囚われた姫騎士は熊将軍に愛される

ウサギ卿

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32 マリー

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騎馬隊と幌馬車2台に別れて、私と第7魔法騎士団は帝都へと戻る事になった。
出発の時刻が早かった為、行軍は慌てる事なく進んだ。
食事休憩を挟んだ程度で馬達の休憩も必要ない速度で。

出発して直ぐ同じ幌馬車に乗っていた団員達から話を聞いた。
私がいなくなったお陰か本隊の守護からは外されたようだ。
そして人員も減らされ現在は斥候哨戒部隊だという。

私からは武器を持って争う訳ではないが、帝国軍部とは轡は並べないという趣旨は話した。
先程の将軍閣下と私の話を聞いていたので分かっているだろうがな。
そして自分達で考えて自分達の方法で帝国を守り、国民を守れと伝えた。


帝国は元々一つの小国だった。
時代と共に周辺諸国を統合しラフラン帝国と名を変えた。
そしてその当時の皇帝が選んだ道が侵略国家の道だった。

過去の歴史を見ると、どの皇帝も侵略という道を選んで来たと思われる。
だが私の知る限り、先代と現在の皇帝は侵略戦争には反対している。
主な理由は経済の悪化だ。
数百年に及び派兵しても何の成果も得られない影響だ。
軍部率いる派閥が経済の悪化という因子を取り除く為に言い出したのが「肥沃な土地」という訳だ。

だがそれも過渡期を迎えた。
肥沃な土地などないという学者達がいる。
そして蛮族だとする獣人の被害などない。
何せ鎖国になって数百年経つのだから。

軍部の瓦解の時は近い。
私は少しでもその針を進める努力をする。
ハッグとの再会の為に。


「すまないが誰か服を貸してもらえないだろうか?」

「「「っ!?」」」

「ずっとドレスのままだと・・・少しキツイんだ」

「是非私のを!私のを着てください!」

 「何言ってるんだ、体の大きさを見ろ、やはり男物の方が・・・」

「それだったら私の方がいいだろう!」

「誰のでも良いんだがな」

その後、外の騎馬隊も混ざり喧々囂々とした。
・・・隊長ではなくなってからの方が距離が近くなった気がする。
それとも変わったのだろうか?
いや、変えられたのだ。
そして指輪のある胸に手を当てた。


昼を過ぎた頃に帝都に着いた。
私の身柄は凱旋が終わるまで第7魔法騎士団預かりとなっている。
その後は陛下との謁見だ。
そして監視付きで解放されるだろう。

・・・父と会うと思うと気が滅入る
半年前でもまともに会話した記憶がないんだ。
あの人が死んだと思われた私を見て、何と言うか想像が出来ない。

詰所で掛け湯をし身を清めた。
その後はまたドレスに身を通した。
借りた服は洗って返すと言ったのだが「大丈夫です、寧ろそのままで」と気を使ってくれた。
髪を結ったり化粧などは女性団員達がやってくれた。
色々な小技も教えてもらった。
鏡に映る私が自分だと思えない違和感はあるが、悪くない出来だとは思う。

そして団員達の反応がハッグのようで当てにならない。

髪は三つ編みに編んでくれた。
前なら「少女じゃない」とムキになったかも知れない。
・・・うん、割と悪くはないだろう。

先に指輪をつけて手袋をはめた。
見せないに越した事はないと思ったからだ。
鏡で笑顔の確認をした。
世論操作の為に利用した人々への謝罪の笑顔を。


練習をしておいて良かったと思った。
凱旋用の馬車に乗り帝都中の主な街路を回って行く。

私の横に仏頂面をする一人の男がいた。
将軍閣下から命じられて私を監視する役だ。
だがこの場にいる以上はその顔はいただけない。
元愛玩部隊の隊長としても感心しない。
だが「笑え」と言っても顔を変えなかった。
きっと笑い方が分からないのだろう、そう納得をした。
だから淑女として顔を掴んで教えてさしあげた。
少しメキメキと音がしたが笑い方を覚えたようで安心した。

ん?口角を指で突くのだったか?・・・まあいい。

騎士団の制服ではなくドレス姿の私は戸惑いの後に受け入れられた。
やはり不思議だ。
「お姫様みたいー!」と声を掛けられ嬉しい私がいる。
だから懸命に手を振り軽い会釈を続けた。
そして向きを変えそれを繰り返した。

詫び行脚が終わる頃、時刻は4時を迎えた。
凱旋用の馬車は城へと向かう。
私の謁見の為だ。
門前で団員達と別れた。
監視役の男の前だ。
お互い軽い会釈で別れを済ませた。

笑顔が分からなかった男には掴む素ぶりの指で挨拶をした。
少し涙目で別れを惜しんでくれたので嬉しく思う。


陛下は確か今年で28歳になられたと思う。
少し外見の覇気が足りないが知恵の回る腹の黒いお方だ。

王妃は私と同じ歳だ。
20歳の時に嫁がれた。
御子様は男子と女子、二人いらっしゃる。
私が魔法騎士団団長に任命されて直ぐに茶会などの警護を頼まれた。

女の身で騎士団長という立場を面白がったのだろう。
茶会などの誘いもあったが、当時はまだ婚約者で同じ侯爵家の身分でもあったので断っていた。
王妃になられてからは断るわけにもいかず参加させられた。
数少ないが私が友と呼べる方かも知れない。


名乗りを受け謁見の間の中へと進む。
陛下の片眉が反応した。
一言目が予想出来る。
ドレス姿なのでカーテシーで挨拶をした。

「この度は大変ご迷惑をお掛け致しました、皇帝陛下、並び王妃様、お救い頂いた事に心から深く感謝を申し上げます・・・誠に有難う御座いました」

「面を上げろ」

「はっ・・・」

「馬子にも衣装だな?ローズマリー」

言うと思った。

「陛下におかれてもお変わりなく」

「まぁ陛下、そんな事ありませんわ、ローズマリー、素敵ですよ」

「有難う御座います、エリザベス様におかれても麗しいお姿、相もお変わりなく」

「挨拶はその辺で良い・・・怪我も無さそうだが何ともないのだな?」

「はい、その件で陛下にお伝えしたい事があります」

「長くなりそうか?」

「出来れば御内密で・・・」

「そうか、では明日聞く事にする、今日は帰れ、お前が死んだと聞かされてダズウェルが倒れたらしい」

「父上がっ?病状の方は・・・」

「いや、詳しくは知らない・・・お前の従兄弟のレイモンドを養子に取り、領主代行の座に付けてから音沙汰はない」

レイモンドは父の妹、私の叔母の次男だ。
子供の頃に会った記憶がある。
確か一つか二つ年下の筈だ。
私が離縁した時も叔母から養子の話があがった。
その時は結局父が荒れてしまい話にならず、そのままになっていた。

しかし父には持病らしい持病もなかった筈だが・・・

「詳しくはレイモンドに聞いてくれ、屋敷にいる筈だ・・・帰りは馬車を用意させる、明日の昼過ぎにも迎えに行かせるからそのつもりで」

「はい、ありがとうございます」


・・・貴族への根回しどころではなくなったな。


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