種の期限

ながい としゆき

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三日目

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 総理大臣が予見した通り、天皇陛下の元に孝明天皇が現れたのとほぼ同時刻に、各国首脳に近しい人物の元にも神の意思を告げる人物が現れ、首脳に伝えるようにと告げていた。
 しかし、各国の対応はバラバラであった。
「本当に地球再生のために、絶滅させる一種族を一年以内に決めなければならないとは・・・」
と、頭を抱える首脳が多かったが、
「そんな幻に動揺していて国政が務まるか!」
と、頑なになる首脳もいたし、中には、敵対国の陰謀であると決め付け、情報を伝えてきた者とその家族をスパイ容疑で拘束し、極秘裏に処刑した国もあった。
 天界から地上の様子を見ていた神々は、大きく落胆した。
「やはり、心の目を閉じている者達には伝わらないのだろうか・・・」
「目に見えないものを、信じない者達だからといって、全員が心に感じないとは限らない。まずは水面(みなも)に波紋を広げたのだ。もう少し様子を見るとしよう」
 神々は、それぞれの言葉で、地上に対して思いが届くよう祈った。
 地上では、神々の想いを知ってか知らずか、生き残りをかけての駆け引き、情報戦が国と国との間で行なわれた。
 ある国では神に好かれるために国を挙げて一心に祈り続け、ある国では民族同士の紛争を止めて力を合わせて生き残りを図り、ある国では表向きには首脳会談という場を作り、絶滅させる国・民族を決めるための協議がされるなどの動きがみられるようになった。
 そして、連日の電話会談や閣僚級の会議などでの反応から、お互いの胸の内の探り合いが行なわれた。
 政府の動きに、まず野党が疑念を抱くようになった。
「最近の官邸の慌ただしさは、雹による被災の問題だけではなく、何かを我々に隠しているとしか思えない。これは国民を欺いている背任行為に他ならない。今こそ結束して野党連合を作り、与党を打倒しようではないか!」
しかし、今回の閣僚には箝口令が敷かれており、誰一人として与党仲間にも漏らす者はいなかったし、野党の挑発に乗ることはなかった。仮に挑発に乗って話したとしても誰も信じる者などいないことは明らかであったし、日頃から足を引っ張り合っている連中に対して弱みを自ら握らせてしまうことになり、「国政を担う資格」を問われる問題に発展しかねないと誰もが確信し危惧していたからだ。
 国政の慌ただしさをマスコミが嗅ぎ付けないわけはなく、連日新聞やテレビの報道などでも話題に上るようになった。ある報道機関では『戦争前夜の様相』と危惧を報じてはいるが、想像の域を脱することはなく、政府から情報がなかなか漏れてこないため、紙面上等で挑発したり煽ったりする行為が続いた。
 政府としては、同時に起こった災害が隠れ蓑となって、国民の関心を復旧対応や生活の安定化に意識を逸らすことができ、各国に対しても極秘裏に動けたことは好都合だった。
 しかし、地球の限界点は刻一刻と迫ってきている。天界から見ると、事態は急を要するというのに各国の首脳の動きが、お互いを牽制し合うばかりで、まったく動かなくなってしまっていた。
「地球の危機を確かに伝えたのに、駆け引きしている場合か!何と愚かなことを!」
「この期に及んで利益を優先させるとは、人間達は何を考えているんだ!」
「悪魔達も人間達がどのような動きをするか静観していて、まだ手出しをしていないというのに。ここまで毒されてしまっているのか!」
「次の段階に進まねばならぬようだな・・・」
神々もため息交じりに、半ばあきれ顔で人間達を見つめていた。
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