赤子に拾われた神の武器

ウサギ卿

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第1章 運命の出会いと運命の旅立ち

1-9 神の武器、過去を憂う

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「すまぬが近辺の地図はあるか?」

「領地の地図でよければ」

「それで構わぬ」と地図を広げる。
地図上でのこの村の位置を確認する。

地図には大きく弧を描くように街道が走っていた。
この村は地図上で北東に位置し、北側に向かう街道は森の中を通り、抜けたところに北東と弧に続く街道があり、北東の街道は東領へと続いていた。

(こっちはないな)

二又の先に村か町があるようだが、街道が東領へ通じているので、盗賊も近寄りたくはないだろうと推察する。

(ならばこちらしかあるまい)

南東へ弧の続きの街道があり、中腹よりやや南側に村か町がある。
今いる村より西南西へ向かう街道があり、この村より大きな家のマークのため、街だと判断した。


まず、オリハは森の中腹を指差し魔力を込めた。
「この辺りが馬車を見つけたところだ」

と白く色付けして込めた魔力が馬車の形を成した。

「だうだうー!」

いつのまにか起きていたハルが苦言を呈す。

(ど、どちらでもよいであろうが!)

はぁ、とため息をつき馬車をロバに変えた。

「あーいーあー」

「ああ、そうだな、ロバを見つけたところだ」

と、苦々しく訂正した。
周りの目が生暖かかった。

これは恐らくだが、と断りを入れこの村より北側の領土外を指差し赤色の人形を作った。

「現時点で潜むならこの辺りだと思う」

そして指を指し直す。

「ここは大きな街でよいか?」

「はい、領主様直属の街です」

うむ、とその街の東側に赤い人形を置いた。

「北側と南側の村にも潜ませてるやもしれぬが、この街の手前には間違いなく斥候を潜ませておるだろう」

この村の上に青い魔力で馬を作り説明する。

「街道を真っ直ぐに進むのではなく、西に向かい南に下り街に行く事は可能か?」

と、青い馬が動き出す。

「え、ええ、魔物もあまり出ない草原ですので・・・ただ、そのルートですと到着に二日はかかりますよ?」

「充分だ、報告と依頼は盗賊団の斥候の確保でよい」

「成る程、わかりましたすぐ手配します」

と言うと、衛兵兼農夫に声をかけた。

オリハは恐らく明日襲撃してくるだろう盗賊達を一匹たりと逃すつもりはない。
が、現時点で合流していない斥候の者どもが後日、悪さをしないとは限らない。

「掃除をするならしっかりとやらんとな」と鼻を鳴らした。


村長が奥方に振り向き、それに奥方は頷く。

「料理の準備も整ったようです、お待たせしました」

と村の者にも食べていくよう促していた。
衛兵の男は「私は準備してすぐに出ます」と言いオリハに「村を頼みます」と一礼して飛び出した。

残念ながら(ああ任せておけ、汝の分も食べておくからな)な心境だった。


並べられていく御食事に目を輝かせる。
ああこれだ、これこそが!
我が待ち望んでいたモノは、と。

膝の上にハルを乗せ両の手を合わせる。
フォークとナイフの使い方は記憶にあった。

肉を切り取り口に運ぶ。
しっかりと噛み切り喉へと運ぶ。

(ああ、これが肉か)

両の目より一筋の涙がこぼれ落ちる。

(主よ我を許したまへ)

柱には概念から生まれた者と、ヒトから成った者とがある。
主神たる柱は前者であった。
主が味わうことのない幸福感を、使徒たる己が味わった罪悪感からの懺悔であった。

二口目にはもう忘れていた。


村人からお酒は?と聞かれたが、流石に辞退した。
飲んでみたかったが、飲み過ぎて知らない女性と同衾して、ハーレムPTとやらだったらしく袋叩きにあった過去の所有者を思い出したからだ。

御食事を堪能しながらも情報収集は欠かさなかった。
大事な料理の事、この領の事や国の事、他の国の事、種族間の事、奴隷の事、そして大事な料理の事、雑談も含めしっかりとだ。

大事な事なので二回確認した。


その頃とある場所で「あー肉は美味いもんなぁ」と、ある人の横で呟き、またある人がジト目で睨まれたとか何とか。


夜も更け肌着でハルと共に布団に潜り込んだ。
ああ、布団も素晴らしい。
と堪能しながら食事時に聞いた話を反芻していた。

村人達に姿を見て何も言わない事を聞いてみたら、普通に暮らしている者には関係ないですよ、と言われた。

やはり時代は少し変わっているようだ。

盗賊や、違法奴隷組織、魔物の討伐などは各国、冒険ギルドも協力して率先してやっているらしい。

そうなると、小規模で徒党を組む犯罪者は取り締まりやすいが、大規模な組織が相手になるとコストも手間もかかるので中々てこずっているとの事だった。
そして、取締されやすい小規模組織が集まり、中規模組織となりさらに集まり大規模組織となる。

さらに表立って色々と行えなくなると、地下に潜る、比喩であるが、手口が巧妙で尻尾が掴みにくくなるらしい。

奴隷、という扱いも、犯罪奴隷、借金奴隷の二つであり、公的組織が扱っている。
が、その抜け道として、無実の人間に罪を着せ犯罪奴隷に落とす、などがある。

気がつけば隣の村が奴隷狩りで廃村になっていた、なんて事は今の世ではまずないらしい。
違法奴隷は特定の有権者達による、遊び、に近いらしい。
一人当たりの価格も恐らく跳ね上がっているのだろう。

そんな事でハルの母親の命が奪われた、と聞くと腹だたしく感じるが、乱獲なんて事は無い。
やはり腹だたしく感じる。

種族間の住み分けもしっかりしているらしい。
ヒトはヒト。
獣人は獣人。
魔人族は魔人族と。

人の国は今いるところから、東と南と、南東に計4カ国。
その更に南側に魔人族の国。
ここより遥か東に獣人の国。

その三種族の交わる国境付近に、所謂希少種族といわれる者が、コミュニティといった形で住んでいるらしい。
そして約五百年前に起こったある事件から、国家間による不可侵条約が結ばれた。

(やはりあの時の・・・)

オリハはその時の事を思い浮かべると、すぐに頭から追いやり、眠りにつくのだった。

その記憶だけは拒絶するように。


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