11 / 23
四日目
二
しおりを挟む
それからは巷でも預言者降臨の話で持ちきりになった。
ニュースやワイドショーでは、宗教家や軍事専門家、政治やスピリチュアルなど、関係すると思われる分野の専門家達の説く自説を次々に報道した。SNSなどでは、イエスやムハンマド達が人々に向かって説いている動画が流れるようになり、一般の人もにわか専門家になって持論をユーチューブなどに動画を投稿し、公開するなり炎上する現象が続いている。
人々はひどく混乱しながらも、預言者達は神の意思を伝えに再臨したのであり、現実として受け止めなければならないと考える人が増えてきている。
そして、その混乱は怒りとなって政府に向けられることもしばしばだった。
「何で政府はこんな重大なことを国民に知らせないんだ!」
「でも、神様なんて本当にいると思う?いるんなら何で人間を救わないで、一種族を滅ぼすなんて言うの?」
「マジでこんなこと信じてるんだ。そもそも神様って、アンケート調査みたいなことして物事とかって決めんの?それに滅ぼす一種族が決まったって、どうやって神様に連絡すんの?電話?手紙?それともテレパシー?ハッ、馬鹿馬鹿しい」
「みんなの見ている目の前に突然現れて、パッと消えたんだよ。そんなことトリックでできると思う?」
「最新のAV機器を使ったらできないこともないな」
「でも、こんなに実物のようにはならないでしょ」
「どこかの国が開発した新兵器の実験かも」
「政治家や資産家達はシェルターを作ってるらしいよ」
「でも、どうやって一種族だけを滅ぼすんだろ。ちょっと見てみたい気もする(笑)」
「出エジプト記だったっけ?家の入口の扉に羊の血で印を付けておけば大丈夫とか?」
「キッタネェ~、イマドキ三流のホラー映画でもやらねぇで草」
「wwwwwwwwwww」
マスコミも連日ワイドショーなどで、にわか評論家や芸能人達が、各国政府・首脳の動向を捉えながら、絶滅する民族の予想などをしかつめらしく報道するなど、日を追うごとに内容が次第にエスカレートしており、民衆の不安や怒りを煽っている。
街角では国の政策を批判し、正しく国を導く政党をリーダーに添えるべきだと訴える野党議員達、今こそ国民がひとつになり、日本人の未来を守ろうと叫ぶ与党議員達。大声で読経する僧侶集団や自らの罪を認め、悔い改めなければたとえ生き残ってもあなたの魂は決して救われないと説く宗教家達であふれかえっている。
週末ごとに『政府は国民を守れ!』『○○人に一票!』『犠牲は○○人で決まり!』などといったプラカードを掲げてデモ行進や集会が行われるようになり、一部暴徒と化した者達と警官隊との衝突が世界各地で行われている。
やり場のない怒りや不安が世界中を覆っていた。
「これ以上国民が混乱しないように、マスコミに報道規制をかけましょうか?」
テレビの映像を観ていた官房長官が総理大臣に尋ねた。
「言論の自由だとか、政府の検閲行為は違法だ越権行為だとか言って余計混乱を招きかねないぞ」
「集団自殺のサイトにアクセスする十代~二十代の若者が増えているそうです。それに、スターシードや高次元から来た宇宙人と名乗る者達がワークショップと称した集会を開いて魂の高次元開放を訴えたり、法人格を取得しないまま新興宗教を次々と立ち上げて不安を煽ったりしながら信者を集めているようです。アメリカではそんな新興宗教団体の入信者約二〇〇人がお互いに銃を持ちながら向き合って集団自殺したという事件まで起きています。我が国も何か手を打たないと、このままでは内部から国が崩壊してしまいかねません」
官房長官も目にクマができている。かなりの心労を抱えているに違いない。
「では、国民の混乱を抑える良い案があるというのかね?仮にあったとしたなら既に実行しているさ」
総理は座ったまま天を仰ぎ、大きくため息をついた。
テレビ画面は路上に跪き天に祈る老婆の姿が映っていた。その横をデモ隊がシュプレヒコールを上げながら通り過ぎていく。
「預言者の言葉の真偽は現在調査中です。もし仮に真実だったとしても、日本国民が犠牲にならないように国として対応しているので、どうか皆さんは自暴自棄にならずに普段通り生活していてください。一年後までにはまだ時間があります。まずは先日の雹での被災者救済の対策を迅速に、かつ的確に行っていくことの方を、国を挙げて行ってまいりますので、まずは自分達の日常をしっかりとおくりましょう」
毎日のぶら下がり会見で総理は同じ言葉を繰り返し、国民を安心させることに努めるよりほかなかった。
ニュースやワイドショーでは、宗教家や軍事専門家、政治やスピリチュアルなど、関係すると思われる分野の専門家達の説く自説を次々に報道した。SNSなどでは、イエスやムハンマド達が人々に向かって説いている動画が流れるようになり、一般の人もにわか専門家になって持論をユーチューブなどに動画を投稿し、公開するなり炎上する現象が続いている。
人々はひどく混乱しながらも、預言者達は神の意思を伝えに再臨したのであり、現実として受け止めなければならないと考える人が増えてきている。
そして、その混乱は怒りとなって政府に向けられることもしばしばだった。
「何で政府はこんな重大なことを国民に知らせないんだ!」
「でも、神様なんて本当にいると思う?いるんなら何で人間を救わないで、一種族を滅ぼすなんて言うの?」
「マジでこんなこと信じてるんだ。そもそも神様って、アンケート調査みたいなことして物事とかって決めんの?それに滅ぼす一種族が決まったって、どうやって神様に連絡すんの?電話?手紙?それともテレパシー?ハッ、馬鹿馬鹿しい」
「みんなの見ている目の前に突然現れて、パッと消えたんだよ。そんなことトリックでできると思う?」
「最新のAV機器を使ったらできないこともないな」
「でも、こんなに実物のようにはならないでしょ」
「どこかの国が開発した新兵器の実験かも」
「政治家や資産家達はシェルターを作ってるらしいよ」
「でも、どうやって一種族だけを滅ぼすんだろ。ちょっと見てみたい気もする(笑)」
「出エジプト記だったっけ?家の入口の扉に羊の血で印を付けておけば大丈夫とか?」
「キッタネェ~、イマドキ三流のホラー映画でもやらねぇで草」
「wwwwwwwwwww」
マスコミも連日ワイドショーなどで、にわか評論家や芸能人達が、各国政府・首脳の動向を捉えながら、絶滅する民族の予想などをしかつめらしく報道するなど、日を追うごとに内容が次第にエスカレートしており、民衆の不安や怒りを煽っている。
街角では国の政策を批判し、正しく国を導く政党をリーダーに添えるべきだと訴える野党議員達、今こそ国民がひとつになり、日本人の未来を守ろうと叫ぶ与党議員達。大声で読経する僧侶集団や自らの罪を認め、悔い改めなければたとえ生き残ってもあなたの魂は決して救われないと説く宗教家達であふれかえっている。
週末ごとに『政府は国民を守れ!』『○○人に一票!』『犠牲は○○人で決まり!』などといったプラカードを掲げてデモ行進や集会が行われるようになり、一部暴徒と化した者達と警官隊との衝突が世界各地で行われている。
やり場のない怒りや不安が世界中を覆っていた。
「これ以上国民が混乱しないように、マスコミに報道規制をかけましょうか?」
テレビの映像を観ていた官房長官が総理大臣に尋ねた。
「言論の自由だとか、政府の検閲行為は違法だ越権行為だとか言って余計混乱を招きかねないぞ」
「集団自殺のサイトにアクセスする十代~二十代の若者が増えているそうです。それに、スターシードや高次元から来た宇宙人と名乗る者達がワークショップと称した集会を開いて魂の高次元開放を訴えたり、法人格を取得しないまま新興宗教を次々と立ち上げて不安を煽ったりしながら信者を集めているようです。アメリカではそんな新興宗教団体の入信者約二〇〇人がお互いに銃を持ちながら向き合って集団自殺したという事件まで起きています。我が国も何か手を打たないと、このままでは内部から国が崩壊してしまいかねません」
官房長官も目にクマができている。かなりの心労を抱えているに違いない。
「では、国民の混乱を抑える良い案があるというのかね?仮にあったとしたなら既に実行しているさ」
総理は座ったまま天を仰ぎ、大きくため息をついた。
テレビ画面は路上に跪き天に祈る老婆の姿が映っていた。その横をデモ隊がシュプレヒコールを上げながら通り過ぎていく。
「預言者の言葉の真偽は現在調査中です。もし仮に真実だったとしても、日本国民が犠牲にならないように国として対応しているので、どうか皆さんは自暴自棄にならずに普段通り生活していてください。一年後までにはまだ時間があります。まずは先日の雹での被災者救済の対策を迅速に、かつ的確に行っていくことの方を、国を挙げて行ってまいりますので、まずは自分達の日常をしっかりとおくりましょう」
毎日のぶら下がり会見で総理は同じ言葉を繰り返し、国民を安心させることに努めるよりほかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる