22 / 58
セオの髪結になるということ
5
しおりを挟む
*
セオの唇は優しくて甘い。すぐに脳が痺れて、言葉にならないほどの快楽に襲われる。どうされてもかまわない。セオが望むならと捧げてしまいたくなる。
彼の首に腕を回し、さらに唇を求める。ため息が漏れる。それすら愛おしく思うなんて、セオのキスを知るまでは感じたこともなかった。
うっかり彼のペースにはまってしまう真凛の口内で舌を絡め、その柔らかさを堪能し終えたセオはゆっくりと離れていく。
「真凛、……真凛は白も似合う」
銀糸で波模様が描かれた白の髪結ドレスを眺めて、セオは照れ臭そうに笑う。
「ルベって本当に無口なのね。お風呂まで案内してくれたら、ドレスを置いてどこかへ行ってしまって」
「用があればすぐに来る。ルベは気を読む能力に優れている」
「気を読む?」
「人よりちょっと察しがいいっていう話だよ。だから真凛と過ごしてる時に無粋に来たりしない」
セオは爽やかに微笑んで、真凛の手を引くとテラスへ向かう。青空を見上げる彼の視線を追うが、そこには澄み切った青空が広がるばかりだ。
「王城を覗いてみようかと思ったが、やめておこう」
そう言って、テラスに置かれた寝椅子へ横になろうとするセオを見てハッとする。
「覗くで思い出したけど、お風呂を覗くなんてひどいわっ。いつの間に来てたの」
「覗くつもりはなかったといっても仕方ない。覗きたい気持ちがあったから、勝手なことをしたのだろう」
「まるで他人事みたいに……」
あきれる。しかし、セオは愉快げに薄く笑う。
「俺の力は不安定で、持久力もない。瞬間的にしか幻を見せることはできない」
「幻を見せる? そんなことができるの? じゃあ、私が見たのはセオ王子の見せた幻?」
「そう。俺は幻を飛ばすことができる。幻が見たものはそのまま俺に伝えてくるが、幻は口もきけなければ触れることもできない」
「王子には不思議な力があるのね。でも待って。幻が見たものはセオ王子が見たのと同じよね?」
今更気づいたのかというようにセオはくすくす笑うが、真凛のほおは真っ赤になってしまう。
「やっぱり覗き見したんじゃないっ」
「あまりに綺麗で幻すら見惚れていた。真凛に触れることができるのは本物の俺だけだ。安心していい」
「安心って! そんな言葉で騙されないんだからっ」
「今夜見るんだ。あまり騒ぐことでもない」
おいで、とセオは両手を広げる。
まるで恋人だ。髪結の本分を忘れて、彼の腕に包まれることに抵抗がないわけではないが、セオをもっと知りたくて真凛は求めに応じる。
「今夜見るっていうけど……、本当に見せたくないの」
セオのひざの上に座り、抱きしめられると安心する。
彼もそうなのだろう。癒しを求めるように真凛の胸を優しく撫でる。衣服の上からそうされるだけでも身体が熱くなる。セオも同じだ。次第に固くなるものが足に触れて、真凛は戸惑う。
「この胸に何かあるのは見たが、たとえヤケドのあとでもかまわない。真凛は綺麗だよ」
「ヤケドではないけど……、でもそのぐらい醜いもの」
「真凛が傷つくなら見ないと約束するが、触れることは許して欲しい」
髪結のドレスは主人の都合のいいように出来ている。前身に隠れたボタンを片手で器用にふたつほど外したセオの指がするりと胸元へ入ってくる。
「ここ、だろうか」
セオの手のひらが右胸を覆い、刻印のある場所へ的確に指を這わす。
「気持ちいいぐらい、しっとりしている」
傷一つない身体に満足するように、セオはうっとりと胸を撫でていく。
胸の先端がぷくりと膨らんで主張するから、真凛は赤くなってうつむく。無意識にそうなってしまう身体を楽しむように、セオは親指で先端を転がす。
「セオ王子……、あんまりダメ……」
「すごく感じてる」
今すぐ欲しい。そう言われているようで、理性が飛びそうになるのをこらえる。
「……今夜、今夜まで、待って……」
「夜を待ち遠しく思うのは初めてだ」
根負けしてそう答えてしまったのに、嬉しげに微笑むセオは子どものようにあどけない。
アウイやベリルとは違う。真凛というひとりの女性として見てくれている。
そう思ったら、真凛も彼の背中に腕を回していた。
「セオ王子だからいいの……。だからあんまり意地悪しないで……」
セオの唇は優しくて甘い。すぐに脳が痺れて、言葉にならないほどの快楽に襲われる。どうされてもかまわない。セオが望むならと捧げてしまいたくなる。
彼の首に腕を回し、さらに唇を求める。ため息が漏れる。それすら愛おしく思うなんて、セオのキスを知るまでは感じたこともなかった。
うっかり彼のペースにはまってしまう真凛の口内で舌を絡め、その柔らかさを堪能し終えたセオはゆっくりと離れていく。
「真凛、……真凛は白も似合う」
銀糸で波模様が描かれた白の髪結ドレスを眺めて、セオは照れ臭そうに笑う。
「ルベって本当に無口なのね。お風呂まで案内してくれたら、ドレスを置いてどこかへ行ってしまって」
「用があればすぐに来る。ルベは気を読む能力に優れている」
「気を読む?」
「人よりちょっと察しがいいっていう話だよ。だから真凛と過ごしてる時に無粋に来たりしない」
セオは爽やかに微笑んで、真凛の手を引くとテラスへ向かう。青空を見上げる彼の視線を追うが、そこには澄み切った青空が広がるばかりだ。
「王城を覗いてみようかと思ったが、やめておこう」
そう言って、テラスに置かれた寝椅子へ横になろうとするセオを見てハッとする。
「覗くで思い出したけど、お風呂を覗くなんてひどいわっ。いつの間に来てたの」
「覗くつもりはなかったといっても仕方ない。覗きたい気持ちがあったから、勝手なことをしたのだろう」
「まるで他人事みたいに……」
あきれる。しかし、セオは愉快げに薄く笑う。
「俺の力は不安定で、持久力もない。瞬間的にしか幻を見せることはできない」
「幻を見せる? そんなことができるの? じゃあ、私が見たのはセオ王子の見せた幻?」
「そう。俺は幻を飛ばすことができる。幻が見たものはそのまま俺に伝えてくるが、幻は口もきけなければ触れることもできない」
「王子には不思議な力があるのね。でも待って。幻が見たものはセオ王子が見たのと同じよね?」
今更気づいたのかというようにセオはくすくす笑うが、真凛のほおは真っ赤になってしまう。
「やっぱり覗き見したんじゃないっ」
「あまりに綺麗で幻すら見惚れていた。真凛に触れることができるのは本物の俺だけだ。安心していい」
「安心って! そんな言葉で騙されないんだからっ」
「今夜見るんだ。あまり騒ぐことでもない」
おいで、とセオは両手を広げる。
まるで恋人だ。髪結の本分を忘れて、彼の腕に包まれることに抵抗がないわけではないが、セオをもっと知りたくて真凛は求めに応じる。
「今夜見るっていうけど……、本当に見せたくないの」
セオのひざの上に座り、抱きしめられると安心する。
彼もそうなのだろう。癒しを求めるように真凛の胸を優しく撫でる。衣服の上からそうされるだけでも身体が熱くなる。セオも同じだ。次第に固くなるものが足に触れて、真凛は戸惑う。
「この胸に何かあるのは見たが、たとえヤケドのあとでもかまわない。真凛は綺麗だよ」
「ヤケドではないけど……、でもそのぐらい醜いもの」
「真凛が傷つくなら見ないと約束するが、触れることは許して欲しい」
髪結のドレスは主人の都合のいいように出来ている。前身に隠れたボタンを片手で器用にふたつほど外したセオの指がするりと胸元へ入ってくる。
「ここ、だろうか」
セオの手のひらが右胸を覆い、刻印のある場所へ的確に指を這わす。
「気持ちいいぐらい、しっとりしている」
傷一つない身体に満足するように、セオはうっとりと胸を撫でていく。
胸の先端がぷくりと膨らんで主張するから、真凛は赤くなってうつむく。無意識にそうなってしまう身体を楽しむように、セオは親指で先端を転がす。
「セオ王子……、あんまりダメ……」
「すごく感じてる」
今すぐ欲しい。そう言われているようで、理性が飛びそうになるのをこらえる。
「……今夜、今夜まで、待って……」
「夜を待ち遠しく思うのは初めてだ」
根負けしてそう答えてしまったのに、嬉しげに微笑むセオは子どものようにあどけない。
アウイやベリルとは違う。真凛というひとりの女性として見てくれている。
そう思ったら、真凛も彼の背中に腕を回していた。
「セオ王子だからいいの……。だからあんまり意地悪しないで……」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる