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四日目
二
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それからは巷でも預言者降臨の話で持ちきりになった。
ニュースやワイドショーでは、宗教家や軍事専門家、政治やスピリチュアルなど、関係すると思われる分野の専門家達の説く自説を次々に報道した。SNSなどでは、イエスやムハンマド達が人々に向かって説いている動画が流れるようになり、一般の人もにわか専門家になって持論をユーチューブなどに動画を投稿し、公開するなり炎上する現象が続いている。
人々はひどく混乱しながらも、預言者達は神の意思を伝えに再臨したのであり、現実として受け止めなければならないと考える人が増えてきている。
そして、その混乱は怒りとなって政府に向けられることもしばしばだった。
「何で政府はこんな重大なことを国民に知らせないんだ!」
「でも、神様なんて本当にいると思う?いるんなら何で人間を救わないで、一種族を滅ぼすなんて言うの?」
「マジでこんなこと信じてるんだ。そもそも神様って、アンケート調査みたいなことして物事とかって決めんの?それに滅ぼす一種族が決まったって、どうやって神様に連絡すんの?電話?手紙?それともテレパシー?ハッ、馬鹿馬鹿しい」
「みんなの見ている目の前に突然現れて、パッと消えたんだよ。そんなことトリックでできると思う?」
「最新のAV機器を使ったらできないこともないな」
「でも、こんなに実物のようにはならないでしょ」
「どこかの国が開発した新兵器の実験かも」
「政治家や資産家達はシェルターを作ってるらしいよ」
「でも、どうやって一種族だけを滅ぼすんだろ。ちょっと見てみたい気もする(笑)」
「出エジプト記だったっけ?家の入口の扉に羊の血で印を付けておけば大丈夫とか?」
「キッタネェ~、イマドキ三流のホラー映画でもやらねぇで草」
「wwwwwwwwwww」
マスコミも連日ワイドショーなどで、にわか評論家や芸能人達が、各国政府・首脳の動向を捉えながら、絶滅する民族の予想などをしかつめらしく報道するなど、日を追うごとに内容が次第にエスカレートしており、民衆の不安や怒りを煽っている。
街角では国の政策を批判し、正しく国を導く政党をリーダーに添えるべきだと訴える野党議員達、今こそ国民がひとつになり、日本人の未来を守ろうと叫ぶ与党議員達。大声で読経する僧侶集団や自らの罪を認め、悔い改めなければたとえ生き残ってもあなたの魂は決して救われないと説く宗教家達であふれかえっている。
週末ごとに『政府は国民を守れ!』『○○人に一票!』『犠牲は○○人で決まり!』などといったプラカードを掲げてデモ行進や集会が行われるようになり、一部暴徒と化した者達と警官隊との衝突が世界各地で行われている。
やり場のない怒りや不安が世界中を覆っていた。
「これ以上国民が混乱しないように、マスコミに報道規制をかけましょうか?」
テレビの映像を観ていた官房長官が総理大臣に尋ねた。
「言論の自由だとか、政府の検閲行為は違法だ越権行為だとか言って余計混乱を招きかねないぞ」
「集団自殺のサイトにアクセスする十代~二十代の若者が増えているそうです。それに、スターシードや高次元から来た宇宙人と名乗る者達がワークショップと称した集会を開いて魂の高次元開放を訴えたり、法人格を取得しないまま新興宗教を次々と立ち上げて不安を煽ったりしながら信者を集めているようです。アメリカではそんな新興宗教団体の入信者約二〇〇人がお互いに銃を持ちながら向き合って集団自殺したという事件まで起きています。我が国も何か手を打たないと、このままでは内部から国が崩壊してしまいかねません」
官房長官も目にクマができている。かなりの心労を抱えているに違いない。
「では、国民の混乱を抑える良い案があるというのかね?仮にあったとしたなら既に実行しているさ」
総理は座ったまま天を仰ぎ、大きくため息をついた。
テレビ画面は路上に跪き天に祈る老婆の姿が映っていた。その横をデモ隊がシュプレヒコールを上げながら通り過ぎていく。
「預言者の言葉の真偽は現在調査中です。もし仮に真実だったとしても、日本国民が犠牲にならないように国として対応しているので、どうか皆さんは自暴自棄にならずに普段通り生活していてください。一年後までにはまだ時間があります。まずは先日の雹での被災者救済の対策を迅速に、かつ的確に行っていくことの方を、国を挙げて行ってまいりますので、まずは自分達の日常をしっかりとおくりましょう」
毎日のぶら下がり会見で総理は同じ言葉を繰り返し、国民を安心させることに努めるよりほかなかった。
ニュースやワイドショーでは、宗教家や軍事専門家、政治やスピリチュアルなど、関係すると思われる分野の専門家達の説く自説を次々に報道した。SNSなどでは、イエスやムハンマド達が人々に向かって説いている動画が流れるようになり、一般の人もにわか専門家になって持論をユーチューブなどに動画を投稿し、公開するなり炎上する現象が続いている。
人々はひどく混乱しながらも、預言者達は神の意思を伝えに再臨したのであり、現実として受け止めなければならないと考える人が増えてきている。
そして、その混乱は怒りとなって政府に向けられることもしばしばだった。
「何で政府はこんな重大なことを国民に知らせないんだ!」
「でも、神様なんて本当にいると思う?いるんなら何で人間を救わないで、一種族を滅ぼすなんて言うの?」
「マジでこんなこと信じてるんだ。そもそも神様って、アンケート調査みたいなことして物事とかって決めんの?それに滅ぼす一種族が決まったって、どうやって神様に連絡すんの?電話?手紙?それともテレパシー?ハッ、馬鹿馬鹿しい」
「みんなの見ている目の前に突然現れて、パッと消えたんだよ。そんなことトリックでできると思う?」
「最新のAV機器を使ったらできないこともないな」
「でも、こんなに実物のようにはならないでしょ」
「どこかの国が開発した新兵器の実験かも」
「政治家や資産家達はシェルターを作ってるらしいよ」
「でも、どうやって一種族だけを滅ぼすんだろ。ちょっと見てみたい気もする(笑)」
「出エジプト記だったっけ?家の入口の扉に羊の血で印を付けておけば大丈夫とか?」
「キッタネェ~、イマドキ三流のホラー映画でもやらねぇで草」
「wwwwwwwwwww」
マスコミも連日ワイドショーなどで、にわか評論家や芸能人達が、各国政府・首脳の動向を捉えながら、絶滅する民族の予想などをしかつめらしく報道するなど、日を追うごとに内容が次第にエスカレートしており、民衆の不安や怒りを煽っている。
街角では国の政策を批判し、正しく国を導く政党をリーダーに添えるべきだと訴える野党議員達、今こそ国民がひとつになり、日本人の未来を守ろうと叫ぶ与党議員達。大声で読経する僧侶集団や自らの罪を認め、悔い改めなければたとえ生き残ってもあなたの魂は決して救われないと説く宗教家達であふれかえっている。
週末ごとに『政府は国民を守れ!』『○○人に一票!』『犠牲は○○人で決まり!』などといったプラカードを掲げてデモ行進や集会が行われるようになり、一部暴徒と化した者達と警官隊との衝突が世界各地で行われている。
やり場のない怒りや不安が世界中を覆っていた。
「これ以上国民が混乱しないように、マスコミに報道規制をかけましょうか?」
テレビの映像を観ていた官房長官が総理大臣に尋ねた。
「言論の自由だとか、政府の検閲行為は違法だ越権行為だとか言って余計混乱を招きかねないぞ」
「集団自殺のサイトにアクセスする十代~二十代の若者が増えているそうです。それに、スターシードや高次元から来た宇宙人と名乗る者達がワークショップと称した集会を開いて魂の高次元開放を訴えたり、法人格を取得しないまま新興宗教を次々と立ち上げて不安を煽ったりしながら信者を集めているようです。アメリカではそんな新興宗教団体の入信者約二〇〇人がお互いに銃を持ちながら向き合って集団自殺したという事件まで起きています。我が国も何か手を打たないと、このままでは内部から国が崩壊してしまいかねません」
官房長官も目にクマができている。かなりの心労を抱えているに違いない。
「では、国民の混乱を抑える良い案があるというのかね?仮にあったとしたなら既に実行しているさ」
総理は座ったまま天を仰ぎ、大きくため息をついた。
テレビ画面は路上に跪き天に祈る老婆の姿が映っていた。その横をデモ隊がシュプレヒコールを上げながら通り過ぎていく。
「預言者の言葉の真偽は現在調査中です。もし仮に真実だったとしても、日本国民が犠牲にならないように国として対応しているので、どうか皆さんは自暴自棄にならずに普段通り生活していてください。一年後までにはまだ時間があります。まずは先日の雹での被災者救済の対策を迅速に、かつ的確に行っていくことの方を、国を挙げて行ってまいりますので、まずは自分達の日常をしっかりとおくりましょう」
毎日のぶら下がり会見で総理は同じ言葉を繰り返し、国民を安心させることに努めるよりほかなかった。
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