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保健室を覗きたい(中編)
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「でも誰かが眠っているみたいですから」
「少しの間だけ出て行ってもらおう。保健室で寝てるのなんて八割サボりなんだからさ」
「なんですか、その偏見」
「経験則というものだよ、七江くん」
探偵のような口振りで答えた伊藤先輩が、僕の隠れるベッドの方へと近付いてくる。心臓が緊張にうるさいぐらいに騒がしくなる。外にまで鼓動が漏れ聞こえているのではないかと心配になった。
そして勢い良くカーテンが開かれた。
「悪いんだけど少しの間――あれ?」
もぬけの殻になったベッドに戸惑う声が聞こえる。
僕は目の前に迫った伊藤先輩の足を見ながら安堵の息をついた。
着替えを覗けると知った瞬間、僕は即座に身を隠す方法を考えていた。下手にカーテンの外に出れば気付かれると判断して、二人が会話をしている内にベッドの下に潜り込んだのだ。
「どうしたましたか?」
「開け忘れてたのかな。誰も居ないみたい」
「それなら、ここで着替えちゃいますね。この格好で余り歩き回りたくはないので」
「身体が冷えて、そのままだと風邪も引いちゃうしね」
伊藤先輩が離れていくのを確認して、僕はベッドの下からこっそりと保健室の様子を窺う。
有村さんと伊藤先輩はベッドに背中を向けていた。
「保健室で替えの下着が借りられるんですね」
「ああー、前に友達がさ、盛大に水溜りに突っ込んでね。怪我もしちゃったから保健室に連れて行ったら、替えの下着を出してくれたの。生理とかで汚しちゃって来る生徒が結構居るみたいだよ」
有村さんは話を続けながら、羽織っていたジャージを脱いでシャツに手を掛ける。
ぐっしょりと濡れたシャツは妙に艶めかしくて、下手な露出よりも興奮を誘った。
「ほら、脱いだ服はこれに入れたらどうかな」
伊藤先輩が戸棚にあった不透明のビニール袋を取り出してきた。
「ありがとうございます。でも勝手に色々と借りてしまって大丈夫でしょうか」
「大丈夫大丈夫、私から事情は説明するからさ」
体育の授業があったので、有村さんはスポーツブラを身に着けていた。
質実剛健といったデザインで飾り気はない。黒一色で太い肩紐にメーカー名が白文字で入れられていた。胸全体をぴっちりと覆った膨らみが逆に胸の大きさを際立たせており、着エロの概念を少しだけ学べた気がする。
用務員室で着替えを覗いていた時に口にしていたが、やはり大きい胸にも色々と苦労があるらしい。ただ拝んでありがたがるのが少しだけ申し訳なくなる。
「それにしても今日は災難だったね」
「仕方ないですよ、道具はいつか壊れるものですから」
「でもあそこまで使い込む前にやっぱり買い替えるべきだよ。ホースに亀裂が入るなんてよっぽどだよ。水がブシャーって噴き出した時、何か爆発したのかと思ってビックリしちゃった」
「あはは、先輩まで濡れなくて良かったです」
有村さんがびしょ濡れになった理由のおおよその推測が立った。
まず僕は六時間目どころかがっつり放課後まで眠っていたらしい。それで美化委員の活動をしていた有村さんは、散水ノズルを使って水やりをしていたところ、蛇口に繋げていたゴムホースが劣化か何かで裂けてしまい水が漏れ出してしまった。
その水をもろに浴びた有村さんは、この通り濡れ透け体操着になった。
「本当に助かりました。ノーブラで帰ることになるのかなーって」
「いやいや、七江ちゃんの柔肌を野郎になんか見せるわけにはいかないからね」
「ところで先輩はいつまでここに残ってるんですか」
「ほら、身体を拭くのにはこのタオルを使って」
「ありがとうございます……いえ、先輩も早く出て行ってくださいね」
「自然な流れで残ろうとしてたのに!」
「誤魔化されませんからね!」
有村さんが伊藤先輩の背中を押して保健室の外に追い出した。
ガチャリとわざとらしく大きな音を立てて鍵を締めた。
「うぅぅ、七江ちゃーん」
「外で反省していてください」
伊藤先輩が保健室のドアに縋り付く様が目に浮かぶ。
「まったくもう、油断も隙もないんですから」
独り言を呟くが気を悪くした様子はない。良い先輩後輩の関係を築けているようだった。
有村さんはハーフパンツを一気に脱ぎ捨てた。他人の目もなくなったので大胆な脱ぎっぷりである。
ショーツはスポーツブラと上下セットのようで、同じく黒一色でウエスト部分にブラジャーと同じメーカー名が白文字で入れられていた。メーカー名を記憶しておいて、自分で購入すれば擬似的に有村さんの下着を堪能できるのでは――と変態的に染まる思考を慌てて追い出す。
下着姿になった有村さんは脱いだ体操着を畳んでビニール袋に収めた。
「やっぱり中まで濡れてる」
ショーツの端を摘んで溜息をついた。
「……下着まで脱ぐとなると、なんだか変な気分」
緊張か羞恥か上擦った声を漏らす。
うつ伏せで寝転がっているので、押さえ付けられた股間が期待だけで膨らみ始めているのに気付いた。
いよいよ有村さんの手がブラジャーを脱ごうと肩紐に手が掛かる。
僕は固唾を呑んで運命の瞬間を待った。
「少しの間だけ出て行ってもらおう。保健室で寝てるのなんて八割サボりなんだからさ」
「なんですか、その偏見」
「経験則というものだよ、七江くん」
探偵のような口振りで答えた伊藤先輩が、僕の隠れるベッドの方へと近付いてくる。心臓が緊張にうるさいぐらいに騒がしくなる。外にまで鼓動が漏れ聞こえているのではないかと心配になった。
そして勢い良くカーテンが開かれた。
「悪いんだけど少しの間――あれ?」
もぬけの殻になったベッドに戸惑う声が聞こえる。
僕は目の前に迫った伊藤先輩の足を見ながら安堵の息をついた。
着替えを覗けると知った瞬間、僕は即座に身を隠す方法を考えていた。下手にカーテンの外に出れば気付かれると判断して、二人が会話をしている内にベッドの下に潜り込んだのだ。
「どうしたましたか?」
「開け忘れてたのかな。誰も居ないみたい」
「それなら、ここで着替えちゃいますね。この格好で余り歩き回りたくはないので」
「身体が冷えて、そのままだと風邪も引いちゃうしね」
伊藤先輩が離れていくのを確認して、僕はベッドの下からこっそりと保健室の様子を窺う。
有村さんと伊藤先輩はベッドに背中を向けていた。
「保健室で替えの下着が借りられるんですね」
「ああー、前に友達がさ、盛大に水溜りに突っ込んでね。怪我もしちゃったから保健室に連れて行ったら、替えの下着を出してくれたの。生理とかで汚しちゃって来る生徒が結構居るみたいだよ」
有村さんは話を続けながら、羽織っていたジャージを脱いでシャツに手を掛ける。
ぐっしょりと濡れたシャツは妙に艶めかしくて、下手な露出よりも興奮を誘った。
「ほら、脱いだ服はこれに入れたらどうかな」
伊藤先輩が戸棚にあった不透明のビニール袋を取り出してきた。
「ありがとうございます。でも勝手に色々と借りてしまって大丈夫でしょうか」
「大丈夫大丈夫、私から事情は説明するからさ」
体育の授業があったので、有村さんはスポーツブラを身に着けていた。
質実剛健といったデザインで飾り気はない。黒一色で太い肩紐にメーカー名が白文字で入れられていた。胸全体をぴっちりと覆った膨らみが逆に胸の大きさを際立たせており、着エロの概念を少しだけ学べた気がする。
用務員室で着替えを覗いていた時に口にしていたが、やはり大きい胸にも色々と苦労があるらしい。ただ拝んでありがたがるのが少しだけ申し訳なくなる。
「それにしても今日は災難だったね」
「仕方ないですよ、道具はいつか壊れるものですから」
「でもあそこまで使い込む前にやっぱり買い替えるべきだよ。ホースに亀裂が入るなんてよっぽどだよ。水がブシャーって噴き出した時、何か爆発したのかと思ってビックリしちゃった」
「あはは、先輩まで濡れなくて良かったです」
有村さんがびしょ濡れになった理由のおおよその推測が立った。
まず僕は六時間目どころかがっつり放課後まで眠っていたらしい。それで美化委員の活動をしていた有村さんは、散水ノズルを使って水やりをしていたところ、蛇口に繋げていたゴムホースが劣化か何かで裂けてしまい水が漏れ出してしまった。
その水をもろに浴びた有村さんは、この通り濡れ透け体操着になった。
「本当に助かりました。ノーブラで帰ることになるのかなーって」
「いやいや、七江ちゃんの柔肌を野郎になんか見せるわけにはいかないからね」
「ところで先輩はいつまでここに残ってるんですか」
「ほら、身体を拭くのにはこのタオルを使って」
「ありがとうございます……いえ、先輩も早く出て行ってくださいね」
「自然な流れで残ろうとしてたのに!」
「誤魔化されませんからね!」
有村さんが伊藤先輩の背中を押して保健室の外に追い出した。
ガチャリとわざとらしく大きな音を立てて鍵を締めた。
「うぅぅ、七江ちゃーん」
「外で反省していてください」
伊藤先輩が保健室のドアに縋り付く様が目に浮かぶ。
「まったくもう、油断も隙もないんですから」
独り言を呟くが気を悪くした様子はない。良い先輩後輩の関係を築けているようだった。
有村さんはハーフパンツを一気に脱ぎ捨てた。他人の目もなくなったので大胆な脱ぎっぷりである。
ショーツはスポーツブラと上下セットのようで、同じく黒一色でウエスト部分にブラジャーと同じメーカー名が白文字で入れられていた。メーカー名を記憶しておいて、自分で購入すれば擬似的に有村さんの下着を堪能できるのでは――と変態的に染まる思考を慌てて追い出す。
下着姿になった有村さんは脱いだ体操着を畳んでビニール袋に収めた。
「やっぱり中まで濡れてる」
ショーツの端を摘んで溜息をついた。
「……下着まで脱ぐとなると、なんだか変な気分」
緊張か羞恥か上擦った声を漏らす。
うつ伏せで寝転がっているので、押さえ付けられた股間が期待だけで膨らみ始めているのに気付いた。
いよいよ有村さんの手がブラジャーを脱ごうと肩紐に手が掛かる。
僕は固唾を呑んで運命の瞬間を待った。
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