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セオの髪結になるということ
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真凛のいない王宮はひどく殺風景だ。以前はそれが当たり前だったのに、彼女の華やぐ気配がないだけで、これほどさびれてしまうものかと、セオはため息をつく。
真凛はどこへ行ってしまったのだろう。ベリルに馬車へ押し込まれた後、彼女のゆくえを追ったのになぜか分身は戻ってきてしまった。
ベッドに腰掛けたまま頭を抱えていると、ふと足元に影がさす。真凛かと勢いよく顔を上げたセオはがっかりと肩を落とした。
「マリンはどこだ」
突如現れたアウイがぶしつけに天蓋を跳ね上げ、ベッドの周りをのぞき見る。
「真凛はいない。兄上がどこかへ連れていってしまった」
「ほう。王宮から出られないことを理由に泣き寝入りか。惚れた女ひとり守れぬでは、セドニーは愚か、この王宮すら守れぬな」
アウイはすぐにマントをひるがえす。セオは慌てて彼の背へ向かって叫ぶ。
「陛下にはわからないっ。俺がどんな思いでここで生きてきたか……」
「ああ、わからないな。何もせず生きてきたおまえの苦労など、俺にとっては苦労でもなんでもないからな」
「……」
ぎりりと下唇をかむ。
「悔しければ立ちあがれ。惚れた女に会いたければ俺に会いに来い」
「真凛の居場所はっ!」
「すぐに見つける」
アウイはそう言うと、すぐに姿を消した。
真凛のいない王宮はひどく殺風景だ。以前はそれが当たり前だったのに、彼女の華やぐ気配がないだけで、これほどさびれてしまうものかと、セオはため息をつく。
真凛はどこへ行ってしまったのだろう。ベリルに馬車へ押し込まれた後、彼女のゆくえを追ったのになぜか分身は戻ってきてしまった。
ベッドに腰掛けたまま頭を抱えていると、ふと足元に影がさす。真凛かと勢いよく顔を上げたセオはがっかりと肩を落とした。
「マリンはどこだ」
突如現れたアウイがぶしつけに天蓋を跳ね上げ、ベッドの周りをのぞき見る。
「真凛はいない。兄上がどこかへ連れていってしまった」
「ほう。王宮から出られないことを理由に泣き寝入りか。惚れた女ひとり守れぬでは、セドニーは愚か、この王宮すら守れぬな」
アウイはすぐにマントをひるがえす。セオは慌てて彼の背へ向かって叫ぶ。
「陛下にはわからないっ。俺がどんな思いでここで生きてきたか……」
「ああ、わからないな。何もせず生きてきたおまえの苦労など、俺にとっては苦労でもなんでもないからな」
「……」
ぎりりと下唇をかむ。
「悔しければ立ちあがれ。惚れた女に会いたければ俺に会いに来い」
「真凛の居場所はっ!」
「すぐに見つける」
アウイはそう言うと、すぐに姿を消した。
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