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ビリヤードで落ちる(2/2)
しおりを挟むLuons, Loisir /*
恥ずかしい。配属2日目でやりたくもない一発芸を披露してスベった。そして、マッサージ師の事でリリと小声で話をしていたら殿下が恐ろしい顔で僕を見ていた。射殺さんばかりに!
いやいや、全部殿下の為ですよと言ってやりたかった。いつかは報われるんだろうか・・・
殿下の浮気相手カップル?(いや、もうどんな人間関係か訳わからん)との接触を回避して僕たちのグループは一階まで来た。カイル・ルーズベルト警視正が殿下に貸切が可能なことを伝えていた。
貸し切る時は近衛の後半担当が解放される20時以降にしていただきたい。どうせリリとのデートで使うんだろうけど絶対に目のやり場に困る。
みんな、殿下とリリの邪魔をしないようにそれぞれ距離を取った。ダーツをする人たちとバーカウンターで飲む者に分かれた。
僕はマーキュリー先輩とバーカウンターで酒を注文する。
僕はビリヤードをしている殿下とリリを見て、ジントニックを飲みながら先輩に聞いてみる。
「殿下ってあんなにガツガツした人じゃなかったですよね。」
「皇太子がガツガツできないだろう?でも、さすがにワイマール公子が本気で動き出したから焦ったんだろうね。もうすぐ足枷になっていた問題が全部片付くからその後はもう一気にさらっていくだろうな。」
「僕は複雑ですよ。シオン・ワイマールは親友ですから。知ってますよね、シオンが求婚したこと。」
「ああ。でも横恋慕だというのならば、それは逆になるぞ。」
「?」
「5年前、ブルマン家からマクレガー家に求婚の申し入れをしている。」
「は?!」
シオンは個人対個人で結婚を打診していたが、王家からの求婚は家長から家長への申し出なので正式な婚約申込みだ。
驚いたが冷静に考えれば、彼女の血筋からすると不思議でもない。リリの両親は帝国内の貴族だが他国の王位と太公位の継承権を持っているのだから。むしろ今まで注目されていなかったのが不思議なくらいだ。
「だからワイマール公爵は正式な婚約申込みをしないのですね。」
「ああ、5年前の諮問会議でリリーシア嬢の評価をして全会一致で皇太子の妃として承認されたんだ。」
「確かに血筋は本家のマリカ嬢より余程良いわけですし、帝大に在籍していましたからね。アマニール侯爵が反対をしなかったのはアマニールの養女に迎えるつもりだったんですね。」
皇后様も皇太后様も帝大卒でお二人とも賢妃として名高い。現在のサルニア帝国では皇后は子を産んで愛想良くしていればいい存在ではなくなっていた。皇帝と同等の能力を持ち、皇帝不在でも政を滞りなくできる女性でなくてはいけなかった。
「そうだ、皇后様と同じように本家から嫁げば問題ないという話になった。」
ソフィー皇后様はワイマール家の傍系伯爵家の出身で陛下と婚約する際にワイマール公爵家の養女として入った。
「ジャスティン・アマニールを不審に思っていたからマクレガー子爵は申し入れを辞退したんだ。レオは諦められずに子爵を説得して返答待ちの保留状態にしてもらった。諮問会議のメンバーには子爵に固辞されたと伝えてね。だから公式的には2人の婚約話はご破産になっているんだけど、正式な申し込み書が出されている以上、文書上はまだ有効なんだ。」
うーん、じゃあ今の妃候補達はキープなのか。フィリーナ嬢は24歳だし、そろそろ結婚しないといけないよな。
「保留は次のリリーちゃんの誕生日に無効になるんだよね。」
「リリーちゃんって・・・」
「あー、大学の仲間は密かにそう呼んでたの。」
笑いながらマーキュリー先輩はいう。
「まぁ、そんな訳だから今回の件が早く解決しないと彼女の婚約はブルマンだろうとワイマールだろうとどのみち進まないわけだ。」
本家の罪を罰して、それでも世論が許すなら婚約させても良いということだな。
「リリとの婚約は、ワイマールの方が有利でしたがアマニール侯爵位を奪われた事実がわかったことでブルマン皇家のほうが優位になりましたね。」
「ほう」とマーキュリー先輩は目を細めた。先輩は僕のことを過小評価しているようだ。僕は貴族の割に素直な性格だと思うが馬鹿ではない。
「第一に、ワイマール公爵の望んでる嫁は有力家門ではないことです。マクレガー子爵がアマニール家を取り戻してワイマール家と結ばれれば、パリシナを軽く凌ぐレベルの独立国家が建国できる規模です。」
「現公爵は望まないだろうね。」
むむ?引っかかる相打ちだな。
「第二に、アマニール家の名誉回復は皇家の関与に極めて影響されます。皇帝陛下がマクレガー子爵の正義の告発と捜査協力を惜しまなかった行動を讃えれば子爵はサルニア帝国と黎、ひいては世界の危機を救った英雄になる。」
現アマニール侯爵の計画の中で最も危険なのは仮想財閥で連携した宇宙産業と軍事産業の合作である軍事衛星の事業だ。そんなものを作ったら世界の破滅を招きかねない。
真実をどこまで公表するかは難しいところだ。
(印章を偽造されたのは官庁の信頼に関わるわけだし。)
それでも、レオンハルト殿下とリリが結ばれるなら未来の皇帝と皇后を立てるために可能な限り英雄化させるはずだ。
「名誉回復せずに爵位だけ返せば、現在のマクレガー家門は今後長い間、アマニールの悪事を連想される。メディアにマクレガーの功績を流しても、政府からの正式な発表がなければ噂話のようなものですからね。」
この場合、爵位は取り戻してもアマニールの名前は捨てる必要がある。
「マクレガー製薬の買収を狙う輩が出てくるかもよ。」
「サルニア皇太子妃の出身家門に敵対的買収をしかける者がいるでしょうか。そんなことしたらレオンハルト帝になってから報復をうけることを恐れるはずです。あの様子を見れば」
僕は殿下とリリーシアのいるビリヤード台に目を向ける。
「見てられないな。」
「ビリヤードって恋愛の駆け引きに使われますけど、リリは過保護に育った恋愛初心者だから駆け引きどころかあっという間に落ちて、単にキュンキュンしているだけですね・・・。一般的に言ったらお持ち帰り確定みたいな。」
「そろそろ2人でドロップかな?」
「警護のために目を反らせない影の人たちが哀れです。そもそも殿下が・・・」
そこまで言いかけて口を噤んだ。
「怒らないし、内緒にしておくから続けていいよ。」
「5年前に婚約を申し込んだってことは出会ってすぐに結婚したいという意思があった訳ですよね?だったらリリにちゃんとアプローチすべきだったのではないですか?告白するとかデートに誘うとか。」
殿下がリリに積極的に近付いていれば、シオンも好意を持っても他の男達と同じように引くことができただろう。
「あはは。本当だよね。」
「え?」
「怒んないって言ったでしょ。一応、俺らも助言したんだよ。でも、あいつ妙に頑ななところがあって親の許可が無いと付き合えないとか言ってさぁ。それがこの体たらくよ。」
ていたらくって・・・。
「皇族ならそうなのかもしれないですね。」
「デートに誘おうとすると必ずシオン・ワイマールが妨害してきたみたいだね。でも、まぁあんまりアピールするとアマニール侯爵が彼女のことを狙うようになるし、彼女を守るためにはあまり目立てなかったというのがレオの本音だろう。」
「・・・なんだか理不尽ですね。」
「まぁ、とどのつまりアマニール侯爵が悪い」
「仰るとおりですが、告白はしておくべきだったと思います。いつか迎えに行くから待っててくれ的な告白。」
アマニール侯爵が悪い・・・か。マーキュリー先輩の家庭もアマニール侯爵のせいで幸せを壊されたんだもんな。
「すみませーん、ご一緒してもいいですかぁ?」
甘ったるい女の子の声がする。自分で言うのも何だけど僕も先輩も見目が麗しい。先輩は苦笑いしている。
「ごめん、あそこでタコに絡みつかれている伊勢エビみたいになっている女の子は僕の恋人の親友なんだ。女の子と飲んだりしたら大変なことになっちゃうよ。」
断りの口実にしてごめんね、リリ。
「ぶふっ」とマーキュリー先輩は噴き出しそうになり、何とか堪える。鼻からジントニックが出てこないと良いんだけど。
「・・痛い・・・。うう・・・。俺はそのタコみたいに麗しい伊勢エビちゃんに絡みついているイケメンと俺の恋人と近々お茶する予定があるから同じく遠慮しておくね。お誘いありがとう。」
マーキュリー先輩って恋人いるんだ。ゲイだったよな。先輩はウケかな?タチかな?どっちも絵になりそう。
「ルオンスくんの期待に応えられなくて申し訳ないが俺の恋人は女性だよ。」
「そうなんですか。実は僕たち卒業式の日に見ちゃったんです。その・・・先輩と殿下がキ・・・キスしているところを。」
先輩は溜息をついてから「なるほど」と言った。
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