囚われた姫騎士は熊将軍に愛される

ウサギ卿

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1 ハッグ

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幾度目だろうか、また南のラフラン帝国から戦を仕掛けられた。
欲に駆られた人間共は肥沃な土地を寄越せと書簡を送り付けてくる。
我が国チューバッカ王国からの返答はいつも同じだ。

無いものは無い。

派遣団でも寄越せば良いのだが、それを断り戦を仕掛けてくる。
王国から進軍した事は一度たりとも無い。
国土を拡げるつもりもない。
国民への食糧の供給は事足りているからだ。
王国として行うのは、元々他国で生活していた奴隷になった同族たる獣人達の解放要求がせいぜいだ。

だがそれとて話し合いの場を要求しても応じようとはしない。
蛮族相手に、といつも罵られて終わる。
彼奴等は弱いくせに吠えるのだけは一人前だ。

自然と獣人が庇護を求めて集まり、人間の国と獣人の国との争いとなっていた。
もう数百年にも及ぶらしい。

儂は戦いは嫌いではない。
ベアード侯爵家の嫡男として生を受けた。
兄弟はいない。
母上は子供の頃に流行病で亡くなった。
番を失った父上の落胆は激しく、儂が成人する頃には母上の元へ召された。

嫡男としてつがいを探し求めた。
番が見つからなければ、雄と雌と同意の元で仮番という制度もあるのだが、仲睦まじい両親の記憶がそれを咎めた。
怒られるかもしれないが、魂の片割れを失った父上の姿すら誇らしく思えた。

王都で兵士になり国を回った。
領地経営は・・・手伝ってもらっているが、それなりに責任は果たせている、筈だ。
だが39を迎える歳になっても見当たらなかった。
その鬱憤を晴らす様に戦いに身を投じていたら、いつの間にやら将軍になっていた。

人間からは血塗れの灰色熊ブラッディグリズリーなどと呼ばれているらしい。
国王の案で捕虜は捕らずに殲滅させているのが理由の様だ。
捕虜を養うのにも食糧がいるだろう?
見張る人員も必要になる。

昔は捕虜を捕っていた事もあるらしいが、帝国からの返還要求はなかったらしい。
噂では此方の実情を教え書簡を持たせて送り返しても、間者だと始末されたとか。

ならば戦さ場で散る方が良いだろう。
儂もそう思う。


そして今、天幕の中で会議をしている。
儂と副将の犬人ワング、同じく副将の狐人コーザン、狼人の追撃部隊の隊長フォルグや参謀の豹人ヒードルなどと意見を交えていた

会議の流れは、状況に応じての策と動きを話し合い、儂に確認を取る。
場合によっては追加の策を足したりするが、了承すれば「何故そうなのか?」と言う話し合いが始まる。
理由を儂から説明する事はない。

答えはいつも「何となく」だからだ。

だが参謀の者に言わせると、王道でありつつも絶妙な妙手であったり奇手だそうだ。
参謀の仕事は儂の意を訳す事らしい。
実際に被害も少なく敗退した事もないので問題はないだろう。

コーザンが副将になった時は目を輝かせて儂を見ておったが、今では「ハッグ将軍っすから」と適当に対応されている。
解せぬ。



そんな会議の最中、天幕の入り口から勢いよく兵士が飛び込んできた。

「ハッグ将軍!偵察隊より至急の連絡です、帝国軍が森に入りました!その数およそ5000!」

「判った」

予想よりちと多いな。
事前の話し合いの通り、恐らく工作部隊だろう。
やはり森の中での砦の建造が目的か。
南の帝国と我が国の間には草原か森しかない・・・攻め入る足掛かりが欲しいのだろう。

「ワング!最初の案だ!兵1000を連れて森の西へ迎え!伏兵を蹴散らしてから隊を分けて森を囲え!」

「わっかりました!」

和かにそう言うと尻尾を勢いよく振り回した。
犬人は考えている事が判りやすくて良いな。

「コーザン!お主は東からだ!」

「へーい、わかりました」

・・・狐人は糸目で何を考えておるかわからぬ。
まぁどちらも歴戦の副将だ。
手際に抜かりはない。

「それでハッグ将軍はどうなさるのですか?」

「儂か?儂は先陣を切る」

「・・・毎度ですが将軍なんすから後ろでのんびりしていいんすよ?」

「何を言う、戦だぞ?血が滾らんか?!暴れるしかあるまいっ!」

「・・・まあ早く終わるんでいいんすけどね」

「そうですね、私も早くつがいの所に帰りたいですからね」

「・・・」

「ああ、そう言えば蜜月休暇明けだっけ?」

「はい、もう愛しくて可愛いくて!」

・・・ほう、当てつけか?儂への?
尻尾が先程より勢いを増しておる。

「・・・ワングの隊は事後処理と哨戒に当たってもらう」

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

「えーい!やかましい!早く持ち場につけ!」

尻尾を垂れ下げても知らんっ!
くそう、何が番だ!儂はいらんぞ!

・・・もう儂も39歳だ、これだけ探しても見つからん・・・もう生きてはおらんのだろうか?・・・

あーっくそっ!やってられるか!この妬みは戦さ場で晴らしてくれるっ!

「頃合いを見て儂が中央突破をかける故、貴様らは森の外で逃げ出してきた者を狩れ!一人も生かすなっ!」

「・・・はい」「へーい」

ふん、儂は悪くないぞっ。
・・・まあ戦が終わったら、ワングには長めの休暇でも取らせるか。

はぁ・・・儂も身を焦がす恋がしてみたかった。
そう机を爪でイジイジしていた。


その後、1時間程してから伝令が一報を知らせた。
ワング隊、コーザン隊共に伏兵共と遭遇したようだ。

儂は愛馬ランカスに跨った。
此奴ではなくては儂の重さに耐えられぬからな。
振り返り後方に控える隊に咆哮を上げた。
それに咆哮を持って返される。

「では参るぞっ!二度とっ!・・・二度と我らがチューバッカ王国に歯牙を向ける気を起こさぬよう徹底的に殲滅!蹂躙するぞっ!」

「「「「「オオォーーっ!」」」」」



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