転生したら人気アイドルグループの美人マネージャーになって百合百合しい展開に悩まされている件

きんちゃん

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桜木舞奈

27話 ちょっと!担当替えなんて聞いてないんですけど!

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「じゃ、病気で休んでいた原口ちゃんが今日から希の担当マネージャーとして復帰するから!麻衣は今までお疲れ様ね!」

「え?は?へ?ほ?……どういうことですか?」

 全国ツアーも大成功に終わって数日経ったある日、社長に呼び出されると急にそう告げられた。
 ……社長が何を言っているのかはまるで入ってこなかったが、社長の隣に立っているメガネを掛けた落ち着いた雰囲気の女性が微笑んでいるのを見て、事態は何となく理解出来た。

「原口です。すみません今までご苦労をおかけして。小田嶋さんは入社したばかりだったのに、黒木の担当だなんて大変でしたねぇ」

「……いや、そんな!全然大変だなんて思ったこと……なくはないですけど」

「私は元々黒木の担当をしておりましたので、もう後はお任せいただいて大丈夫ですので」

 社長と原口さんとかいう元々のマネージャーを名乗る女性が目を合わせ、軽く頷く。
 ……まあ、名乗るっていうか実際そうだったのだろうけど。
 ……でも待って、待ってくれ!そんなもう決定事項みたいにして言わないでくれよ!

「……でも、ほら、こういうことは希さん本人の意向も聞いて決めた方が良いんじゃないでしょうかね?」

 ようやく思い付いた反撃はその程度のものだった。
 
「たしかにそれもそうね……。あ、希!ちょうどいい所に来たわね!」

 ……え、ちょうどいい所に来てるのかよ!

「原口ちゃんが復帰したから、また希についてもらうから。良いわよね?」

「あ、オッケーです。……原口さん!久しぶりです。もう体調は良いんですか?」

「ええ、おかげさまで。黒木さん、またよろしくお願いしますね!」

 どこからどう見ても異論を挟む余地はなさそうだった。
 ……っていうか、え?黒木希に俺は見えてないのか?転生どころか透明人間になるスキルまで気付かないうちに獲得してたのか?
 原口マネージャーとの久々の会話は盛り上がっており、俺だけが明らかに蚊帳の外だった。
  
 ……透明人間スキルを本当に獲得したのか試してみようと思い、そろそろと俺はその場から遠ざかってみた。だが2,3歩進んでみたところで見破られてしまった。

「もう!麻衣ちゃん、そんなスネないでよ~、今までありがとうね!」

「……希さん、うう」

 反応してくれた割に希の挨拶は実にあっさりとしたものだったが、俺は泣きそうになっていた。
 チョロい、我ながら実にチョロい。
 感極まって抱きつきに行こうかと一歩を踏み出したところで、希は再び原口新マネージャーと向き合い、仕事の話を始めた。



「大丈夫よ。希は本当に麻衣に感謝してるわ。この場であなたにベッタリになってしまったらこれから一緒に仕事をしてゆく原口ちゃんに悪いでしょ?希も気を遣っているのよ。……それに、別に2人ともウチの事務所を辞めるわけじゃないんだから、これからも何度も顔を合わせるわよ」

 場所を社長室に移すと、社長がそっと励ましてくれた。
 仕事が出来る女はやはり人の心情の機微に敏いようだ。
 このタイミングでそれを言われてしまったら納得するしかない。ちくしょう。

「あ、でも……黒木さんのマネージャーを外れるってことは、私は事務仕事に専念するってことですかね?」

 希の担当を外れたことはショックだったが、俺は次のことを考えて気持ちを切り替えていた。
 きっとそうだ!
 これらは裏方として『WISHのために自分を捧げる』ことになるのだ。これからは色々な現場に出向き周囲の人々の視線を集めたり、男性スタッフとの接触を過剰に恐れたりする必要もなくなるのだ!
 そうなのだ!本来俺は事務仕事をやるつもりでこの事務所に入ったのだ。それを見越して大学時代には色々な資格まで取得したのだった。
 そうした意図も社長は覚えていてくれて今回希の担当を外れることになったのだ。うん、間違いない!

「やだ、もう!ウチのエースの些細な不調を見抜いて復活させたような優秀なマネージャーが、事務に回るなんてあるわけないじゃない?もう、麻衣ったら!」

 ……うん、ですよね。知ってましたよ。

「……じゃあ、私はまたマネージャーとして誰かを担当するってことですか?」

「うん、そうね。……あ、ちょうど今来たみたいだわ。舞奈、舞奈~!ちょっと来て!」

 社長は俺の向こうに誰かを見つけ、そちらに呼びかけた。
 俺もそれにつられ、後ろを振り返る。

 制服姿……WISHの制服ではなくて、学校のセーラー服姿の美少女がこちらにちょこちょこと駆けてきた。

「3期生の桜木舞奈さくらぎまいなちゃんね。舞奈、こちらがウチの社員の小田嶋麻衣さんね」

 これが桜木舞奈との初接触だった。

「初めまして、小田嶋麻衣です」

「桜木舞奈です!よろしくお願いします!!」

 舞奈は舞台上での挨拶のようにアイドルらしい自己紹介をしてくれた。
 少しの照れと初々しさが、とても可愛くて思わず抱きしめたくなった。
 黒木希は大人の女性としての魅力が強かったが、それに比べると桜木舞奈は……制服姿ということもあってか、とても若さを感じた。

「えっと、桜木さんは何歳ですか?」

「はい、17歳の高校2年生です!」

 そうだ!華のJKだ!アイドルの黄金年齢の17歳だ!
 子供から大人に芽吹かんとする、まさにその瞬間の美しさを舞奈からは感じられた。この年齢にしかない魅力というものが間違いなくある。

「じゃ、これからは舞奈のマネージャーとして麻衣が担当につくってことで、2人とも良いわね。また細かいことに関しては連絡するから」

 そう言い残すと、社長は自分の仕事に戻っていった。やはりどんな時も忙しそうだ。

 社長が去ると、舞奈と2人きりになった。
 舞奈は少し気まずそうにモジモジとしていた。多分本来は人見知りなのかもしれない。
 一応こちらが年長者なので、気を遣ってこちらから話し掛けた方が良いのかな、と思ったところで舞奈の方が口を開いた。

「でも小田嶋さん、さっき初めましてって言いましたけど……黒木さんの担当をしてる時に何回もすれ違ってます。それにメンバー同士の間で話題にもなってました。……すっごく可愛い人がマネージャーで入ってきたって」

「あ、そうでしたか!それは失礼しました」

 もちろんマネージャーの仕事に就く前からWISHのオタクだった俺は桜木舞奈のことも認識していたが、現場ですれ違ったことに関しては全く覚えていなかった。やはりそれだけ余裕がなかったのだろう。

「……それに、敬語はいいですよ。わたしの方が6歳も年下なんですし」
 
「そうですか?……じゃあ、そうさせてもらいますね」

 なんだか、めちゃくちゃ可愛い妹が出来たような感覚だった。


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