44 / 119
寝室までの距離
24
しおりを挟む
それからは、食事をしながら純ちゃんの話をした。それが二人の共通の話題で、当たり障りのない会話が出来るということに、私たちは気づいていたからだ。
朔くんは穏やかで、優しい青年。私の話を聞いて、愉快げに笑ってくれる。
湊くんと一緒にいる時と同様の居心地の良さを感じさせてくれる人だ。
「もっと早くお友達になれたら良かったね」
素直にそう思えて言うと、朔くんは困り顔を見せる。
「湊先輩よりも先に出会えてたら、何か違ったのかな……」
「……」
「あ、いや、そうだったら好きな時に会えたのかもと思っただけで。あ、違う……、そういうんじゃなくて」
「ありがとう、朔くん。私、男友達いないからあんまり気にしてなかったけど、結婚すると、こうやってお友達と会うだけなのに変な気を遣うんだなって思うの」
朔くんの心配はなんとなくわかる。結婚するって、こういう不自由な面も出るってことも。
「それは仕方のないことですから」
「私がちゃんとしてればいい話だよね。湊くんを不安にさせないようにしたいの」
「大丈夫ですよ。湊先輩は沙耶さんと結婚してからずいぶんと柔らかくなりました。きっと幸せなんですよ」
「本当……?」
「俺はそう思います。じゃあ、行きましょう」
これ以上話が長くなってはいけないと朔くんが伝票に手を伸ばした時、彼の背後に一人の青年が現れた。
私の視線はすぐにその青年に釘付けになった。
別に朔くんと食事をしていることにやましいことなんてない。そう思うのに、私の呼吸は急激に乱れ始める。
不安を明らかに浮かべた私の表情に気づいて、朔くんは眉を寄せる。不審に思って振り返り、真後ろに立つ青年を見上げた。
青年は朔くんを見下ろし、「へえー」と言う。そのまま視線を私に向け、にやりと笑う。
「沙耶ちゃんは意外と悪女だね。純情そうなふりして、湊を騙してるんだ?」
「ち、違います」
首を横に振り、誤解だと訴えるけど、一向に胸の高鳴りは収まらない。
なぜだろう。なぜこんなにも焦燥感を覚えるのだろう。
「まあ、俺はかまわないけど。お互いさまのことだしな」
青年は不気味な笑顔を浮かべたまま、朔くんの隣に腰を下ろした。そして、まるで臨戦態勢のように身を乗り出す。
「今日は話があって来たんだ。どう話したものかと悩んだが、あまり気を遣う必要はないみたいだったな」
「話……、ですか?」
私の声が震えたことに気づいた朔くんは眉をひそめる。
「どなたですか?」
私に聞いたのか、青年に尋ねたのか、朔くんがそう言った時、目を伏せようとする私の目に映ったのは、唇の端を持ち上げる青年の顔だ。
「結城秀人だよ。結城グループの会社に勤務してるなら、俺の顔ぐらい覚えておくんだな」
「結城……」
絶句した朔くんはもう気づいているのだろう。しかし、秀人さんは追い討ちをかけるように言う。
「結城湊の兄だよ、山口朔くん。湊の女とホテルで食事かい? 君もずいぶんと大胆な男だね」
「秀人さん、朔くんはここの料理が美味しいからって連れてきてくれただけなんです。秀人さんが思ってるようなことは誤解で……」
秀人さんは朔くんの名前を知っている。湊くんがわざわざ秀人さんに朔くんの話をするとは思えない。だとしたら、朔くんのことは結城に調べられているということかもしれない。
朔くんに迷惑をかけてはいけない。
とっさに朔くんをかばったけれど、秀人さんは「どうでもいいことだよ」と、興味なさげに私の言葉を遮った。
正月に会った時の秀人さんは常に笑顔だったけれど、今は違う。こんなに怖い表情をするのだと驚くほど、冷酷な目をする。
息を飲む私を心配そうに見つめる朔くんを、やはりこれ以上巻き込んではいけないと思う。それほどに秀人さんの表情は不穏だ。
「朔くん、もう大丈夫だから帰っていいよ」
「でも……」
秀人さんをちらりと見る朔くんにうなずきかけるが、秀人さんは椅子にもたれて腕を広げ、朔くんの立ち上がるスペースを塞いだ。
「帰る必要はない。聞かれて困る話じゃないからな」
「どんな、お話ですか?」
「その前に忠告しておくが、この辺りで沙耶ちゃんの身に起きたことは大概俺の耳に入るようになっている。今後は軽率な行動は控えるか、別の場所でするんだな」
「お友達とお食事してるだけです……」
それを軽率な行動だなんて言われたら、朔くんにも申し訳ない。私の反論が気に入らなかったのか、秀人さんは挑むような目で薄く笑う。
「へえ、そう。湊には山口純と食事するって連絡したそうじゃないか。嘘をついて男と食事することにやましさはないのかい?」
「それは……」
秀人さんは何もかも知ってるのだろうか。もしかしたら、知野先輩と会っていたことも知っているかもしれない。どちらにしろ、本当のことを湊くんが知ったら、いい顔はしないだろう。
「心配はいらない。沙耶ちゃんに似た女が男とホテルに入っていったと聞いて、湊には君がマンションにいるのか確認しただけだよ。湊は何も知らずに沙耶ちゃんの帰りを楽しみに待ってるだけの愚弟さ。君の浮気なんて想像を絶してるんだろうね」
「だから確認しに来たんですか? 私がマンションにいないと知って……」
「そういうことだよ。湊の恥は結城の恥だからな。君が軽率なことをすると、俺が毎度立ち回らなきゃいけなくなる。まあ、今日はちょうど話があったから出張ってきただけさ。ただ情報が俺の耳に入ることだけは知っておけよ」
「今日のことは……、反省します……」
そう言わなくては秀人さんは納得しないだろう。そう思い頭を下げると、朔くんは物言いたげな目をした。私が首を横に振るのを見て、何か言うのは得策ではないとわかってくれたのか口をつぐんだ。
「わかればいい。さて本題だが、話は二つある。一つ目は着物のことだ」
「着物……?」
「そう。正月に母さんが君にあげた着物だよ。あれを始末したいと頼まれていてね。近いうちに俺のところへ持ってきてもらいたいんだ」
「始末って」
それに頼まれたって。
秀人さんは細かい説明を面倒臭がらないが、それは決して優しさではない。薄笑いを浮かべたまま、曇る私の表情をジッと見つめてくる。
「俺はね、父さん以外の人間に何を頼まれたって動かない主義なんだ。逆に言うと、父さんに頼まれたことはどんな理不尽なことでも引き受ける。それを完遂するのが、結城に生まれた俺の定めでね」
「着物を始末するように、お父さんが頼んだんですか?」
「正確に言うと、俺の父親がね。まるで沙耶ちゃんの父さんでもあるかのような言い方は誤解のもとだ」
「どういう……」
「それが一つ目の話だ。二つ目の話は今の話に付随する」
秀人さんはまるで言伝さえ出来ればいいというように、私の意見に耳を傾ける気はないようだ。
「二つ目は彼も興味がある話かもしれない」
秀人さんはそう言うと、息を飲んで私たちの話を聞いていた朔くんの肩に、手を置いた。
朔くんは穏やかで、優しい青年。私の話を聞いて、愉快げに笑ってくれる。
湊くんと一緒にいる時と同様の居心地の良さを感じさせてくれる人だ。
「もっと早くお友達になれたら良かったね」
素直にそう思えて言うと、朔くんは困り顔を見せる。
「湊先輩よりも先に出会えてたら、何か違ったのかな……」
「……」
「あ、いや、そうだったら好きな時に会えたのかもと思っただけで。あ、違う……、そういうんじゃなくて」
「ありがとう、朔くん。私、男友達いないからあんまり気にしてなかったけど、結婚すると、こうやってお友達と会うだけなのに変な気を遣うんだなって思うの」
朔くんの心配はなんとなくわかる。結婚するって、こういう不自由な面も出るってことも。
「それは仕方のないことですから」
「私がちゃんとしてればいい話だよね。湊くんを不安にさせないようにしたいの」
「大丈夫ですよ。湊先輩は沙耶さんと結婚してからずいぶんと柔らかくなりました。きっと幸せなんですよ」
「本当……?」
「俺はそう思います。じゃあ、行きましょう」
これ以上話が長くなってはいけないと朔くんが伝票に手を伸ばした時、彼の背後に一人の青年が現れた。
私の視線はすぐにその青年に釘付けになった。
別に朔くんと食事をしていることにやましいことなんてない。そう思うのに、私の呼吸は急激に乱れ始める。
不安を明らかに浮かべた私の表情に気づいて、朔くんは眉を寄せる。不審に思って振り返り、真後ろに立つ青年を見上げた。
青年は朔くんを見下ろし、「へえー」と言う。そのまま視線を私に向け、にやりと笑う。
「沙耶ちゃんは意外と悪女だね。純情そうなふりして、湊を騙してるんだ?」
「ち、違います」
首を横に振り、誤解だと訴えるけど、一向に胸の高鳴りは収まらない。
なぜだろう。なぜこんなにも焦燥感を覚えるのだろう。
「まあ、俺はかまわないけど。お互いさまのことだしな」
青年は不気味な笑顔を浮かべたまま、朔くんの隣に腰を下ろした。そして、まるで臨戦態勢のように身を乗り出す。
「今日は話があって来たんだ。どう話したものかと悩んだが、あまり気を遣う必要はないみたいだったな」
「話……、ですか?」
私の声が震えたことに気づいた朔くんは眉をひそめる。
「どなたですか?」
私に聞いたのか、青年に尋ねたのか、朔くんがそう言った時、目を伏せようとする私の目に映ったのは、唇の端を持ち上げる青年の顔だ。
「結城秀人だよ。結城グループの会社に勤務してるなら、俺の顔ぐらい覚えておくんだな」
「結城……」
絶句した朔くんはもう気づいているのだろう。しかし、秀人さんは追い討ちをかけるように言う。
「結城湊の兄だよ、山口朔くん。湊の女とホテルで食事かい? 君もずいぶんと大胆な男だね」
「秀人さん、朔くんはここの料理が美味しいからって連れてきてくれただけなんです。秀人さんが思ってるようなことは誤解で……」
秀人さんは朔くんの名前を知っている。湊くんがわざわざ秀人さんに朔くんの話をするとは思えない。だとしたら、朔くんのことは結城に調べられているということかもしれない。
朔くんに迷惑をかけてはいけない。
とっさに朔くんをかばったけれど、秀人さんは「どうでもいいことだよ」と、興味なさげに私の言葉を遮った。
正月に会った時の秀人さんは常に笑顔だったけれど、今は違う。こんなに怖い表情をするのだと驚くほど、冷酷な目をする。
息を飲む私を心配そうに見つめる朔くんを、やはりこれ以上巻き込んではいけないと思う。それほどに秀人さんの表情は不穏だ。
「朔くん、もう大丈夫だから帰っていいよ」
「でも……」
秀人さんをちらりと見る朔くんにうなずきかけるが、秀人さんは椅子にもたれて腕を広げ、朔くんの立ち上がるスペースを塞いだ。
「帰る必要はない。聞かれて困る話じゃないからな」
「どんな、お話ですか?」
「その前に忠告しておくが、この辺りで沙耶ちゃんの身に起きたことは大概俺の耳に入るようになっている。今後は軽率な行動は控えるか、別の場所でするんだな」
「お友達とお食事してるだけです……」
それを軽率な行動だなんて言われたら、朔くんにも申し訳ない。私の反論が気に入らなかったのか、秀人さんは挑むような目で薄く笑う。
「へえ、そう。湊には山口純と食事するって連絡したそうじゃないか。嘘をついて男と食事することにやましさはないのかい?」
「それは……」
秀人さんは何もかも知ってるのだろうか。もしかしたら、知野先輩と会っていたことも知っているかもしれない。どちらにしろ、本当のことを湊くんが知ったら、いい顔はしないだろう。
「心配はいらない。沙耶ちゃんに似た女が男とホテルに入っていったと聞いて、湊には君がマンションにいるのか確認しただけだよ。湊は何も知らずに沙耶ちゃんの帰りを楽しみに待ってるだけの愚弟さ。君の浮気なんて想像を絶してるんだろうね」
「だから確認しに来たんですか? 私がマンションにいないと知って……」
「そういうことだよ。湊の恥は結城の恥だからな。君が軽率なことをすると、俺が毎度立ち回らなきゃいけなくなる。まあ、今日はちょうど話があったから出張ってきただけさ。ただ情報が俺の耳に入ることだけは知っておけよ」
「今日のことは……、反省します……」
そう言わなくては秀人さんは納得しないだろう。そう思い頭を下げると、朔くんは物言いたげな目をした。私が首を横に振るのを見て、何か言うのは得策ではないとわかってくれたのか口をつぐんだ。
「わかればいい。さて本題だが、話は二つある。一つ目は着物のことだ」
「着物……?」
「そう。正月に母さんが君にあげた着物だよ。あれを始末したいと頼まれていてね。近いうちに俺のところへ持ってきてもらいたいんだ」
「始末って」
それに頼まれたって。
秀人さんは細かい説明を面倒臭がらないが、それは決して優しさではない。薄笑いを浮かべたまま、曇る私の表情をジッと見つめてくる。
「俺はね、父さん以外の人間に何を頼まれたって動かない主義なんだ。逆に言うと、父さんに頼まれたことはどんな理不尽なことでも引き受ける。それを完遂するのが、結城に生まれた俺の定めでね」
「着物を始末するように、お父さんが頼んだんですか?」
「正確に言うと、俺の父親がね。まるで沙耶ちゃんの父さんでもあるかのような言い方は誤解のもとだ」
「どういう……」
「それが一つ目の話だ。二つ目の話は今の話に付随する」
秀人さんはまるで言伝さえ出来ればいいというように、私の意見に耳を傾ける気はないようだ。
「二つ目は彼も興味がある話かもしれない」
秀人さんはそう言うと、息を飲んで私たちの話を聞いていた朔くんの肩に、手を置いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる