溺愛王子と髪結プリンセス

水城ひさぎ

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セオの髪結になるということ

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 セオの唇は優しくて甘い。すぐに脳が痺れて、言葉にならないほどの快楽に襲われる。どうされてもかまわない。セオが望むならと捧げてしまいたくなる。

 彼の首に腕を回し、さらに唇を求める。ため息が漏れる。それすら愛おしく思うなんて、セオのキスを知るまでは感じたこともなかった。

 うっかり彼のペースにはまってしまう真凛の口内で舌を絡め、その柔らかさを堪能し終えたセオはゆっくりと離れていく。

「真凛、……真凛は白も似合う」

 銀糸で波模様が描かれた白の髪結ドレスを眺めて、セオは照れ臭そうに笑う。

「ルベって本当に無口なのね。お風呂まで案内してくれたら、ドレスを置いてどこかへ行ってしまって」
「用があればすぐに来る。ルベは気を読む能力に優れている」
「気を読む?」
「人よりちょっと察しがいいっていう話だよ。だから真凛と過ごしてる時に無粋に来たりしない」

 セオは爽やかに微笑んで、真凛の手を引くとテラスへ向かう。青空を見上げる彼の視線を追うが、そこには澄み切った青空が広がるばかりだ。

「王城を覗いてみようかと思ったが、やめておこう」

 そう言って、テラスに置かれた寝椅子へ横になろうとするセオを見てハッとする。

「覗くで思い出したけど、お風呂を覗くなんてひどいわっ。いつの間に来てたの」
「覗くつもりはなかったといっても仕方ない。覗きたい気持ちがあったから、勝手なことをしたのだろう」
「まるで他人事みたいに……」

 あきれる。しかし、セオは愉快げに薄く笑う。

「俺の力は不安定で、持久力もない。瞬間的にしか幻を見せることはできない」
「幻を見せる? そんなことができるの? じゃあ、私が見たのはセオ王子の見せた幻?」
「そう。俺は幻を飛ばすことができる。幻が見たものはそのまま俺に伝えてくるが、幻は口もきけなければ触れることもできない」
「王子には不思議な力があるのね。でも待って。幻が見たものはセオ王子が見たのと同じよね?」

 今更気づいたのかというようにセオはくすくす笑うが、真凛のほおは真っ赤になってしまう。

「やっぱり覗き見したんじゃないっ」
「あまりに綺麗で幻すら見惚れていた。真凛に触れることができるのは本物の俺だけだ。安心していい」
「安心って! そんな言葉で騙されないんだからっ」
「今夜見るんだ。あまり騒ぐことでもない」

 おいで、とセオは両手を広げる。

 まるで恋人だ。髪結の本分を忘れて、彼の腕に包まれることに抵抗がないわけではないが、セオをもっと知りたくて真凛は求めに応じる。

「今夜見るっていうけど……、本当に見せたくないの」

 セオのひざの上に座り、抱きしめられると安心する。

 彼もそうなのだろう。癒しを求めるように真凛の胸を優しく撫でる。衣服の上からそうされるだけでも身体が熱くなる。セオも同じだ。次第に固くなるものが足に触れて、真凛は戸惑う。

「この胸に何かあるのは見たが、たとえヤケドのあとでもかまわない。真凛は綺麗だよ」
「ヤケドではないけど……、でもそのぐらい醜いもの」
「真凛が傷つくなら見ないと約束するが、触れることは許して欲しい」

 髪結のドレスは主人の都合のいいように出来ている。前身に隠れたボタンを片手で器用にふたつほど外したセオの指がするりと胸元へ入ってくる。

「ここ、だろうか」

 セオの手のひらが右胸を覆い、刻印のある場所へ的確に指を這わす。

「気持ちいいぐらい、しっとりしている」

 傷一つない身体に満足するように、セオはうっとりと胸を撫でていく。

 胸の先端がぷくりと膨らんで主張するから、真凛は赤くなってうつむく。無意識にそうなってしまう身体を楽しむように、セオは親指で先端を転がす。

「セオ王子……、あんまりダメ……」
「すごく感じてる」

 今すぐ欲しい。そう言われているようで、理性が飛びそうになるのをこらえる。

「……今夜、今夜まで、待って……」
「夜を待ち遠しく思うのは初めてだ」

 根負けしてそう答えてしまったのに、嬉しげに微笑むセオは子どものようにあどけない。

 アウイやベリルとは違う。真凛というひとりの女性として見てくれている。

 そう思ったら、真凛も彼の背中に腕を回していた。

「セオ王子だからいいの……。だからあんまり意地悪しないで……」
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