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第1章 運命の出会いと運命の旅立ち
1-12 神の武器、祭りの後その1
しおりを挟むとある村人目線
むかーしむかしの話だ。
ガキの頃は神童って言われてた。
魔法の素養がある、そう言われて図に乗った。
親父とお袋が無理して国立の魔道学校へ入れてくれた。
十二の時だっかな。
入学してすぐ頭角を・・・
なんて事なく底辺を彷徨っていた。
底辺って言ってもその中では上の方だった。
いや、本当に。
親父やお袋が無理していたのは知っていた。
少しでもやらなきゃって凄え魔法使いになって楽させてやらなきゃなって。
でも俺には才能なんてなかった。
上の奴等・・・殆ど貴族様の子息とか令嬢とかだったが、勉強も修行もそこそこなのに魔力切れも起こさないし、中位、上位の魔法まで使える奴がいた。
しかも奴等、修行や勉強よりも、恋愛の方が忙しいらしい。
公爵様の令嬢さんが婚約破棄された、とか男爵様の令嬢が皇太子様と婚約した、とかな。
同じ平民の女達は、貴族様の子息達に夢中だし・・・まあ、勉強をする時間だけはしっかり取れたな、うん。
何とか中位魔法までは使えるようになった。
でもそこまでだ。
冒険者になるのは戦うのが怖くて諦めた。
国立の魔道院に進める程の実力もなかった。
仕方なく村に戻った。
滅多に出ないが村で魔物が出たり害獣が出たりした時は役に立ててると思う。
素養がある子に簡単な魔法を教えたりもした。
小さい時から魔法を使った方が、魔力の最大値を伸ばせるって学校で習ったからな。
二十四の時、親父が流行病で亡くなった。
なくなる間際に嫁、孫って言ってたな。
・・・出会いがないんだよ。
そんな退屈でヒマな毎日。
三十も二年過ぎた。
嫁落ちてないかなぁとそんな日々。
そんなある日初めてダークエルフ族の女を見た。
背も男の俺と変わらないくらい高くて、スラっとしてボンでキュッでボンだ。
王都でエルフ族の女は見たが、全然違うのな。
エルフ族の女が造形美ってんなら、この女は自然美って感じだ。
ただ一目見て恋に落ちることはなかった。
赤子を抱いてた。
いや、コブ付きが嫌とかそんなワガママ言うつもりもない。
片手で荷馬車引っ張ってたんだよ。
山のように荷物乗せて、だ。
空でも無理だよ。
ちなみに行商人のハンスさんの馬車だった。
ハンスさんは襲われて亡くなったらしい。
年が近いからかよく一緒に飲んだ。
いい人がいたら紹介するって言ってくれてたな。
紹介してくれた事は一度もなかったが。
しかし・・・ああ、いいもん見た。
ロバの世話をいつもしてたミナが、泣いてたんだ。
外から見てても、凄え可愛がってたのわかってたからな。
うちの村の神父さんも、いい説法するけどそんなレベルじゃなかった。
心に響くというか、沁みたというか。
それで、泣くミナをそっと抱きしめてた。
綺麗な夕焼けに照らされて、銀色の髪が風に靡いて、素敵な笑みを浮かべてよ。
あれはもう、何て言うか・・・尊い。
朝になって盗賊団がこの村に襲ってくると聞かされた。
村長に聞いたら本当だった。
恐らく今日の夜だそうだ。
どうすんだ?って聞いたら笑いやがった。
大丈夫だってよ。
昨日のオリハ?ああ、あの人な、が討伐に手を貸してくれるらしい。
・・・ん?大丈夫なのか?
まあ荷馬車引けるくらい力持ちみたいだし、尊いし。
もしかしたら危ない所を俺の魔法で助けて、こう・・・ないな、うん。
まあ村長が大丈夫っていうんだ、勝算はあるんだろう。
今は見た目こんなだが、昔は凄かったんだぜ?
二枚目で髪もフサフサで憧れの兄ちゃんだった。
腕っ節もあった。
冒険者になっても一角の人物になっていたと思う。
夕方になってオリハさんが家から出てきた。
村長に譲らないとか何とか・・・
ああきっと一番槍だな。
下手に手を出さずに様子を見るか。
中位魔法を最初から使ったら魔力が保たないからな。
下位魔法でフォローしていこう。
畑に着いた頃、向こうから奴等が出てきやがった。
オリハさんが魔法使っていいか聞いてきた。
いや、使う使わないとか・・・ああ畑を気にしてくれたのか。
優しいし尊い。
エルフ族は人族より魔力が多いんだ。
恐らく上位魔法ぶっ放して、牽制するんだろうな。
そう思っていた時期が俺にもありました。
立ち止まって魔力を練りだした。
・・・鳥肌が立った。
魔力に色が付いてたんだよ!
いや、何言ってんの!色だよ?色!
授業で習った程度だけどよ。
今の世でそんな魔法使いなんていないんだって。
歴史上確認されたのって、一千年以上前の勇者とか魔王だとか所謂偉人だぜ?
そっからはもうあれだ。
目も耳も離せなくなった。
先ず指で点を四つ作った。
なんだ?四点?そんな魔法見たことも・・・
は?なんだこの詠唱、古代言語か?!いやいや、実技ダメだったから勉強だけはしっかりやってたんだって!ただの古代言語なら意味わからなくてもわかるって!
掌から四色の玉?!・・・ちょっと待てよ、ああこれは四季の精を表して・・・違う!そのモノの使役だ!上位なんてモノじゃないぞ、これは失われし魔法か!
じゃあさっきの四点は・・・範囲の指定?いや、それなら単純に術式に練りこめば・・・理由は?まさか支点か?は?本来四人以上で行う術式なのか!?そんなバカな!いや、それしか理由がない!
魔力の流れも無駄無く、澱み?いや綺麗なんてもんじゃない!魔素の阻害は?杖も使わないで?学校のエルフのじっ様だってこんな事・・・その存在を使役して圧縮!?
ハハ・・・俺は何を見てるんだ?いや、そもそも何でコレが何なのかわかるんだ?
おいおい支点ごと圧縮なんて暴発・・・成る程、それ以上の魔力を加えながら押さえつけるのか。
加えてるのに圧縮しても値が変わらない。
・・・綿密なコントロールによるものか。
魔力の指向性の速さを圧縮する毎に減速させてるんだな。
減速は・・・力技だな、真似できねえよ。
あれだけの魔力を込めた魔法陣ならこれくらいの大きさにもなるわな。
これだけ綿密に組み立てたのなら、大地に含む魔素で阻害され歪む事もないだろう。
「Freezing Coffin!!!!!」
ああそうかそうか、これ元々こういう魔法じゃないんだ。
対軍魔法?そういった使い道かな?
恐らく戦地を戦略的に雪で閉ざしたり、籠城する砦に使ったりするんだろうな。
無理矢理圧縮する事で冷気を強制的に下げたんだ。
あれだけやれば絶対零度に近いだろうな。
しかも術式に対象を絞り込んでる。
じゃなきゃ解除した時に人だけ冷気の影響を残すなんて出来やしねえ。
はあ・・・すげえもん見た。
絶対に真似なんて・・・
いや待てよ?圧縮する必要もないんだし。
四季の範囲内であれば?
そうだ、例えば雨だけなら・・・
でもよくわからない古代言語で六小節だろ?
現代魔法語でやれば、十倍の六十小節?・・・
ああ、そうか対象の指定もいらないか。
それに範囲の指定だ。
枠を決めなけりゃいいんだ。
あー・・・例えば術者を中心にして・・・
そうして、周りが歓喜の声を上げる中、一人黙々と術式の構築を始めた。
彼にそこまでの才はなかった。
魔導の奥義とも呼べる極意書を身に受け、目にした事で強制的に、半ば強引に才能を拡げられた。
そして彼は五年後、自在に雨を降らす魔法を完成させた。
その魔法は農村地帯の悩みのタネでもあった水不足を解消する術になった。
三十小節にも及ぶ大魔法ながら、消費魔力が僅かで済むという優れものだった。
こうして彼は、数百年にもわたり新たな魔法が産まれなかったこの世界で、偉大な魔法使いとして歴史に名を刻む事となった。
その魔法を拡め、実践する旅の中、とある農村で出戻りコブ付きの女性と恋に落ち、結婚して孫付きだと母親を喜ばしたのはまた、別のお話しだ。
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