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殺人事件編-3
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ちょうど後ろの席のテーブルだった。
浅山ミイがいた。
もう一人二十代前半の若い女性と一緒にいた。
振り返り、ミイの顔を見つめたが、こちらの方には全く気付いていないようだ。
「ねえ、なんで言われた事できないの?どうしてそんなに酷い手抜きメイクなの?」
一緒にいる若い女性はすっかり怖がっていて背中を丸めて下を向いていた。ジーンズにパーカーという格好の女性で、確かに派手ではないが文花にはブスには見えなかったが。
「本当にブスなんだから! どうせこんなんだから仕事も腰掛けで適当にやってるんでしょ。小学生レベルの仕事内容なんでしょ。私の恋愛コンサル全く成果出てないけど、全部あなたのせいよ」
女性は特に反論しなかった。女性はおそらくミイのクライアントだろう。
こんな強い言葉を浴びせられ、咄嗟に反論できる自信は文花にもなかった。
ミイは文花にもナオコにも気付いていなかった。
ミイは文花の顔は知らないようだ。
夫が不倫のスキャンダルを起こした時、目が隠された写真が載った事はあるが、世間に文花の写真が出回っていないはずだった。
ミイは紺色のパンツスーツを着て、髪も巻き、メイクも完璧だ。確かに常盤が言っていたようにアナウンサーや秘書のような雰囲気だったが、吐く言葉はいじめっ子そのもので下品だった。
外見は取り繕っているが、これが本性なのだろう。脅迫状の犯人もミイで間違いない。証拠はないが、文花の勘が決めつけていた。
それにこの女は不倫をしている罪悪感も特に持っていなそうだ。強い言葉でクライアントを痛めつけているが、ミイがそれを言えるほど品行方正な人間だとはとても思えない。自分の言動は棚にあげすっかり忘れてるのだ。いっそ言ってやりたかった。「お前が言うな、お前は実際今人の旦那を盗んでいるだろう」と。
責められているクライアントに悪いが人の家庭を壊している人間にいくら頼った所で結果は目に見えている。その事も言ってやりたかったが、ぐっと掌を握り、歯を噛みしめ我慢する。
「ナオコさん、大丈夫?」
小声でそっとナオコに尋ねた。
ナオコはすっかり青ざめていた。冷や汗を流し、唇や頬に血の気が失せていた。
手をだらりとおろし、あれだけ美味しそうに食べていたパフェやパンケーキを見向きもしない。
「まさか、何でここに……」
ナオコの震えた唇から小さな声が漏れた。
「ごめん、悪い事思い出して辛い……」
「ナオコさん、もう出ましょう。ここは私が奢るから」
とりあえずナオコを先に店内から出した。文花は支払いを済ませるとすぐにナオコの元へ向かう。
ナオコの顔はまだ青く、小さく震えていた。
思った以上にナオコは、ミイの事が傷になっているようだった。
実際あんな現場を目撃したら、傷になる気持ちもわかった。文花がミイが陰で不倫をしている事を知っているから少しは冷静になれるが、そうじゃなかったらどうだろう。人気の恋愛カウンセラーに罵倒さて否定される自分。自分の方が非があるのだと思い詰めるかもしれない。
「ナオコさん大丈夫よ。ミイが酷い女で言ってる事は全部間違ってるって私が保証する」
「なんで?」
「不倫している女のいう事などみんな戯言よ。信じる方がアホよ」
ナオコはようやく、口元に笑みをこぼした。
浅山ミイがいた。
もう一人二十代前半の若い女性と一緒にいた。
振り返り、ミイの顔を見つめたが、こちらの方には全く気付いていないようだ。
「ねえ、なんで言われた事できないの?どうしてそんなに酷い手抜きメイクなの?」
一緒にいる若い女性はすっかり怖がっていて背中を丸めて下を向いていた。ジーンズにパーカーという格好の女性で、確かに派手ではないが文花にはブスには見えなかったが。
「本当にブスなんだから! どうせこんなんだから仕事も腰掛けで適当にやってるんでしょ。小学生レベルの仕事内容なんでしょ。私の恋愛コンサル全く成果出てないけど、全部あなたのせいよ」
女性は特に反論しなかった。女性はおそらくミイのクライアントだろう。
こんな強い言葉を浴びせられ、咄嗟に反論できる自信は文花にもなかった。
ミイは文花にもナオコにも気付いていなかった。
ミイは文花の顔は知らないようだ。
夫が不倫のスキャンダルを起こした時、目が隠された写真が載った事はあるが、世間に文花の写真が出回っていないはずだった。
ミイは紺色のパンツスーツを着て、髪も巻き、メイクも完璧だ。確かに常盤が言っていたようにアナウンサーや秘書のような雰囲気だったが、吐く言葉はいじめっ子そのもので下品だった。
外見は取り繕っているが、これが本性なのだろう。脅迫状の犯人もミイで間違いない。証拠はないが、文花の勘が決めつけていた。
それにこの女は不倫をしている罪悪感も特に持っていなそうだ。強い言葉でクライアントを痛めつけているが、ミイがそれを言えるほど品行方正な人間だとはとても思えない。自分の言動は棚にあげすっかり忘れてるのだ。いっそ言ってやりたかった。「お前が言うな、お前は実際今人の旦那を盗んでいるだろう」と。
責められているクライアントに悪いが人の家庭を壊している人間にいくら頼った所で結果は目に見えている。その事も言ってやりたかったが、ぐっと掌を握り、歯を噛みしめ我慢する。
「ナオコさん、大丈夫?」
小声でそっとナオコに尋ねた。
ナオコはすっかり青ざめていた。冷や汗を流し、唇や頬に血の気が失せていた。
手をだらりとおろし、あれだけ美味しそうに食べていたパフェやパンケーキを見向きもしない。
「まさか、何でここに……」
ナオコの震えた唇から小さな声が漏れた。
「ごめん、悪い事思い出して辛い……」
「ナオコさん、もう出ましょう。ここは私が奢るから」
とりあえずナオコを先に店内から出した。文花は支払いを済ませるとすぐにナオコの元へ向かう。
ナオコの顔はまだ青く、小さく震えていた。
思った以上にナオコは、ミイの事が傷になっているようだった。
実際あんな現場を目撃したら、傷になる気持ちもわかった。文花がミイが陰で不倫をしている事を知っているから少しは冷静になれるが、そうじゃなかったらどうだろう。人気の恋愛カウンセラーに罵倒さて否定される自分。自分の方が非があるのだと思い詰めるかもしれない。
「ナオコさん大丈夫よ。ミイが酷い女で言ってる事は全部間違ってるって私が保証する」
「なんで?」
「不倫している女のいう事などみんな戯言よ。信じる方がアホよ」
ナオコはようやく、口元に笑みをこぼした。
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