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第1章 運命の出会いと運命の旅立ち
1-13 神の武器、祭りの後2
しおりを挟むその後村長が村人達に盗賊団の所持品の回収を頼んでいた。
衛兵が来た時に証拠品として必要らしい。
その証拠品で討伐証明となるそうだ。
基本的に盗賊や野盗などの所持品は討伐者の物になる。
幾許かは被害者への補償に充てられるが、その領の責任問題もあるので殆どが領主持ちとなるそうだ。
数ヶ月前の東領での野盗討伐は失敗に終わったがお金や美術品、宝石などは回収され一部は被害者への補償へ、残りは領庫として保管されていると村長が言った。
そして盗賊団にかかっている懸賞金と保管されている領庫の分をオリハに成功報酬として支払うと。
丁重にお断りする。
あって困るものではないが手荷物にもなる。
懸賞金や褒賞などを受ければ、変に目立ちかねない。
見た目の種族的なものもあるが細かく出自も問われるだろう。
山の洞窟で赤子に触れたらヒトになりましたなどと言える訳がない。
一利はあれども百害あるのだ。
これに一部の村民と村長が反発。
恩義に反するとか、命の恩人に、とか。
村長に至っては契約の際の当村で可能な限りご用意を、の一文を盾にした。
「つまりこれは正当な報酬なのです・・・受け取ってもらわなくては困りますなぁ」
と、借金取りみたいな口上を述べる。
恐らくあの時から考えていたのだろう。
・・・よかろうならば戦争だ。
オリハは契約の内容ではなく、誰と誰が契約をしたのか、を例に出した。
討伐は確かにオリハがした。
村がオリハに防衛と討伐の依頼をした。
という事は村が討伐した事にあたる。
つまり、領庫や賞金は村に権利がある、と。
これに、頭を輝かせ村長が反撃に出る。
村に入るお金ならば、当村での可能な限りにあたるのでは?と。
予定通りの言質を引き出しオリハは微笑む。
その順序はあくまでオリハ本人が辞退した場合だからだ。
本人が辞退したものを成功報酬に当てるのは矛盾にあたるのではないか?と。
ぐぬぬ、と呻く声が聞こえる。
ふむ、後ひと押しだな。
人里に降りて間もない、世事にも疎い、種族的な都合もある。
「だから辞退させてもらえぬか?」
と、目に憂いを込める。
「クッ!げ、現時点での出来うる支払いでよろしいですかっ!」
と、悔しそうに下唇を噛む村長を見下ろす。
(グハハハ勝った!勝ったぞ!)
こうして勝者不在の戦いは幕を下ろした。
明朝、村長からもう一晩の宿泊をお願いされた。
支度の用意だそうだ。
オリハもまだ斥候に出た残党の事もあるのでこれを了承した。
その日は料理を習ったり史実の本を数冊借りて読ませてもらったりしていた。
少し身体を動かしたくなりハルを抱いて村を散歩をした。
すれ違う人から名を呼び声をかけられる。
ロバの死を悲しんでいたミナにもあった。
ちゃんとお別れしたよ、と言った。
浮かべた笑みに憂いはなかった。
気がつけば村のはずれまで歩を進めていた。
オリハは畑を、その先の街道や野や山を見ていた。
ハルは抱っこ紐で前にいる。
優しく吹く風に髪を揺らせて気持ち良さそうに眠っている。
オリハルコンとして見ていた世界。
ヒトとなり見ている世界。
受肉しヒトとなって目の前にあったのは、いつもの世界と変わらないように思えた。
だがこの村で見てきたのは全く異なるものだった。
主より神託もない。
もしや別の世界に落とされたか?
疑問を感じ史実を調べたが同じ世界だった。
地形や国の名前は記憶にあるものもだった。
前回の降臨からおおよそ五百年と予想出来た。
そして大地へ降り立つ期間がこれだけ空いた事などオリハには記憶になかった。
いつもなら百年、短くて五十年、長くて二百年、そして沢山の悲劇と嘆きを目にしてきた。
国単位で不可侵条約も結んでいる。
綻ぶような噂もない。
特定の種族が迫害を受けている話もない。
この村でも野盗の襲撃など数十年ないらしい。
(我は・・・何故?)
滅びそうな種族に神より貸し出され、世界の均衡の危機に管理者の剣となり、邪な心を持つ者を打ち破る刃となった。
(わからぬ)
五百年前のあの行為が世界を変えたのか?
(・・・わからぬ)
目を覚ましたハルが耳に手を伸ばす。
耳はくすぐったいし痛いので指を握らせる。
「もう少し歩くか?」
「あーうあー」
(見て回ろう、この子と一緒に)
踵を返し畑の道を歩く。
ぷぅ~
そしてオムツ交換の時間がやってくるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「出来たわねっ!娘よ!」
「出来たよねっ!お母さん!」
ああいいわね、娘との共同作業!
「オリハさん喜んでくれるかしら?」
「お母さんが視たんでしょ?間違いないじゃない」
「久し振りだから自信がないのよ」
「あはは大丈夫だよ、私は視えないけど見立ては同じだよ」
「なら大丈夫かしらね・・・さぁもう一着頑張るわよ!」
「「おー!」」
私達の、いえ村の恩人のオリハさんとの出会いは鮮烈だったわ。
最初、家に見えられた時、ドキっとしたわ。
凄い綺麗だったから。
ハルちゃんも綺麗なつぶらなお目目でまるでお人形さんみたいだった。
そしてお部屋へ案内した後ね。
夫から置引きに合って下着も何も持っていないって聞いてびっくりしたわ。
あれだけ綺麗な人が、よくイタズラされなかったわって。
不幸中の幸いっていうのかしらね。
一通り用意してお部屋に戻って、ノックして・・・
あの時の感動は忘れられないわ。
オリハさんは全裸でビックリさせたと思ったのかもしれませんが・・・
スラっとした脚のライン。
身体のラインはより女性らしく。
長い艶のある銀の髪。
美しく健康的な黒い肌。
赤ちゃんを抱いて立つ姿は、美術品・・・いえそれ以上でしたのよ。
思わずいいものを見させてもらいました、なんてお恥ずかしい事を。
娘は娘で眼福とか・・・
まあ、趣味が同じなのね。
私が修道服をチラッと見たからかしら。
オリハさんは気に入ってるって言ってました。
ええ、わかってます。
私は視えるんです。
そういうスキル持ちだから。
スキルというのは血筋で発現しやすいらしいの。
うちの母屋では、父と姉が持ってたわ。
兄ともう一人姉がいたけど、発現しなかった。
ただ血筋と言っても隔世遺伝で発現したり、関係なく発現もするそうなの。
つまりハッキリとはわからないのよね。
そして私のスキルは[ギフト]
何を贈ったら喜んでもらえるかわかるっていうのかしらね。
でも残念な事に服限定なの。
それを通して身体のサイズも不思議とわかるのが副次効果かしら。
子供の頃発現した時はガッカリしたわ。
だって女の子なら貰いたいじゃない?
でもねこのスキルのお陰で夫に近づけたの。
うちの人今じゃあんなだけど若い頃は・・・
あらいやだ、関係ない話ね。
うちの娘は[切断]ってスキルなの。
結構硬い物でもスパって切れるらしいわ。
ただ距離は手の届く範囲だから、戦闘向きじゃないんですって。
でも裁縫には便利なの。
だから私が型紙を作ってあの子が切って縫って・・・
これから暑くなるし着替えもいるわね。
喜んでもらえるかはスキルで分かる。
でもどんな顔で喜んでもらえるかは分からないの。
うふふ、楽しみだわ。
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