溺愛王子と髪結プリンセス

水城ひさぎ

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チタとアイ

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「話は済んだか?」

 テラスを抜けると、柱にもたれて腕を組むアウイが上目遣いで真凛を見る。涙の浮かぶ目元を隠すようにうつむくと、アウイはマントを広げて真凛を包み込む。

 愛し合った残り香に、アウイは眉をひそめる。

「だから話などせず、このまま忘れろと言ったんだ。ふたりで生きていける道など、本気で見つかると信じていたか」
「セオ様は……、セオ様は一緒にここから出ようって」
「安易な考えだ。セオは一生この王宮から出ることなく生きていける。真凛にはふさわしい男を見つけてやろう」
「セオ様がいいの……」

 そう言ったら、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。

「身体でごまかしてなんになる。真実を伝えられなかったのだろう? セオに王子として生きてほしいと願うなら、真凛ができることはもうない」

 セオに真実を話していたらどうなっていただろう。姉弟ではないのだから、今まで通り愛し合おうと言えただろうか。いや、王子である誇りを失ったセオの悲しみを思うと、真凛はただ言えなかったのだ。

 アウイの言う通り、真実に蓋をして、抱き合ってごまかした。このままでいいはずはないとお互いに知りながら。

 傷つけたくなくて傷つけた。セオはまた会えると信じて、真凛をアウイのもとへ戻すことを良しとした。もう戻れないことはわかっていたのに。セオには期待だけを与えて。それだけが真実だろう。

「父王の愚行は罪深い。有能と言われた父王ですら真凛の未来は予見できず、己の甘美な欲に溺れたまま死んだ。藍もまた罪深い。真凛は父や母のように生きる必要はない。まっとうな恋はこれからでもできる」
「結婚するぐらいなら、陛下の側に髪結としていたい……」
「好きにしろ」

 アウイはそう言って、悲しみで崩れ落ちそうになる真凛の身体を抱き上げると、セオの暮らす王宮をあとにした。
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