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アマニール侯爵の詭謀(3/3)
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「ここからは予測じゃなくて事実ね。しばらく粛々と今の体制で事業が続いたんだけど、1年前に急に事態が変わった。アマニール前侯爵が生前分与した遺産は一部無効であると主張して返還要求を出した。」
「待って‼︎そんな話は聞いてない。」
想定外の状況にシオンの話の腰を折ってしまった。
「・・・だから子爵と話す方が疑問にすぐ答えてもらえるのに・・・。」
「ごめん、続けて。」
「マクレガー子爵は前侯爵と交わした生前分与の覚書を提出したけど、アマニール侯爵は偽造されたものだと主張した。筆跡鑑定と家門の刻印鑑定を求めたけれどこれも偽物だと一方的に主張した。子爵は弁護士や付き合いのある貴族に相談し、最終的に皇室が仲裁に入った。」
「皇室が?!」
そんな大事件が起きているのに両親も兄も私には何も教えてくれなかった。マスコミでも一切取り上げられていない。
「仲裁というか救済なんだけど。各省庁で管理していた公文書を使って前侯爵が残した覚書の筆跡鑑定を行い、覚書の正当性が証明された。半年前の事だ。」
「半年前・・・。私のパリシナ国行きの延期を提案された少し前か・・・。」
そうか。その件があって皇室とマクレガー家に繋がりがあることがアマニールに知られてしまったのね。
(そして、繋がりがあることが知られてしまった以上、マクレガーの継承権がある私の囲い込みに動いたのね。)
シオンも知ってたのなら教えてくれても良かったのに。
「バークハー、クラウソン、ハイレン、マーロン、リーズ・・・。アマニールの配下にある家門の人たちが皇太子殿下の周りに間者として入り込んでいるんだけど、アマニール侯爵は自分たちの計略ことは全くバレてないと思っているのかしら?」
「うーん、堂々としていたほうがバレにくいっていう考え方もあるからなぁ。半年前、生前分与の覚書に皇室が介入するまでは企みが漏れているなんて考えもしなかったんだろう。マクレガー子爵が慎重だったおかげだな。アマニールの要請に応じてハミル殿を養子に出したことも大きかったんだろうな。」
マクレガー家嫡男のオリバーお兄様は父と同じく研究者肌で帝大薬学部出身。経営や折衝能力は次男のハミルお兄様のほうが優れていて帝大経営学部を卒業した。オリバーお兄様は爵位を継いで研究を続け、ハミルお兄様が全事業の経営責任者になる予定だった。
「その点はマクレガー最大の課題なのよね。ビジネスを担う予定だった次男が引き抜けて、アマニール侯爵はほくそ笑んでるわね。」
「マリク嬢の強い希望でオリバー殿ではなくてハミル殿になったという噂だね。」
「ねぇ、わざと間違えたでしょ。マリカ様ね。」
「あの女のシアに対する態度は不愉快そのものだろう。ハミル殿の容姿が好きならシアのことも好きなはずなのにな。」
「はは、確かに。しかしねぇ、彼女はハミルお兄様が昔からお気に入りだったけど、あの侯爵がそれだけで養子に取りたがるとは思えないわ。」
「侯爵なら養子を要求するときにシアも一緒に迎え入れたいと言いそうだけどな。海外の王族に嫁がせてコネを作りつつマクレガーの継承権を事実上剥奪させるとか。」
「ああ、それは・・・要求されたらしいわよ。」
「さすがだな。娘の名前を王妃にするくらいだものな。」
シノ大陸中部西部のリディアム教国家の王はマリクで王妃をマリカというのだ。
「いや、皇太子妃狙いでつけた名前じゃなくて子供になかなか恵まれなかったから夫人が舞い上がってつけちゃっただけみたいよ。」
「あ・・・そうなんだ。皇室側もアマニールを監視するために皇太子妃を決めかねているのかもね。」
ドキッとして鼓動が早くなる。重い気持ちを振り払うように淡々とシオンとの会話を続ける。
「軍事産業の保守派ウィローブロック公爵家、金融の中立派アマニール侯爵家、マスメディアの保守派サイワノーレ公爵家、造船業の保守派シェーカーヒル侯爵家。アマニールは有利とは言えないわよね。」
皇室ブルマン家は帝国のヒエラルキーの頂点ではあるが、事業を興して各市場が成長した貴族の力は昔よりも格段に強くなっている。皇室は重用する家門を慎重に選び、貴族のパワーバランスを整える必要がある。
「ブルマン家も銀行業をしているからね。最も抑えるべきはサイワノーレ、次はウィローブロックかな。」
「そうね、メディアは味方につけておいて損になることはないものね。」
こうやって妃候補を並べると私がレオンハルト殿下の隣に立つ可能性は無いに等しい。最近、舞い上がっていた自分が惨めになる。
やっぱり私はレオンハルト殿下に相応しくない。
「待って‼︎そんな話は聞いてない。」
想定外の状況にシオンの話の腰を折ってしまった。
「・・・だから子爵と話す方が疑問にすぐ答えてもらえるのに・・・。」
「ごめん、続けて。」
「マクレガー子爵は前侯爵と交わした生前分与の覚書を提出したけど、アマニール侯爵は偽造されたものだと主張した。筆跡鑑定と家門の刻印鑑定を求めたけれどこれも偽物だと一方的に主張した。子爵は弁護士や付き合いのある貴族に相談し、最終的に皇室が仲裁に入った。」
「皇室が?!」
そんな大事件が起きているのに両親も兄も私には何も教えてくれなかった。マスコミでも一切取り上げられていない。
「仲裁というか救済なんだけど。各省庁で管理していた公文書を使って前侯爵が残した覚書の筆跡鑑定を行い、覚書の正当性が証明された。半年前の事だ。」
「半年前・・・。私のパリシナ国行きの延期を提案された少し前か・・・。」
そうか。その件があって皇室とマクレガー家に繋がりがあることがアマニールに知られてしまったのね。
(そして、繋がりがあることが知られてしまった以上、マクレガーの継承権がある私の囲い込みに動いたのね。)
シオンも知ってたのなら教えてくれても良かったのに。
「バークハー、クラウソン、ハイレン、マーロン、リーズ・・・。アマニールの配下にある家門の人たちが皇太子殿下の周りに間者として入り込んでいるんだけど、アマニール侯爵は自分たちの計略ことは全くバレてないと思っているのかしら?」
「うーん、堂々としていたほうがバレにくいっていう考え方もあるからなぁ。半年前、生前分与の覚書に皇室が介入するまでは企みが漏れているなんて考えもしなかったんだろう。マクレガー子爵が慎重だったおかげだな。アマニールの要請に応じてハミル殿を養子に出したことも大きかったんだろうな。」
マクレガー家嫡男のオリバーお兄様は父と同じく研究者肌で帝大薬学部出身。経営や折衝能力は次男のハミルお兄様のほうが優れていて帝大経営学部を卒業した。オリバーお兄様は爵位を継いで研究を続け、ハミルお兄様が全事業の経営責任者になる予定だった。
「その点はマクレガー最大の課題なのよね。ビジネスを担う予定だった次男が引き抜けて、アマニール侯爵はほくそ笑んでるわね。」
「マリク嬢の強い希望でオリバー殿ではなくてハミル殿になったという噂だね。」
「ねぇ、わざと間違えたでしょ。マリカ様ね。」
「あの女のシアに対する態度は不愉快そのものだろう。ハミル殿の容姿が好きならシアのことも好きなはずなのにな。」
「はは、確かに。しかしねぇ、彼女はハミルお兄様が昔からお気に入りだったけど、あの侯爵がそれだけで養子に取りたがるとは思えないわ。」
「侯爵なら養子を要求するときにシアも一緒に迎え入れたいと言いそうだけどな。海外の王族に嫁がせてコネを作りつつマクレガーの継承権を事実上剥奪させるとか。」
「ああ、それは・・・要求されたらしいわよ。」
「さすがだな。娘の名前を王妃にするくらいだものな。」
シノ大陸中部西部のリディアム教国家の王はマリクで王妃をマリカというのだ。
「いや、皇太子妃狙いでつけた名前じゃなくて子供になかなか恵まれなかったから夫人が舞い上がってつけちゃっただけみたいよ。」
「あ・・・そうなんだ。皇室側もアマニールを監視するために皇太子妃を決めかねているのかもね。」
ドキッとして鼓動が早くなる。重い気持ちを振り払うように淡々とシオンとの会話を続ける。
「軍事産業の保守派ウィローブロック公爵家、金融の中立派アマニール侯爵家、マスメディアの保守派サイワノーレ公爵家、造船業の保守派シェーカーヒル侯爵家。アマニールは有利とは言えないわよね。」
皇室ブルマン家は帝国のヒエラルキーの頂点ではあるが、事業を興して各市場が成長した貴族の力は昔よりも格段に強くなっている。皇室は重用する家門を慎重に選び、貴族のパワーバランスを整える必要がある。
「ブルマン家も銀行業をしているからね。最も抑えるべきはサイワノーレ、次はウィローブロックかな。」
「そうね、メディアは味方につけておいて損になることはないものね。」
こうやって妃候補を並べると私がレオンハルト殿下の隣に立つ可能性は無いに等しい。最近、舞い上がっていた自分が惨めになる。
やっぱり私はレオンハルト殿下に相応しくない。
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