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星月夜
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「今夜も泊まっていってよ。まだ話したいことがたくさんあるんだ」
キスを拒まなかった日菜詩ちゃんをぎゅっと抱きしめたまま、俺はそう言った。
精一杯、両腕で抱きしめる。うまく抱きしめられているのかわからなくて不安になるけど、彼女は腕の中で小さくうなずいてくれる。
一度泊まったことがあるから、ちょっと安心してるのかもしれない。キス以上のことはしないって。
「うん……。あ、でも、いいのかな……」
「暁月先生はそういうの、うるさい?」
「急にお泊まりするなんて言ったら、心配すると思うの……」
「ふぅん。でも帰したくないから電話してよ」
「あっ、うん、連絡はするね。ダメって言われたら帰るかもしれないけど……」
日菜詩ちゃんは俺と過ごしたいって思ってくれているようだが消極的だ。
「麻那香ちゃんだっけ? 友だちの家に泊まるって連絡したらいいよ」
「うそ、つくの?」
「俺のところに泊まるなんて言ったら反対されるよ」
「……そうかもしれないけど、でも……」
「日菜詩ちゃんとのこと知られたくないわけじゃないよ。……反対されるってわかってるから、まだ話すのは早いと思うんだ」
「反対される、かな……?」
「されるよ。暁月先生だって、俺みたいなのに親切にしてくれるのは仕事だからだよ。日菜詩ちゃんを溺愛してる先生が反対しないはずはないよ」
「……じゃあ、どうしたらいいの?」
「普通の恋人みたいに付き合ってたらいいよ」
途方にくれる日菜詩ちゃんを安心させるように髪をなでるが、彼女は不安げに俺を見つめる。
「普通の恋人みたいって……やっぱり……」
「うん。泊まっていくなら、そういうこともあるよ」
日菜詩ちゃんのことは傷つけたくないって思ってる。拒むなら無理強いはしたくないとも。
「あの、明日嘉くん……」
「なに?」
「私たち、付き合うの?」
「……日菜詩ちゃん」
日菜詩ちゃんはなおも不安そうに俺を見つめている。
「あの、……こんな風に過ごすのはきっと恋人じゃなくても出来るし、明日嘉くんがもし私を選んでくれたら嬉しいって思うけど、まだ夢みたいで」
「日菜詩ちゃんはこだわらないんだ? たまに会ってデートして、こんな風に過ごして……。でも恋人じゃない関係でいても平気なんだ?」
そんな関係を唯一望まない相手だ、日菜詩ちゃんは。
「平気じゃ……ないよ」
「この前とは違うよ。俺は付き合うって決めたから日菜詩ちゃんに泊まっていってほしいって言ってる。もし日菜詩ちゃんが怖がるなら、恋人になんかなれないって覚悟もしてる。それでも付き合いたいって思ってる」
いくら俺を好きだと言っても、俺の腕は受け入れられないかもしれない。そんな不安が俺の中には常にある。
「本当に……?」
日菜詩ちゃんの目にうっすら涙が浮かぶ。彼女が離れていくはずはないのに、臆病になっているのは俺だ。
「本当だよ。自分でもおかしいぐらい、日菜詩ちゃんに夢中になってる。ずっと一緒にいたいって思ってる」
彼女を抱き寄せ、誓う。
「明日嘉くんは私を選んでくれてるの?」
「そうだよ。ずっと冷たくしてきて悪かったよ。でももう離さないから」
「……うん……」
「暁月先生にはまだ言わなくていいよ。内緒にするからって、本気じゃないわけじゃないよ」
「……お父さんに嘘つくのは嫌だけど、明日嘉くんがそう言うなら」
日菜詩ちゃんは小さくうなずいて、俺の手をそっと握ってくる。
「お父さん、反対するのかな……。そうなっても私、明日嘉くんから離れない。明日嘉くんと一緒に生きていきたいの……」
「認めてもらえるように努力するよ。やっと届いたのに不安にさせるなんてダメだな……俺。どうしたら安心してくれる?」
日菜詩ちゃんの手を握り返し、そっと身を寄せ合う。こうしている時間だけでも幸せを感じて欲しい。そう願っている。
「今夜も泊まっていってよ。まだ話したいことがたくさんあるんだ」
キスを拒まなかった日菜詩ちゃんをぎゅっと抱きしめたまま、俺はそう言った。
精一杯、両腕で抱きしめる。うまく抱きしめられているのかわからなくて不安になるけど、彼女は腕の中で小さくうなずいてくれる。
一度泊まったことがあるから、ちょっと安心してるのかもしれない。キス以上のことはしないって。
「うん……。あ、でも、いいのかな……」
「暁月先生はそういうの、うるさい?」
「急にお泊まりするなんて言ったら、心配すると思うの……」
「ふぅん。でも帰したくないから電話してよ」
「あっ、うん、連絡はするね。ダメって言われたら帰るかもしれないけど……」
日菜詩ちゃんは俺と過ごしたいって思ってくれているようだが消極的だ。
「麻那香ちゃんだっけ? 友だちの家に泊まるって連絡したらいいよ」
「うそ、つくの?」
「俺のところに泊まるなんて言ったら反対されるよ」
「……そうかもしれないけど、でも……」
「日菜詩ちゃんとのこと知られたくないわけじゃないよ。……反対されるってわかってるから、まだ話すのは早いと思うんだ」
「反対される、かな……?」
「されるよ。暁月先生だって、俺みたいなのに親切にしてくれるのは仕事だからだよ。日菜詩ちゃんを溺愛してる先生が反対しないはずはないよ」
「……じゃあ、どうしたらいいの?」
「普通の恋人みたいに付き合ってたらいいよ」
途方にくれる日菜詩ちゃんを安心させるように髪をなでるが、彼女は不安げに俺を見つめる。
「普通の恋人みたいって……やっぱり……」
「うん。泊まっていくなら、そういうこともあるよ」
日菜詩ちゃんのことは傷つけたくないって思ってる。拒むなら無理強いはしたくないとも。
「あの、明日嘉くん……」
「なに?」
「私たち、付き合うの?」
「……日菜詩ちゃん」
日菜詩ちゃんはなおも不安そうに俺を見つめている。
「あの、……こんな風に過ごすのはきっと恋人じゃなくても出来るし、明日嘉くんがもし私を選んでくれたら嬉しいって思うけど、まだ夢みたいで」
「日菜詩ちゃんはこだわらないんだ? たまに会ってデートして、こんな風に過ごして……。でも恋人じゃない関係でいても平気なんだ?」
そんな関係を唯一望まない相手だ、日菜詩ちゃんは。
「平気じゃ……ないよ」
「この前とは違うよ。俺は付き合うって決めたから日菜詩ちゃんに泊まっていってほしいって言ってる。もし日菜詩ちゃんが怖がるなら、恋人になんかなれないって覚悟もしてる。それでも付き合いたいって思ってる」
いくら俺を好きだと言っても、俺の腕は受け入れられないかもしれない。そんな不安が俺の中には常にある。
「本当に……?」
日菜詩ちゃんの目にうっすら涙が浮かぶ。彼女が離れていくはずはないのに、臆病になっているのは俺だ。
「本当だよ。自分でもおかしいぐらい、日菜詩ちゃんに夢中になってる。ずっと一緒にいたいって思ってる」
彼女を抱き寄せ、誓う。
「明日嘉くんは私を選んでくれてるの?」
「そうだよ。ずっと冷たくしてきて悪かったよ。でももう離さないから」
「……うん……」
「暁月先生にはまだ言わなくていいよ。内緒にするからって、本気じゃないわけじゃないよ」
「……お父さんに嘘つくのは嫌だけど、明日嘉くんがそう言うなら」
日菜詩ちゃんは小さくうなずいて、俺の手をそっと握ってくる。
「お父さん、反対するのかな……。そうなっても私、明日嘉くんから離れない。明日嘉くんと一緒に生きていきたいの……」
「認めてもらえるように努力するよ。やっと届いたのに不安にさせるなんてダメだな……俺。どうしたら安心してくれる?」
日菜詩ちゃんの手を握り返し、そっと身を寄せ合う。こうしている時間だけでも幸せを感じて欲しい。そう願っている。
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