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第三章
22話
しおりを挟むショッピングモールの通路をぶらぶらと歩く。雑貨屋でマグカップを眺めたり、小洒落た文房具を手に取ったり。玲央が可愛いポーチを見つけて、俺に見せてきたり。
そのあと立ち寄ったカフェでは、二人席に腰を下ろしてドリンクを片手に、仕事場の話やカフェの話をした。おかわりが半額とのことだったので、何回かおかわりをして時間が許すまでのんびりしていた。
笑って、からかって、沈黙も気まずくなくて。時間が過ぎるのが妙に早く感じた。
カフェの窓の外、陽が落ちて街の明かりが少しずつ灯り始めたのに気づいて、スマホに目をやると、時刻はもうすぐ十八時。あっという間に、待ち合わせの時間が迫ってきている。
そろそろ、向かった方がいいかな。
何気なく視線を上げた先で、玲央がストローをくるくると回していた手を止める。そして、俺の顔をちらりと見て、軽く首を傾げる。
「もう行っちゃうの~?」
「ああ。そろそろ時間だし」
そう答えた俺の言葉に、玲央はほんの一瞬だけ目を細めた後、ふっと笑ってトレーを持ち上げる。
「ちぇー、仕方ないなぁ……まぁ、栞季くんが知らない男とデートしてるところなんて見たくないから、俺は大人しく撤退するけど~」
そう言って立ち上がる玲央は、口ではそんな軽口を言っていたけれど、少し寂しそうに見えた。
「昨日も今日もありがとね」
そう言って、いつも通りの調子で笑ってみせる玲央に、俺も「こちらこそ」と短く返す。
玲央は少しだけ名残惜しそうにテーブルに視線を落とし、それからまた俺の方へ目を向けてきた。
「……また、時間ある時さ。どっか行こうよ」
「もちろん」
「よし!じゃ、できる限り楽しまないでね!」
冗談めかして言いながら、玲央はカフェの扉を押し、夜の街へと出ていった。
「楽しまないでねって……」
残された席で俺は苦笑した。それから、スマホの画面に目を落とす。新しいメッセージが届いてないのを確認して、依織とのトーク画面を開いた。
『着いたら連絡して。とりあえず中央改札口に向かうから』
そう送って、送信済みのその短いメッセージを見つめる。まだ既読はつかない。改札まではそう遠くないし、ゆっくり歩けばちょうどいいくらいだろう。
俺は腰を上げ、軽く背伸びをしてからスマホをポケットにしまう。
「……行くか」
この時間になると、仕事終わりのサラリーマンや下校中の学生で駅構内は先ほどよりも賑わっている。行き交う人々にぶつからないように改札口へと歩みを進める。
天ぷら、楽しみだな。
依織のおすすめというお店がどんな感じなのかはわからないが、あれだけ電話口で語っていたのだ自然と期待も膨らんでくる。
ポケットの中のスマホが震える。画面を確認すると、依織からのメッセージ。
『もうすぐ着きます!わかりました!中央改札口ですね』
ふっと笑みが漏れた。改札の案内板が見えてきた頃には、自然と歩幅も少しだけ速くなっていた。
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