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セオの髪結になるということ
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***
月明かりの差し込むベッドに横になっていると、お盆の上にカップと水差しを乗せたルベが部屋へ入ってくる。
そっと上体を起こす。天井から垂れた白い布一枚で隔てられる二つのベッドの間を通り、窓下にあるテーブルの上へルベがお盆を乗せると、静かな部屋にコツリという音が響く。
「あの、ルベ……、今日はありがとう。明日から髪結としてがんばるわ。その、まだ何をどうしたらいいのかわからないけれど」
ルベの無表情な横顔に話しかける。
彼女とゆっくり話す時間もなく夜になってしまった。真凛がセオの元へ来たことをどう思っているのかさえ聞いていない。
ルベは気を読むことに長けているとセオは言っていたが、逆に気を悟らせない雰囲気がある。かといって気難しいのかもわからない。
「明日からでは困りますね」
ベッドの脇に丸い椅子を寄せると、ルベはそこへ腰かける。
「え?」
「セオ様のお気持ちは私といえども止められない。しかし受け入れることもまた、髪結の務め」
「……ルベは反対?」
「はい、セオ様にはそう申し上げました。真凛様だけはおやめくださいと」
真凛様、という言い方が気になった。
「なぜ、と聞く必要もないわね。ルベはセオ王子の背中を見たことがあるんだもの」
「その秘密は真凛様にも共通すること」
「やっぱり知っているのね」
だから、真凛様と呼んだ。
「そのお身体を見せてはならない。それをわかっていて真凛様もセオ様のお気持ちに応えるおつもりなら、私はこの秘密を地獄まで持っていきましょう」
「地獄だなんて穏やかじゃないわ。私はいつかセドニーの民として生きるの。その時はあなたも一緒よ。セオ王子の愛するものは私にとっても大切なもの」
「お優しいところは、あの方によく似ている」
「あの方って? タンザ前国王陛下は遊び人だって聞いたけど」
首をかしげると、ルベはうっすらと笑み、そのまま口を閉ざして真凛の手首をそっと持ち上げる。
「何をするの?」
「爪を切りましょう。セオ様のお身体を傷つけてはいけません。セオ様が求められることには従順にすべて受け入れますよう」
ほおが熱くなる。セオがちっとも迎えに来ないから、今日は何もないのだとほんの少し安心していた。
夜は長くなりそうだ。だからルベは明日から務めるのは困るといった。今夜から真凛はセオに仕えるのだ。
ルベは丁寧に、ぱちりぱちりと、ハサミの形をした爪切りで真凛の爪を切りそろえていく。
「セオ王子の秘密は誰が知っているの?」
「それは申し上げられません。申し上げられることは、国王陛下、ベリル王子、おふたりはご存知ということ」
「あと、ルベに、セオ王子の母親のインカ様」
肯定も否定もしないルベは、テーブルの上に乗せたお盆を真凛へと手渡す。
「のどが渇くでしょう。セオ様にお水を運んでください。私はこのまま休ませていただきます。真凛様は必ず明るくなる前にここへ戻られますよう」
「……わかったわ。ちょっと緊張するけれど」
ルベからお盆を受け取る。わずかに手が震えて、水差しの中の水が揺れる。
「大丈夫ですよ、真凛様。生まれた時から私がセオ様をお育てしてまいりました。誰よりもお優しい方に育ちました。それだけは自負しておりますゆえ」
「そうね。その優しさに惹かれたんだもの。何も不安になることはないわ」
ルベは少しだけ嬉しそうに口元をゆるめたが、すぐに無表情になり、セオの寝室につながる扉の前に立つ。
真凛もベッドを降りてルベの隣に立ち、深呼吸する。ルベが扉を開く。隙間から寝間着に着替え、窓辺に立つセオが見えた。
「必ず、明るくなる前に」
ルベの言葉を背中に受けて部屋へ踏み込む。そして真凛は一歩、また一歩とセオへ向かって歩き出した。
「真凛、ちょっと緊張してる?」
ベッドサイドのテーブルに水差しを乗せる真凛の手に、上から手を重ねてセオはそう言う。
セオがかがむと短い髪がほおに触れてくすぐったい。優しく抱きしめられると心臓は跳ね上がるが、あまりに優しいから意味もなく泣きたくなる。
「ベッドに月の光が入らないようにした。だから不安がらなくていい」
「あ、……寝間着を着たままではダメ?」
「それは冗談?」
セオはくすりと笑って、真凛の長い黒髪に指を通しながらなで下ろしていく。こんな時はひどく大人っぽくて、真凛の何倍も余裕がある。
「……セオ王子を信用してないわけじゃないの。でもちょっとだけ、心配」
「まずそれが良くないね。王子と呼ばれると距離があるように感じる」
「私も変な感じよ。敬称をつけて呼ばなければならない人が身近にいるなんて不思議」
この世に王子と呼ばれる人がいることはテレビの中の出来事でしかなかったのに、恋するなんて思ってもみなかった。
「なんて呼んでくれる?」
「ルベはセオ様と呼ぶから……、私も」
「そうだな、その方が心地いい」
「じゃあセオ様、お水は飲む?」
水差しに手を伸ばそうとすると、すぐさま手首をつかまれ、そのまま天蓋の中へ引き込まれた。
「水はあとでいい」
耳元で囁かれ、夜着の前身が開かれる。天蓋の中は真っ暗だった。セオの指が夜着を探りながら脱がせていく感覚だけがある。
「セオ様……、何も見えないわ」
「俺もだ。だから安心して」
肩から下がる夜着がするりと足元に落ちる。下着もすぐに下げられてしまう。
「セオ様……」
セオの手が離れると、真っ暗闇の中で一人立たされてしまい不安になる。
「待て。すぐに……」
寝間着を脱ぐ忙しない衣ずれの音がして、真凛の胸は飛び上がる。矢も盾もたまらないとばかりにセオも服を脱いでいる。それを想像するだけで恥ずかしくなる。
「見えるか? 俺の身体が」
不意に腕に手をつかまれる。右手のひらを前に突き出すと、温かいセオの胸にあたる。
「何も……。でも、セオ様がいることはわかるわ」
「それは俺も同じだ。……さあ、おいで、真凛」
ふわりと抱き上げられたかと思えば、柔らかいベッドの上へすぐに下ろされる。
ベッドに沈む身体の上へセオがかぶさってくる。セオの両手が真凛のほおを包み込むと、柔らかなキスが降ってくる。その、どの行為も優しい。
「真凛の肌は綺麗だ……」
しっとりと重ね合った唇から離れたセオの唇は、そのまま首筋を這って下におりていく。同時に彼の手のひらは真凛の腹の上を這い上がり、右胸を下から押し上げる。
セオの手につかまれた胸の先端は逃げることを許されず、次第に落ちていく彼の口の中へ含まれてしまう。
「……あ、……んんっ」
シーツをつかむ。アウイとベリルの顔が脳裏にちらついた。彼らは無遠慮に真凛に触れた。セオも同じだと思っていたのに、身体を突き抜けるのは恥ずかしさだけで、嫌なものは何もなかった。
セオの温かな口内で、すぐに主張し始めたつぼみは舌先に転がされる。
「……はぁ……っ」
と、セオが甘い息をつく。
セオの唇が離れると、胸の先端はひんやりとした。しかしまたすぐに温かな口内に包まれて、強く吸われた。
明るいところで見たら、こんな風に夢中になってくれないだろう。胸のあざを気にすることなく真凛はセオを受け入れられた。アウイは綺麗だと言ってくれたが、それだけでは自信がもてなかった。暗闇での行為にセオの優しさを感じる。
その途端、下腹部に違和感が押し寄せる。足をもぞもぞと動かすと、セオの右手が触れてくる。割れ目を探るセオの指がぬるりと滑るのを感じる。
「あぁ、……この程度でこんなに感じるなんて本当に可愛い」
「セオ様のせいよ……」
真っ赤になるほおを見られないのも安心だった。暗闇がどこか真凛を大胆にする。
「どこから可愛がっていいのか迷う」
そう言って、セオはふたたび右胸の先端に口付けると、今度は左胸も同じようにした。左胸の先端に吸い付きながら、右も指先でもてあそぶ。ぴんと立つつぼみを指ではじかれると下腹部がうずいた。
セオが上体を起こし、真凛の太ももを押し上げる。自然と足を開いた。見られても恥ずかしくない。その思いがますます大胆にさせるようだ。しかしセオはわずかにため息をついた。
「セオ様……?」
「もう少し恥ずかしがるものだと思ってた」
慣れている。そう言われたみたいで、羞恥心が湧き出す。パッと足を閉じようとしたが、セオはそれを許さず、開かれたそこへ顔をうずめた。
「セ、セオ……っ」
「真凛の頭の中から兄上たちを追い出したい」
「待って。セオさ……まっ」
セオはきつく吸い付いた。あぁっ、と悲鳴が漏れた。激しかった。セオの舌先がいたずらに動き回る。ぎゅっと目を閉じるのが精一杯で、身体の中から溢れるものは止められない。
「兄上たちはどうやって抱いた? 真凛はどんな顔を見せた?」
少し乱暴な言い方だったが、セオの心が泣いているような気がした。誤解をとかなければ、と思うが、その余裕がない。
「セオ………、セオ……」
と熱に浮かされたように名を呼ぶ真凛の中へ、セオの人差し指が押し込まれる。そして、かき乱す。
「あぁ……っ」
「真凛、痛いか……?」
申し訳なさそうな声が耳元で聞こえて、優しく口付けされる。下腹部の圧迫感に息をあげながら、真凛はようやくセオの首に腕を回して抱きつく。
「は、……はじめてなの。だからもっと優しくして……」
セオがハッと息を飲んだ。
「真凛……」
「セオ様、お願いだから……」
「……何と言ったらいいかわからない」
セオは混乱しているようだったが、指を押し込むたびに痛がる真凛の悲鳴に確信を得たように、今度は優しく優しく触れてくる。
「勘違いして悪かった。優しくするから、……許せ」
それからのセオは優しかった。セオを受け入れる身体が十分になるまで愛撫を繰り返す。身体の隅々まで口付けされた。すべてを愛していると言われてるみたいで身体が喜びに震えた。
「そろそろ、いれていい?」
ベッドに力なく沈んだまま、真凛は何度もうなずく。しかし暗闇の中ではその思いは伝わらず、セオはまだダメなのかと、ため息をつく。
「セオ様……、きて……」
蚊の鳴くような声で真凛は言う。
「真凛?」
「もう、我慢できないの。はやく、いれて……」
セオを欲する気持ちが口をついて出た。
セオの動きが止まる。幻滅された? と現実に引き戻されそうになる中、足の間に固いものが押し付けられた。
「あっ……、やっぱり待っ……あ、あぁ……っ」
身をのけぞらせる。浮いた背中とベッドの隙間にセオの腕が差し込まれ、逃げられないように腰を押さえ込まれる。
「は……っ、真凛の中は、温かい……」
足の付け根がぴたりと合う。深くセオとつながっている。それを知るにはじゅうぶんで。
「セオ様……、私も……」
「気持ちいいだろう? だがもっと良くなる」
手のひらをあてたひたいへ、セオはキスを落とす。そのまま唇は鼻筋に触れながら、唇にたどり着く。真凛の唇にきつく吸い付いた後、セオは上体を起こし、自身を一気に引き抜いた。
「あぁ……っ」
なんとも言えない快楽が突き抜けた瞬間、またセオが一気に貫いてくる。
「待っ……、セオ……」
「だめだ。止まらない」
真凛の懇願も虚しく、セオは幾度も突いてきた。
暗闇の中に二人の甘い吐息が満ち溢れる。気持ち良くてどうにかなりそうだった。けれどその気持ちをどう伝えたらいいのかわからなかった。
日本にいた時、幾度となく交際を申し込まれたけれど、どの男性とも深い関係にはなれなかった。それなのにセオとは出会って間もないのにすぐに心を許せた。そして身体も。
「もう少しだけ……許せ」
激しさを増すセオの動きに合わせて腰を動かす。二人の呼吸が合う。
「セオ様じゃなきゃ、いや……」
自然と漏れた言葉に、セオが笑ったような気がした。
「俺もだ、真凛。あなたしか抱かないから、無理させる時もあると思う」
そう言ったセオは最後の力を振り絞るように真凛の太ももを抱え、激しく打ち付けてきた。
「セオ様……」
胸に伏すセオの背中を抱きしめる。汗で滑る肌が激しさを物語る。
急に恥ずかしくなって逃げようとするが、セオは繋がったまま真凛を横抱きにする。身体の中でドクドクと激しく波打つセオが、離れたくないと言ってるみたいで愛しい。
「このまま朝を迎えられるか?」
「それは……、だめ」
セオは小さく息をつく。
「そうか。……見ないと約束した。その約束は守る」
「セオ様が眠るまでいます……」
「そんなことを言ったら眠れなくなる」
セオは笑って、真凛から名残惜しそうに離れる。
「セオ様、お水を……」
真凛はすぐにベッドから降りようと身体を起こすが、セオはその腕を手探りでつかみ、引き止めると言った。
「真凛がいてくれたらそれでいい」
月明かりの差し込むベッドに横になっていると、お盆の上にカップと水差しを乗せたルベが部屋へ入ってくる。
そっと上体を起こす。天井から垂れた白い布一枚で隔てられる二つのベッドの間を通り、窓下にあるテーブルの上へルベがお盆を乗せると、静かな部屋にコツリという音が響く。
「あの、ルベ……、今日はありがとう。明日から髪結としてがんばるわ。その、まだ何をどうしたらいいのかわからないけれど」
ルベの無表情な横顔に話しかける。
彼女とゆっくり話す時間もなく夜になってしまった。真凛がセオの元へ来たことをどう思っているのかさえ聞いていない。
ルベは気を読むことに長けているとセオは言っていたが、逆に気を悟らせない雰囲気がある。かといって気難しいのかもわからない。
「明日からでは困りますね」
ベッドの脇に丸い椅子を寄せると、ルベはそこへ腰かける。
「え?」
「セオ様のお気持ちは私といえども止められない。しかし受け入れることもまた、髪結の務め」
「……ルベは反対?」
「はい、セオ様にはそう申し上げました。真凛様だけはおやめくださいと」
真凛様、という言い方が気になった。
「なぜ、と聞く必要もないわね。ルベはセオ王子の背中を見たことがあるんだもの」
「その秘密は真凛様にも共通すること」
「やっぱり知っているのね」
だから、真凛様と呼んだ。
「そのお身体を見せてはならない。それをわかっていて真凛様もセオ様のお気持ちに応えるおつもりなら、私はこの秘密を地獄まで持っていきましょう」
「地獄だなんて穏やかじゃないわ。私はいつかセドニーの民として生きるの。その時はあなたも一緒よ。セオ王子の愛するものは私にとっても大切なもの」
「お優しいところは、あの方によく似ている」
「あの方って? タンザ前国王陛下は遊び人だって聞いたけど」
首をかしげると、ルベはうっすらと笑み、そのまま口を閉ざして真凛の手首をそっと持ち上げる。
「何をするの?」
「爪を切りましょう。セオ様のお身体を傷つけてはいけません。セオ様が求められることには従順にすべて受け入れますよう」
ほおが熱くなる。セオがちっとも迎えに来ないから、今日は何もないのだとほんの少し安心していた。
夜は長くなりそうだ。だからルベは明日から務めるのは困るといった。今夜から真凛はセオに仕えるのだ。
ルベは丁寧に、ぱちりぱちりと、ハサミの形をした爪切りで真凛の爪を切りそろえていく。
「セオ王子の秘密は誰が知っているの?」
「それは申し上げられません。申し上げられることは、国王陛下、ベリル王子、おふたりはご存知ということ」
「あと、ルベに、セオ王子の母親のインカ様」
肯定も否定もしないルベは、テーブルの上に乗せたお盆を真凛へと手渡す。
「のどが渇くでしょう。セオ様にお水を運んでください。私はこのまま休ませていただきます。真凛様は必ず明るくなる前にここへ戻られますよう」
「……わかったわ。ちょっと緊張するけれど」
ルベからお盆を受け取る。わずかに手が震えて、水差しの中の水が揺れる。
「大丈夫ですよ、真凛様。生まれた時から私がセオ様をお育てしてまいりました。誰よりもお優しい方に育ちました。それだけは自負しておりますゆえ」
「そうね。その優しさに惹かれたんだもの。何も不安になることはないわ」
ルベは少しだけ嬉しそうに口元をゆるめたが、すぐに無表情になり、セオの寝室につながる扉の前に立つ。
真凛もベッドを降りてルベの隣に立ち、深呼吸する。ルベが扉を開く。隙間から寝間着に着替え、窓辺に立つセオが見えた。
「必ず、明るくなる前に」
ルベの言葉を背中に受けて部屋へ踏み込む。そして真凛は一歩、また一歩とセオへ向かって歩き出した。
「真凛、ちょっと緊張してる?」
ベッドサイドのテーブルに水差しを乗せる真凛の手に、上から手を重ねてセオはそう言う。
セオがかがむと短い髪がほおに触れてくすぐったい。優しく抱きしめられると心臓は跳ね上がるが、あまりに優しいから意味もなく泣きたくなる。
「ベッドに月の光が入らないようにした。だから不安がらなくていい」
「あ、……寝間着を着たままではダメ?」
「それは冗談?」
セオはくすりと笑って、真凛の長い黒髪に指を通しながらなで下ろしていく。こんな時はひどく大人っぽくて、真凛の何倍も余裕がある。
「……セオ王子を信用してないわけじゃないの。でもちょっとだけ、心配」
「まずそれが良くないね。王子と呼ばれると距離があるように感じる」
「私も変な感じよ。敬称をつけて呼ばなければならない人が身近にいるなんて不思議」
この世に王子と呼ばれる人がいることはテレビの中の出来事でしかなかったのに、恋するなんて思ってもみなかった。
「なんて呼んでくれる?」
「ルベはセオ様と呼ぶから……、私も」
「そうだな、その方が心地いい」
「じゃあセオ様、お水は飲む?」
水差しに手を伸ばそうとすると、すぐさま手首をつかまれ、そのまま天蓋の中へ引き込まれた。
「水はあとでいい」
耳元で囁かれ、夜着の前身が開かれる。天蓋の中は真っ暗だった。セオの指が夜着を探りながら脱がせていく感覚だけがある。
「セオ様……、何も見えないわ」
「俺もだ。だから安心して」
肩から下がる夜着がするりと足元に落ちる。下着もすぐに下げられてしまう。
「セオ様……」
セオの手が離れると、真っ暗闇の中で一人立たされてしまい不安になる。
「待て。すぐに……」
寝間着を脱ぐ忙しない衣ずれの音がして、真凛の胸は飛び上がる。矢も盾もたまらないとばかりにセオも服を脱いでいる。それを想像するだけで恥ずかしくなる。
「見えるか? 俺の身体が」
不意に腕に手をつかまれる。右手のひらを前に突き出すと、温かいセオの胸にあたる。
「何も……。でも、セオ様がいることはわかるわ」
「それは俺も同じだ。……さあ、おいで、真凛」
ふわりと抱き上げられたかと思えば、柔らかいベッドの上へすぐに下ろされる。
ベッドに沈む身体の上へセオがかぶさってくる。セオの両手が真凛のほおを包み込むと、柔らかなキスが降ってくる。その、どの行為も優しい。
「真凛の肌は綺麗だ……」
しっとりと重ね合った唇から離れたセオの唇は、そのまま首筋を這って下におりていく。同時に彼の手のひらは真凛の腹の上を這い上がり、右胸を下から押し上げる。
セオの手につかまれた胸の先端は逃げることを許されず、次第に落ちていく彼の口の中へ含まれてしまう。
「……あ、……んんっ」
シーツをつかむ。アウイとベリルの顔が脳裏にちらついた。彼らは無遠慮に真凛に触れた。セオも同じだと思っていたのに、身体を突き抜けるのは恥ずかしさだけで、嫌なものは何もなかった。
セオの温かな口内で、すぐに主張し始めたつぼみは舌先に転がされる。
「……はぁ……っ」
と、セオが甘い息をつく。
セオの唇が離れると、胸の先端はひんやりとした。しかしまたすぐに温かな口内に包まれて、強く吸われた。
明るいところで見たら、こんな風に夢中になってくれないだろう。胸のあざを気にすることなく真凛はセオを受け入れられた。アウイは綺麗だと言ってくれたが、それだけでは自信がもてなかった。暗闇での行為にセオの優しさを感じる。
その途端、下腹部に違和感が押し寄せる。足をもぞもぞと動かすと、セオの右手が触れてくる。割れ目を探るセオの指がぬるりと滑るのを感じる。
「あぁ、……この程度でこんなに感じるなんて本当に可愛い」
「セオ様のせいよ……」
真っ赤になるほおを見られないのも安心だった。暗闇がどこか真凛を大胆にする。
「どこから可愛がっていいのか迷う」
そう言って、セオはふたたび右胸の先端に口付けると、今度は左胸も同じようにした。左胸の先端に吸い付きながら、右も指先でもてあそぶ。ぴんと立つつぼみを指ではじかれると下腹部がうずいた。
セオが上体を起こし、真凛の太ももを押し上げる。自然と足を開いた。見られても恥ずかしくない。その思いがますます大胆にさせるようだ。しかしセオはわずかにため息をついた。
「セオ様……?」
「もう少し恥ずかしがるものだと思ってた」
慣れている。そう言われたみたいで、羞恥心が湧き出す。パッと足を閉じようとしたが、セオはそれを許さず、開かれたそこへ顔をうずめた。
「セ、セオ……っ」
「真凛の頭の中から兄上たちを追い出したい」
「待って。セオさ……まっ」
セオはきつく吸い付いた。あぁっ、と悲鳴が漏れた。激しかった。セオの舌先がいたずらに動き回る。ぎゅっと目を閉じるのが精一杯で、身体の中から溢れるものは止められない。
「兄上たちはどうやって抱いた? 真凛はどんな顔を見せた?」
少し乱暴な言い方だったが、セオの心が泣いているような気がした。誤解をとかなければ、と思うが、その余裕がない。
「セオ………、セオ……」
と熱に浮かされたように名を呼ぶ真凛の中へ、セオの人差し指が押し込まれる。そして、かき乱す。
「あぁ……っ」
「真凛、痛いか……?」
申し訳なさそうな声が耳元で聞こえて、優しく口付けされる。下腹部の圧迫感に息をあげながら、真凛はようやくセオの首に腕を回して抱きつく。
「は、……はじめてなの。だからもっと優しくして……」
セオがハッと息を飲んだ。
「真凛……」
「セオ様、お願いだから……」
「……何と言ったらいいかわからない」
セオは混乱しているようだったが、指を押し込むたびに痛がる真凛の悲鳴に確信を得たように、今度は優しく優しく触れてくる。
「勘違いして悪かった。優しくするから、……許せ」
それからのセオは優しかった。セオを受け入れる身体が十分になるまで愛撫を繰り返す。身体の隅々まで口付けされた。すべてを愛していると言われてるみたいで身体が喜びに震えた。
「そろそろ、いれていい?」
ベッドに力なく沈んだまま、真凛は何度もうなずく。しかし暗闇の中ではその思いは伝わらず、セオはまだダメなのかと、ため息をつく。
「セオ様……、きて……」
蚊の鳴くような声で真凛は言う。
「真凛?」
「もう、我慢できないの。はやく、いれて……」
セオを欲する気持ちが口をついて出た。
セオの動きが止まる。幻滅された? と現実に引き戻されそうになる中、足の間に固いものが押し付けられた。
「あっ……、やっぱり待っ……あ、あぁ……っ」
身をのけぞらせる。浮いた背中とベッドの隙間にセオの腕が差し込まれ、逃げられないように腰を押さえ込まれる。
「は……っ、真凛の中は、温かい……」
足の付け根がぴたりと合う。深くセオとつながっている。それを知るにはじゅうぶんで。
「セオ様……、私も……」
「気持ちいいだろう? だがもっと良くなる」
手のひらをあてたひたいへ、セオはキスを落とす。そのまま唇は鼻筋に触れながら、唇にたどり着く。真凛の唇にきつく吸い付いた後、セオは上体を起こし、自身を一気に引き抜いた。
「あぁ……っ」
なんとも言えない快楽が突き抜けた瞬間、またセオが一気に貫いてくる。
「待っ……、セオ……」
「だめだ。止まらない」
真凛の懇願も虚しく、セオは幾度も突いてきた。
暗闇の中に二人の甘い吐息が満ち溢れる。気持ち良くてどうにかなりそうだった。けれどその気持ちをどう伝えたらいいのかわからなかった。
日本にいた時、幾度となく交際を申し込まれたけれど、どの男性とも深い関係にはなれなかった。それなのにセオとは出会って間もないのにすぐに心を許せた。そして身体も。
「もう少しだけ……許せ」
激しさを増すセオの動きに合わせて腰を動かす。二人の呼吸が合う。
「セオ様じゃなきゃ、いや……」
自然と漏れた言葉に、セオが笑ったような気がした。
「俺もだ、真凛。あなたしか抱かないから、無理させる時もあると思う」
そう言ったセオは最後の力を振り絞るように真凛の太ももを抱え、激しく打ち付けてきた。
「セオ様……」
胸に伏すセオの背中を抱きしめる。汗で滑る肌が激しさを物語る。
急に恥ずかしくなって逃げようとするが、セオは繋がったまま真凛を横抱きにする。身体の中でドクドクと激しく波打つセオが、離れたくないと言ってるみたいで愛しい。
「このまま朝を迎えられるか?」
「それは……、だめ」
セオは小さく息をつく。
「そうか。……見ないと約束した。その約束は守る」
「セオ様が眠るまでいます……」
「そんなことを言ったら眠れなくなる」
セオは笑って、真凛から名残惜しそうに離れる。
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栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
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