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第3章 元帝国編
3-6 神の武器、故郷
しおりを挟む「この町の、いや国一番の医者を呼べ!」
「はーいオリハさん落ち着いてくださいねー」
「ぐ、ぐぬぬっ」
翌朝ハルが熱を出した。
寝ていたとはいえ夜中出歩いていたからではないか、とシャルが言う。
オリハも診てみたが変わった様子はない。
回復魔法も四肢の欠損、魂の修復は出来るが
病気による疾患には効かない。
薬草やそれを媒体とした錬金術で薬剤を作る事は出来る。
ただそれを魔法で代用しようとした場合、菌の選定が出来ないからだ。
さすがのオリハでも目に見えない単種の菌は処理出来ない。
せいぜい体力の回復と免疫機能の向上までである。
シャルがリンゴを擦ったものを食べさせてくれている。
見ているだけでモヤモヤする。
「・・・冷やした方が食べやすいのではないか?」
「あ、そうか ピキッ って手!手も凍った!」
冷静を欠いたのか八つ当たりだったのかはオリハのみが知る。
その日の内に熱は下がったのだが、念のためにもう数日様子を見る事にする。
国境を超えて王都へ至る時もハルは一度熱を出した。
その時も「この国一番の医者を!」とはしゃいだのでオリハの扱いが雑になるのは仕方のない事だ。
「小さい時はよくある事ですよ」
と、この説明も二度目であった。
シャルとティダはギルドに向かった。
ハルの看病に三人も必要ではない。
オリハが暴走しないかは最後まで不安がられた。
ハルも最近は小さいロバを追いかけまわすより、魔法で作った人形を好むようになった。
細部まで拘られた作りと色分け、触っても魔力が弾けないように外側の膜と弾力の調整も完璧なオリハの能力を無駄遣いした逸品だ。
メリットは旅の邪魔にならない。
デメリットは数時間で消える事。
尚、シャルもさすがに真似できずにいる。
その人形の頭を撫でながらハルは何かを呟いている。
時期にちゃんと喋り出すだろう。
その時は何と呼ばそうか?
母上、お母さん、かーちゃん、ママも良いな。
そんな事を考えながら窓の外を見つつ日を過ごす。
オリハがあと1日、あと1日と様子を見たので結局出発したのは二十日目となった。
徒歩の旅で快適に過ごす簡単な方法はないか?というシャルの魔術議論が行われる。
基本的にはシャルが提案して、シャルが実践してから、オリハが修正、ダメ出しをする流れだ。
尚、被験者はティダだ。
よくある方法は術者が周りの空気を冷やす、というやり方だ。
だがティダもだがシャルでも半日は魔力は保たない。
瞬間的に氷を出すのと永続的に冷気を出し続けるのでは後者の方が魔力の調整が難しいのだ。
永続でなければ魔力が保つと、太めで長めの木の棒の先に鏡状の氷を張る。
さらに氷を付与して固定させた。
氷の日傘だ。
重いけど涼しいかも?と暫く歩く。
氷が溶けて木の棒を滑り頭に落ちた。
何故かシャルには持てそうもない比重の氷を張っていた辺りに悪意を感じなくもない。
今度は短杖位の棒を拾ってきて、先に付与で拳大の氷の丸を作り更に風魔法を付与した。
おお風が冷たい、と喜ぶもすぐに溶ける。
手が水浸しだ。
なら大きくしようと兜大の氷を付与した。
シャルは距離を取る。
なんで離れる?の問いに初めてだから?と返す。
出来る限り腕を伸ばし氷をシャルに向ける。
シャルが風魔法を付与した瞬間ピキっという音がして、氷が砕け破片がティダの顔面に吹き込んだ。
オリハは風魔法の魔力が強目だったのと、指向性を巡回させるようにではなくティダの顔に向けていたせいだと思ったが楽しそうだったので指摘せずに笑っていた。
「木の棒ではなく魔石に冷気と風を付与したらどうだ?」
「魔石が割れません?」
「二つの魔法ではなく一つの魔法にすれば良い」
と、体内ではなく身体の外で術式を無詠唱で展開させ、それとは異なる詠唱を口にする。
白きよ踊れ「Meld Ice wind」
とティダの持つ木の棒の先に氷の塊と風を纏わせた。
「呪文だけ調整すれば良いのだ」
「おお」と歩きながら黙々と試す。
スライムが焼ける街道を歩みながら。
そんな徒歩の旅も四日目で街道の先に街を結び終わりを告げた。
夕刻だったので孤児院には明日伺う事にした。
ティダは宿を案内すると言い先を歩く。
「ん?お、おいティダか!」
商店街を差し掛かった時にそう声をかけられた。
一人の声が二つになり輪となった。
寄せられる声は悪意もなく喜びを感じる。
慌てるティダを尻目に二人は顔を見合わせてニヤニヤしている。
予想はしてたが人気者な仲間を誇らしく思う。
「お?なんだ?後ろのエルフの姉ちゃん方はお前の嫁か!子供までいるじゃないか!」
「ち、ちげえし!ただの仲間だから!てか仕事戻れよ!」
また顔出すから、と言い母だ!と挨拶しようと企むオリハの背を押しそこを離れる。
宿につきティダの部屋とシャルとオリハの二部屋を借りた。
ハルの夜泣きがなくなった頃から同部屋にしてる。
夕食は今日は宿を出たくない、とティダが固辞したので諦めて宿で頂く事にする。
「おー本当にティダだ!お帰り!」
そう言って食事と酒を頂いている三人に、いやティダに男女二人が声を掛けてきた。
「あれ?兄ちゃん姉ちゃん、ただいま」
「なんでここにいんの?」「さっき八百屋のおっちゃんから聞いて飛んできたんだよ!」と頭や手を握られティダは顔を赤くする。
その様子をニマニマと眺める二人。
姉ちゃんと呼ばれた女性がこちらのお二人は?と気を回してくれた。
「冒険者のなか「母だ!」
と言い笑顔で握手する。
「姉です!」
とシャルも乗っかる。
ジト目で見られ慌てるティダ。
「ただの仲間だから!冒険者の!」
自己紹介をし合い酒を促し歓談する。
孤児院の先輩らしい。
話題の中心はティダだ。
昔の話しをされては照れ、ここを出てからの話をシャルがしては照れている。
ハルがウトウトし出したので、断りを入れ惜しみながらもシャルと部屋に戻らせてもらう。
また語らえる機会もあるだろう。
久方振りの兄姉の再開だ。
水いらずというやつだ。
「凄い人気者でしたねえ」
「ティダの事だ、可愛がられておったのだろうな」
互いのベットで寝転がりながら話をする。
脚をパタパタさせてシャルが言う。
「・・・私も一度帰ってみようかな」
北の王国の南西部の森の中に集落がある。
十歳で王都の魔法学校へ入学してそれきり戻っていないらしい。
「一緒に寝るか?」
枕を持って「えへへ」と笑いながらベットに入ってきた。
ハルも含めて川の字で朝を迎えることにした。
翌朝宿で朝食を頂き、孤児院に行く前に冒険者ギルドへ寄る事にした。
孤児院は街のはずれにあるらしい。
ギルドの大きさは街相応といった所。
何か困った事があれば依頼を受けるつもりだ。
これも贖罪の一環である。
ギルドの中はよくある酒場を併用して待合室のように利用できるタイプだ。
足を踏み入れて違和感を覚えた。
冒険者達には動揺があり職員達は慌ただしいように思えた。
ティダは眉間にシワを寄せた女性職員に声を掛けた。
「ようフィナ久しぶり」
「ティダ!帰って、あ、それどころじゃないわ、今何級?!」
「C級だけど?」
「えっ?てことは後ろのお二人も?!」
こくりと頷く。
そう聞くとフィナという女性は後ろを向き、手を振りかざした。
「C級!三人確保です!」
その声を筆頭に職員達に安堵の声が広がる。
「なんかあったのか?」
「まだ確定じゃないんだけど・・・オークキングが、軍舞が起こるかもしれないの」
慌てるシャル。
「軍舞ってなんだっけ?」と言うティダ。
オリハだけが喉を鳴らし目を光らせたのは言うまでもない。
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