【最強異世界釣り師】に転身した追放冒険者の釣って釣られる幸せ冒険譚

なっくる

文字の大きさ
13 / 39
■第3章 レイル・フェンダー、世界を釣る(海に来ました)

第3-2話 海都レンディルとお嬢様(後編)

しおりを挟む
 
「……デカいな」

「……デカいですわね……レティシア王国の宮殿よりデカいのでは?」

「お兄さま、お姉さま! こちらになります!」

 わうん!

 向こうでエレンがニコニコと手招きをしている。

 とはいっても、敷地への入り口にはゲートが設けられ、両側に屈強な男達が警備に立っている。
 正直入るの怖いんですが。

 荷馬車に轢かれそうになったコーギーの子犬を助けたオレたち。
 その飼い主であるエレンという名の少女と知り合い、彼女の家に泊めてもらえることになったのだが……。

 海都レンディルの西側、海を一望できる高台の上に、エレンの”屋敷”はあった。
 敷地はここから見るだけでも、両側数百メートルに広がっている。

 そして、なだらかな斜面に沿っていくつもの白亜の建物が点在する。
 ……まさか、アレが全部エレンの屋敷なのか?

「お兄さま、お姉さま~、はやく~!」

 年相応の表情になり、ぶんぶんと腕を振るエレン。

 いつまでも待たせておくのも悪い……オレとフィルは目配せをしあうと、覚悟を決めて屋敷の敷地へと足を踏み入れる。

 すっ……

「ひっ……」

 フィルが小さく悲鳴を上げたのも仕方がない……オーガ―もかくや、という程にガタイの良い警備員?が、こちらに向かって最敬礼をしたのだ。

 ……どうやら、客人として認識されているらしい。
(この警備員、人間だよな?)

「少し狭いのですが、こちらに普段使っていない別棟がありまして……ご自由に使って頂ければと♪」

 こちらが付いてきたことを確認すると、エレンはくるりと身体をひるがえし、広大な敷地を海の方へ向かう。
 と、そこに一人の老紳士が走ってくる……見た感じ、執事さんのようだ。

「エレンお嬢様! また街に出られていたのですね……旦那様も無理はしないようにとおっしゃっていますのに」
「もう薬は飲まれましたか?」

 どうやら、お忍びでの外出だったようだ……エレンは一瞬ばつの悪そうな顔をする。

「今日は体調がよろしいので問題ありません……ジョンにもたまには外を見せてあげないと……」

「それより! こちらのお兄さま、お姉さまはジョンの命を救って頂いただけでなく……私の師になられた方……タリスマンの棟にご滞在頂きますから、歓迎の夕食会の準備を!」

 薬……どこか悪い所でもあるのだろうか?
 執事に追及され、誤魔化すようにオレたちの話題を出すエレン。

「これは……失礼いたしました」
「エレンお嬢様を助けて頂いたようで……私は当家の執事のセバスと申します、ご滞在中にご不便がありましたら、何なりとお申し付けください」

 そういうと、セバスさんは恭しく礼をする。
 だが、その際にオレたちに鋭い目つきを向けたことをオレは見逃さなかった。

 いくらお嬢様が連れて来たと言っても、素性の知れない二人……油断はしないという事か。
 グレーの瞳の奥に、言い知れない深みを感じたオレは、思わずブルりと体を震わせる。

「……ふむ、どうやら良い出会いがございましたようで」

 顔を上げたセバスさんの目は、柔和な老紳士に戻っていた……どうやら認めて頂けたようだ。


「それでは、私は少し用がございますので……夕食会までごゆくっりとお過ごしください」
「お姉さま! 後でたっぷりパジャマトークをいたしましょう♪」

「ふふ、わたくしも楽しみにしています」

 ……少し小さい別棟とやらに案内されたオレたちは、何やら用事のあるエレンと別れ、1階のリビングルームに荷物を降ろし、一息ついてた。

「!! レイル! ここにあるウェルカムフルーツはこの間のマスクメロンではないですか!!」
「ちょ~っとカッコつけて寄贈しすぎたなと思っていたのです!」
「……ああ、この芳醇な香り……たまりません……」

「こらフィル、少しは遠慮しなさい」

 びしっ

「ぴいっ!?」

 さっそくテーブルの上に置かれたメロンを発見し、懐からスプーンを取り出して突進しようとしたフィルをチョップで黙らせる。

 それにしても、これが小さい別棟か……建物自体は2階建てだが、広々としたリビングとキッチン……向こうには海の見える露天風呂の施設が見える。

 まだ見ていないが、2階には4~5部屋くらいのベッドルームがありそうだ。
 本当にエレンはガチお嬢様なんだな……。

「ねえレイル! さきっぽだけ、先っぽだけですからぁ!」

 メロンにご執着の庶民派お嬢様に苦笑しながら、オレたちは夕食の準備が出来るまでゆったりとくつろぐのだった。


 ***  ***

「お姉さま! なにか力仕事をする際、お嬢様的掛け声というものは、どのようなものが良いと思われますか?」

「ふふ、ここはあえて”どっせ~~い”を推しますわ」
「普段の奥ゆかしい様子とのギャップがあってこそ、殿方の心を掴めるのですっ!」

「なるほど、さすがお姉さま……深い、深いですお嬢様リンク……」

「…………」

 豪華な夕食後、オレたちが滞在している建物に遊びに着たエレンは、フィルにべったりで謎のお嬢様トーク?を繰り広げている。
 正直、仲の良い姉妹のようでとても微笑ましい。

 ひと通り盛り上がった後、ふと真面目な顔になるエレン……次の瞬間、彼女の口から衝撃的な言葉が発せられる。

「……ところで、お兄さまがジョンを助けて頂いた時に、お姉さまが使われたスキル……あれは”魔術”というモノでしょうか?」

「「!!」」

 突然の指摘に、目を見開いて固まるオレとフィル。

「あと……おふたりを尾行している不埒な連中がおりましたので、当家の護衛を差し向けておきました……お姉さま、何か事情がおありのようですね?」

 な!?
 オレたちが尾行されていただって!?

 もしかして、冒険者ギルド関係だろうか……先日退治したグランワームは、もともとはギルドが請け負うべき案件だった……オレたちはマズいことをしてしまったのか……?

 ってそれより、この子、フィルが使ったスキルの正体に気づいている!?

 オレとフィルがあまりに驚くものだから、言い方がマズかったと思ったのだろう、あたふたと慌て始めるエレン。

「も、申し訳ございません! お兄さまお姉さまの事情を勘繰るつもりはなく……レンディル家は少々古くて特殊な家系ですので、私も無意識にいろいろなモノがみえるといいますか……」

 わたわたと、年相応な表情で焦るエレンの胸元に、「千里眼◎」という金スキルが現れる。

 あれは……!!

 周りの状況や、魔力の動きなど、あらゆるものを直感的に知覚できるという超レアスキル!?
 発現者は世界で5人もいないと聞いたことがあるけど、エレンが持っていたなんて……って、まてよ?
 レンディル家?

 オレはエレンのセリフの中で、もう一つ引っかかった部分を反芻する。

「レンディル家って……まさか?」

「はい、最初に申し上げればよかったですね……我がレンディル家は、王家に連なると言われる古い家で……海都レンディルの領主をしております」

「ガチのガチでお嬢様ですのっ!?」

 フィルの驚愕の叫びが、リビングの中に響いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

無自覚チートで無双する気はなかったのに、小石を投げたら山が崩れ、クシャミをしたら魔王が滅びた。俺はただ、平穏に暮らしたいだけなんです!

黒崎隼人
ファンタジー
トラックに轢かれ、平凡な人生を終えたはずのサラリーマン、ユウキ。彼が次に目覚めたのは、剣と魔法の異世界だった。 「あれ?なんか身体が軽いな」 その程度の認識で放った小石が岩を砕き、ただのジャンプが木々を越える。本人は自分の異常さに全く気づかないまま、ゴブリンを避けようとして一撃でなぎ倒し、怪我人を見つけて「血、止まらないかな」と願えば傷が癒える。 これは、自分の持つ規格外の力に一切気づかない男が、善意と天然で周囲の度肝を抜き、勘違いされながら意図せず英雄へと成り上がっていく、無自覚無双ファンタジー!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした

暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。 役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。 だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。 倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。 やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。 一方、病の裏で糸を引いていたのは………。 “無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。

処理中です...