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第五章
頼母の夢、見果てた後 ーたのものゆめ、みはてたのちー
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福島県は会津。
武田国継が建立した西光寺の境内には、基本となる七堂伽藍以外にもう一つ重要な施設があった。ただし、それは地表にではなく、法堂の地下に人目に触れないように造られた空間である。
数本の百目蝋燭のみで照らされた薄暗い室内に辛うじて十人の男女が集っている姿が見える。
この場所こそ、十頭社中の本拠であった。
「たわけ! イルミナティにケンカを売ってどうする! 彼奴等の資金と組織力はどうしても必要なんだ!」
「金、金、うるせえよ! 元々、兄貴が甲斐性無しだから、あんな奴らに頭を下げにゃならんのだろう!」
「なんだと!」
十頭社中を治める十人兄姉の長男にして、十頭社中の一番頭である大頭とぼろん坊が言い争いをしている。
「止めろよ、笛吹姉が死んだんだぞ」
二人の間に、六番頭で四男である天鳳が割って入った。同じく五男の大鳳と共に、表向きは会津力士隊に所属している巨漢である。
「これで政府を転覆させる計画は、緒戦で頓挫だな」
「大体、笛吹姉だけに負担を掛けているのが気に入らなかったんだ。感染者を操れるのが、笛吹姉しかいないとか…計画の見通しが杜撰過ぎるぜ」と、二番頭で次男の煌奉。
「現場を知らない頭でっかちの考えだからな、どこぞにしわ寄せが行くのは必定」と、計画の立案者である大頭への皮肉たっぷりに、ぼろん坊が言った。
「止めなさいよ、こんな時に」仲裁に入る七番頭の次女、香月。
この騒ぎに加わらず加わらない者もいた。部屋の隅に一人離れて天井の一点を見つめている、与一と瓜二つの顔を持つ十頭社中の末弟、十番頭にして総帥の十騎男である。
そんな十騎男に声を掛ける着乱れた和服姿が妖艶な三女の菖蒲。
「どうしたんだい? 十騎男」
十騎男、問いには答えずブツブツと呟く。
「…あいつ殺す…生きてやがった…しかも笛吹姉を…殺す」
菖蒲は、十騎男の頭を撫でて微笑む。
「そうだねぇ。やっぱ殺んなきゃいけないねぇ。十騎男は二人も要らないからねぇ」と、幼子をあやすように言った。
部屋の中央では、兄姉喧嘩という名の幹部会議が続いている。
十頭社中が掲げる唯一無二の社是、それは『会津藩の再興と開府』である。
この組織が出来上がった経緯は、文久二年八月一日の会津藩藩主である松平容保が京都守護職に就任したことに始まる。京都守護職とは、幕末期、治安が悪化した京都の治安を守るために設けられた江戸幕府の役職である。
容保は赴任するや、年間十四万両という莫大な資金を投入し、新撰組など新たな治安部隊を設置するなどして京都の治安を回復していった。
だが、その一方で、京都では長州藩の台頭が著しくなっていた。元来勤王思想が強かった長州藩は、江戸時代の初期から朝廷への多大な支援を行っており、見返りとして大きな発言権を有し、この頃になると朝廷に無断で「討幕の密勅」と称する偽勅を乱発するなど目に余る所業が横行し、時の孝明天皇は手を焼いていた。
それまで朝廷との縁故に乏しい会津藩であったが、容保は京都守護職に就いた機会を逃さず、孝明天皇の長州に対する御心を汲み、朝廷から長州派を一掃するのだった。
こうして、京都の治安回復と長州派の排除を成し遂げた容保に対して、孝明天皇は特段の信任を置くようになり、文久三年には、御宸翰(注:天皇直筆の手紙)と#御製_ぎょせい__#(注:天皇の和歌)を下賜された。
一大名が天皇から御宸翰と御製を賜るのは異例のことであり、特に御製の内容は、
『たやすからざる世に 武士の忠誠の心をよろこびてよめる
和らくも たけき心も相生の まつの落葉の あらす栄へん
武士と心あはして巌をも 貫きてまし 世々の思ひて』
と、会津藩が天皇から治世の信任を受けたとも解釈できるものだった。
尊皇攘夷が主流となりつつある時世である。討幕がなされた暁には、徳川家に変わって天下を治めるのは我等であると、会津藩の誰もが息巻くのは当然の事だった。
そして慶応二年、孝明天皇は暗殺の疑義の中、崩御した。
その真相は、結局判らなかったが、これにより息を吹き返すことになった長州は、明治天皇が即位する前に偽勅を出し、会津藩を朝敵に仕立てあげるのだった。
慶応三年十月十四日の大政奉還、続く慶応四年三月十一日の江戸城無血開城にともない、徳川慶喜が水戸で謹慎すると、薩摩藩・長州藩を中心とした新政府の矛先は、先に朝敵の宣告を受けていた会津藩に向けられる。
会津藩は、理不尽な濡れ衣と一層態度を硬化させ、新政府の通達に対して出頭せず、謝罪も拒否する回答書を送りつけたのだった。
そしてついに、新政府の鎮撫使(注:諸国の治安巡察官)である世良修蔵が、会津藩の朝敵赦免を嘆願していた奥羽列藩同盟の一つである仙台藩藩士によって殺害された事件から、一気に戦争へと突入していった。後に戊辰戦争として終決をみる会津戦争である。
会津藩は若松城に篭城し、少数の独立部隊による城外での遊撃戦を続け抵抗していたが、頼みとしていた米沢藩をはじめとする同盟諸藩の降伏が相次ぎ次第に孤立していった。
この圧倒的な戦況の不利を見て、藩主容保に降伏を進めたのが西郷頼母であった。
会津藩家老こと西郷頼母。彼こそが十頭社中勃興の祖なのだ。
西郷氏の出自は、松平氏を主君として代々従った家臣である三河譜代であり、保科氏の血縁でもあった。また、会津松平家とは縁が深かった。会津松平家の祖である保科正之は徳川秀忠の四男であり、秀忠の母は西郷氏であるからだ。
しかしながら、保科家は元々甲斐武田家の家臣であって、武田信玄の次女である見性院の縁から保科正之を託された養子に過ぎず、家格としては、三河譜代で将軍家外戚でもある西郷家の方がずっと高い。
しかも、そもそも容保自身が保科家の養子であり、藩祖保科正之も保科家の血筋ではないとなれば、本当なら自分の方が本家筋、即ち、会津藩の正当な継承者であるとの想いを頼母は内心強く秘めていた。
また、会津藩は武田家の血脈と縁が深い。
武田信玄が亡くなった翌年、会津の蘆名氏に協力を求めるため、武田国継が信玄の遺書を持って遣わされた。しかし、織田信長と徳川家康によって甲斐武田氏が滅ぼされてしまい、武田氏の血脈を残すために武田国継はそのまま会津に留まり、会津の蘆名盛氏に地頭として仕えたのだった。
こうして、家老という地位に就いた頼母が、保科氏本流との自負と、元来、武田家の血脈である血が騒いだのであろう、一つの野心が芽生える事となる。
それこそが、戦国の世からの武田家の悲願、果たせぬ夢だった天下統一。その代位として『会津幕府』を開く事であった。
頼母は、その遠大長期な計画の第一歩として、荒事を担う実行部隊の組織に着手する。全国津々浦々から養子を引き取ったのだ。それも、狼に攫われ育てられていた女児や、周囲から恐れられるほどの巨漢、歩くよりも早く和算を解いた神童など、何らかの訳あり、それ故に秀でた能力を持つ子らであった。
その数、九人。
更に、もう一人。武田家と最も縁深い血筋である武田惣右衛門の子たる武田惣吉に、文武に優れた血統から厳選した側室をあてがい嫡子をもうけさせた。何故なら、先の九人が頂点に頂く実行部隊の長として、何より来るべき会津開幕府の将に治まるべき正当な血統を持つ人間が必要だったからである。
そしてついに、天下統一を正当なものとする決定的な後ろ盾、御宸翰と御製をも手に入れた今、頼母の野望、否、その姿を借りた、平安の末期より連綿として天下統一を夢見た甲斐源氏武田家の執念が、今度こそ数百年の時空を貫き現出しようとしていた。
だがしかし、人世とは、歴史とは、儘ならぬものである。
頼母の夢半ばにして、会津は江戸幕府の滅亡とその運命を同じくしようとしていた。しかも、幕府の無血とは程遠い、流血の最後である。
その趨勢を見極めた時、会津藩家老として頼母は一人腹を決め、一通の手紙を認めた。
宛てた先は十人の養子、その長兄である。
手紙には会津藩が没した後の指示と共に二式の書簡が同梱されていた。
書簡の一つには、表紙に『十頭社中 発起の手筈』とあった。
もう一つは、孝明天皇から下賜された御宸翰と御製である。
その書簡が、頼母の手を離れた直後、明治元年九月二十二日、会津藩は新政府軍に降伏した。
東京府下。
南千束は洗足池のほとり、のどかな深山の趣のある自然の中に建つ茅葺き屋根の一軒家が佇んでいる。
表札は掛かっていないが、人が生活している気配がある。
居間しかない小さな家屋の縁側で、二人の男が会談していた。
「静かだな。隠居するには良い佇まいだ」
「あくまでも保養ですよ。人間、休息は必要でしょ。ここも借家です。まあ、そのうち本格的に土地でも探して、別宅を建てようと思ってますが」
声の主は三条実美ともう一人、この家の住人、勝安芳である。
勝は、鳥羽・伏見の戦いで幕府側が敗れた後、徳川慶喜の名代として官軍の参謀である西郷隆盛と会見する為、官軍の本陣が置かれた池上本門寺に赴いた事がある。道中通り掛かった洗足池ほとりの茶屋で休息したのだが、その際、この辺りをいたく気に入り、その後も保養地として度々逗留していた。
「それで今日は、その寂しい土地まで、しかもお一人でご足労頂くとは、さぞや重大な御用がお有りなのでしょうな?」
飄々としている勝に対して、三条は刺すような視線を向けた。
「羅刹を…坂本を見た者がいる。しかも、グラバーの周辺でだ」
坂本とは、坂本龍馬の事である。しかし、坂本は死んでいるのではなかったか? と、疑問を呈する余人は、幸いその場にはいなかった。
「ほう、で、それが私と?」と、勝。
「とぼけるな、今の坂本が御主の指示無しに動くか」と、三条。
茶を啜る勝。
「うーん、そうでもないんですが、まっ、いいでしょ。十頭社中です」
「それなら案ずるに及ばん。妖刀事件の首謀者として関係者全員の逮捕を指示した。戮も使ってな」
「勿論知ってます。だからです。下手したら全滅しますよ、戮。余計な事だと思いましたが、手駒には発破を掛けておきました。何たって、戮は私の子供みたいなものですからね、全滅なんて忍びない」
「発破?」
「秘密です」
「なっ」
好きなように話しを混ぜ返され、いい加減痺れを切らした三条の機先を制するように勝が言った。
「十頭は、あれはいけません。国の屋台骨を揺るがします。物事には、特に政には大儀が必要ですが、彼奴等はそれに関して最も有効な切り札を持っている。孝明天皇の御宸翰と御製だけは、あれだけは、決して表に出してはなりません。あなた方、何より現政府の正当性、存続の根幹に拘わります。戮は、この為に組織したと云っても過言ではない。十頭を葬るための秘匿組織なのです。今までの治安活動は組織存続の方便に過ぎません」
「何が秘匿だ。人の口には戸は立てられん。戮の存在なぞ、日本国中、津々浦々まで知れ渡っとるわ」
「かまいません。歴史とは後世に残ってこその歴史です。どれほど今生で民草に流布しようとも、書き物に残ってなければ、それは存在していないのです。だからこそ、戮の存在は一文字でさえも公式な記録に残してはいけません」
「それは徹底させている。安心しろ。だが十頭を滅して後、戮士達の処遇はどうするのだ」
「申し上げたでしょう。戮なんて組織は元より存在しない事となるのです。存在しない組織の連中など心配しようがない。ああ、野刃とかいう御禁制の刃物を所持している輩ならいますねぇ。咎人の処分なら、そちらで如何様にもなりましょう?」
「羅刹が…坂本が黙ってないと思うが」
「さあて、羅刹という名は知りませんな。それと坂本龍馬なら、もう死んでます。私が京都に墓も建てた」
三条は、勝の眼を真っ直ぐ見てから、庭に視線を外した。
「…世間では、幕末の志士などとおぬしらをもて囃して、だれが倒幕一番の功労者か論評する風潮もあるらしいが、少なくとも一番恐ろしいのは、おぬしだな」
結局、三条はそのまま帰京した。勝の真意を聞き出せないどころか、逆に戮の処遇に関して暗に指顧される始末だった。
与一は、明治四年の廃藩置県によって福島県となった元会津藩領の西光寺に向かっていた。十頭社中の中枢であり、その中核を成す十兄姉の居所であると警察の捜査で知れた場所である。
目的は只一つ、十頭社中の壊滅である。
警察などには犯人逮捕が原則の御触れであったが、戮士に対しては、生死は問わずの命が下っていた。
動員された戮士の数は十人以上であったが、戮という組織、そして戮士の性質上、全員で連携した団体行動を取る事はない。与えられた情報に沿って銘々が独断で命令を遂行するのである。
隠密行動かつ戮士の絶対数が少ない事も相まって、目的遂行のための戦闘は小規模なものが散発に行われ、大概は人目に付くことなく始まり、そして終わる。
戮士に単独行動をさせる主な理由はこれで、幕末の混乱時のように事が起きる度に大規模な軍事行動となれば、土地が荒れ、庶民の生活は疲弊し、結果、国力の低下を招く。そうなれば、何の為の治安維持か分からない。
このうして戮士総動員となった今回の任務だが、所持する野刃が改修中であるが故に、火夜が除外されている旨が与一の耳には届いており、与一は素直に安堵していた。
西光寺に着く。境内に人の気配はなかった。
与一は、山門から本堂へ向かう参道の途中、向かって左側に設置された禅堂に入ると、建物の壁に沿って並び設けられた単と呼ばれる僧侶一人一人が坐禅する場所を突っ切って、正面中央に安置された聖僧の坐像に進んだ。
像の裏には与えられた情報通りの地下へ続く階段が見つかった。
薄暗く、よく見えない階段を足の感覚頼りに駆け下りる。
現れた部屋は情報とは違っていた。すぐに十頭兄弟の居場が有るはずだった。が、そこには、置物一つ無い十畳ほどの小部屋があった。ただ、広さの割に天井の高さが異常で、三丈三尺程(約十メートル)はありそうだった。
小部屋の奥に扉が見える。恐らくそこが目的の部屋だろう。敵の本拠地なのである。得た情報にこれくらいの齟齬があるのは、むしろ当たり前である。
奥に進むべく小部屋にはいると、後の戸が勢い良く閉まった。
成る程、罠に嵌って閉じこめられたらしい。与一は、むしろ歓迎した。相手が向こうから接触してくれるという事だ。あちこち探し回る手間が省ける。
前方の戸が開き、大男が二人、戸口から姿を現した。
十頭の四男天鳳と五男大鳳である。
更に、その背後から次女香月と六男勝樹が現れた。別に隠れる意図があったわけではなく、天鳳達が際立った巨体だったせいで物理的に彼らの身体に被ってしまったのだ。それでも、次女と五男の体格は日本人の平均し比してもかなり小柄には違いなかった。それは、何か意図的なものさえ感じる大きさの対比ではあった。
「戮士は単独行動だから知らないだろう。お前以外の戮士は、我ら十頭兄姉が既に葬っているよ。残りは、お前一人だ」勝樹が言った。
「しかも、お前は自分の実力で此処まで辿り着いたと思っているかも知れないけど、此処に引き入れたのは、我らが意図した事よ」香月が継いだ。
「此処までの道中、我ら兄姉の誰とも当たらなかっただろ」と天鳳と大鳳が異様なまでに声を同期させて言った。その二人の後から新たな声の主が現れる。
「お前には、笛吹の恨みを返さねばならないからな」次男の煌奉である。
「わざわざ御招待いただくとは感謝の極みだな。仕事が捗るぜ」与一は皮肉の意識もなくそう切り出すと「十頭社中の責任者及びその構成員は全て、国家転覆を画策した罪により身柄を拘束する。尚、抵抗した場合、その生死は戮の紋章に委ねられていると知れ」神斬りに手を掛け、戮の紋章を五人にかざして口上した。
「ふふ」煌奉が苦笑する。「まったく、そのへらへらした顔つき以外は背格好から声までそっくりだな。あいつが頭に来るはずだ」
「何の事だ? あいつとは?」
特に興味が湧いた訳ではない。だが公儀の捕り物である。不明点は潰しておきたい。与一は問うた。
「ふふふ」今度は応えない煌奉。煽るだけ煽って、いざ相手が食いついたら答えを言わず相手を焦らす。それを優越と感じる稚拙な性格らしい。「どうせここで死ぬんだ。知る必要はないだろう」
他の四兄姉も笑っていた。その事実を与一が知らない事がよほど快感らしい。
与一は、一息吸って神斬りを構え直した。
「その言葉、戮士対する脅迫と断じて異存ないな! 戮の権限において、人斬りを執行する!」最後通牒を告げる。人斬り鑑札を持つ戮士が、権利の行使に際して課せられた唯一の義務であった。
一番若い勝樹が、短絡に反応した。
「政府の犬となって人殺し三昧のお前に、我らの大儀が汚されてたまるか!」と与一に飛びかかる。得物は変哲のない短刀だった。
与一は、その短刀を神斬りで受け、難なく挟み切る。
素早く後退する勝樹。
代わって、煌奉がずいと一歩前に出た。通常より長めで肉厚の打刀を八相に構えている。しかも、通常の構えより刀を後ろに倒して刀の切っ先を見せないようにしている。独特の構えが技量の高さを誇示していた。
煌奉が、正面から打ち込んで来る。
与一が、神斬りで刃を受けようとした瞬間、煌奉の頭上から何かが飛び込んで来て、与一の行動を阻んだ。攻撃の手を休めない煌奉を躱しながら、その物体を視界の端で追う。
上から落ちてきた物体は、床で機械的に跳ね返るのではなく、与一の右後方に着地。そのまま前方に跳んで壁を駆け上がると、自分が飛び降りてきた方向へと巻き戻るように跳び上がった。
与一も目端だったので一瞬しか確認出来なかったのだが、その物体は間違いなく人間だった。香月のようにも見えたが、確認しようにも、煌奉が思いの外の手練れで、神斬りで刃を挟めないような太刀筋で斬りつけてくる。峰の部分で受け凌ぐのがやっとで、気を抜けば一瞬で必殺の太刀筋を浴びそうだった。
しかも、煌奉ばかりに気を取られる訳には行かないのだ。先刻の通り、他の四人の誰かが、隙をついては襲いかかってくる。
気を配るにも室内が薄暗く視認するのが難しい。特に天井は真っ暗である。と、思っていた矢先に、香月と勝樹が与一の両脇に忽然と現れた。またしても頭上から飛び降りてきたらしく、しかも殆ど着地音がしなかったので、瞬間移動してきたように感じた。恐るべき身の軽さである。
両脇から短刀で突いてくる香月と勝樹。同時に正面上段から打ち下ろしてきた煌奉の刃。三方からの同時攻撃だったが、後方へと飛び退いて避けた。部屋の角に追い込まれる格好になったが、両側を壁に挟まれた事で、逆に相手の動きも制限されたのか、それ以上攻めてはこなかった。
次第に暗さにも眼が慣れてくる。なんとか室内の状況が確認できるようになる。
部屋の中央に天鳳と大鳳が並んで立っている。
その両脇、少し離れた壁際に香月と勝樹が居て、四人は横一線に並んでいる。
四人の前方には煌奉が構えていた。
それが、彼らの攻撃陣形の基本らしい。
しかし、この配置が何を意味しているのか。
暫く静観したが、どうも、部屋の角にいたのでは攻撃してくれないらしい。さすがに埒が明かないので、相手の攻撃方法を探るため、与一は敢えて一歩前へ出た。
空かさず、香月と勝樹が動く。
今度は頭上から攻撃してくる術が見て取れた。
中央に陣取っている天鳳と大鳳を踏み台にして跳び上がり、狭く切り立っているこの部屋の壁を方向を変えるための蹴り板に利用する事で、部屋の中を立体的に動き回っているのだ。踏み台代わりなっている天鳳と大鳳も、それだけではなく方向転換に手を貸しているので、二人の動きは更に複雑になっていた。
正面から正攻法の剣撃で攻撃してくる煌奉と正面以外の全方位から自由自在に攻撃してくる香月と勝樹。
更に、この三人から逃れようと煌奉の背後に回り込もうとすれば、必然的に天鳳と大鳳の眼前に飛び出す格好となり、彼等の張り手が繰り出されるのだろう。素手の攻撃だが現役力士の張り手である。刃物よりも重い致命傷となるに違いない。
この狭い部屋を利用した一分の隙もない連携攻撃。それを寝食を共にした兄妹の息のあった呼吸で熟すのである。何とか致命傷は受けずに凌ぎ続けているが、身体のあちこちに痛みを感じていた。恐らく傍目には、傷だらけなのだろうな。と、与一は戦況を分析した。
余裕のある内に反撃しなくては、このまま押し切られてしまう。地の利、数の優位、その全てが敵にあるのだ。
与一は、体勢を立て直すため、部屋の角に一時避難した。
しかし今回は、空中戦担当だった姉弟が、地に足を下ろして正面から短刀の連携連撃で攻撃してきた。壁に邪魔されて長い打刀では戦い難い煌奉に代わって、空中戦だけではないところを披露するのだった。
もはや部屋の角も攻撃の死角ではない。避難区域にはならない事を与一は知った。
「最初の静観は、挨拶代わりのお目溢しか」
いよいよ退路が無くなった与一は、天井を見上げて深く深呼吸した。
一方的な守勢の間に、しかし、反撃の道筋は見据えていたのだった。細い道だが掛けるしかない。
意を決して前に出る。
煌奉の一撃を神斬りの片方で受ける。定石通り上方から攻撃してきた香月に、片刃のもう一方を投げつける。が、香月は難無く避け、外れた神斬りは天井の闇に消えた。
「馬鹿め、唯でさえ劣勢なものを、武器を減じてどうする」煌奉が言葉と共に自分の刀を横に払う。
それを避け、前方に、つまり、煌奉の横を抜けその背後に頭から前屈みに跳ぶ与一。でんぐり返りをして着地した場所は、天鳳の正面、すぐに手が届く至近距離である。
「何度繰り返せば気が済…」振り向きざまの優越感に満ちた煌奉の言葉が途切れた。
天井から血が降っている。
いや、煌奉が見上げると、神斬りの刺さった天鳳の脳天から血が吹き出していた。
先刻、香月に向かって投げた神斬りは、天井に刺さらず、鋭い放物線を描いて落下、天鳳の脳天に突き刺さったのだ。与一は、最初から香月でなく天方を狙っていたのだった。この部屋特有の高い天井だからこその芸当だった。
「きゃっ」
丁度そこに壁を蹴って戻ってきた香月が、足場にしようとした天鳳の肩が血糊にまみれていたので滑り落ちてきた。
体勢を立て直せないまま、目の前に落ちてくる香月の喉笛を切り裂く与一。香月は声を上げる間もなく、床に落ちた時には絶命していた。
今までの優勢から一転、瞬く間に兄妹が二人倒された事を受け入れられず、大鳳は硬直していた。
与一は、その大鳳の身体を駆け上る。大鳳の肩に乗っていた勝樹を狙ったのだ。
「きさまぁぁぁぁ」大鳳と違い、逆に激昂にしている勝樹は闇雲に反撃してくる。
ガキッ。
大鳳の眼前で、与一の神斬りと勝樹の短刀の刃が合わさった。
挟み切らずとも、そこは野刃。片刃だけでも、神斬りは刃の薄い短刀程度なら断ち切る事が出来る。勝樹の短刀は真っ二つになり、受ける物が無くなった神斬りの刃は、そのまま驚愕に目を見開いた勝樹の眉間に刺さった。
与一は、棒立ちの大鳳から天鳳へと飛び移り、脳天に刺さっている神斬りの片割れを回収した。
崩れ落ちる天鳳と共に床に降りる与一。足下が血糊でぬめぬめしていた。薄暗いので視認は出来ないが、床一面血の海だろう。
煌奉と対峙した。
「まだやるかい」
「次男として、この場の長として、妹弟から流れでた血には責任がある」
「そうか」
お互いに、自らの技の基本となる型で構える与一と煌奉。
互いの間合いを計る。結果、煌奉が先に動いた。
突きだった。
通常の突きでは届かない遠い間合いから、更に片手で、高速で、刀を突きだした。
与一は、突き出された刀を鋏形態の神斬りで挟まずに、刃を開いて受け、そのまま上に持ち上げる事により、刀の切っ先を上方に逸らした。
溝の上を滑るように神斬りの刃元を滑った刀は、持ち主の煌奉を万歳させる格好になる。結果、至近距離で顔を付き合わせる与一と煌奉。
与一が力を入れて握ると神斬りが煌奉の刀を鍔の間際、刃の根本から断ち斬る。
お互いに視線を切らさず、丸腰となった煌奉の胸に神斬りを突き立てる与一。
一瞬、息を詰まらせた煌奉は、それでも力強い声で入った。
「大鳳の命は助けてやってくれ」
「ほう、兄弟姉妹、血の掟でもあって、全員運命を共にするのかと思ったが」
「しょせんは義理だ。血の繋がりはない。本来、大鳳は心根の優しい奴だ。助けてやってくれ」
与一は大鳳を一瞥した。その巨体が、今は何処にあるのかと云わんばかりに小さくうずくまって震えている。
「わかった」与一は、煌奉の胸から神斬りを抜いて言った。
仰向けに倒れる煌奉。目を瞑ったまま呟いた。
「さすが、十頭最強を誇る男の片割れ。見事であった」
また、意味深な事を口走る。与一は問い質そうとしたが、煌奉が先に言った。
「じきに、相見えるさ…その目で確かめろ」
そこで煌奉は事切れた。
大鳳に確かめようにも、話しどころか、暫くは人として使いものになりそうにない。
仕方なく任務に戻る与一。
そう、まだ終わりではないのだ。
決戦の場となった部屋の入り口の対面の壁に設えられた、更に奥へと続く戸を蹴破って進む。
全身の痛みと出血による倦怠感から、もうじき動けなくなる事を自覚しながら足を踏み入れた先は、小さな道場くらいの空間だった。
十頭社中の、真の本拠だったはずのその場所は既にもぬけの殻、何もない。誰もいない。
残りの兄姉、長兄の大頭、三男ぼろん坊、三女菖蒲、そして、末子にて十頭社中の総帥、十騎男は何処へかと移動した後だった。
結局、残った五人は殿軍だったというわけだ。
それでも、薄明かりを頼りに辺りを見回す。僅かに半壊した神棚だけが正面の壁に残っていた。
その神棚の下に、ぼろぼろの書簡が落ちている。それには、『十頭社中 発起の手筈』と書かれていた。
与一は、その書簡を拾い上げながら辺りを見回した。
改めて、部屋の中には棚一つ無く、がらんとしている事を確認する。
隠し棚等がないか壁を調べてみたが、その気配もない。つまり、この場所に他に書類が存在する可能性はないということだった。
それは、今回の任務にて十頭社中の壊滅と平行して、いや、それ以上に優先せよと命ぜられていた任務、御宸翰と御製の回収が果たせない事を意味していた。
与一は、今回の件が、存外に長引く予感を認識した。
それに、あの煌奉の言葉。いったい自分は何と対峙するというのだ。
武田国継が建立した西光寺の境内には、基本となる七堂伽藍以外にもう一つ重要な施設があった。ただし、それは地表にではなく、法堂の地下に人目に触れないように造られた空間である。
数本の百目蝋燭のみで照らされた薄暗い室内に辛うじて十人の男女が集っている姿が見える。
この場所こそ、十頭社中の本拠であった。
「たわけ! イルミナティにケンカを売ってどうする! 彼奴等の資金と組織力はどうしても必要なんだ!」
「金、金、うるせえよ! 元々、兄貴が甲斐性無しだから、あんな奴らに頭を下げにゃならんのだろう!」
「なんだと!」
十頭社中を治める十人兄姉の長男にして、十頭社中の一番頭である大頭とぼろん坊が言い争いをしている。
「止めろよ、笛吹姉が死んだんだぞ」
二人の間に、六番頭で四男である天鳳が割って入った。同じく五男の大鳳と共に、表向きは会津力士隊に所属している巨漢である。
「これで政府を転覆させる計画は、緒戦で頓挫だな」
「大体、笛吹姉だけに負担を掛けているのが気に入らなかったんだ。感染者を操れるのが、笛吹姉しかいないとか…計画の見通しが杜撰過ぎるぜ」と、二番頭で次男の煌奉。
「現場を知らない頭でっかちの考えだからな、どこぞにしわ寄せが行くのは必定」と、計画の立案者である大頭への皮肉たっぷりに、ぼろん坊が言った。
「止めなさいよ、こんな時に」仲裁に入る七番頭の次女、香月。
この騒ぎに加わらず加わらない者もいた。部屋の隅に一人離れて天井の一点を見つめている、与一と瓜二つの顔を持つ十頭社中の末弟、十番頭にして総帥の十騎男である。
そんな十騎男に声を掛ける着乱れた和服姿が妖艶な三女の菖蒲。
「どうしたんだい? 十騎男」
十騎男、問いには答えずブツブツと呟く。
「…あいつ殺す…生きてやがった…しかも笛吹姉を…殺す」
菖蒲は、十騎男の頭を撫でて微笑む。
「そうだねぇ。やっぱ殺んなきゃいけないねぇ。十騎男は二人も要らないからねぇ」と、幼子をあやすように言った。
部屋の中央では、兄姉喧嘩という名の幹部会議が続いている。
十頭社中が掲げる唯一無二の社是、それは『会津藩の再興と開府』である。
この組織が出来上がった経緯は、文久二年八月一日の会津藩藩主である松平容保が京都守護職に就任したことに始まる。京都守護職とは、幕末期、治安が悪化した京都の治安を守るために設けられた江戸幕府の役職である。
容保は赴任するや、年間十四万両という莫大な資金を投入し、新撰組など新たな治安部隊を設置するなどして京都の治安を回復していった。
だが、その一方で、京都では長州藩の台頭が著しくなっていた。元来勤王思想が強かった長州藩は、江戸時代の初期から朝廷への多大な支援を行っており、見返りとして大きな発言権を有し、この頃になると朝廷に無断で「討幕の密勅」と称する偽勅を乱発するなど目に余る所業が横行し、時の孝明天皇は手を焼いていた。
それまで朝廷との縁故に乏しい会津藩であったが、容保は京都守護職に就いた機会を逃さず、孝明天皇の長州に対する御心を汲み、朝廷から長州派を一掃するのだった。
こうして、京都の治安回復と長州派の排除を成し遂げた容保に対して、孝明天皇は特段の信任を置くようになり、文久三年には、御宸翰(注:天皇直筆の手紙)と#御製_ぎょせい__#(注:天皇の和歌)を下賜された。
一大名が天皇から御宸翰と御製を賜るのは異例のことであり、特に御製の内容は、
『たやすからざる世に 武士の忠誠の心をよろこびてよめる
和らくも たけき心も相生の まつの落葉の あらす栄へん
武士と心あはして巌をも 貫きてまし 世々の思ひて』
と、会津藩が天皇から治世の信任を受けたとも解釈できるものだった。
尊皇攘夷が主流となりつつある時世である。討幕がなされた暁には、徳川家に変わって天下を治めるのは我等であると、会津藩の誰もが息巻くのは当然の事だった。
そして慶応二年、孝明天皇は暗殺の疑義の中、崩御した。
その真相は、結局判らなかったが、これにより息を吹き返すことになった長州は、明治天皇が即位する前に偽勅を出し、会津藩を朝敵に仕立てあげるのだった。
慶応三年十月十四日の大政奉還、続く慶応四年三月十一日の江戸城無血開城にともない、徳川慶喜が水戸で謹慎すると、薩摩藩・長州藩を中心とした新政府の矛先は、先に朝敵の宣告を受けていた会津藩に向けられる。
会津藩は、理不尽な濡れ衣と一層態度を硬化させ、新政府の通達に対して出頭せず、謝罪も拒否する回答書を送りつけたのだった。
そしてついに、新政府の鎮撫使(注:諸国の治安巡察官)である世良修蔵が、会津藩の朝敵赦免を嘆願していた奥羽列藩同盟の一つである仙台藩藩士によって殺害された事件から、一気に戦争へと突入していった。後に戊辰戦争として終決をみる会津戦争である。
会津藩は若松城に篭城し、少数の独立部隊による城外での遊撃戦を続け抵抗していたが、頼みとしていた米沢藩をはじめとする同盟諸藩の降伏が相次ぎ次第に孤立していった。
この圧倒的な戦況の不利を見て、藩主容保に降伏を進めたのが西郷頼母であった。
会津藩家老こと西郷頼母。彼こそが十頭社中勃興の祖なのだ。
西郷氏の出自は、松平氏を主君として代々従った家臣である三河譜代であり、保科氏の血縁でもあった。また、会津松平家とは縁が深かった。会津松平家の祖である保科正之は徳川秀忠の四男であり、秀忠の母は西郷氏であるからだ。
しかしながら、保科家は元々甲斐武田家の家臣であって、武田信玄の次女である見性院の縁から保科正之を託された養子に過ぎず、家格としては、三河譜代で将軍家外戚でもある西郷家の方がずっと高い。
しかも、そもそも容保自身が保科家の養子であり、藩祖保科正之も保科家の血筋ではないとなれば、本当なら自分の方が本家筋、即ち、会津藩の正当な継承者であるとの想いを頼母は内心強く秘めていた。
また、会津藩は武田家の血脈と縁が深い。
武田信玄が亡くなった翌年、会津の蘆名氏に協力を求めるため、武田国継が信玄の遺書を持って遣わされた。しかし、織田信長と徳川家康によって甲斐武田氏が滅ぼされてしまい、武田氏の血脈を残すために武田国継はそのまま会津に留まり、会津の蘆名盛氏に地頭として仕えたのだった。
こうして、家老という地位に就いた頼母が、保科氏本流との自負と、元来、武田家の血脈である血が騒いだのであろう、一つの野心が芽生える事となる。
それこそが、戦国の世からの武田家の悲願、果たせぬ夢だった天下統一。その代位として『会津幕府』を開く事であった。
頼母は、その遠大長期な計画の第一歩として、荒事を担う実行部隊の組織に着手する。全国津々浦々から養子を引き取ったのだ。それも、狼に攫われ育てられていた女児や、周囲から恐れられるほどの巨漢、歩くよりも早く和算を解いた神童など、何らかの訳あり、それ故に秀でた能力を持つ子らであった。
その数、九人。
更に、もう一人。武田家と最も縁深い血筋である武田惣右衛門の子たる武田惣吉に、文武に優れた血統から厳選した側室をあてがい嫡子をもうけさせた。何故なら、先の九人が頂点に頂く実行部隊の長として、何より来るべき会津開幕府の将に治まるべき正当な血統を持つ人間が必要だったからである。
そしてついに、天下統一を正当なものとする決定的な後ろ盾、御宸翰と御製をも手に入れた今、頼母の野望、否、その姿を借りた、平安の末期より連綿として天下統一を夢見た甲斐源氏武田家の執念が、今度こそ数百年の時空を貫き現出しようとしていた。
だがしかし、人世とは、歴史とは、儘ならぬものである。
頼母の夢半ばにして、会津は江戸幕府の滅亡とその運命を同じくしようとしていた。しかも、幕府の無血とは程遠い、流血の最後である。
その趨勢を見極めた時、会津藩家老として頼母は一人腹を決め、一通の手紙を認めた。
宛てた先は十人の養子、その長兄である。
手紙には会津藩が没した後の指示と共に二式の書簡が同梱されていた。
書簡の一つには、表紙に『十頭社中 発起の手筈』とあった。
もう一つは、孝明天皇から下賜された御宸翰と御製である。
その書簡が、頼母の手を離れた直後、明治元年九月二十二日、会津藩は新政府軍に降伏した。
東京府下。
南千束は洗足池のほとり、のどかな深山の趣のある自然の中に建つ茅葺き屋根の一軒家が佇んでいる。
表札は掛かっていないが、人が生活している気配がある。
居間しかない小さな家屋の縁側で、二人の男が会談していた。
「静かだな。隠居するには良い佇まいだ」
「あくまでも保養ですよ。人間、休息は必要でしょ。ここも借家です。まあ、そのうち本格的に土地でも探して、別宅を建てようと思ってますが」
声の主は三条実美ともう一人、この家の住人、勝安芳である。
勝は、鳥羽・伏見の戦いで幕府側が敗れた後、徳川慶喜の名代として官軍の参謀である西郷隆盛と会見する為、官軍の本陣が置かれた池上本門寺に赴いた事がある。道中通り掛かった洗足池ほとりの茶屋で休息したのだが、その際、この辺りをいたく気に入り、その後も保養地として度々逗留していた。
「それで今日は、その寂しい土地まで、しかもお一人でご足労頂くとは、さぞや重大な御用がお有りなのでしょうな?」
飄々としている勝に対して、三条は刺すような視線を向けた。
「羅刹を…坂本を見た者がいる。しかも、グラバーの周辺でだ」
坂本とは、坂本龍馬の事である。しかし、坂本は死んでいるのではなかったか? と、疑問を呈する余人は、幸いその場にはいなかった。
「ほう、で、それが私と?」と、勝。
「とぼけるな、今の坂本が御主の指示無しに動くか」と、三条。
茶を啜る勝。
「うーん、そうでもないんですが、まっ、いいでしょ。十頭社中です」
「それなら案ずるに及ばん。妖刀事件の首謀者として関係者全員の逮捕を指示した。戮も使ってな」
「勿論知ってます。だからです。下手したら全滅しますよ、戮。余計な事だと思いましたが、手駒には発破を掛けておきました。何たって、戮は私の子供みたいなものですからね、全滅なんて忍びない」
「発破?」
「秘密です」
「なっ」
好きなように話しを混ぜ返され、いい加減痺れを切らした三条の機先を制するように勝が言った。
「十頭は、あれはいけません。国の屋台骨を揺るがします。物事には、特に政には大儀が必要ですが、彼奴等はそれに関して最も有効な切り札を持っている。孝明天皇の御宸翰と御製だけは、あれだけは、決して表に出してはなりません。あなた方、何より現政府の正当性、存続の根幹に拘わります。戮は、この為に組織したと云っても過言ではない。十頭を葬るための秘匿組織なのです。今までの治安活動は組織存続の方便に過ぎません」
「何が秘匿だ。人の口には戸は立てられん。戮の存在なぞ、日本国中、津々浦々まで知れ渡っとるわ」
「かまいません。歴史とは後世に残ってこその歴史です。どれほど今生で民草に流布しようとも、書き物に残ってなければ、それは存在していないのです。だからこそ、戮の存在は一文字でさえも公式な記録に残してはいけません」
「それは徹底させている。安心しろ。だが十頭を滅して後、戮士達の処遇はどうするのだ」
「申し上げたでしょう。戮なんて組織は元より存在しない事となるのです。存在しない組織の連中など心配しようがない。ああ、野刃とかいう御禁制の刃物を所持している輩ならいますねぇ。咎人の処分なら、そちらで如何様にもなりましょう?」
「羅刹が…坂本が黙ってないと思うが」
「さあて、羅刹という名は知りませんな。それと坂本龍馬なら、もう死んでます。私が京都に墓も建てた」
三条は、勝の眼を真っ直ぐ見てから、庭に視線を外した。
「…世間では、幕末の志士などとおぬしらをもて囃して、だれが倒幕一番の功労者か論評する風潮もあるらしいが、少なくとも一番恐ろしいのは、おぬしだな」
結局、三条はそのまま帰京した。勝の真意を聞き出せないどころか、逆に戮の処遇に関して暗に指顧される始末だった。
与一は、明治四年の廃藩置県によって福島県となった元会津藩領の西光寺に向かっていた。十頭社中の中枢であり、その中核を成す十兄姉の居所であると警察の捜査で知れた場所である。
目的は只一つ、十頭社中の壊滅である。
警察などには犯人逮捕が原則の御触れであったが、戮士に対しては、生死は問わずの命が下っていた。
動員された戮士の数は十人以上であったが、戮という組織、そして戮士の性質上、全員で連携した団体行動を取る事はない。与えられた情報に沿って銘々が独断で命令を遂行するのである。
隠密行動かつ戮士の絶対数が少ない事も相まって、目的遂行のための戦闘は小規模なものが散発に行われ、大概は人目に付くことなく始まり、そして終わる。
戮士に単独行動をさせる主な理由はこれで、幕末の混乱時のように事が起きる度に大規模な軍事行動となれば、土地が荒れ、庶民の生活は疲弊し、結果、国力の低下を招く。そうなれば、何の為の治安維持か分からない。
このうして戮士総動員となった今回の任務だが、所持する野刃が改修中であるが故に、火夜が除外されている旨が与一の耳には届いており、与一は素直に安堵していた。
西光寺に着く。境内に人の気配はなかった。
与一は、山門から本堂へ向かう参道の途中、向かって左側に設置された禅堂に入ると、建物の壁に沿って並び設けられた単と呼ばれる僧侶一人一人が坐禅する場所を突っ切って、正面中央に安置された聖僧の坐像に進んだ。
像の裏には与えられた情報通りの地下へ続く階段が見つかった。
薄暗く、よく見えない階段を足の感覚頼りに駆け下りる。
現れた部屋は情報とは違っていた。すぐに十頭兄弟の居場が有るはずだった。が、そこには、置物一つ無い十畳ほどの小部屋があった。ただ、広さの割に天井の高さが異常で、三丈三尺程(約十メートル)はありそうだった。
小部屋の奥に扉が見える。恐らくそこが目的の部屋だろう。敵の本拠地なのである。得た情報にこれくらいの齟齬があるのは、むしろ当たり前である。
奥に進むべく小部屋にはいると、後の戸が勢い良く閉まった。
成る程、罠に嵌って閉じこめられたらしい。与一は、むしろ歓迎した。相手が向こうから接触してくれるという事だ。あちこち探し回る手間が省ける。
前方の戸が開き、大男が二人、戸口から姿を現した。
十頭の四男天鳳と五男大鳳である。
更に、その背後から次女香月と六男勝樹が現れた。別に隠れる意図があったわけではなく、天鳳達が際立った巨体だったせいで物理的に彼らの身体に被ってしまったのだ。それでも、次女と五男の体格は日本人の平均し比してもかなり小柄には違いなかった。それは、何か意図的なものさえ感じる大きさの対比ではあった。
「戮士は単独行動だから知らないだろう。お前以外の戮士は、我ら十頭兄姉が既に葬っているよ。残りは、お前一人だ」勝樹が言った。
「しかも、お前は自分の実力で此処まで辿り着いたと思っているかも知れないけど、此処に引き入れたのは、我らが意図した事よ」香月が継いだ。
「此処までの道中、我ら兄姉の誰とも当たらなかっただろ」と天鳳と大鳳が異様なまでに声を同期させて言った。その二人の後から新たな声の主が現れる。
「お前には、笛吹の恨みを返さねばならないからな」次男の煌奉である。
「わざわざ御招待いただくとは感謝の極みだな。仕事が捗るぜ」与一は皮肉の意識もなくそう切り出すと「十頭社中の責任者及びその構成員は全て、国家転覆を画策した罪により身柄を拘束する。尚、抵抗した場合、その生死は戮の紋章に委ねられていると知れ」神斬りに手を掛け、戮の紋章を五人にかざして口上した。
「ふふ」煌奉が苦笑する。「まったく、そのへらへらした顔つき以外は背格好から声までそっくりだな。あいつが頭に来るはずだ」
「何の事だ? あいつとは?」
特に興味が湧いた訳ではない。だが公儀の捕り物である。不明点は潰しておきたい。与一は問うた。
「ふふふ」今度は応えない煌奉。煽るだけ煽って、いざ相手が食いついたら答えを言わず相手を焦らす。それを優越と感じる稚拙な性格らしい。「どうせここで死ぬんだ。知る必要はないだろう」
他の四兄姉も笑っていた。その事実を与一が知らない事がよほど快感らしい。
与一は、一息吸って神斬りを構え直した。
「その言葉、戮士対する脅迫と断じて異存ないな! 戮の権限において、人斬りを執行する!」最後通牒を告げる。人斬り鑑札を持つ戮士が、権利の行使に際して課せられた唯一の義務であった。
一番若い勝樹が、短絡に反応した。
「政府の犬となって人殺し三昧のお前に、我らの大儀が汚されてたまるか!」と与一に飛びかかる。得物は変哲のない短刀だった。
与一は、その短刀を神斬りで受け、難なく挟み切る。
素早く後退する勝樹。
代わって、煌奉がずいと一歩前に出た。通常より長めで肉厚の打刀を八相に構えている。しかも、通常の構えより刀を後ろに倒して刀の切っ先を見せないようにしている。独特の構えが技量の高さを誇示していた。
煌奉が、正面から打ち込んで来る。
与一が、神斬りで刃を受けようとした瞬間、煌奉の頭上から何かが飛び込んで来て、与一の行動を阻んだ。攻撃の手を休めない煌奉を躱しながら、その物体を視界の端で追う。
上から落ちてきた物体は、床で機械的に跳ね返るのではなく、与一の右後方に着地。そのまま前方に跳んで壁を駆け上がると、自分が飛び降りてきた方向へと巻き戻るように跳び上がった。
与一も目端だったので一瞬しか確認出来なかったのだが、その物体は間違いなく人間だった。香月のようにも見えたが、確認しようにも、煌奉が思いの外の手練れで、神斬りで刃を挟めないような太刀筋で斬りつけてくる。峰の部分で受け凌ぐのがやっとで、気を抜けば一瞬で必殺の太刀筋を浴びそうだった。
しかも、煌奉ばかりに気を取られる訳には行かないのだ。先刻の通り、他の四人の誰かが、隙をついては襲いかかってくる。
気を配るにも室内が薄暗く視認するのが難しい。特に天井は真っ暗である。と、思っていた矢先に、香月と勝樹が与一の両脇に忽然と現れた。またしても頭上から飛び降りてきたらしく、しかも殆ど着地音がしなかったので、瞬間移動してきたように感じた。恐るべき身の軽さである。
両脇から短刀で突いてくる香月と勝樹。同時に正面上段から打ち下ろしてきた煌奉の刃。三方からの同時攻撃だったが、後方へと飛び退いて避けた。部屋の角に追い込まれる格好になったが、両側を壁に挟まれた事で、逆に相手の動きも制限されたのか、それ以上攻めてはこなかった。
次第に暗さにも眼が慣れてくる。なんとか室内の状況が確認できるようになる。
部屋の中央に天鳳と大鳳が並んで立っている。
その両脇、少し離れた壁際に香月と勝樹が居て、四人は横一線に並んでいる。
四人の前方には煌奉が構えていた。
それが、彼らの攻撃陣形の基本らしい。
しかし、この配置が何を意味しているのか。
暫く静観したが、どうも、部屋の角にいたのでは攻撃してくれないらしい。さすがに埒が明かないので、相手の攻撃方法を探るため、与一は敢えて一歩前へ出た。
空かさず、香月と勝樹が動く。
今度は頭上から攻撃してくる術が見て取れた。
中央に陣取っている天鳳と大鳳を踏み台にして跳び上がり、狭く切り立っているこの部屋の壁を方向を変えるための蹴り板に利用する事で、部屋の中を立体的に動き回っているのだ。踏み台代わりなっている天鳳と大鳳も、それだけではなく方向転換に手を貸しているので、二人の動きは更に複雑になっていた。
正面から正攻法の剣撃で攻撃してくる煌奉と正面以外の全方位から自由自在に攻撃してくる香月と勝樹。
更に、この三人から逃れようと煌奉の背後に回り込もうとすれば、必然的に天鳳と大鳳の眼前に飛び出す格好となり、彼等の張り手が繰り出されるのだろう。素手の攻撃だが現役力士の張り手である。刃物よりも重い致命傷となるに違いない。
この狭い部屋を利用した一分の隙もない連携攻撃。それを寝食を共にした兄妹の息のあった呼吸で熟すのである。何とか致命傷は受けずに凌ぎ続けているが、身体のあちこちに痛みを感じていた。恐らく傍目には、傷だらけなのだろうな。と、与一は戦況を分析した。
余裕のある内に反撃しなくては、このまま押し切られてしまう。地の利、数の優位、その全てが敵にあるのだ。
与一は、体勢を立て直すため、部屋の角に一時避難した。
しかし今回は、空中戦担当だった姉弟が、地に足を下ろして正面から短刀の連携連撃で攻撃してきた。壁に邪魔されて長い打刀では戦い難い煌奉に代わって、空中戦だけではないところを披露するのだった。
もはや部屋の角も攻撃の死角ではない。避難区域にはならない事を与一は知った。
「最初の静観は、挨拶代わりのお目溢しか」
いよいよ退路が無くなった与一は、天井を見上げて深く深呼吸した。
一方的な守勢の間に、しかし、反撃の道筋は見据えていたのだった。細い道だが掛けるしかない。
意を決して前に出る。
煌奉の一撃を神斬りの片方で受ける。定石通り上方から攻撃してきた香月に、片刃のもう一方を投げつける。が、香月は難無く避け、外れた神斬りは天井の闇に消えた。
「馬鹿め、唯でさえ劣勢なものを、武器を減じてどうする」煌奉が言葉と共に自分の刀を横に払う。
それを避け、前方に、つまり、煌奉の横を抜けその背後に頭から前屈みに跳ぶ与一。でんぐり返りをして着地した場所は、天鳳の正面、すぐに手が届く至近距離である。
「何度繰り返せば気が済…」振り向きざまの優越感に満ちた煌奉の言葉が途切れた。
天井から血が降っている。
いや、煌奉が見上げると、神斬りの刺さった天鳳の脳天から血が吹き出していた。
先刻、香月に向かって投げた神斬りは、天井に刺さらず、鋭い放物線を描いて落下、天鳳の脳天に突き刺さったのだ。与一は、最初から香月でなく天方を狙っていたのだった。この部屋特有の高い天井だからこその芸当だった。
「きゃっ」
丁度そこに壁を蹴って戻ってきた香月が、足場にしようとした天鳳の肩が血糊にまみれていたので滑り落ちてきた。
体勢を立て直せないまま、目の前に落ちてくる香月の喉笛を切り裂く与一。香月は声を上げる間もなく、床に落ちた時には絶命していた。
今までの優勢から一転、瞬く間に兄妹が二人倒された事を受け入れられず、大鳳は硬直していた。
与一は、その大鳳の身体を駆け上る。大鳳の肩に乗っていた勝樹を狙ったのだ。
「きさまぁぁぁぁ」大鳳と違い、逆に激昂にしている勝樹は闇雲に反撃してくる。
ガキッ。
大鳳の眼前で、与一の神斬りと勝樹の短刀の刃が合わさった。
挟み切らずとも、そこは野刃。片刃だけでも、神斬りは刃の薄い短刀程度なら断ち切る事が出来る。勝樹の短刀は真っ二つになり、受ける物が無くなった神斬りの刃は、そのまま驚愕に目を見開いた勝樹の眉間に刺さった。
与一は、棒立ちの大鳳から天鳳へと飛び移り、脳天に刺さっている神斬りの片割れを回収した。
崩れ落ちる天鳳と共に床に降りる与一。足下が血糊でぬめぬめしていた。薄暗いので視認は出来ないが、床一面血の海だろう。
煌奉と対峙した。
「まだやるかい」
「次男として、この場の長として、妹弟から流れでた血には責任がある」
「そうか」
お互いに、自らの技の基本となる型で構える与一と煌奉。
互いの間合いを計る。結果、煌奉が先に動いた。
突きだった。
通常の突きでは届かない遠い間合いから、更に片手で、高速で、刀を突きだした。
与一は、突き出された刀を鋏形態の神斬りで挟まずに、刃を開いて受け、そのまま上に持ち上げる事により、刀の切っ先を上方に逸らした。
溝の上を滑るように神斬りの刃元を滑った刀は、持ち主の煌奉を万歳させる格好になる。結果、至近距離で顔を付き合わせる与一と煌奉。
与一が力を入れて握ると神斬りが煌奉の刀を鍔の間際、刃の根本から断ち斬る。
お互いに視線を切らさず、丸腰となった煌奉の胸に神斬りを突き立てる与一。
一瞬、息を詰まらせた煌奉は、それでも力強い声で入った。
「大鳳の命は助けてやってくれ」
「ほう、兄弟姉妹、血の掟でもあって、全員運命を共にするのかと思ったが」
「しょせんは義理だ。血の繋がりはない。本来、大鳳は心根の優しい奴だ。助けてやってくれ」
与一は大鳳を一瞥した。その巨体が、今は何処にあるのかと云わんばかりに小さくうずくまって震えている。
「わかった」与一は、煌奉の胸から神斬りを抜いて言った。
仰向けに倒れる煌奉。目を瞑ったまま呟いた。
「さすが、十頭最強を誇る男の片割れ。見事であった」
また、意味深な事を口走る。与一は問い質そうとしたが、煌奉が先に言った。
「じきに、相見えるさ…その目で確かめろ」
そこで煌奉は事切れた。
大鳳に確かめようにも、話しどころか、暫くは人として使いものになりそうにない。
仕方なく任務に戻る与一。
そう、まだ終わりではないのだ。
決戦の場となった部屋の入り口の対面の壁に設えられた、更に奥へと続く戸を蹴破って進む。
全身の痛みと出血による倦怠感から、もうじき動けなくなる事を自覚しながら足を踏み入れた先は、小さな道場くらいの空間だった。
十頭社中の、真の本拠だったはずのその場所は既にもぬけの殻、何もない。誰もいない。
残りの兄姉、長兄の大頭、三男ぼろん坊、三女菖蒲、そして、末子にて十頭社中の総帥、十騎男は何処へかと移動した後だった。
結局、残った五人は殿軍だったというわけだ。
それでも、薄明かりを頼りに辺りを見回す。僅かに半壊した神棚だけが正面の壁に残っていた。
その神棚の下に、ぼろぼろの書簡が落ちている。それには、『十頭社中 発起の手筈』と書かれていた。
与一は、その書簡を拾い上げながら辺りを見回した。
改めて、部屋の中には棚一つ無く、がらんとしている事を確認する。
隠し棚等がないか壁を調べてみたが、その気配もない。つまり、この場所に他に書類が存在する可能性はないということだった。
それは、今回の任務にて十頭社中の壊滅と平行して、いや、それ以上に優先せよと命ぜられていた任務、御宸翰と御製の回収が果たせない事を意味していた。
与一は、今回の件が、存外に長引く予感を認識した。
それに、あの煌奉の言葉。いったい自分は何と対峙するというのだ。
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