を優しく包み込む。
「触らないで……」
かすれたか細い声が出た。しかし、凪は苦しげに息を吐くだけで手を離してくれない。
「そんな顔しないで、木梨くん」
「俺は考えられないよ、飛流さんのいない人生なんて。好きだって言った。ずっと離れないって約束した。それなのに、俺から離れようとしないでほしい」
「木梨くん……、離れたりしないわ。ただ……」
「芽依として俺の側にいてくれたって俺は嬉しくない。俺が好きなのは飛流さんだ。飛流那波だよ」
「……それでも」
凪は私の言葉を遮るように首を横に振る。
「飛流さんは自分の何が好きなのかって俺に聞いたけど、好きなところは心だけじゃないよ。この黒髪も……」
凪は依然と苦しげに眉を寄せたまま、私の髪に指を通し、そのまま頬に指を這わす。
「この黒い瞳も……、色白なところも、全部好きだよ。今のままの飛流さんが好きだよ。何一つ欠けたらダメなんだ」
悲しげに息を吐き出す凪の手首をつかみ、彼の目を見つめる。頼りなく眉の下がる彼の表情に心が痛む。しかし、私は問わずにはいられない。
「私を抱きしめられるの? 木梨くん」
凪は息を飲む。それは迷いだ。期待があったわけではないのに、ますます心はキリキリと痛んだ。
こんな冷たい身体、誰にも躊躇なく触れられはしないだろう。
「返事ができないのね。でもそれが答えよ。いくら好きでも、乗り越えられないことがあるなら、それは別れを意味するんだわ」
凪はうつむく。返す言葉がないのだ。もう終わりだ。淡い恋は簡単に消えるのだ。
「もう帰るといいわ、木梨くん。私に出会ったことは夢の中の出来事。夢から覚めたら、芽依を好きになってもらえたら嬉しいわ」
「そんな、……そんなこと出来るわけないじゃないかっ」
顔を上げ、そう叫んだ凪にいきなり抱きしめられた。とっさにあらがったけれど、力強い彼の腕から逃れることが出来ない。
「木梨くん……」
凪は震えていた。震えながら、私を離すまいと必死にたぐり寄せるように抱きしめてくる。
「俺が好き?」
くぐもる声は、彼が泣いているからだろうか。切なげで胸が苦しくなる。
「……木梨くん」
「好きだって……、聞きたい」
私はゆっくりと両手を伸ばした。一向に震えがおさまらない彼を救いたくて、冷たい手で抱きしめ返した。
「好きよ、木梨くん。これから先もずっとよ。ずっとあなただけしか好きにならないわ、私」
「飛流さん、俺もだ」
私の目を見つめる凪の顔が近づく。
それはあまりにも自然な行為のような気がして、私はそのまま重なる唇を受け止めた。
凪の背中に回した手で、彼のシャツをつかんだ。柔らかく重なった彼の唇が、隙間なく深く重なってくる。彼のぬくもりが優しく唇から伝わってくる。
凪は冷たいだろう。私が彼のぬくもりを感じるということは、それだけ彼に冷たさを与えているのだ。それでもキスはやまなくて、躊躇することなく重なり続ける。
彼のキスが苦しくて、それでも受けとめたくて、必死にかかとを上げた。
「木梨くん……」
不意に唇が離れ、呼吸を乱した私の身体が崩れ落ちそうになるのを、彼は軽々と抱きとめる。男らしい凪に、激しく高鳴る胸が鳴り止まない。
「飛流さん、すごく可愛い……。なんか反則だ」
凪を見上げる私の頬を、彼の手のひらが優しく包む。白くて冷たいだけの頬なのに、ほんのりぬくもりが宿るような気がするのは私だけだろう。
「那波……、って呼びたい」
芽依としての私はいらない。今の私を構築する那波だけを好きだと言われたようで、私も彼の頬に指を触れさせた。
「私だって……、芽依のように、凪って呼びたかったわ」
目を細めた凪は、愛しいものを抱くように、優しく私を両腕で包み込んだ。
いつものように紅茶を淹れる。レモンティーの缶の底には一人分の粉が残る。
心理学研究部の部室に、もう来客はない。この残った紅茶を飲むはずの私ももう、ここへは来ないだろう。
そっと缶の蓋を閉じた手で、ティーカップの中をスプーンでかき混ぜた。
なんだか変だ。物足りない。
ずっと一人だったのに、一人でいることに違和感を覚えている。紅茶をもう一つ用意した毎日も、もう終わるのだ。
揺れる水面をしばらくじっと見つめていると、突然開いた部室のドアが、大きな音を立てて壁にぶつかった。
「飛流さんっ、……良かった、いてくれて」
「木梨くん、どうしたの?」
息を切らした凪が、驚く私の前まで走ってくる。前髪を乱したりして、ずっと走ってきたのだろう。
「あ、あのっ、何から話したらいいかな」
凪は私と目を合わせると、戸惑うように髪をくしゃりとつかむ。
「紅茶飲むかしら? 少し落ち着くわ」
レモンティーの缶に手を伸ばそうとすると、凪は「紅茶はいいんだ」と言う。
「テストはどうだったの? 木梨くん。慌てた様子を見ると、ヤマが当たったってところかしら?」
「飛流さんでもそんな冗談言うんだ? でも違うよ。そりゃ、飛流さんが予想したところはかなり出たから、今回は自信あるよ。……って、そうじゃなくてさ、真面目な話をしに来たんだよ」
そう言って凪が身を正すから、私はティーカップを持ち上げようとした手を止めた。
「明日の話ね」
すぐに凪が何も言い出さないから、私から口を開いた。
「何を聞いてここへ来たのか知らないけれど、木梨くんが心配するようなことは何もないの。話すようなことはないわ」
「心配とかじゃないよ……」
凪は両手に拳を握る。
「心配して来たんじゃない。明日の計画は中止してほしい。そのお願いに来たんだ」
「なぜ?」
「時間がないからだよ。条件さえ合うなら、何も明日じゃなくてもいいよな? 七月三十日まではまだ何日もあるよ。もっとよく考える時間があってもいいと思う」
「いまさら何? 木梨くんが協力してくれたから、明日試せるのよ? 先延ばしにはしたくないわ」
「芽依も樋野先輩も、この計画には乗り気じゃないみたいだった」
「そうね、そうかもしれないわ。でも私の気持ちを理解してくれたとは思ってるわ」
「樋野先輩のための計画だろう? だったら、乗り気じゃない先輩を巻き込むのは良くないよ。それとも……」
凪は一歩私に近づく。
窓辺に立つ私は一歩足を下げたが、背中が窓にぶつかって、それ以上は動けない。
「それとも、他に理由がある?」
顔をそむけようとする私の肩をつかんだ凪は、私の耳にはっきりと聞こえる声で言った。
「俺のためだって思ってるなら、飛流さんのしようとしてることは間違ってるよ」
ハッと凪を見上げたら、彼はやけに悲しげに眉を下げる。
「なぜそんなこと言うの? あなたは理解してくれてたじゃない」
「知らなかったんだ、飛流さんの気持ち。何にもわかってなかった。正直に言う。俺は今回の計画には反対だよ。飛流さんがいなくなるなんて……、話が違う」
「誰がいなくなるなんて言ったの? 私は芽依よ。芽依として生きていきたいと思ってることがどうして間違いだなんて言うの?」
「本当に芽依になれる? もしかしたら、芽依も飛流さんもいなくなるかもしれないのに。そうなったら、俺は後悔する。後悔してもしきれない」
「その時は……、運命だったと思いましょう」
「え……」
凪は呆然と私を見つめる。
私がそれを考えなかったとでも思っていたのだろうか。明日何が起きても、今よりは幸せになれると思うから、この道を選んだのに。
「来世で会えると言ってくれたじゃない。私は常に最善の方法を選んで生きていきたいわ」
「それが最善? 今の生活を全部なくすかもしれないリスクがあるとわかってて、どうしてそれが最善だなんて言える?」
「今の生活に……、何があるの?」
祖父母を失った私はずっと一人だった。両親から疎まれ、芽依とも分かり合えなくて、友人すら作ることも叶わなくて……。ようやく得た愛する人にさえ、恐怖しか与えられない人生に何があるというのだ。
「……何もないなんてことはないよ」
凪は私の手をつかむ。眉をひそめながら、冷たいその手を優しく包み込む。
「触らないで……」
かすれたか細い声が出た。しかし、凪は苦しげに息を吐くだけで手を離してくれない。
「そんな顔しないで、木梨くん」
「俺は考えられないよ、飛流さんのいない人生なんて。好きだって言った。ずっと離れないって約束した。それなのに、俺から離れようとしないでほしい」
「木梨くん……、離れたりしないわ。ただ……」
「芽依として俺の側にいてくれたって俺は嬉しくない。俺が好きなのは飛流さんだ。飛流那波だよ」
「……それでも」
凪は私の言葉を遮るように首を横に振る。
「飛流さんは自分の何が好きなのかって俺に聞いたけど、好きなところは心だけじゃないよ。この黒髪も……」
凪は依然と苦しげに眉を寄せたまま、私の髪に指を通し、そのまま頬に指を這わす。
「この黒い瞳も……、色白なところも、全部好きだよ。今のままの飛流さんが好きだよ。何一つ欠けたらダメなんだ」
悲しげに息を吐き出す凪の手首をつかみ、彼の目を見つめる。頼りなく眉の下がる彼の表情に心が痛む。しかし、私は問わずにはいられない。
「私を抱きしめられるの? 木梨くん」
凪は息を飲む。それは迷いだ。期待があったわけではないのに、ますます心はキリキリと痛んだ。
こんな冷たい身体、誰にも躊躇なく触れられはしないだろう。
「返事ができないのね。でもそれが答えよ。いくら好きでも、乗り越えられないことがあるなら、それは別れを意味するんだわ」
凪はうつむく。返す言葉がないのだ。もう終わりだ。淡い恋は簡単に消えるのだ。
「もう帰るといいわ、木梨くん。私に出会ったことは夢の中の出来事。夢から覚めたら、芽依を好きになってもらえたら嬉しいわ」
「そんな、……そんなこと出来るわけないじゃないかっ」
顔を上げ、そう叫んだ凪にいきなり抱きしめられた。とっさにあらがったけれど、力強い彼の腕から逃れることが出来ない。
「木梨くん……」
凪は震えていた。震えながら、私を離すまいと必死にたぐり寄せるように抱きしめてくる。
「俺が好き?」
くぐもる声は、彼が泣いているからだろうか。切なげで胸が苦しくなる。
「……木梨くん」
「好きだって……、聞きたい」
私はゆっくりと両手を伸ばした。一向に震えがおさまらない彼を救いたくて、冷たい手で抱きしめ返した。
「好きよ、木梨くん。これから先もずっとよ。ずっとあなただけしか好きにならないわ、私」
「飛流さん、俺もだ」
私の目を見つめる凪の顔が近づく。
それはあまりにも自然な行為のような気がして、私はそのまま重なる唇を受け止めた。
凪の背中に回した手で、彼のシャツをつかんだ。柔らかく重なった彼の唇が、隙間なく深く重なってくる。彼のぬくもりが優しく唇から伝わってくる。
凪は冷たいだろう。私が彼のぬくもりを感じるということは、それだけ彼に冷たさを与えているのだ。それでもキスはやまなくて、躊躇することなく重なり続ける。
彼のキスが苦しくて、それでも受けとめたくて、必死にかかとを上げた。
「木梨くん……」
不意に唇が離れ、呼吸を乱した私の身体が崩れ落ちそうになるのを、彼は軽々と抱きとめる。男らしい凪に、激しく高鳴る胸が鳴り止まない。
「飛流さん、すごく可愛い……。なんか反則だ」
凪を見上げる私の頬を、彼の手のひらが優しく包む。白くて冷たいだけの頬なのに、ほんのりぬくもりが宿るような気がするのは私だけだろう。
「那波……、って呼びたい」
芽依としての私はいらない。今の私を構築する那波だけを好きだと言われたようで、私も彼の頬に指を触れさせた。
「私だって……、芽依のように、凪って呼びたかったわ」
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