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■第2章 戦場吟遊治癒ユニット、初出撃!

第2-4話 ミアちゃん初出撃(中編)

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 ”パナケアウィングス”のメインボーカル、ミア・カンタス!
 ただいま出撃ですっ!

 聖衣に着替えた後、意気揚々とアシュリーさんたちが待つ広間に駆け付けたわたし。

 アシュリーさんに”ミアのために作ったよ”と、特製の魔導ヘッドセットを頭に付けてもらって赤面したのもつかの間、床に描かれた謎の魔法陣の中心に足を踏み入れた瞬間……まばゆいばかりの白銀の光が広間を包み……。

 目を開けた瞬間、わたしは蒼空のただなかにいました。
 ……はるか下に緑の平原が見えます。

「……って、うひゃああああああああっ!?」

 人類の誰も見たことが無いであろう光景に、思わず悲鳴が出ちゃいます。

 聖衣の両袖と背中から伸びた羽根は青く輝き、わたしの身体を支えてくれています。
 そのため危険はないはずなのですが、今日までの練習では、部屋の中をくるくる飛んで回るくらいだったので……いきなり大空に放り出されて少々慌ててしまいました。

 って、やっぱ怖いいいっ!

『ミア! 大丈夫?』
『僕の”転移魔法”で、ダイナ平原上空に転移したんだ』
『……ごめん、ちょっと座標設定にミスがあって、ミアだけ高高度に放り出しちゃった……平原の手前にある砦の辺りまで来てくれるかい?』

 その時、頭に装着した魔導ヘッドセットから、アシュリーさんの声がします。
 はふぅ、びっくりしました……わたしだけこっちに来てしまったかと思ったので、アシュリーさんの声を聞いて安心します。

 ……って、”転移魔法”!?

 わたしが今大空を舞っている事も勿論ですが、”転移魔法”だなんて、そんな魔法は聞いたことありません。
 これもアシュリーさんが開発したという新魔法でしょうか……。

 わたしはそう考えながら、平原の端に視線を向けます。
 あっ、確かに小さな砦のようなものが……わたしは羽根の角度を変え、砦に向かって一直線に降りていきました。


 ***  ***

『お~い、ミア、こっちこっち』

 砦の屋上で、アシュリーさんが両手を振っているのが見えます。

『……来たかカンタス、それでは始めるとしようか』

 落ち着いた様子で傍らに置かれた謎の魔法装置を操作するレナードさん。
 魔法装置は高さ1メートルくらいのクリスタルガラスでできた真四角の箱で、いくつかの金属製の突起が空を向いており、箱から魔導ケーブルが何本も生えています。

 レナードさんは魔導ケーブルの1本をドラムセットに差し込むと、椅子に座ります。
 って、ドラムセット?

『じゃ、僕はこっちのケーブルだね』

 アシュリーさんはもう一本の魔導ケーブルを手に取ると、肩から掛けたリュートのような楽器の表面に空いた穴に差し込みます。

 きらりと陽光に輝く、6本のミスリル銀の弦……リュートよりも一回り大きいボディは、アシュリーさんの衣装と同じ、鮮やかな青色をしています。
 あれは……故郷にやってきたイケイケな吟遊詩人さんが使っているのを見たことがあります……最新の楽器、魔導ギターです!

 これから戦いに赴くはずなのですが、吟遊詩人さんのライブ会場のような雰囲気に、思わず首をかしげます。
 ですが、その疑問はアシュリーさんがギターの弦をはじいた瞬間、吹き飛びました。

『じゃあ行くよ、ミア!』
『”パナケアウィングス”……スタート!』

 じゃんっ!
 ぱああああっ

「!!」

 クリスタル製のピックを持ったアシュリーさんの右手が、最初のコードを奏でます。
 その瞬間、ぱっと膨大な魔力が弾け、ケーブルでつながれた魔法装置が青く輝きます。

「わたしの聖衣も、青く輝いて……しかも、白魔力がどんどん高まっていく?」

 続いて奏でられるゆっくりとした優しい旋律……これは、私の大好きな讃美歌、”アンセム”!

 魔法装置から放たれた青い光は、わたしが着る聖衣にも広がると、どんどん強さを増していきます。
 そして、今まで感じたことのない魔力の高まりが、わたしの身体の奥から湧き出して来るのを感じるっ。

 だん、だだだん、だん

 ”アンセム”のイントロ部分となる旋律、そこにレナードさんの叩くドラムが、リズミカルな色どりを添え……。

 ふわりっ

 聖衣から伸びる羽根の先がほのかに赤く輝き、ぽっと暖かな魔力がわたしの身体の中に生まれます。
 これは……レナードさんの赤魔力?

「わわわっ、これ……すごいっ」

 今まで感じたことのない魔力の高まり……その変化に驚いていると、旋律はイントロの終盤に差し掛かり……アシュリーさんはわたしに向かって笑顔で叫びました。

「ミア……歌って! そして、戦場で舞うんだっ!」

 アシュリーさんが指さす方向……そこには漆黒の暗黒竜の影が。
 たった今死闘が繰り広げられているであろう、戦場があります。

「はいっ!」

 わたしは力強く頷くと、光輝く羽根を操作し、全力で戦場へ飛びます。
 大きく息を吸い込み、”アンセム”の最初のフレーズを口ずさみながら。
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