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第3話
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遠くから声が聞こえ、アルバートは自らヴィクターと名乗ったそいつを無視して馬を走らせた。
「あの死体らはどうするんだよ」
ヴィクターは彼の方に乗りながら言った。
「お前、よく落ちないな」
アルバートは横目で彼を見て笑った。
(こいつ…俺の話を聞かないなんて…)
ヴィクターが不貞腐れた様子を見せた時、アルバートは背の高い草むらをかき分けた。見ればそこには1人の娘がしゃがみこんでいた。彼女の周りにはオオカミが歯をむき出してゆっくりと近づいている。集団の中の1匹が飛びかかった。
ローズはビクッと手で顔を覆い身を小さくした。
(ダメ…死んじゃう)
そう思った時銃声音が当たりを大きく包んだ。恐る恐る目を開けると周りは暗く感じられたが、怪我をしたわけではなさそうだった。パサリとかに家を頭にかけられ
「そこでじっとしてろ」と声が聞こえた。ローズは言われた通りに掛けられた彼の上着を掴みぎゅっと目を閉じた。獣たちの悲鳴がかすかに聞こえる。やがてあたりが静かになった時、そっと目を開けた。優しく笑う若い男性がそこにはいた。
「もう大丈夫だ」
その言葉にほっとしてローズは彼に抱きついた。(なんだか懐かしい匂いがする)
やがてハッと我に返り彼女は慌てて身を離し照れた表情で前髪を触りながらお礼を言った。
「なぜこんな所に?」と彼は聞いた。
「気分転換にって散歩してたの。この森を歩くの好きなの…。小さい頃よく行ってて懐かしくなっちゃって」
とモジモジしながら言った。アルバートはその言葉に辺りを見渡した。
「俺もよくこの森に来ていたな。今じゃ違う山へ狩りをしに行くから滅多に来なくなったけど…」
目の前の彼女を見ると俯いたままで何も言葉が出なそうだった。
「景色のいい場所へ走ろうか」
彼がそう言うとコクリとローズは頷き2人は馬に乗って走っていった。
夜になり、ローズはメイドの1人に紙を漉かせて貰いながら今日の出来事を話した。
「お嬢様、そんな素敵なことがあったの?羨ましいですわ」
「えぇ、守ってくれたの。それだけじゃないのよ…。なんて言うの…?…とっても優しかったわ」
彼女のその言葉と頬が赤くなるのを見てはメイドのルーシーは笑った。
「もう遅いですし、続きはまた明日お話しましょう。夜更かしはお肌に悪いですよ」
と彼女をベットまで連れていった。
「おやすみなさい」
ルーシーが出ていってもローズの心は落ち着かなかった。
「あぁ、夢みたい。夢なら覚めないで欲しいわ。とっても素敵な出会いだったの。…こんなにも胸がドキドキして落ち着かないわ…。きっと病気なんだわ……ルーシーに伝えないと…でもなんて?上手く伝えられないわ…」
そんなローズの声に呼応するかのように1人の妖精が姿を現した。頭には三角の青い帽子を被り青色のワンピースを着ていた。あの青い鳥が擬人化した姿だった。
「ローズマリー様、それは病気じゃないわ。きっと恋よ、あの方に恋をしたのだわ」
透き通った声を持つヴィクトリアの声にうっとりしながら
「これが恋なの?小説なお話に出てくる恋って…。あぁ、嬉しい。私もしてみたかったの」
と枕をギュッと抱きしめながら言った。
「今日はゆっくりおやすみ」
灯りは消され彼女の部屋は暗くなった。たが、彼女の胸につけられたネックレスは光り輝き、線を作り窓の外へと伸びていた。
「青い光…ううん……線だわ。やっと彼に会えるのね。切っても切り離せない私たちの関係…」
窓の外を眺め、ヴィクトリアは喜びの声を小さくだし頬杖をついていつまでも眺めていた。
「だから何度も言ってるだろう」
その頃アルバートは自室に戻り溜め込んでいた書類や手紙の山々を片付けていた。
「今日あの子に会ったのは俺のおかげとでも言いたげな口振りだな」
書類に目を通し一つ一つ仕分けていく。
「俺は忙しいんだ。そんなつまらない話はよせ」
と彼がため息をついていると、部屋のドアが開けられた。
「誰かいらっしゃるのですか?」
この屋敷の執事長だった。アルバートはハッとした表情をみせ「いいや、誰も」と答えた。
「独り言が大きいですね。誰もいらっしゃらないのに。…きっとおつかれでございましょう。今日は夜も遅いのでゆっくりおやすみくださいませ」
とさっきまで警戒していた表情は消え去り、にこやかに笑うと、机の上にコーヒーと軽いお菓子を置いて出ていった。
「だから俺はお前以外見えないんだ。声がでかいっていつも言ってるだろ」
とさっきまで話していたヴィクターはヤレヤレといった仕草をみせ執事長が置いていったクッキーに手を伸ばした。それを祓いながら
「随分と偉そうだな」
とアルバートは言った。
「俺の姿があちこちで目撃された方が問題になるだろ」
「まあな」
アルバートは手紙を書くためにペンを取り出した。そんな彼を見て「否定しないのか」とムッとした顔をしながらヴィクターはクッキーを全部食べてやろうと彼の隙を見計らって手を伸ばした。コーヒーの入ったカップにもたれ掛かりながらふとアルバートの手首を見れば腕輪に付いた石が光り輝いていた。
(やっぱり彼女はあそこにいたんだ。気づいていないだろうけど、この生意気でケチで意地悪なご主人も出会ったんだ)
ヴィクターは嬉しそうに残りのクッキーを頬張った。
「あの死体らはどうするんだよ」
ヴィクターは彼の方に乗りながら言った。
「お前、よく落ちないな」
アルバートは横目で彼を見て笑った。
(こいつ…俺の話を聞かないなんて…)
ヴィクターが不貞腐れた様子を見せた時、アルバートは背の高い草むらをかき分けた。見ればそこには1人の娘がしゃがみこんでいた。彼女の周りにはオオカミが歯をむき出してゆっくりと近づいている。集団の中の1匹が飛びかかった。
ローズはビクッと手で顔を覆い身を小さくした。
(ダメ…死んじゃう)
そう思った時銃声音が当たりを大きく包んだ。恐る恐る目を開けると周りは暗く感じられたが、怪我をしたわけではなさそうだった。パサリとかに家を頭にかけられ
「そこでじっとしてろ」と声が聞こえた。ローズは言われた通りに掛けられた彼の上着を掴みぎゅっと目を閉じた。獣たちの悲鳴がかすかに聞こえる。やがてあたりが静かになった時、そっと目を開けた。優しく笑う若い男性がそこにはいた。
「もう大丈夫だ」
その言葉にほっとしてローズは彼に抱きついた。(なんだか懐かしい匂いがする)
やがてハッと我に返り彼女は慌てて身を離し照れた表情で前髪を触りながらお礼を言った。
「なぜこんな所に?」と彼は聞いた。
「気分転換にって散歩してたの。この森を歩くの好きなの…。小さい頃よく行ってて懐かしくなっちゃって」
とモジモジしながら言った。アルバートはその言葉に辺りを見渡した。
「俺もよくこの森に来ていたな。今じゃ違う山へ狩りをしに行くから滅多に来なくなったけど…」
目の前の彼女を見ると俯いたままで何も言葉が出なそうだった。
「景色のいい場所へ走ろうか」
彼がそう言うとコクリとローズは頷き2人は馬に乗って走っていった。
夜になり、ローズはメイドの1人に紙を漉かせて貰いながら今日の出来事を話した。
「お嬢様、そんな素敵なことがあったの?羨ましいですわ」
「えぇ、守ってくれたの。それだけじゃないのよ…。なんて言うの…?…とっても優しかったわ」
彼女のその言葉と頬が赤くなるのを見てはメイドのルーシーは笑った。
「もう遅いですし、続きはまた明日お話しましょう。夜更かしはお肌に悪いですよ」
と彼女をベットまで連れていった。
「おやすみなさい」
ルーシーが出ていってもローズの心は落ち着かなかった。
「あぁ、夢みたい。夢なら覚めないで欲しいわ。とっても素敵な出会いだったの。…こんなにも胸がドキドキして落ち着かないわ…。きっと病気なんだわ……ルーシーに伝えないと…でもなんて?上手く伝えられないわ…」
そんなローズの声に呼応するかのように1人の妖精が姿を現した。頭には三角の青い帽子を被り青色のワンピースを着ていた。あの青い鳥が擬人化した姿だった。
「ローズマリー様、それは病気じゃないわ。きっと恋よ、あの方に恋をしたのだわ」
透き通った声を持つヴィクトリアの声にうっとりしながら
「これが恋なの?小説なお話に出てくる恋って…。あぁ、嬉しい。私もしてみたかったの」
と枕をギュッと抱きしめながら言った。
「今日はゆっくりおやすみ」
灯りは消され彼女の部屋は暗くなった。たが、彼女の胸につけられたネックレスは光り輝き、線を作り窓の外へと伸びていた。
「青い光…ううん……線だわ。やっと彼に会えるのね。切っても切り離せない私たちの関係…」
窓の外を眺め、ヴィクトリアは喜びの声を小さくだし頬杖をついていつまでも眺めていた。
「だから何度も言ってるだろう」
その頃アルバートは自室に戻り溜め込んでいた書類や手紙の山々を片付けていた。
「今日あの子に会ったのは俺のおかげとでも言いたげな口振りだな」
書類に目を通し一つ一つ仕分けていく。
「俺は忙しいんだ。そんなつまらない話はよせ」
と彼がため息をついていると、部屋のドアが開けられた。
「誰かいらっしゃるのですか?」
この屋敷の執事長だった。アルバートはハッとした表情をみせ「いいや、誰も」と答えた。
「独り言が大きいですね。誰もいらっしゃらないのに。…きっとおつかれでございましょう。今日は夜も遅いのでゆっくりおやすみくださいませ」
とさっきまで警戒していた表情は消え去り、にこやかに笑うと、机の上にコーヒーと軽いお菓子を置いて出ていった。
「だから俺はお前以外見えないんだ。声がでかいっていつも言ってるだろ」
とさっきまで話していたヴィクターはヤレヤレといった仕草をみせ執事長が置いていったクッキーに手を伸ばした。それを祓いながら
「随分と偉そうだな」
とアルバートは言った。
「俺の姿があちこちで目撃された方が問題になるだろ」
「まあな」
アルバートは手紙を書くためにペンを取り出した。そんな彼を見て「否定しないのか」とムッとした顔をしながらヴィクターはクッキーを全部食べてやろうと彼の隙を見計らって手を伸ばした。コーヒーの入ったカップにもたれ掛かりながらふとアルバートの手首を見れば腕輪に付いた石が光り輝いていた。
(やっぱり彼女はあそこにいたんだ。気づいていないだろうけど、この生意気でケチで意地悪なご主人も出会ったんだ)
ヴィクターは嬉しそうに残りのクッキーを頬張った。
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