6 / 23
①不自然で不器用な愛の形
しおりを挟む
「彰人、どうしたの?」
突然、隣にいた彼女が、俺の顔を覗き込んできた。
「あ…」
ぼんやり意識を違う方へと向けていた俺は、彼女の声にはっと我に返った。
「くすくす…何かあったの?彰人って、何か考えてるんだろうなってすぐにわかるわ」
「ごめん…たださ…今日、好きだって言われちゃって」
「あら、おもてになること」
彼女は羨ましいわと笑う。
「それがさ、それ言ったの男なんだ」
「ふふ、昔っから彰人ってば男女問わずもてるのよね」
俺がため息をつくと、彼女は鈴がなるような声でころころと笑う。
同情するどころか、楽しそうな彼女に、俺はため息を深くする。
今の状況を説明しようか…。
今、俺は横になっている。
そして隣には、頭からつま先まで色気を醸し出す女性。
二人は素っ裸で、シーツに包まっている。
つまり、だ。
コトが終わった後の状態。
彼女とは、付き合ってる…どころか連れ添っている。
もっと、ちゃんと言おう、俺と彼女は、結婚している。
彼女は俺の妻で、俺はれっきとした妻帯者。
それでこの会話。
傍から見ればおかしいかもしれないな。
「彰人って、昔から男の人にもてたもんね。私と結婚したのだって、はっきりノーマルだって分かればそんな輩が減るって考えたからでしょ?」
「失礼な…」
俺は、彼女を軽く睨んだ。
たしかに、社会人になって1年半ですぐ結婚した。でも彼女とは、大学からの付き合いがあり、ずっと一緒に暮らしていた。
まあ、ちょっと早かったのは、その所為でもあるけれど…でも結婚したのは…
「ちゃんと君を愛してるから、結婚したんだよ」
そんな理由で結婚しただなんて、俺が悪い奴じゃないか。
「あら、違うの?ごめんなさい」
彼女は、再び笑う。
俺は、そんな彼女の頬を軽く突く。
くすくす笑いながら、彼女はその指をすり抜けていく。
もちろん、彼女が俺の愛を疑ってることはない。
こんなふうな、軽いじゃれあいはいつものことだ。
「で?彰人を悩ませる幸運な男の人はどんな人?」
「幸運って…」
彼女の言葉に、俺は眉を顰める。
「だって、嫌いな人なら彰人ってば、張り倒すなり、縁を切るなりするでしょう?結構、好みはっきりしてるもん」
好みって…。
「妻が、楽しむなよ」
「女に彰人を取られるのは悔しいけれど、男だったらしょうがないかなって思っちゃうのよね。ふふふ、彰人ってもともとバイだしね」
あっけらかんと話す彼女。
彼女のことは好きだが、時々ついていけないことがある。
妻というより、心身ともにパートナー。
こういう関係が、そのまま5年も続いている。
彼女が、ん?っと先を促した。
「それがさ…年下なんだよね」
「あら、珍しい。後輩?私知ってるかしら?」
「違う…会社の先輩に連れられて行った先の店にいた少年」
「少年?」
「高校生なんだよね。高校2年生」
「へえ、彰人の魅力はそんなとこまで及ぶのね」
感心したように彼女が言う。
「でもさぁ、その頃って「憧れ」を「恋愛感情」と間違えることがあるじゃん?本気って言われても、どう扱っていいか困るんだよね」
「そうね、学生の頃、同級生を押し倒そうかって思ったことがあったわ。でも、今思えば、それも…私と違うタイプだったから欲しくなったという衝動だったのよね」
「おいおい…」
あっさりと話してしまう彼女の危険な告白に、俺も苦笑する。
「彰人がその子を嫌いで、言い寄られて付きまとわれて困っているのなら、私が手を貸そうか?」
「ん~嫌じゃないんだ…でも結婚してるって知ってるんだよね。しかも、なんか今まで女としか付き合っていなかったみたいだし…なんで急に俺なんだろ」
「嫌いじゃないなら、もっとその子のこと知ってみれば?結婚してるって分かっている人、しかも同性にそれでも諦められないなんて、それって究極の愛じゃない?高校生なら、それをちゃんとわかったうえで、告白してるわよ」
…究極の愛ねぇ。
「でもなぁ…」
「高校生っていう年齢が気になるかもしれないけど、別にいいんじゃない?もともと彰人ってばバイなんだし、前から言ってるじゃない。女は私一人なら、男を作ってもいいわよって」
世間から見たらこんな夫婦おかしいだろう。
彼女は本気で言ってる。
「う~ん…考えてみるよ」
俺がそういうと、彼女は笑って頑張ってねと俺に擦り寄ってきた。
俺はその髪を撫でながら、今日会った少年の真剣な目を思い出していた。
2004/04/11
突然、隣にいた彼女が、俺の顔を覗き込んできた。
「あ…」
ぼんやり意識を違う方へと向けていた俺は、彼女の声にはっと我に返った。
「くすくす…何かあったの?彰人って、何か考えてるんだろうなってすぐにわかるわ」
「ごめん…たださ…今日、好きだって言われちゃって」
「あら、おもてになること」
彼女は羨ましいわと笑う。
「それがさ、それ言ったの男なんだ」
「ふふ、昔っから彰人ってば男女問わずもてるのよね」
俺がため息をつくと、彼女は鈴がなるような声でころころと笑う。
同情するどころか、楽しそうな彼女に、俺はため息を深くする。
今の状況を説明しようか…。
今、俺は横になっている。
そして隣には、頭からつま先まで色気を醸し出す女性。
二人は素っ裸で、シーツに包まっている。
つまり、だ。
コトが終わった後の状態。
彼女とは、付き合ってる…どころか連れ添っている。
もっと、ちゃんと言おう、俺と彼女は、結婚している。
彼女は俺の妻で、俺はれっきとした妻帯者。
それでこの会話。
傍から見ればおかしいかもしれないな。
「彰人って、昔から男の人にもてたもんね。私と結婚したのだって、はっきりノーマルだって分かればそんな輩が減るって考えたからでしょ?」
「失礼な…」
俺は、彼女を軽く睨んだ。
たしかに、社会人になって1年半ですぐ結婚した。でも彼女とは、大学からの付き合いがあり、ずっと一緒に暮らしていた。
まあ、ちょっと早かったのは、その所為でもあるけれど…でも結婚したのは…
「ちゃんと君を愛してるから、結婚したんだよ」
そんな理由で結婚しただなんて、俺が悪い奴じゃないか。
「あら、違うの?ごめんなさい」
彼女は、再び笑う。
俺は、そんな彼女の頬を軽く突く。
くすくす笑いながら、彼女はその指をすり抜けていく。
もちろん、彼女が俺の愛を疑ってることはない。
こんなふうな、軽いじゃれあいはいつものことだ。
「で?彰人を悩ませる幸運な男の人はどんな人?」
「幸運って…」
彼女の言葉に、俺は眉を顰める。
「だって、嫌いな人なら彰人ってば、張り倒すなり、縁を切るなりするでしょう?結構、好みはっきりしてるもん」
好みって…。
「妻が、楽しむなよ」
「女に彰人を取られるのは悔しいけれど、男だったらしょうがないかなって思っちゃうのよね。ふふふ、彰人ってもともとバイだしね」
あっけらかんと話す彼女。
彼女のことは好きだが、時々ついていけないことがある。
妻というより、心身ともにパートナー。
こういう関係が、そのまま5年も続いている。
彼女が、ん?っと先を促した。
「それがさ…年下なんだよね」
「あら、珍しい。後輩?私知ってるかしら?」
「違う…会社の先輩に連れられて行った先の店にいた少年」
「少年?」
「高校生なんだよね。高校2年生」
「へえ、彰人の魅力はそんなとこまで及ぶのね」
感心したように彼女が言う。
「でもさぁ、その頃って「憧れ」を「恋愛感情」と間違えることがあるじゃん?本気って言われても、どう扱っていいか困るんだよね」
「そうね、学生の頃、同級生を押し倒そうかって思ったことがあったわ。でも、今思えば、それも…私と違うタイプだったから欲しくなったという衝動だったのよね」
「おいおい…」
あっさりと話してしまう彼女の危険な告白に、俺も苦笑する。
「彰人がその子を嫌いで、言い寄られて付きまとわれて困っているのなら、私が手を貸そうか?」
「ん~嫌じゃないんだ…でも結婚してるって知ってるんだよね。しかも、なんか今まで女としか付き合っていなかったみたいだし…なんで急に俺なんだろ」
「嫌いじゃないなら、もっとその子のこと知ってみれば?結婚してるって分かっている人、しかも同性にそれでも諦められないなんて、それって究極の愛じゃない?高校生なら、それをちゃんとわかったうえで、告白してるわよ」
…究極の愛ねぇ。
「でもなぁ…」
「高校生っていう年齢が気になるかもしれないけど、別にいいんじゃない?もともと彰人ってばバイなんだし、前から言ってるじゃない。女は私一人なら、男を作ってもいいわよって」
世間から見たらこんな夫婦おかしいだろう。
彼女は本気で言ってる。
「う~ん…考えてみるよ」
俺がそういうと、彼女は笑って頑張ってねと俺に擦り寄ってきた。
俺はその髪を撫でながら、今日会った少年の真剣な目を思い出していた。
2004/04/11
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる