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■第3章 レイル・フェンダー、世界を釣る(海に来ました)
第3-3話 海底洞窟とドキドキ探索(前編)
しおりを挟む海都レンディルで知り合った少女エレンは、この辺りの領主の娘で、マジのお嬢様だった。
そのことは薄々感じていたものの、さらに驚いたのは彼女が持っているスキル……すべてを見通す「千里眼◎」についてだった。
そのスキルを使う事で、フィルの秘密に気付いたのだろう。
最初の衝撃から立ち直ったオレたちは、暇つぶしにオレが作っていたスイーツと紅茶で、お互いの事情を話し合っていた。
「千里眼◎」の前では隠し事は無駄だし、エレンは信頼に足る子だと判断したからだ。
「ふぅ……こちらのスイーツはラクウェルの名物、ティラミスですね……なんて上品な甘みでしょうか……お兄さま、素晴らしいです」
「ふふふ……レイルの……ぱくぱく……お菓子作りの腕は……ぱくぱく……宮廷付きのパティシエにも劣りませんのよっ!」
頬に手を当て、ほぅ……と感嘆の吐息を漏らすエレン。
そしてフィル、食べるかしゃべるかはっきりしなさい。
オレは、フィルの頬に付いたココアパウダーを人差し指で拭ってやる。
「ふふ、おふたりは素敵ですね……それで、お姉さまはこの世界の”下側”にあるロゥランドの大魔導士で……お兄さまのゴールドスキルである「深淵の接続者」でこちらに召喚されたという事ですね」
召喚というか水揚げというか、あまり風情は無かったけどまあそういう事だな。
そう言うとエレンは、ゆっくりと目を閉じる……彼女の胸元には、「千里眼◎」のスキルカードがずっと発動している。
オレが使ったスキルのこともわかるのだろうか?
「お兄さまの使われた「深淵の接続者」はユニークスキルですので、細かい所までは私の「千里眼◎」でも見通せませんが……お姉さまが召喚されたこと自体が、ここミドルランドと、お姉さまの世界ロゥランドを繋ぐ”リンク”のようなものになったようです……いいかえれば、お兄さまとお姉さまが繋がることは最初から決まっていたような……ロマンチックですね♪」
「……はうっ」
目を開き、エレンの口から語られた内容にフィルが顔を赤くする。
オレがフィルと出会ったのは”運命”……だとすれば、何のために?
「ですので、お姉さまが推測されたように、「深淵の接続者」の対となるスキルが存在するのは確かなようです」
「そのスキルが発現する場所ですが……ここレンディルの近くには、創世の時代から残る祭壇が、海底洞窟の中にあります」
「代々当家が管理しているのですが、伝承では”天の世界、地の世界との縁を結ぶ場所”とつたわっています……もし良ければ、調べてみるのはいかがでしょうか……ふぅ」
ちゃりん
エレンはそう言って、装飾のついた鍵を渡してくれる。
「なるほど……千里眼持ちのエレンが言うなら、調べてみる価値がありそうだ」
「さっそく明日、行ってみるか?」
「もぐもぐ……ごくんっ。 ふぅ、そうですねレイル、行ってみましょう!」
「それにしても、エレンは素晴らしいスキルを持っていますね……ふふ、わたくしのお嬢様秘術で調べさせていただけませんか……なに、痛いのは最初だけですわ」
「きゃ~っ♪ お姉さまだいたん!」
オレの提案に、ティラミスを口いっぱいに頬張ったフィルが同意の返事を返す。
お嬢様秘術なる怪しげな術を使い、エレンとじゃれ合う姿はとても微笑ましいが……。
オレはエレンが一瞬だけ見せた、疲れた表情が気になっていた。
「千里眼◎」は効果が絶大なだけ、使用者にかかる負担も大きいと聞く。
そして執事セバスさんの言っていた「薬」という言葉……気に留めておいた方がよさそうだ。
オレはお茶のおかわりをいれながら、明日の冒険に思いをはせていた。
*** ***
「こんな所に洞窟が……ここは昨日も通ったはずですが、気付かないわけですね」
翌日、朝食を頂いたオレたちは、さっそくエレンから聞いた海底洞窟へ探索に来ていた。
朝食の場でも、エレンは付いてきたそうにしていたが……さすがにモンスターが出る危険な洞窟。
執事のセバスさんにきつく止められ、渋々といった感じで留守番することになった。
ここはラクウェルに通じる街道の入り口、目の前に広がる砂浜の途中に小さな磯があるのだが、岩陰に目立たないように巧妙にカモフラージュされており……よく見ると人工的に作られた模造岩でふさがれている部分がある。
一か所空いているくぼみにエレンから借りた鍵を差し込むと、音も無く海底洞窟への入り口が姿を現す。
「それでは行きましょう!」
「久々のダンジョン探索、肩が鳴りますわっ! わたくしのピッキングテクを今見せるときっ」
……なんでお嬢様宮廷大魔導士が迷宮でピッキングをしているのかはよく分からないが、ゴギゴキとやけに脳筋な音をさせながら肩を回すフィル。
オレは念のため、視線を周囲に走らせる。
エレンから「尾行されていた」と聞いてから、オレは周囲を警戒するようにしている。
優秀な釣り師は魚の気配に敏感でなければいけない……長年の釣りにより磨かれたオレの気配察知能力は、すでに金スキルの域に達していた……。
うっ……自分で言ってて悲しくなってきた。
よし、周囲に怪しい気配なし……ここに来るまでに、何度か「ぐえっ」という声や、エレンの屋敷にいたオーガ……もとい警備員の気配を感じた気がする。
もしかして、さりげなくガードしてくれているんだろうか……そんなことを考えつつ、オレたちは目の前でぼんやりと青く光る海底洞窟へと足を踏み入れた。
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