赤子に拾われた神の武器

ウサギ卿

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第3章 元帝国編

3-8 神の武器、物語

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それから数日に渡りオリハは天国を味わう。

喧騒が落ち着いてからティダが神父兼孤児院の施設長のエストンに何かいるものある?と聞いて遠慮の欠片もなく日用品から書き出した紙を手渡していた。

ユーリに昼食の準備を聞いたらまだです、との事だったので金貨を数枚と食材のメモを渡して例の物を作る事を告げる。

旅の間でも数えるほどしか作っておらず、ティダやシャルにも好評だったものだ。
どうしても量があるので、御者がいる時の町に着く前など作るときは限られていた。

まず飴で警戒をとき母の味で心と胃袋を掴む。
最強の必勝パターンとはオリハ談だ。


ティダとシャルが買い出しに行くと言う。
ユーリも行きたそうにして洗濯物を見たので子供達の世話も含めて、我がやっておこうと三人を見送った。

神父がオリハによろしくお願いします、と外回りの仕事に出て行った。

ちなみにオリハの家事は全て魔法で行われる。

まず、洗濯物を全て浮かせる。
不安がらせない様に手を使って行い、オリハがやっているんだ、と意識させる。
この時点で子供達がおお!とどよめきたつ。

三十枚近い服やタオル、シーツなどが宙を舞う。
シャルでも五、六枚を浮かせるだけで限度だろう。
子供達が追っかけたり追い回されたりはしゃいでいる。

一頻り楽しんだ後、温風で乾燥させ畳むのは敢えて手でやった。
魔法で心を鷲掴みにしたオリハにはみんなでやろうか、の一言で全員を動かすのには充分だった。

部屋で服を畳んでしまう。
男女、年齢で部屋を分けているようだ。
ユーリとお手伝いをする子達で掃除もやっているのだろう。
キレイにしてあるが大変だろう、と一気に取りかかる。

子供達にしても何か見せてもらえる、とワクワクしている。
全ての部屋の窓を開ける様にお願いする。
わーっ!と一斉に飛び出す。
終わった子供達から戻ってくる。

全員揃ったところで風魔法で渦を作る。
どうせならとピンクと黄色の渦だ。
それを動かして部屋の隅々まで徘徊させる。
物が巻き込まれたらそれを浮遊させ取り除き元に戻した。

取り除いたホコリは窓の外に出してから閉めて、また新しく渦を作る。
そして部屋を一つ一つ周り掃除して行く。
最後に神父の部屋を掃除したが、ベットの下からエッチな本が出てきたので、子供達に見つからない様に机の上に並べておいた。
こうすると良い、と何かの本で読んだ気がした。

どういう風に良いのかは敢えて忘れた。

掃除が終わって外に出るとシャルが買い物袋を下げて戻ってきた。
気を使ったのだろう、と飴をあげた。
いいなーと言う子供達にもあげた。

台所に行くと大所帯らしく寸胴鍋もあった。
お姉ちゃんも魔法使えるの?教えてーという子供達を引き連れて狭くなる台所から出て行った。

ハルを背負い本来なら大変だろう分量の食事を作る。
買ってきてもらったスパイスを炒める。
その間に魔法で野菜を洗い適度な大きさに切る。
玉ねぎは多めだ。
みじん切りにしたものと細切りにしたものにわけてある。

米を出して魔法で洗う。
そして鍋に移して水を入れ火をつける。

色のついたスパイスにみじん切りの玉ねぎ、にんにく、生姜を加えて玉ねぎが形のなくなるまで炒める。
ヨーグルトや蜂蜜やトマトなどを加え味を整える。
別に肉や野菜を炒めて火が通ったら鍋に移して水を足す。
後は一煮立ちさせて味を整えればカレーの出来上がりだ。

子供達が多いので辛くないよう心掛けた品だ。
後はサラダでも作ろう。


皿に炊けた米を盛り人数分並べる。
米もルーも余分目に作った。

ティダやユーリ、神父も仕事を終え戻ってきたようだ。
仕上がったルーをかけサラダを盛った。

子供達が盛った料理を食卓に並べてくれた。
四人の席も用意してくれてある。
神父が横の席をオリハに勧めるがティダが座った。


結果、カレーライスは大変喜ばれた。
おかわりをしてくれる子もいた。
ティダも。

食事が終えた後、何処かの部屋で懺悔の声が響いたとか。

片付けが終わり夕方まで子供達と遊ぶ。
洗濯物も取り込んで掃除も終わっているので時間は存分にある。

夕食は心惜しいが辞退する。
泊まらないのか?と神父が聞くが、狭いだろうし宿に戻る、と伝える。
オリハさんなら私のベットの横がと言う神父にティダがアイアンクローをして後にした。

宿に戻るとティダ目当ての知り合いや兄や姉、フィナが訪ねてくれた。


そして翌朝ギルドに寄り状況を確認してから孤児院に行く。

そんな日々を楽しく過ごしていた。


その日オリハは家の中で本を読んであげていた。
大人しく椅子に座って子供達が聞いている。
隣にシャルがハルを抱いてくれている。
ティダは外遊びの子供班だ。

「ねーほかになにかお話してー」

とここにある本を読み慣れたであろう子が言う。
少し苦笑いを浮かべ「面白いかわからぬぞ?」と聞き返した。
オリハが語れる物語はひとつしかなかったからだ。


そうだな、我の口調で語るより先程読んだ口調の方が聴きやすいだろう。

ふむ、本のように題名もいるか・・・



~オリハルコン物語~


昔々その昔
地上の人々はいつもケンカをしていました。
ある人は言いました
私が一番偉いんだ
またある人は言いました
俺が一番強いんだ

神さまたちはそれを見ていつも悲しんでいました。

ある神さまが言いました
手を出せないなら力を貸そう、と
ある神さまが言いました
なら私が力を作ろう、と

そうしてひとつの武器が出来ました
神の武器はオリハルコンと名付けられました
それは手に取った人に神さまの力を少し貸してくれる。
そんな武器でした。

ただひとつだけ秘密がありました
神さまも知っているのかわかりません

神の武器には命が宿っていました

でも口がないのでお話しする事も出来ません
出来るのは何があったのか識る事だけでした

これはそんな神の武器のお話


~~

(さて、どうだ?)

興味がなさそうならやめるつもりだった。
だが皆、喰い入るように聴いていた。
何故か神父もティダも外の子供達さえも。

己の話だ。
少し恥ずかしかったのだが諦めて続ける事にする。

~~


あるところに心優しい少年がいました
少年はお母さんと二人で暮らしていました
王さまは魔人の王さまとケンカをしていました
お父さんはケンカのためだ、と
王さまに連れていかれてしまったのです
そして帰って来ませんでした

少年は思いました
僕に力があったらみんなを守れるのに
ケンカなんて終わらせるのに、と

神さまはその心優しい少年に力を貸す事にしました
そして天から少年の手に神の武器が貸し出されたのです

そして少年はケンカをしている所に向かいました
槍の形をした神の武器を持って

そしてこう言いました
ケンカなんてやめよう、仲良くしよう、と

でも魔人たちはやめてくれません

少年は槍の力を使うことにしました
神さまが怒った時と同じくらい怖いカミナリを落とせるのです

そうして魔人たちは逃げていきました

その話を聞いて王さまは喜びました
そしてこう言うのです
また魔人が来たら助けてくれ、と

少年はケンカをさせないためなら喜んで、と言いました

そしてしばらくしてまた魔人たちがケンカをしに来ました

少年は槍の力を使って追い返しました

しばらくしたらまたやって来ました

少年は不思議に思いました
なんでまた来るんだろう、と

そして魔人の人に聞きました
何でケンカをするの?と

魔人の人はこう言いました
お腹が空いてどうしようもないんだ、と

魔人の国には食べものがなかったのです
この国の王さまに分けてくれと頼んだら断られたんだ、と

心優しい少年は言いました
だったら僕が王さまに言ってあげる、と

そうして魔人たちは帰っていきました

お城に行って王さまに言いました
魔人の人はお腹が空いただけなんです
食べものを分けてあげて下さい、と

王さまは怒りました
そんな事は出来ない
だったら魔人を滅ぼせと

少年は嫌だと言いました
魔人の人と約束したんだ
分けてあげなきゃ王さまに力は貸さない、と

仕方がない食べものをわけると王さまは言いました

少年は喜びました
これでケンカがなくなるんだ
王さまは仲直りだと少年にご馳走を用意してくれました

でも神の武器は言いました
王さまがこっそりと話していたのを聞いたのです
あの少年の槍があればいい
少年はいらない、と

それは毒だ、食べちゃダメだ
でも神の武器には口がありません

少年は毒を食べて死んでしまいました
でも槍は神さまが貸していただけなので少年と一緒に天へ帰りました

槍がなければ王さまはケンカできません
魔人の人は少年が死んだことを知りケンカをやめました

ケンカはなくなったのに、少年がいない事をオリハルコンは悲しく思いました

次に神の武器を持つ人には幸せになってほしい

そう思いながら天で待ち続けるのでした


~~


(ぬ?誰も何も言わぬ)

困った時のシャル頼み、と顔を見た。
何故かジト目をしている。

(ああ目が言っておる、重いわ!と)

まず金髪の少女が口を開いた。

「魔人さんかわいそう」

次々と口が開く。

「王様が悪いんだよ」

「少年も油断しすぎだわ」

とティダが混ざる。
その後も感想を色々言ってくれた。
だからもう一度シャルを見た。
目を逸らして伏せている。

(ふふ、ぐぬぬっと言っておるな)

その様子を鼻で笑ってしまった。

「でも神の武器さんもかわいそう」


・・・オリハは何故か救われた気がした。


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