囚われた姫騎士は熊将軍に愛される

ウサギ卿

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3 マリー

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・・・うっ・・・

・・・ここ、は・・・?・・・

全身に、激しい、痛みを・・・感じる・・・
どこだ?・・・見知らぬ天井、がある・・・
何を?・・・頭が、ボーッとしている・・・
手が・・・とても温かい・・・
灰色の・・・塊・・・?
ああ熊か・・・なっ?!獣じ・・・ん・・・

そうして私は痛みに気を失った。

そして今、私は目を閉じたまま現状を確認している。
まず頭と全身が痛い。
そして焼けるように疼く。
さっきと同じように右手が温かい。
これは握られているからだ。
では誰に握られているか・・・熊の獣人だ。

薄目を開けてみる。
・・・間違いない、だが何故泣いているんだ?
鼻水を啜っている・・・子供かっ。
何故、私が手を握られているんだ?
・・・何があった?思い出せ・・・

ああそうだ、将軍から私の隊に殿しんがりを仰せつかった・・・
追撃部隊を、そう引き寄せたんだ・・・
足を止めて時間を稼いで、獣人の魔導師部隊が放ってきた炎の矢を防御結界で受け止めて・・・
そうだ、何故か天から巨大な肉球が降ってきたんだ。
そして慌てて上空に防御結界を張り直して受け止めたが、あまりの威力に圧されて・・・
団員に助けを求めた、結界に魔力の後押しを、と。
だが全員慌てふためいて逃げたのだ。

・・・ふふっ流石お飾りの団長様だな。

仮初めの団長とはいえ少しでも団員達が逃げる時間を稼ごうと、我が侯爵家に伝わる魔剣ラートゥムを手に取り魔力を込めて結界を強化して・・・

そうだ・・・折れてしまったのだ、私の騎士は。

その衝撃で地面に弾き飛ばされて・・・そうか、私は捕虜か。
それでこのデカい熊はなんなのだ?

・・・なんにせよまだ身体が動かん。
まずは回復を優先してこの熊の件は後回しだ。
そうして私は意識を閉じた。


あれから何時間経ったのだろう。
熱は少し下がったような気がするが・・・
まだ熊が手を離さない。
正直な所、手が汗でふやけて気持ち悪い。

・・・何にせよ逃げ道はなさそうだ・・・

「・・・手を離してくれないか?」

「め、目が覚めたかっ!儂の番よ!」

「ツガイ?何だそれは?捕虜の事か?」

「違うそうではない、儂の伴侶だ、魂の」

「伴侶?・・・私は貴様の性奴隷にでもなるのか?」

「・・・っ!ち、違う」

そう言うと顔を真っ赤にして否定した。
この国では捕虜は捕らえない筈だ。
皆殺しにする事で有名なのだから。
そういう奴隷文化もないのかも知れない。

「そうか、こう言えば良いのか」

「?」

そう言うと熊は咳払いをして私の目をじっと見た。

「貴女を愛している」

・・・せめて鼻水くらい拭いてから言って欲しいものだな。
敵の士官に愛しているとは変わった風習もあるものだ。
情に訴えて情報を得るつもりか?
だが・・・なら熊は使わんだろう?・・・

「あと一ついいだろうか?」

「な、なんだ!何でも言ってみろ」

「先程から魔法が全く使えないのだが・・・」

「・・・すまない、そうなる魔道具を足首に嵌めておる」

そう聞き足首を見ようと身体を起こそうとした。
だが全身を苦痛が襲う。
骨も筋肉も皮膚も悲鳴をあげ、口がそれを伝えた。

「・・・う、ぐっ・・・」

「まだ動くなっ!・・・あ、足首を触るぞ?」

「頼む」

唾を呑み込み私の足首に申し訳なさそうにそっと触れた。
その触り方は初心うぶな少年兵を思い出す。

・・・これはあれか?ギャップ萌え狙いというやつだろうか?
いや、それでも狼の獣人の方が熊よりマシだろう。
それなら小動物の・・・例えば兎の獣人などの方が私には効果が・・・

「これが判るか?」

おっと、今は関係ない事だ、うん。

そう言うと足首の辺りにある物を動かした。

「・・・アンクレットか?」

「いや・・・足枷だ」

そう言うと繋がった鉄球と鎖をジャラジャラと見せた。

「わ、儂の番なのだから駄目だと言ったのだが・・・王命なのだ、許せ・・・」

やはりツガイの意味がよくわからんな。
王命と天秤にかける程の物なのか?

そしてこの足枷は帝国にも無い魔道具だ・・・聞けるか?

「・・・どの様な効果が?」

「犯罪者用だ・・・魔法が使えなくなる、嘘を言えなくなる、自害が出来なくなる、獣人に害を成せなくなる、この4点だ」

重要機密ではないのか?
だがそれで魔法が使えないのか。

「・・・っ!」

「ど、どうした?!痛むのか?!」

「大した物だ、舌を噛んで自害しようとしたのだが、身体が動かなくなった」

「っ!?や、やめてくれ、折角出会えたのだっ!・・・オ、オホン・・・儂の愛しの姫よ」

「わ、私を姫とっ!・・・ぐっ!」

「すまない、ち、調子に乗った・・・まず体を治してくれ、話はいつでも出来る」

「・・・わかった、あと手を握らないでくれ、汗で手がふやける」

「す、すまない」

耳をしょぼんと垂れ下げた。
・・・熊というか子熊、いや子犬だな。

自害も出来ぬなら打つ手もない、か。
だが嘘はつけなくても自白効果はない。
帝国の隷属の首輪より甘い代物だ。
いや、人道的と言うべきなのだろうか?

それに・・・誇りは折られた。
もう剣に誓った騎士ではなくなった。
そして仮初めの騎士だった私には騎士の誓いはあくまで形式的なモノだった。
魔法的な誓約も制限も発揮する事はない。
抵抗は出来ないし、する必要もない。

ならば後は・・・流れに身を任せよう・・・


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