2 / 46
プロローグ ハッグ
しおりを挟む揺蕩う微睡みの中、愛しき番が儂の名を呼ぶ声がした・・・
その音に安堵が心に満ちていく
覚醒する意識の中で聴覚が反応した
「全く酷い事をするな・・・傷は癒した・・・ふふっここがハゲてしまったな」
耳と心が福音に酔いしれた
そして体毛ではなく皮膚に直接触れられる感覚を味わった
覚醒した触覚と心が擽ったさを覚えた
目に色が映り出した
優しくも力強い笑みを儂に向けてくれるブロンドの髪を靡かせた番がいる
覚醒した視覚と心が幸福で溢れた
「ああ・・・マリー・・・」
マリーは嫌いな色だと言った、儂の用意したドレスを身に纏ってくれている
儂は・・・上半身裸でボロボロのショースを履いているだけだ
・・・現状がわからん
何があった?思い出せん
辺りを見渡した
マリーの背後に見知った顔が二つあった
副将のワングとコーザンだ
遠く離れた所に我が軍の戦線が見えた
儂の背後には黒いローブの魔導師と騎士がおる
遠くに帝国の戦線が見えるな・・・
戦地・・・なのか?
何故ど真ん中におるのだ?
そうキョロキョロしておるとマリーが耳に幸福を届けた
「ダンスホールにしてはかなり広いが・・・壁の花にしておくには勿体無い、麗しの姫よ、最後の曲を私と踊って頂けませんか?」
うぐっ、か、揶揄われておるのか?
だが手を差し出すマリーも格好良くて美しい
そして愛らしい番のお強請りを断る理由は無い
小説の引用をそのまま返した
「私でよろしければ」
・・・手を取った儂の顔が真っ赤になっておる気がする
・・・ああっ!耳の中まで熱いっ!
ここは喧騒もない音楽もない
ただマリーの足枷の鎖だけがガチャガチャと野原に鳴り響いた
だが儂にはそれで充分だ
マリーさえいれば・・・
そして覚醒する脳が・・・儂らの別れを教えてくれた
そして過去を思い出させた
そして現状を把握させた
引用した小説のタイトルは[ラストダンスは貴方と踊りたい]
またマリーに怒られると判ってはいるが・・・涙が止まらない・・・
「こら、泣くな馬鹿者が」
そう言いつつも儂に優しく微笑んでくれる
この笑顔が見れなくなる、そう思うと心が抉られ痛みを叫ぶ
「・・・嫌だっ・・・」
「・・・諦めろ・・・」
「・・・は、離しだぐないっ・・・」
「・・・諦めろ・・・」
そう言い儂の胸に顔を埋めてくれた
儂はマリーの頭にそっと頬を寄せた
わかっている、これは全て儂のせいだ
助けてくれたのだろう、マリーが
この先を思う
長く険しいだろう道のりを思い描く
だが・・・この温もりの為ならば・・・
「・・・必ずっ・・・必ず迎えに行く・・・」
「・・・ああ、待っている・・・」
・・・待っていてくれ、マリー・・・
0
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる