15 / 39
■第3章 レイル・フェンダー、世界を釣る(海に来ました)
第3-4話 海底洞窟とドキドキ探索(中編)
しおりを挟む「不思議な雰囲気の洞窟ですね……漂う魔力がほかの場所と少し違うような……?」
マジックワンドの先に照明魔術を点けたフィルと背中合わせで、慎重に洞窟を進んでいくオレたち。
定期的にレンディル家がメンテナンスしているからか、出現するモンスターは多くはなく……思ったより順調に探索は進んでいる。
入り口からすでに数百メートル……場所的には、すでに海の下だろうか。
天井の高さは数メートルほどあり、見たこともない苔のような植物が、ほのかに青い光を放っているため、照明魔術一つの光があれば遠くまで見通せるのはありがたい。
洞窟のそこかしこに、人工的に加工されたと思わしき構造物がある。
「ここにある紋章……古代レティシア王国で使われていた意匠に似ています……”縁を結ぶ場所”というのは、本当のようですね」
興味深げに壁に刻まれた模様を調べていたフィルが、大きくうなずく。
ここならば、期待できそうだ……オレたちは慎重に、迷宮を進み続けた。
「そろそろ最深部か?」
何度かの分岐を目印をつけながら進み、オレたちは迷宮最深部と思わしきエリアに到達していた。
目の前には、直径30メートルほどの大きな空間が広がる。
明らかに人工的に整地された石畳の床の向こうに、ぽっかりと大きな穴が開いており、なみなみと水をたたえている。
漂う潮の香りから、海に繋がっているのだろうと推測される。
穴の手前には、石造りの祭壇があり、抽象化された世界地図のようなものが壁面に描かれている。
祭壇はきれいに磨かれており、まるで鏡のようだ。
「これは……! 古代レティシア王国の文字……!?」
壁面に書かれている文字のようなものを見た瞬間、フィルが目を見開く。
興奮した面持ちで、壁画に駆け寄るフィル。
「読めるのか? フィル!」
「はい……風化していて少し読みづらいのですが、お嬢様の教養として古語は嗜んでおりましたので……レイル、解読にしばらく時間を頂けます?」
「ここは王国の王都テレジア……いえ、でもこの位置に川などないはずです……それにこの祭壇の文字は……むう、魔術文字のようですが、欠損していて読めません……」
肩から掛けたポシェットから手帳を取り出すと、熱心にメモを取りながら解読作業を進めていく。
ここは専門家に任せた方がよさそうだ……オレは、その場を離れると、広間に何か所か開いている水場へと向かう。
とりあえず「アイテムフィッシング○」を試してみようか……オレは背負っていたバックパックから釣り道具一式を取り出し、組み立てるのだが。
ことり……
広間にひびたわずかな物音に、オレは油断なく誰何の声を上げる。
「誰だっ!?」
「……はぁ、はぁ……お兄さま、お姉さま」
「エレン!?」
広間の入り口から顔をのぞかせたのは、留守番しているはずのエレンだった。
*** ***
ダメじゃないか、こんな所まで来ては!
そうしかりつけようとしたオレは、エレンの様子を一目見ておかしいことに気づく。
エレンは息も乱れ、真っ青な顔をしている……少ないとはいえ、モンスターも出現するし、分岐も数多くあるこの迷宮をどうやって踏破して来たのか……。
そこでオレは思いつく……まさか、「千里眼◎」を使って来たのか?
確かにあのスキルなら、モンスターの出現を予測し回避することも、迷宮の正しいルートを予測することも可能かもしれないが、それはつまりずっとスキルを発動し続けるという事で……。
彼女の身体に少なからず負担が掛かっていることは確かだった。
とりあえず、休ませないと……そう思ったオレは、エレンのもとに駆け寄ろうとするのだが……。
「……くっ!?」
ぬらり……エレンの背後に音も無く黒い影が揺らめく……アレは、リザードマン!
巨大なトカゲの姿をした半獣人で、人間を見境なく襲う事で知られる……エレンがいる広間の入り口までは30メートル……フィルはリザードマンの出現に気づいておらず、転移魔術の発動は間に合わないかもしれない……!
オレはイチかバチか、ルアーを付けたままの仕掛けをエレンの方にキャストする。
無意識のうちに、釣りスキルである「激流の太公望」を発動させる。
放物線を描くルアーは、オレのイメージ通りに宙を飛び、エレンの腰……皮のベルトに引っかかる。
「いまだっ!」
「激流の太公望」が発動している間は、魚を揚げやすいように腕力が強化されるのだ。
オレは全身のバネを使うと、エレンを傷つけないように優しくしゃくりあげる。
「きゃっ!?」
ぶおんんっ!
間一髪……リザードマンの丸太のような腕が宙を切る。
ばさっ
オレは、落とさないように慎重にエレンを抱きとめた。
「フィルっ!!」
すかさずフィルに合図を送る。
「な……モンスターの接近に気づかないなんて、不覚っ」
「アイシクル・ランス!」
ザシュッ!!
間髪入れず放たれたフィルの氷雪魔術スキル……巨大な氷の槍に貫かれたリザードマンは、凍り付きながら粉々に砕け散る。
「申し訳ありませんレイル、解読に夢中になり過ぎ、モンスターの接近を許すとは……エレンの様子はどうですか?」
ふがいなさに顔をゆがめるフィル。
「まさかこんな所にエレンが来るとは俺も思ってなかったから、仕方ないさ……だけど、具合は良くなさそうだな……」
オレの腕に抱かれたエレンは、冷や汗をかき、浅く呼吸を繰り返す。
身体は妙に熱を持ち、意識も混濁しているようだ。
「!? レイル、わたくしに見せてくださいっ!」
血相を変え、駆け寄ってくるフィル。
魔術で診断しているのか、フィルの手のひらが薄緑に輝く。
「これは……魔力異常症……」
!! 息を飲むオレ……この病気は、体内に満ちる魔力が異常に高まり、身体に様々な障害が出る病……魔法の発達が遅れているミドルランドでは、不治の病といわれており、スキルを使いすぎると悪化することが知られている……場合によっては命を落とすことも珍しくない。
くそ、ここから街に戻るのに半日はかかる……そこまでエレンの身体は持つのか……?
みるみる衰弱していくエレンに、オレは焦りを募らせるが……。
「ふふ……心配することはありません、レイル!」
「さあ、「深淵の接続者」「アイテムフィッシング○」を使うのですっ!」
不敵な笑みを浮かべ、祭壇の後ろにある大きな水たまりを指さすフィル。
余計なことを言わないフィルは、とても頼りになることをオレは分かっていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
無自覚チートで無双する気はなかったのに、小石を投げたら山が崩れ、クシャミをしたら魔王が滅びた。俺はただ、平穏に暮らしたいだけなんです!
黒崎隼人
ファンタジー
トラックに轢かれ、平凡な人生を終えたはずのサラリーマン、ユウキ。彼が次に目覚めたのは、剣と魔法の異世界だった。
「あれ?なんか身体が軽いな」
その程度の認識で放った小石が岩を砕き、ただのジャンプが木々を越える。本人は自分の異常さに全く気づかないまま、ゴブリンを避けようとして一撃でなぎ倒し、怪我人を見つけて「血、止まらないかな」と願えば傷が癒える。
これは、自分の持つ規格外の力に一切気づかない男が、善意と天然で周囲の度肝を抜き、勘違いされながら意図せず英雄へと成り上がっていく、無自覚無双ファンタジー!
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした
暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。
役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。
だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。
倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。
やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。
一方、病の裏で糸を引いていたのは………。
“無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる