アプロディーテの大殺界

佐藤ののり

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共闘することにした1(3/3)

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予想をしていたこととはいえ、私は自分が置かれている状況を考えると憂威ゆうかんを超えて笑えてくる。
「・・・私って今・・・殿下のこと振ろうとしてた・・・のかな?」
前に”浮気するつもりはない”って言われたときは、その意図がよく分からなかった。

”本気だよ”ってことかな。
“あなたが好きです”と勝算もなく気持ちぶつける行為は大人になるとあまりしない。男も女も10代後半にもなれば相手が自分に脈があるか分からないと告白はしない。気まずくなるのは嫌だものね。
とりあえず最後まで言えなかったがシオンに結婚を打診されて受諾したことは伝わったはずだ。
明日からどんな顔をしてレオンハルト殿下に会えば良いのだろう。
「マクレガー令嬢、具合が悪いのですか?」
気付けばレオンハルト殿下の護衛のリオンさんが私を迎えに来てくれていた。
「あ・・・はい。少し疲れてしまって。」
「歩けますか?」
「はい、大丈夫です。」
「よかった!」
リオンさんは私の部屋の前まで送ってくれた。リオンさんに礼をして部屋に入るとマルティナさんが部屋にいた。
「マルティナさん、お久しぶりです。大学の課題は出せましたか?」
マルティナさんは美大の4年生で卒業に必要な単位を既に取り終わっていて皇城で侍女として勤めている。今回は卒業制作の途中経過を提出するためにウィークスヴィル家に戻り大学に通っていた。
「はい、晴れて前期修了です。ところでお花が届いていましたよ。太陽国が原産のササユリだそうです。」
花をもらっただけなのにレオンハルト殿下のことを思い出してドキッとした。
いつもユリ縛りなんだな。今回のササユリはかわいいし匂いも控えめで素敵ね。

***Zion. Weimar/*
「納得できませんね。」
シアを皇太子宮まで送った足で父であるワイマール公爵の元へ向かって話した俺は父の話しに絶句した。シアと予測したアマニール一派の企みは皇帝の側近と公安で把握済みの問題だった。リンド聖皇国のことは把握していなかったようで、父はすぐに皇帝陛下に謁見しに行った。
父はシアとの結婚は今の段階では了承できないと言ってきた。彼女に問題はないし、彼女の家を保護するのもかまわないが今は婚姻を打診することができないらしい。
俺は他言無用でレオンハルト殿下の抱えている問題を聞いて、父が今までマクレガー家に婚姻を打診しなかった理由を理解した。しかし、それで彼女を諦めるかといったら、それは別の話だし納得できない。
「ブルマン家との間に遺恨を残さないようにしなさい。それが君たちの婚姻の絶対条件だ。」
父はそう言った。
シアが結婚を了承して深い口づけを受け入れたとき、このまま抱いて既成事実を作ろうとすぐに行動に移した。
彼女の決意が揺らぐのも怖かったし、妊娠の可能性があればすぐに婚約式を行うことができる。俺たちが結婚の約束をしたと分かれば皇太子殿下は彼女を取り戻すために動くことも予想できた。
婚約式を終えれば正式な婚姻まで180日必要だが、新婚生活を始めることができる。そうすればすぐにでも彼女を皇城から出して皇太子とも引き離すことができるはずだった。
侍従は父の命令で俺たちが婚前交渉するのを止めに入ったのだ。侍従達が無許可で俺の部屋に鍵を開けて入ってきたのも父の指示であると考えれば納得だ。
「あのスカした皇太子、やることが抜け目ない。」
文武共に彼に負ける気などしないが、学校の勉強を離れて社会に出れば正解の解らない問題に常に直面する。狡猾で腹黒い狸爺達が暗躍する政界での立ち回りも、先を見据えた戦略の立て方も彼には敵わないのだろう。
彼の穏やかな微笑みはただの仮面で腹の中は真っ黒だ。初めて会ったときからレオンハルト皇子のことが嫌いだった。
(どうしてこの国で唯一、自分を負かせることができる男が恋敵になってしまうのだろうな。)
週末のアマニール家のパーティにはレオンハルト殿下も招待されている。父の条件を飲むには出し抜くこともできないから地道に外堀を埋めてシアに俺を選択させないといけない。
幸い彼女は情に流されやすい。大切な人が苦しむくらいなら自分を抑え込む人なのだ。

「とりあえず、エスコートの役目は得ているから先制点は入れられるかな。」
ため息をついて婦人服のカタログをペラペラとめくる。
シアは体型がほぼ変わらないから採寸は不要だ。パーティ当日にサプライズでプレゼントすることができる。ちょっと仕立て屋には無理を言ってしまうが明日の朝イチでオーダーすればギリギリパーティに間に合うだろう。
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