赤子に拾われた神の武器

ウサギ卿

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閑話

その後閑話 神の武器、友人

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さて、と。
口に出さなきゃ腰を上げるのも億劫になった。
思えば長く生きたもんだ。
女神の子供達、そう言われた事もあった。

「はぁ・・・まさか私が最後になるなんて、ねえ」

ハルちゃんも先に逝っちまった。
エルフとしては短い130年の生涯だった。
連れ合いが亡くなってから太后の座を捨てて、あっちこっちと旅をしていると聞いた。
どこかしこで名を聞くようになった頃、病で倒れたと聞いた。

アキ君から研究の成果か、魂の第一人者と呼ばれた私が呼びつけられた。
可愛い妹の事だ、それは構わない。
ただ、先天性のモノだった。
魂の器が生まれつき弱かったのだろう。
手の施しようがなかった。

そこから10年はアキ君が連れ添っていたと聞く。
最後まで笑っていたと聞いてハルちゃんらしいと思ったもんだ。

それからもみんな見送った。
ティダもアキ君もみんな。
それを寂しいとは思うが、悲しいとは思わない。
だって、アッチではオリハさんが待ち構えてるんだから。

ちなみにティダはあの後も冒険者を続けた。
旅の途中で知り合った、シングルマザーの人と結婚した。
会った感想としては、どことなくオリハさんに似ていた気がした。
特に胸が。
案外、初恋だったのかも知れないね。

それはそうと、私が長生きなのは、どうもこの多過ぎる魔力の所為らしい。
巷では生き神様って呼ばれてるとか。
・・・うん、悪くはない。

やる事はやった。
私の二つ名も認知されている。
その名も「愛の伝道師」だって、笑える。
私には誰も伝えてくれないのに。

思うところがあって、魂の研究を続けた。
その過程の中で魂を軟化させる事に成功した。
効果としては種族間の恋愛成就、といったところかな。
これで獣人とエルフだろうが、ドワーフと魔人だろうが、関係なく子共が出来るようになった。

・・・多少、オリハさんにも手伝ってもらったけどね。

だからもう逝こうと思う。
魂よりも肉体が限界を迎えてるから。

・・・念の為に一筆認めておこう・・・良し、と。
そしてふらつく体に鞭を打って、自室兼研究室を出た。

「・・・これはシャルロッテ様、出歩いて大丈夫なんですか?」

「ああ・・・少し出て来る」

外にいたうちの研究員達に声をかけられた。
うん、これでいい。
書き置きもしてある。
少しは役に立ってくれるだろう。

そうして私は一人になったところで魔法陣を描いた。
あの時の幻想的な風景を思い出す。
自分の身体が、物質体マテリアルから#精神体____アストラル#へと変化していくのが分かる。
丁度、あの日のオリハさんのように。

姿を消した生き神様とやらをどう思うだろう。
あの書き置きを見てどう捉えるだろう。
少しでも噂になれば良い。

「ちょっと神様になって来る」

・・・それがきっと最後の鍵になる筈だ。



・・・シャルの反応が突然消えた。
主、曰く、存在が見当たらないらしい。
他の世界に転移した訳でもなく、見当たらない。
そう言っていた。

ここ数十年、内緒で何かを進めていた。
魂からの情報を遮断する術まで編み出していた。
こっそりと覗こうとしたら、長閑な田園風景が広がっていて「この先は乙女の秘密です、どうぞ風景をお楽しみ下さい」のテロップが流れた時はどうしてやろうか、と悩んだものだ。
念の為に夢枕で本人に確認をしたが、禁呪ではない、と言っていた。
嘘は言っていなかったので心配はしていたが、安心しきっていた。

探しに行きたいと思うが、何せ柱の身の上だ。
気軽に降臨する訳にはいかない。
当然、やらなくてはいけない事もある。

だから苛立っていた。
加減を間違えてゴブリンキングを生み出してしまった。
・・・大丈夫だ、多分。

そんなある日の事だった。

唐突にシャルの気配を感じた。
あちらではなく、こちらで。
こちらは時間の感覚は曖昧で、距離の概念はない。
シャルが拒絶しない限りは目の前に現れる筈だ。

「・・・あれ?オリハさんだ」

目の前のシャルは膨らみの少ない頃のシャルだった。
アストラル精神体は精神年齢に付随する。
だからこの姿なのだろう。

「あれ?ではないっ!これまで何処におったのだ!」

「ま、ま、ま、待って、これじゃはな、話せないか、らっ!」

思わず肩を激しく揺すってしまった。
我は悪くない。
そうさせたのはシャルなのだから。

「大変だったのよ、こっちに飛んだはいいけど、次元の狭間に落ちちゃって」

しるべなしに来れる訳がないだろう!」

「あはは、本当、良かった・・・また会えた」

そう抱きつかれれば何も言えない。
会えて嬉しいのは我も同じだったのだから。

「・・・参ったね」

いつの間にかいた主が背後でそう口にした。

「成ろうとして成ったのは君が初めてだ、大したものだよ」

「っ!?・・・てことは?」

「おめでとう、条件は満たしているよ」

「やっ、やったー!」

シャルは諸手を上げて喜ぶ。
まさかと思い問い直す。

「それはまさか・・・柱に、という意味か?」

「そのまさかだ・・・流石は君の娘だよ」

ピースサインを向けるシャルの手を持ち、手の平で指を上から叩き込んでおいた。
心配させた罰だ。
突き指で済ませたのは軽いくらいだ。

「まあ、手はあるに越した事はないんだけど・・・どうしようかな」

「ざ、雑用でも何でもやります!」

「いや、あるのは信仰の問題だ、もう輪廻には回せない・・・それに消えられても寂しいじゃないか」

「それだったら・・・オリハさんと一緒じゃ駄目ですか?」

「・・・というと?」

「一応、私も愛に関係してますし、「慈愛の双柱」とかなんとか」

「それだと・・・君は問題ないが、慈愛のが回す現能に影響が出るだろうな・・・」

そう言って主は我を見た。
我としては貰った分を我が子らに返しているだけなのだが、主からはもう少し控えるように言われている。
つまり「置いてやるのは構わないが、約束通りに控えられるかな?」と聞かれているのか。

「・・・我は構わん、シャルがそれで良いのなら」

一人より二人の方がやれる事はきっと増える筈だ。

「よろしくお願いしますっ!」

「分かった、告知しておこう、こちらこそよろしくね」

「ハイ!」

「・・・返事は相変わらず良いのだな」

「えへへ」

「褒めてはいない・・・ふふっ、まったく・・・」


暫くして十三柱の像は新しくなる。
それは黒と白のエルフ種の女神が向い合って祈りを捧げる像になった。

主は、さらに上位の存在に子として作られた。
その子らは父を真似して、子を、世界を作った。
ただ戦いに明け暮れる世界があった。
何事もなく、平坦な世界もあった。

この主は魂の保養所となる地を作りたかった。
傷付いた魂を休める世界。

そしてその思いは着実に身を結んだ。

言う事を聞かない双柱の女神に振り回されながら。


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