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別離までの距離
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日曜日の今日、昼食を終えてからチョコレートケーキを作り始めると、湊くんはちょっと楽しそうにカウンター越しに私の手元を覗いた。
「材料はそろってるのか?」
「うん、昨日純ちゃんと買ってきたの」
「ああ、あの荷物か。それにしても、大きい荷物だったな」
湊くんは思い出したようにうなずき、猜疑心を見せた。別に誤解されるようなことは何もないから、私も笑顔でうなずく。
「他にもね、同じ部署の人にあげるチョコを買ってきたの」
「義理でチョコなんてもらっても嬉しくないのにな」
「喜んでくれてるよー」
「それはエゴだよ。まあ別に、恒例行事をどうこう言うつもりもないけどね。中には義理だなんて気付かずに喜んで受け取る男もいるだろうから、気をつけるんだな」
湊くんの言い方にはいつも笑ってしまう。
「湊くんは心配しすぎだよ。みんな、イベントを楽しんでるだけなんだから」
「じゃあ、俺もせいぜい楽しませてもらうとするか。ケーキはいつ焼ける?」
「まだ作り始めたばっかりだよ。夕方ぐらいまでかかると思うよ」
「夕方? ふぅん、まあ、いいか」
湊くんは壁掛け時計を確認しながら、思案げにうなずくと、「ちょっと仕事してくる」と寝室へ入っていった。
チョコレートケーキは何度か作ったことがある。でも、誰かにプレゼントしたりするのは初めてのことだ。
失敗しないようにと緊張しながら、レシピに忠実に作っていく。途中で湊くんが見に来るかと思っていたけれど、寝室のドアが開く気配もない。
湊くんは私に合わせてくれているだけで、本当のところはバレンタインデーもチョコレートケーキも興味がないのだろう。
いつも他の女の子からチョコをどのぐらいもらうのかと気にしたって仕方がない。それ以上に、湊くんはチョコをくれる女性に興味がないだろう。
それはやはり、私を大切に思ってくれている証拠なのだとも思えて、喜びを感じながら泡立て器を握った。
型に流し込んだ生地をオーブンの中に入れた後、カウンターの上に乗せておいたスマホにメールが届いていたことを思い出した。確認すると、純ちゃんからのメールが入っていた。
内容は、私と純ちゃんと三人で飲みに行こうと、先日朔くんに送ったメールにようやく返事が来たというものだった。
いつでもかまわないと、朔くんは承諾する返事をくれたらしい。だから、純ちゃんは来週にでも行かない?と誘ってくれる。
湊くんに聞いてから返事しようと思い、いったんスマホをカウンターに戻してから、ケーキが焼きあがるのを待った。
しばらくすると、ケーキの焼けてくるいい香りがした。寝室にまでその匂いが届くとは思えないけど、いまだに湊くんが出てくる気配はない。
仕事をすると言っていたけど、そんなに忙しいのだろうか。だとしたら、邪魔してはいけない。
迷いつつ、ケーキが出来たことは知らせようと思い、寝室へ向かう。
軽く寝室のドアをノックしてみたが、返事はない。少し間を空けてもう一度ノックし、それでも返事はないから、そっとドアを開けてみた。
寝室の中にはベッドの他に、パソコンの乗った机がある。しかし、その机に向かう背中はなく、あるのはベッドに横になる湊くんの姿だった。
明らかに眠っている彼にそっと近づき、足元にある毛布を引っ張って身体にかけた。途端、ハッと彼の目が見開かれたが、私の顔を見つけるとすぐ、彼は安堵したように息をついた。
「沙耶……、どうした?」
目を細め、身体を横にしたまま、湊くんの顔を覗き込む私の髪に指を絡ませてくる。
「ケーキが焼けたから……」
「もうそんな時間か?」
枕元の目覚まし時計で時間を確認した彼は、「まだいい時間だ」と意味不明につぶやき、私の頬にそっと指を滑らせる。
「湊くん、あの……」
「ケーキ食べる?」
「ケーキはまだ食べれないけど、あのね、来週なんだけど……」
「話は長くなる?」
まだ寝ぼけているのだろうか。湊くんの指はするりと、私の髪を一つに束ねるシュシュを外す。髪がほどけて肩や背中に広がるのを見て、彼はますます目を細めた。
「来週、純ちゃんたちとディナーに行ってきたいの」
「そう。たまにはいいんじゃないか?」
湊くんは二つ返事して身体を起こすが、ふと何かに気づいたように眉を寄せた。
「純ちゃんたち? 二人で行くんじゃないのか?」
「うん……」
ベッドに腰かけた状態で、私の肩に手を置いた彼は、そっと唇を頬に寄せてくる。
「純ちゃん以外に親友がいるのか?」
ちょっと笑った彼の息が頬をくすぐるが、そのまま唇は頬を這っていく。
「湊くん……」
「ケーキが焼けたなら、もう俺の相手をしてくれてもいいだろう?」
「……え、でもまだ純ちゃんにあげるチョコ作ってないし」
「そんなものまで作るのか? 既製品で十分だろう」
「今年は手作りするって約束したの」
そう言っている間にも、湊くんの指は首の後ろで結ばれたエプロンのひもをほどいていく。
「約束なんて反故にしたらいい」
「そんなわけにはいかないよ」
「だったらケーキをあげたらどうだ? 俺はひと切れあれば十分だ」
「ケーキは湊くんのために焼いたのに……」
「その俺がかまわないと言ってるんだから、いいよ」
「湊くん……っ」
エプロンが足元に落ちる。拾おうとする私の身体は、ベッドの上へと、たくましい彼の腕に抱き上げられていた。
「久しぶりに、いい?」
湊くんは私の顔を覗き込み、至近距離でそっと笑う。
「ダメだよ……」
「どうして?」
「だってまだ片付けもしてないし、純ちゃんにケーキあげるなんて決めてないし、純ちゃんにもメールしなきゃ……」
「そんなの後でもいいだろう?」
「湊くんこそ、後でも」
「後ならいいんだね?」
「そんな言い方ずるいよー……」
「俺は今でもいいんだよ。というより、今抱きたい」
「湊くん……、あの、さっきの話なんだけど」
あんまりストレートな言葉と、ストレートな眼差しに見つめられると、恥ずかしさが込み上げる。
「さっき?」
「ディナーに行くって話」
「ああ。純ちゃんたちと行くんだろう? 行ってきたらいいよ」
湊くんは早くこの会話を終わらせたいみたいに、投げやりな返事をする。
「その、純ちゃんとね、あともう一人は……」
「三人で行くのか?」
「うん、純ちゃんと朔くんと行くの」
「そう……」
さらりと聞き流した湊くんだが、私の背中に腕を回しかけて、ふと動きを止めた。
「朔?」
「純ちゃんが三人で行かないかって」
「朔から純ちゃんの話は聞いたことがないけどね。そんなに仲良しのふたごか?」
「うん、仲良しだよ。純ちゃんがいるなら、朔くんに会ってもいい?」
「純ちゃんをダシにして、朔に会いたいと言ってるように聞こえるが?」
「そうじゃないよ……」
朔くんのことになると、すぐに話が歪曲してしまう。
「朔はそんなにいいか?」
「お話してると楽しいよ」
「俺と過ごすより?」
「湊くんと一緒にいる時間とは比べられないよ。私は湊くんのこと一番に考えてるよ」
「へえー、だったら今から俺に抱かれろよ。俺のことを考えてるなら、カラダで証明できるよね?」
意地悪く笑う湊くんから目をそらす。
「湊くん……、嫌じゃないよ。嫌じゃないけど、そんな言い方は嫌だよ……」
「俺は朔の名前を聞くだけで不愉快だ」
「……湊くん」
「行くなとは言わないが、今から君を抱かなきゃ気が収まらない」
湊くんはもう会話は不要だというように、私の唇に唇を寄せ、乱暴な言葉とは裏腹な優しいキスをした。
日曜日の今日、昼食を終えてからチョコレートケーキを作り始めると、湊くんはちょっと楽しそうにカウンター越しに私の手元を覗いた。
「材料はそろってるのか?」
「うん、昨日純ちゃんと買ってきたの」
「ああ、あの荷物か。それにしても、大きい荷物だったな」
湊くんは思い出したようにうなずき、猜疑心を見せた。別に誤解されるようなことは何もないから、私も笑顔でうなずく。
「他にもね、同じ部署の人にあげるチョコを買ってきたの」
「義理でチョコなんてもらっても嬉しくないのにな」
「喜んでくれてるよー」
「それはエゴだよ。まあ別に、恒例行事をどうこう言うつもりもないけどね。中には義理だなんて気付かずに喜んで受け取る男もいるだろうから、気をつけるんだな」
湊くんの言い方にはいつも笑ってしまう。
「湊くんは心配しすぎだよ。みんな、イベントを楽しんでるだけなんだから」
「じゃあ、俺もせいぜい楽しませてもらうとするか。ケーキはいつ焼ける?」
「まだ作り始めたばっかりだよ。夕方ぐらいまでかかると思うよ」
「夕方? ふぅん、まあ、いいか」
湊くんは壁掛け時計を確認しながら、思案げにうなずくと、「ちょっと仕事してくる」と寝室へ入っていった。
チョコレートケーキは何度か作ったことがある。でも、誰かにプレゼントしたりするのは初めてのことだ。
失敗しないようにと緊張しながら、レシピに忠実に作っていく。途中で湊くんが見に来るかと思っていたけれど、寝室のドアが開く気配もない。
湊くんは私に合わせてくれているだけで、本当のところはバレンタインデーもチョコレートケーキも興味がないのだろう。
いつも他の女の子からチョコをどのぐらいもらうのかと気にしたって仕方がない。それ以上に、湊くんはチョコをくれる女性に興味がないだろう。
それはやはり、私を大切に思ってくれている証拠なのだとも思えて、喜びを感じながら泡立て器を握った。
型に流し込んだ生地をオーブンの中に入れた後、カウンターの上に乗せておいたスマホにメールが届いていたことを思い出した。確認すると、純ちゃんからのメールが入っていた。
内容は、私と純ちゃんと三人で飲みに行こうと、先日朔くんに送ったメールにようやく返事が来たというものだった。
いつでもかまわないと、朔くんは承諾する返事をくれたらしい。だから、純ちゃんは来週にでも行かない?と誘ってくれる。
湊くんに聞いてから返事しようと思い、いったんスマホをカウンターに戻してから、ケーキが焼きあがるのを待った。
しばらくすると、ケーキの焼けてくるいい香りがした。寝室にまでその匂いが届くとは思えないけど、いまだに湊くんが出てくる気配はない。
仕事をすると言っていたけど、そんなに忙しいのだろうか。だとしたら、邪魔してはいけない。
迷いつつ、ケーキが出来たことは知らせようと思い、寝室へ向かう。
軽く寝室のドアをノックしてみたが、返事はない。少し間を空けてもう一度ノックし、それでも返事はないから、そっとドアを開けてみた。
寝室の中にはベッドの他に、パソコンの乗った机がある。しかし、その机に向かう背中はなく、あるのはベッドに横になる湊くんの姿だった。
明らかに眠っている彼にそっと近づき、足元にある毛布を引っ張って身体にかけた。途端、ハッと彼の目が見開かれたが、私の顔を見つけるとすぐ、彼は安堵したように息をついた。
「沙耶……、どうした?」
目を細め、身体を横にしたまま、湊くんの顔を覗き込む私の髪に指を絡ませてくる。
「ケーキが焼けたから……」
「もうそんな時間か?」
枕元の目覚まし時計で時間を確認した彼は、「まだいい時間だ」と意味不明につぶやき、私の頬にそっと指を滑らせる。
「湊くん、あの……」
「ケーキ食べる?」
「ケーキはまだ食べれないけど、あのね、来週なんだけど……」
「話は長くなる?」
まだ寝ぼけているのだろうか。湊くんの指はするりと、私の髪を一つに束ねるシュシュを外す。髪がほどけて肩や背中に広がるのを見て、彼はますます目を細めた。
「来週、純ちゃんたちとディナーに行ってきたいの」
「そう。たまにはいいんじゃないか?」
湊くんは二つ返事して身体を起こすが、ふと何かに気づいたように眉を寄せた。
「純ちゃんたち? 二人で行くんじゃないのか?」
「うん……」
ベッドに腰かけた状態で、私の肩に手を置いた彼は、そっと唇を頬に寄せてくる。
「純ちゃん以外に親友がいるのか?」
ちょっと笑った彼の息が頬をくすぐるが、そのまま唇は頬を這っていく。
「湊くん……」
「ケーキが焼けたなら、もう俺の相手をしてくれてもいいだろう?」
「……え、でもまだ純ちゃんにあげるチョコ作ってないし」
「そんなものまで作るのか? 既製品で十分だろう」
「今年は手作りするって約束したの」
そう言っている間にも、湊くんの指は首の後ろで結ばれたエプロンのひもをほどいていく。
「約束なんて反故にしたらいい」
「そんなわけにはいかないよ」
「だったらケーキをあげたらどうだ? 俺はひと切れあれば十分だ」
「ケーキは湊くんのために焼いたのに……」
「その俺がかまわないと言ってるんだから、いいよ」
「湊くん……っ」
エプロンが足元に落ちる。拾おうとする私の身体は、ベッドの上へと、たくましい彼の腕に抱き上げられていた。
「久しぶりに、いい?」
湊くんは私の顔を覗き込み、至近距離でそっと笑う。
「ダメだよ……」
「どうして?」
「だってまだ片付けもしてないし、純ちゃんにケーキあげるなんて決めてないし、純ちゃんにもメールしなきゃ……」
「そんなの後でもいいだろう?」
「湊くんこそ、後でも」
「後ならいいんだね?」
「そんな言い方ずるいよー……」
「俺は今でもいいんだよ。というより、今抱きたい」
「湊くん……、あの、さっきの話なんだけど」
あんまりストレートな言葉と、ストレートな眼差しに見つめられると、恥ずかしさが込み上げる。
「さっき?」
「ディナーに行くって話」
「ああ。純ちゃんたちと行くんだろう? 行ってきたらいいよ」
湊くんは早くこの会話を終わらせたいみたいに、投げやりな返事をする。
「その、純ちゃんとね、あともう一人は……」
「三人で行くのか?」
「うん、純ちゃんと朔くんと行くの」
「そう……」
さらりと聞き流した湊くんだが、私の背中に腕を回しかけて、ふと動きを止めた。
「朔?」
「純ちゃんが三人で行かないかって」
「朔から純ちゃんの話は聞いたことがないけどね。そんなに仲良しのふたごか?」
「うん、仲良しだよ。純ちゃんがいるなら、朔くんに会ってもいい?」
「純ちゃんをダシにして、朔に会いたいと言ってるように聞こえるが?」
「そうじゃないよ……」
朔くんのことになると、すぐに話が歪曲してしまう。
「朔はそんなにいいか?」
「お話してると楽しいよ」
「俺と過ごすより?」
「湊くんと一緒にいる時間とは比べられないよ。私は湊くんのこと一番に考えてるよ」
「へえー、だったら今から俺に抱かれろよ。俺のことを考えてるなら、カラダで証明できるよね?」
意地悪く笑う湊くんから目をそらす。
「湊くん……、嫌じゃないよ。嫌じゃないけど、そんな言い方は嫌だよ……」
「俺は朔の名前を聞くだけで不愉快だ」
「……湊くん」
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