溺愛王子と髪結プリンセス

つづき綴

文字の大きさ
上 下
33 / 58
セオの髪結になるということ

16

しおりを挟む



 真凛のいない王宮はひどく殺風景だ。以前はそれが当たり前だったのに、彼女の華やぐ気配がないだけで、これほどさびれてしまうものかと、セオはため息をつく。

 真凛はどこへ行ってしまったのだろう。ベリルに馬車へ押し込まれた後、彼女のゆくえを追ったのになぜか分身は戻ってきてしまった。

 ベッドに腰掛けたまま頭を抱えていると、ふと足元に影がさす。真凛かと勢いよく顔を上げたセオはがっかりと肩を落とした。

「マリンはどこだ」

 突如現れたアウイがぶしつけに天蓋を跳ね上げ、ベッドの周りをのぞき見る。

「真凛はいない。兄上がどこかへ連れていってしまった」
「ほう。王宮から出られないことを理由に泣き寝入りか。惚れた女ひとり守れぬでは、セドニーは愚か、この王宮すら守れぬな」

 アウイはすぐにマントをひるがえす。セオは慌てて彼の背へ向かって叫ぶ。

「陛下にはわからないっ。俺がどんな思いでここで生きてきたか……」
「ああ、わからないな。何もせず生きてきたおまえの苦労など、俺にとっては苦労でもなんでもないからな」
「……」

 ぎりりと下唇をかむ。

「悔しければ立ちあがれ。惚れた女に会いたければ俺に会いに来い」
「真凛の居場所はっ!」
「すぐに見つける」

 アウイはそう言うと、すぐに姿を消した。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

弱虫令嬢の年下彼氏は超多忙

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:223

生贄の身代わりになりました

YOU
恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:6

聖女は旦那様のために奮闘中

恋愛 / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:1,250

処理中です...