佐藤くんは覗きたい

喜多朱里

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家族を覗きたい(4)

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「家族らしさ家族らしさ……むむむっ」
「こだわらなくてもいいんじゃ」
「あっ! それなら――痒いところはありませんかー」
「……それは美容師とかの台詞じゃないかな」

 有村さんの両手が泡立った髪を梳きながら頭皮を指の腹で洗っていく。
 背中から離れていく胸の感触を名残惜しみながらも見送り、今は洗い掛けの髪からシャンプーをし直してもらっていた。

「泡を流すから目を閉じてね」
「もう二度とあの痛みは味わいたくない」
「あははー、次はシャンプーハットを用意しようか」
「……次、だと」
「家族だったら一緒にお風呂に入るのは普通だよ」
「万能ワードみたく使うんじゃありません」
「はーい」

 有村さんはくすくすと笑った。
 シャワーが噴き出す音に瞼を閉じる。

「でも裸の付き合いって親しい証拠だよね、家族的だよ!」
「友情路線かな」
「うーん、それじゃあ――お背中流しますね」
「先輩後輩の乗りだね」
「……家族って難しいね」
「そもそも論として、形から入るのはやめようか」
「確かに……!」

 シャワーが止まり顔を上げる。
 立ち上がった有村さんの腕が顔の横を伸びていく。鏡の下にあるカウンターに置かれたボディソーブを取ろうとしたが届かず前屈みになった。
 むにゅん――柔らかい重みが後頭部に伸し掛かった。鏡を見れば有村さんの胸が乗せられていた。
 頭を揺らすとぽよぽよと弾んだ。

「もうっ、いたずらしないでっ」
「ご、ごめん……つい出来心で」
「えっちな好奇心はもうちょっと我慢しててね」
「これは物理法則に対する学術的好奇心だからセーフだと思うんだ」
「ふぅーん」

 ジト目と平坦な声に目を背ける。

「…………はい、苦しい言い訳です」
「素直でよろしい、ふふっ」

 ボディソープを泡立てたスポンジを僕の背中に軽く押し当てた。
 強い力でごしごしと擦ってしまう僕の乱暴な手と違って、まるで芸術品を扱うように丁寧な手付きで洗ってくれる。

「どうかな?」
「良い感じだよ。誰かにやってあげたりしたことがあるの?」
「小さい頃にね」
「お母さんと?」
「ママはあんまり長湯すると体調を崩しちゃうから、お風呂係はパパだったよ。背中を洗うのはよくやってたの」
「なるほどね」

 幼い頃は父さんと一緒に入っていた記憶はあるけど、溺れる心配などがなくなる年齢になるともう一人で入っていた。
 多忙なので少しでも仕事の時間を捻出したかったのだろう。
 だから家族の触れ合いとしての入浴は経験がなかった。
 子どもの心を蔑ろにはしていたけど、愛されているとは思うので僕は両親を嫌いにはならなかった。親として不器用なだけで人としては尊敬できたからだ。

「ん……?」

 背中に当たる感触が変化する。
 ふんわりと包み込むような柔らかなスポンジから、温かで弾力があり吸い付くようなゴム毬に似た――有村さんのおっぱいだ。

「んしょ、んっしょ」

 鏡で確認すると、有村さんが両手で支えた胸を背中に押し付けていた。ボディーソープで泡塗れになった体を上下に揺らして擦り合わせる。

「……あの、これは?」
「ずっと胸を気にしてたから、こうしたら嬉しいかなって」
「全人類の夢だよ」
「そこまでっ!?」
「ごめん、言い過ぎだった」
「そうだよね」
「でも少なくとも全男性の夢ではある」
「少なくともの数じゃないよ!?」

 有村さんが声を上げる度に体が大きく揺れるので、ぐにょんぐにょんと面白いぐらいに形を変えて胸が背中の上を滑っていく。

「良かった、喜んでもらえて……でも、これっ……先の方が擦れてムズムズしちゃう」

 吸い付く乳房の先端が硬くなりコリコリと確かな感触を伝えてくる。

「はぁ、はぁ、んふぅ」

 首筋に掛かる吐息が淫らな熱を帯びていた。
 呼吸を整えようとするが、有村さんは快楽に引っ張られて、無意識に乳首を転がすように胸を動かしていた。

「んっ……ふっ、ふっ……」

 有村さんの腕が脇の下から回されて僕にしがみついてきた。

「はぁぁ、はぁぁ……ふぅぅ……もう背中は充分かな」
「そう、だね」
「それじゃあ次のところを洗うね」

 正面に回り込んできた有村さんに、音を立てて唾を飲み込む。
 僕が足を広げるとその間に収まるように座り込んだ。

「……次のところ」
「うんっ」

 大きな胸が突き出される。
 乳房の真ん中に赤く熟れたさくらんぼが二つ、泡では隠し切れずに顔を出していた。
 有村さんが屹立した肉棒の目の前までにじり寄る。
 視線を向けられるだけで火傷したみたいに熱くなる。
 期待にドクンドクンと心臓が早鐘を打った。

「洗うね」

 膝立ちになって胸の谷間に肉棒を挟み込んだ。

「う、あっ」

 快感が背筋を駆け上がりびくびくと腰が震えた。

(有村さんが、パイズリをしてる……っ!)

 目に映る光景だけで興奮を抑え切れない。

「こういうのどこで、知ったの?」
「えっ?」
「……パイズリをさ」
「ぱいずりって言うの?」

 パイズリを知らずに胸で洗うという流れで天然炸裂したのか。

「知らないならそれで……うん、その方が嬉しいかな」
「よかった、佐藤くんの好みなら嬉しい……続けるね?」

 敏感な陰茎が乳房に包み込まれた気持ち良さは、背中に押し付けられた時とは比べようもなかった。男根が溶けてしまいそうだ。

「佐藤くん、すごい気持ち良さそうっ」

 有村さんが陶然と微笑んだ。
 両手で左右から乳房を押し込んで、むにゅむにゅと吸い付く感触にいきり立った亀頭が谷間から飛び出す。白い泡と先走り汁が混ざって大量に精液が溢れ出ているようだった。

「逃げちゃだめ、ぜんぶ綺麗にするからね……んっ、んっ」

 亀頭が谷間に沈んで念入りに乳房で扱き上げられた。
 偶然にも雁首を的確に捉えており、強い刺激に腰が浮いてしまう。

「それ……うくぅっ」

 風呂の縁に手を突いて倒れ込む体を支えた。
 有村さんは悪戯な笑みを浮かべて更に激しく男根を扱いた。ぷるんぷるんと弾むように乳房が揺れる。
 蕩けた顔と甘い吐息、何よりも必死になって僕を喜ばせようとしてくれる気持ちが興奮をより掻き立てる。
 想いに応えたくて有村さんの頭を撫でた。

「ん、えへへっ、もっとがんばるから、あ、んっ、きもちよくなってっ」
「有村さんっ、有村さん……うぅぅ、だめだ、もうっ」
「あぅ、佐藤くんっ、動いちゃ、ああっ、擦れてっ、わたしも気持ち良くっなっちゃうからぁ」

 快楽の波に耐えようと腰を揺らす。
 膨れ上がった亀頭が有村さんの乳首を弾いた。
 硬い感触に電撃が走るような快感が迸り一気に絶頂へと近付いた。

「はぁはぁ、くぅぅ、射精るっ、ああ、ああっ!!」
「んんっ! んっ! いいよぉ、佐藤くんのいっぱいちょーだい」

 有村さんは脇を締めながら胸を両腕で包み込む。
 谷間に閉じ込められた陰茎は四方八方から乳肉に圧迫された。そこへ更に両腕の輪っかが縮まっていき、溜め込んだ精液を絞り出そうとする。 

「――ンクゥッ!!!!」

 意識が真っ白に染まった。
 谷間から飛び出た鈴口がぱっくりと開いて――ちんこが爆発したのかと錯覚するぐらい勢い良く精液を噴き出した。

「んぁぁっ、きゃぅっ!?」

 明滅する視界の中で、有村さんの顔が精液で白濁に染まっていく。

「ふあぁぁ……すごい、熱いっ……」

 有村さんがうっとりと頬に両手を添える。

「はぁはぁはぁ、ごめん、顔に掛かっちゃって」

 白い粘液が手に絡み付くのを気にする様子はない。むしろ垂れてきた粘液を指先で弄んで目を細めていた。

「ううん、嬉しい。わたし、佐藤くんのことたくさん気持ち良くできた証拠だもん」

 健気な言葉に射精したばかりの息子がびくんと跳ねた。

「……元気一杯だね」
「うちの息子がすみません」
「まだまだできるってことかな」
「あー……まだ賢者タイムなんで少し休憩を」
「けんじゃたいむ?」
「気にしないで……シャワーを浴びようか」
「えへへ、そうだね」
「うっ……!」

 精液でベトベトになったまま微笑む姿は股間に響く。
 征服欲が満たされる。顔射に悦ぶ感性を理解できてしまった自分が悲しい。
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